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成立した法令の内容を広く一般に周知させるため公示する行為 ウィキペディアから
公布(こうふ)とは、成立した法令の内容を広く民衆に周知させるため公示する天皇の行為。
この記事は特に記述がない限り、日本国内の法令について解説しています。また最新の法令改正を反映していない場合があります。 |
公布とは、国会等が可決して成立した法令の内容を、国民または住民が知りうる状態にする行為である。法令が現実に拘束力を発生させるためには、一般に公布の手続を踏むことが必要とされる。公布の方法は、主に政府や公の機関紙に掲載することによって行う場合と、特定の掲示板に掲載することによって行う場合がある。後者は中小規模の地方自治体の命令に多い。
日本国憲法(昭和憲法)では、憲法改正、法律、政令、条約については、内閣の助言と承認により、天皇が国事行為として公布すると定めている(日本国憲法第7条第1号)。その他の法令については、その制定機関が公布する。
公布の形式については、1947年(昭和22年)5月3日に内閣官制の廃止等に関する政令(昭和22年政令第4号)により公式令が廃止された後は、一部の法令を除いて、特段の定めはなかった。そのため、先例により、官報に掲載する方法で行われてきたが、2023年(令和5年)12月6日に参議院本会議で可決成立し、12月13日令和5年法律第85号として公布された官報の発行に関する法律により[1]、遅くとも2025年(令和7年)までに行われる予定の同法の施行後は[2]、法律に基づいて「公布は、官報をもって行う」ことになる[3]。
官報に掲載して公布する方法は、1886年(明治19年)に勅令として制定された公文式(明治19年勅令第1号)によって初めて規定された。この勅令は、法令は官報をもって布告され、各府県毎に定めた「官報到達日数」の7日後から、各地域において施行されるとした[4]。その後の1907年(明治40年)、公文式に代わり公式令(明治40年勅令第6号)が制定され、これにも官報に掲載する方法によることが規定された。なお、公文式においては、法令の公布と官報での布告と使い分けていたが、公式令においてはいずれも公布とされた。
ところが、日本国憲法施行の日の1947年(昭和22年)5月3日に、内閣官制の廃止等に関する政令(昭和22年政令第4号)により公式令は廃止されたにもかかわらず、これに代わる法令は制定されなかった。その後も官報への法令の掲載が続けられたが、根拠法令がないため、どのような状態になれば法令が公布されたと見ることができるのか(官報以外の手段で法令の内容を知りうる状態になった場合も、公布があったと言えるか)が問題となった。
この点について、第45代内閣総理大臣吉田茂は事務次官会議に『公式令廃止後の公文の方式等に関する件』を作るよう指示し、その第5項に「法令その他公文の公布は、従前の通り官報を以てする」との文言を入れさせた[5]。これが遅くとも2025年までになされる予定の官報発行法の施行まで、官報への掲載が行われた根拠である。
最高裁判所の判例は、実際の取扱としては、公式令廃止後も、法令の公布を官報をもつてする従前の方法が行われて来たことは顕著な事実であると認定し、特に国家がこれに代わる他の適当な方法をもつて法令の公布を行うものであることが明らかな場合でない限りは、法令の公布は従前通り、官報をもつてせられるものと解するのが相当とし(最大判昭和32年12月28日刑集11巻14号3461号)[6]、公布の時期については、一般の希望者が法令の掲載された官報を閲覧・購読しようと思えばできた最初の時点(最大判昭和33年10月15日刑集12巻14号3313頁)としている[7][8]。
なお、官報及び法令全書に関する内閣府令(昭和24年総理府・大蔵省令第1号)第1条は、官報には憲法改正・法律・政令などを掲載する旨規定している。しかし、これは公布の方法について定めた規定とは解されていない。また、最高裁判所規則については、裁判所公文方式規則(昭和22年最高裁判所規則第1号)第2条で、会計検査院規則は、会計検査院規則の公布に関する規則(昭和22年5月3日会計検査院規則1号)第2条で、人事院規則及びその改廃については、国家公務員法(昭和22年法律第120号)第16条第2項で、それぞれ官報で公布する旨定めている。
こうした慣習について、経済界から「官報が紙の印刷物とされている慣習により、書面の廃止やデータの再利用が難しい」という要望がデジタル臨時行政調査会に寄せられたことから、2022年(令和4年)12月に同調査会で「明治以来紙で発行されてきた官報を電子化」する方針が決定された[9]。しかし、官報を電子化するためはこれまでの慣習とは異なる官報の発行方法を法律で定めることや、これまで慣習法や慣行として行われてきた内容を法律に明文化することも必要となる[9]。 このため、官報発行法案が国会に提出され可決成立したことにより[1]、公式令廃止以来実に76年ぶりに官報に掲載すべき事項として官報による公布等が定められた[3]。
地方自治法16条4項は、条例の公布に関し必要な事項は条例で定めるべきことを規定しており、都道府県や市町村は「公告式条例」、「条例等の公布に関する条例」といった名称の条例で、条令の公布方式を定めている。都道府県はその公報に掲載することによって、市町村は所定の掲示場に掲示することによって、条例を公布すると定めている例が多いようである。
条約の公布の次期は、二国間条約の場合で、批准書の交換又はこれに準じる国内手続きの完了の通知の交換が発効要件の場合は、批准書の交換等の時点で公布され、その時点で発効の日も確定するため、公布と同時に発効日についての外務省告示がされる。
多国間条約で、全締約国の批准又は一定の数の締約国の批准が必要な場合や、二国間条約でも、手続き終了の通知が、それぞれの当事国が行う場合などは、日本の手続きが終了した段階では、発効が確定していないことがある。この場合の公布の時期については、2018年に国会承認された環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定においては、2018年 7月6日に効力発生のための通報を日本が行ったが、公布及び発効の告示は、発効の確定後の2018年12月27日であった[11]。これに対し、2019年5月29日に国会承認された日・スペイン租税条約は、7月24日に日本側からスペイン側への通告がされ、7月26日に公布及び告示(締結に関するもの)がされたが、スペインからの通告は2021年2月12日となり、3月8日に告示(効力発生に関するもの)がされている。
この変更についての説明は外務省HPにはされていない。
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