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1人親とその子からなる家庭 ウィキペディアから
一人親家庭(ひとりおやかてい)とは、配偶者との離別または死別によって生じた、片親と子供から成る家庭。単親世帯(たんしんせたい)ともいう。なお、厚生労働省の定義では、母子・父子以外の同居者と子供がいる家庭も、母子家庭・父子家庭に含める[1]。
一人親家庭のうち、母と児童からなる家庭を母子世帯(ぼしせたい)あるいは母子家庭(ぼしかてい)、父と児童からなる家庭を父子世帯(ふしせたい)あるいは父子家庭(ふしかてい)という。
なお、そのような家庭の母親はシングルマザー(英: single mother)、父親はシングルファーザー(英: single father)という。
各国の子供がいる世帯のうちのひとり親世帯の割合は、2005年9月の米国の政府系の調査資料によると、日本で10%、オランダで16%、スウェーデンで19%、フランスで20%、デンマークで22%、ドイツで22%、アイルランドでは23%、カナダでは25%、イギリスでは25%、アメリカでは30%となっていた[2]。
ひとり親世帯の世帯主について、母親と父親の割合(母子家庭と父子家庭の割合)は国ごとに異なる。OECD諸国が共同で作成した2016年の資料によると、OECD諸国の全ての国で母親が世帯主となっている世帯(母子家庭)の割合のほうが高かった[3]。同資料によると、父子家庭の割合の数字の範囲は概観すると9%から25%の範囲となっている[3]。父子家庭の割合が小さい国から具体的な数字を挙げると、エストニア 9%、コスタリカ 10%、キプロス 10%、日本 10%、アイルランド 10%、イギリス 12%、ノルウェー 12%、スペイン 23%、スウェーデン 24%、ルーマニア 25%、アメリカ 25%となっている[3]。(なおこの資料ではカナダ、オーストラリア、ニュージーランドについては父子家庭の割合の数字が提供されていない[3]。)
日本において単親家庭数は増加傾向にある。たとえば、未婚の20歳未満の子供を持つ単親家庭数(推計)は、2016年において母子世帯が123.2万世帯、父子世帯が18.7万世帯であり[4]、昭和58年と比較すると両世帯ともに増えている(それぞれ71.8万、16.7万)[5]。単親家庭が世帯構造に占める割合も、2022年度では6.8%であり、1986年の5.1%から漸次的増加を示している[6]。
母子家庭の方が多い理由としては、例えば子供がいる夫婦が離婚する時に、母親が親権者になり子供を引き取る場合が多いことが挙げられる。1960年(昭和35年)は父親が親権者になる割合が47%であったが、1996年(平成8年)は母親が親権者になる割合が78%となっている[7]。
ひとり親世帯になった理由は、母子家庭・父子家庭ともに離婚が8割弱を占める[1]。残りの2割の大半は、父子家庭が「死別」、母子家庭が「死別」と「未婚」で半々となっている。
離婚・死別以外のその他の原因としては、以下のような理由が挙げられる。なお、父母のいずれかが単身赴任等仕事の都合で「生活拠点が一時的に、家庭とは別に置かれている場合」は一人親家庭に含まれない。
なお、日本においては460の自治体で同性間のパートナーシップが認められているが[8]、そうでない自治体などでは同性カップルが子を持った場合に「ひとり親世帯」の行政的な枠組みの中で扱われることがある。
就業率は母・父ともに8割を超えているが、そのうち父子家庭では正規の職員・従業員が68.2%であるのに対し、母子家庭では44.2%と非正規の割合が高い[1]。平均年間収入は、母子家庭が243万円、父子家庭が420万円である(同居親族を含む場合は、母子家庭が約100万円、父子家庭が約150万円増加する)。
国(日本政府、主な管轄機関:厚生労働省)・地方自治体による支援制度は、父子世帯と比べて経済的に苦境(=貧困)にあることの多い母子世帯を中心として構成され、これに父子世帯の子育てサポート制度が備わる。父子家庭については従来、経済的な支援よりも家事や子育ての相談などの支援の方がニーズが高いとされ、児童扶養手当は当初母子家庭のみを対象としていた。しかし、栃木県鹿沼市や千葉県野田市、東京都港区などが児童扶養手当と同様の手当を設定し始めた[9]ことを皮切りに、2010年8月からは児童扶養手当の支給対象に父子家庭も含まれることになった。
独立行政法人労働政策研究・研修機構の調査[10]によれば、ひとり親家庭のうち、厚生労働省公表の貧困線を下回った世帯の割合は、母子家庭で51.4%、父子家庭で22.9%であり、二人親家庭の5.9%に比べて大きな差がある。さらに、可処分所得が貧困線の50%に満たない「ディープ・プア(Deep Poor)」世帯の割合は、母子世帯が 13.3%、父子世帯が 8.6%、ふたり親世帯が0.5%となっている。また、母子世帯の場合、子どもの年齢が高い世帯ほど、経済的困窮度が高い。
「有子世帯の所得格差は、過去15年間で拡大傾向にあり、とくに独立母子/父子世帯内部で所得格差が大きい」「高学歴化によりひとり親の教育水準が急速に向上したものの、ひとり親世帯の低学歴層への偏りは安定的に維持されている」「要因分解法の推定結果より、世帯所得の学歴間格差が独立ひとり親世帯の所得格差の拡大に寄与しているが、他の成人親族との同居はひとり親世帯の階層差を緩衝させる役割を持っていた」とする分析があり[11]、ひとり親家庭の貧困は親の性別や学歴、同居形態によって実態が異なる。
厚生労働省は「子ども虐待対応の手引き」[12]において、未婚を含むひとり親家庭を児童虐待のリスク要因の1つとしてあげている。とある保育園に通う児童虐待や虐待が疑われる家庭の半数以上がひとり親家庭であるとする調査[13]や、育児放棄が低出生体重児のいる家庭やひとり親家庭で発生する確率が比較的高いとする考察[14]などがある。
ひとり親の貧困は貧困の悪循環に陥る危険があり、行政支援をはじめとした公的支援のほか、フードバンク、子ども食堂[15][16]や無料塾の開催[17]などの民間支援も行われている。
ひとり親家庭には地方自治体が主体となって育児、医療、公営住宅への入居などに対し助成金などの種々の支援が行われている。また就業支援や職業訓練などの各施策が行なわれている。また、ひとり親家庭だけを対象としたものではないが、経済的に窮乏状態(=貧困)の家庭に対しては生活保護や就業相談、子育ての相談窓口などを設けている。さらに行政機関ではないものの、母子寡婦福祉連合会が行政機関と連絡をとって支援を行っている。一方で、偽装離婚、事実婚、パートナーがいる者が公営住宅の不正入居、不正使用、不正受給、優遇措置を受けることが問題になる場合もある[18][19][20]。なお、生活保護を受給している母子世帯及び父子世帯はともに約1割である[1]。
ひとり親家庭のために様々な制度が行政により設けられている。
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