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有機農業(ゆうきのうぎょう、英語: organic farming、organic agriculture)は、化学肥料や農薬を用いない、農業の形態の一つ[1]。有機農法、有機栽培、オーガニック農法などとも呼ばれる。化学肥料や農薬を用いた農業と比較すると無農薬や有機農業を用いる場合は収穫量が減少する[1]。
自然科学の術語としての有機は、一般に、有機化合物に帰着する。農業の展開を吟味すべき時代に盛んだった化学肥料が無機的だったこととは幾分異なり、古典的な肥料は堆肥などだったことから象徴的に有機という単語が用いられた。したがって有機農業を省略して有機としてしまうと意味が通じない。
たとえば、有機食品の言葉は「有機農業で栽培された食品」を指して使われているが、食品の大部分は有機質であるため不適切ともいえる。
IFOAM(国際有機農業運動連盟)による「有機農業の原則」は、予防的管理、伝統的知識、社会的・生態学的公正など幅広い内容を含んでいる。 同連盟によると、有機農業の役割は、生産、加工、流通、消費のいずれにおいても、生態系および、土壌の最も小さい生物から人間に至る有機体の、健全性を持続し強化することである。アメリカ合衆国農務省 (USDA) 等による有機農業の基準は、遺伝子組換え品種を禁じているわけではない。多くの国では、特例を除いて家畜への投薬を禁じている。
また、有機農業は、フェアトレードや環境管理 (environmental stewardship) といった文化的実践の上にある原理への賛同とも関係がある[注釈 1]。
一方、国際連合食糧農業機関(FAO)と世界保健機関(WHO)が定めた『有機的に生産される食品の生産、加工、表示及び販売に係るガイドライン』(通称「コーデックスガイドライン」)も、世界的に共通して採用されている[2]。日本のガイドライン(有機農産物の日本農林規格)はコーデックスガイドラインを基に作成されたため[3]、基本的に有機農業の定義を同じくしている[注釈 2]。ただし、有機農産物の認定は日本では農家の申請によるのに対し、海外では生産時だけでなく収穫時や輸送中も含めて化学肥料、農薬、遺伝子組換え品種の非混入の客観的な証明を要する[4]。
アメリカ合衆国、ブルガリア、アイスランド、ノルウェイ、ルーマニア、スイス、トルコ、オーストラリア、インド、日本、フィリピン、韓国、台湾、タイ、アルゼンチン、コスタリカ、チュニジア、そして欧州連合(EU)など、多くの国々・地域では、有機農業は法律によっても定義されているので、農業や食品製造における「有機」という単語の商用利用は、政府によって統制されている。法律が存在する場合、有機であるという認定は有料で行われる。無認可の農場にとって、自分自身あるいは自分の生産物を有機であると称することは違法ということになる。 カナダにおいては、法律は整備されていないが、任意の認定が可能である。
「有機農業の推進に関する法律」(平成18年法律第112号)の第二条において、有機農業は次のように定義される;「化学的に合成された肥料及び農薬を使用しないこと並びに遺伝子組換え技術を利用しないことを基本として、農業生産に由来する環境への負荷をできる限り低減した農業生産の方法を用いて行われる農業」。
農林水産省の「有機農産物の日本農林規格」[5] では、有機農業で生産された農産物(有機農産物)は次のように定義されている。
有機JAS規格では有機農産物を「生産から消費までの過程を通じて化学肥料・農薬などの合成化学物質や生物薬剤、放射性物質、遺伝子組換え種子及び生産物等をまったく使用せず、その地域の資源をできるだけ活用し、自然が本来有する生産力を尊重した方法で生産されたもの」と定めている。
イギリスの植物学者アルバート・ハワードが、1905年から1931年までインドで東洋の自然観に基づく農業を研究して、インドール方式と呼ばれる堆肥のつくり方を発表する。『農業聖典』[6] などの著作がある。
ドイツでは、ハワードと同時代に、神秘思想家のルドルフ・シュタイナーがバイオダイナミック農法の講演を行っていた[7]。
1962年、アメリカの自然科学者レイチェル・カーソンが、DDTなどの毒性と残留性の強い農薬による危険性を訴えた『沈黙の春』[8] を出版して反響を呼ぶ。
1972年、国際有機農業運動連盟(IFOAM、アイフォーム、International Federation of Organic Agriculture Movements)ができる。
1989年1月7日、チャールズ3世(当時皇太子)は、自分の領地では有機農業を行うと宣言し、また自ら所有する家庭菜園でも有機農法を実践している[9]。
1990年には突然変異原性の検出法エームズ試験の開発で有名なエームズ博士らによって、無農薬や低農薬農法を用いた農作物では病害虫防除が不十分なために病害虫に抵抗するため、植物自体が作る天然化学物質の方が残留農薬などよりも遙かに毒性が強いという報告が、出されている[10]。20世紀以降一般的に農業では、化学肥料や化学合成農薬といった農業用化学合成基質(化学工業で生産された、生物(農作物、害虫、雑草、病害微生物など)に対する効果を目的とした基質で、化学工業により生産されるもの)が利用され、農業生産高は格段に増加している。しかし、逆に有機栽培至上主義を唱える人々が発生しているが、それを国家レベルで行ったスリランカで災害レベルの失敗をしている[1]。
2014年の有機食品の市場規模は、日本が約1,300億円、欧州が約3.7兆円、米国が約3.8兆円である[11]。また、2014年の各国の農地面積に占める有機農業の面積の割合は、日本が0.3%(有機JAS)、イタリアが10.8%、ドイツが6.3%、フランスが4.1%となっている[11]。
日本は高温多湿であるため、べと病など野菜に被害をもたらす病気が広がりやすく、安定した収穫には化学肥料や農薬が欠かせない[12]。
1930年代に福岡正信や宗教家の岡田茂吉が、農作業の大部分を自然に任せる自然農法を開始した。また、マクロビオティックの創始者である桜沢如一が、農薬や化学肥料を使った農法に対する問題提起を行った[13]。
1961年に農業基本法が制定され、化学肥料や化学合成農薬の使用が大きく推進されることとなった。これは、農地の単位面積あたりの収量を大幅に増大させるためである。しかし、後述する理由により化学合成基質の使用が問題視され、化学合成基質を使用しない有機農業が生じる背景となった。
「有機農業」という言葉は、1971年に農協役員の一楽照雄(1906年 - 1994年)が考案したものである[14]。既にこの時、日本の農業政策は化学肥料や化学合成農薬の使用を前提とした食糧増産の路線を進み、日本の農村から有機農業の基盤は失われていた[14]。一楽は、経済合理主義によって推進されていた農業の近代化に対して疑問を持ち、近代農業は農薬や化学肥料の毒性の問題だけでなく、農民の生活基盤を破壊する思想そのものが人間社会や自然生態系の存続を危機に陥れかねないと考えた。経済の領域を超えたあるべき姿の農業、「豊かな地力と多様な生態系に支えられた土壌から生み出された健康的で食味の良い食べ物を通して、自立した生産者と消費者が密接に結び付き、それにより地域の社会や文化の発展と、安定した永続的で幸福な生活の実現を図る」ことを目指し、こうした社会全体の大きな変革の基礎となる農業のあり方を「有機農業」と名付けた。同時にこうした社会運動の母体として1971年に「日本有機農業研究会」を設立し、同研究会を農業者、消費者、研究者や行政が同じテーブルについて対話する核として位置づけた。以降、有機農業という言葉は徐々に日本に広まったが、農薬や化学肥料を支持する人が大多数を占める状況の中で、当初の一楽たちの試みは困難を極めた。有機農業を志す農業者は奇人・変人扱いされ、集落の共同体から排除されることもしばしばあった[14]。
経済優先主義による環境破壊が顕著になってきたため、1980年代に入ると、先駆的な有機農業者と消費者たちの努力が徐々に認められるようになっていった[14]。1987年に有機米の公認(特別栽培米)、1991年に有機栽培のガイドラインが制定された。
1990年代から有機農業と減農薬農業の研究が本格的に始まった[4]。有機農業に関する研究は、ここまでの時期には、(農薬の未使用なども含めた)有機農業の効果よりも、有機資材の施用の効果、すなわち無機肥料の施用との比較や、無機肥料の施用により生じた土壌浸食の防止[15]、土壌物性の改善[16][17]等が中心であった。この頃、米国でLISA(Low lnput Sustainable Agriculture)が提唱された[18]。日本でも、1992年に農林水産省が『新しい食料・農業・農村政策の方向(新政策)』の中で、生態系と調和した持続可能な「環境保全型農業」を提唱した[19]。
2000年1月、日本農林規格(JAS規格)に、コーデックス委員会に準拠した「有機JAS」の規格ができた。認証されるのは、遺伝子組み換えされておらず、基本的に化学合成された農薬や肥料を避けられた食品である。2002年12月には、農薬取締法に特定農薬指定制度ができた。特定農薬は、安全性の明らかなものと定義されており、通称「特定防除資材」と呼ばれる。しかし、定義が安全性の明らかなものとされているのに農薬という呼称をつけるのはどうかとの批判がある[20]。とはいえ、有機JASにおいては、緊急の際に特定農薬や、許可された天然に存在する物質に由来する農薬が使用されることがある。また、2009年(平成21年)8月27日の改正により、遺伝子組み換え作物に由来する堆肥の使用は当分の間、許可されることとなった。
2006年12月、「有機農業の推進に関する法律」[21] が制定・施行された。またそれを受け、2007年4月には「有機農業の推進に関する基本的な方針」が公表された。これにより、日本の法制度のもとでは規制の対象としか見られてこなかった有機農業が、法律によって推進されることとなった。
有機農産物認定事業者の数は、2002年(平成14年)6月時点で3639戸、平成15年5月時点で4273戸、平成16年3月時点で4453戸、平成17年3月で4664戸、平成18年3月時点で4611戸、平成18年9月時点で5104戸と、増加傾向にあるといえる[22]。
日本政府は2021年5月にまとめている「みどりの食料システム戦略において、有機農業を営む農地を2050年までに全体の25%に拡大する目標を掲げた。2020年4月時点の有機JAS圃場は全耕地の0.27%にとどまる。農薬などを使う慣行栽培への信頼度が高いこと、見た目の不揃いが出やすいことへの消費者の理解などが課題として指摘されている[23]。
中国における有機農業は1990年代に始まった[24]。2013年の中国の有機栽培面積は128.7万平方キロメートルとなっている[24]。
2016年の中国の有機食品の総生産量は農作物全体の0.2%である[24]。ただし、中国国内の有機食品販売額が食品販売額総額に占める割合は、2007年の0.36%から2013年には1.34%にまで伸びている[24]。
2016年の中国における有機農業の生産面積は272万ヘクタール、中国国内の耕地面積の0.9%にあたり世界第4位となっている[24]。また、有機製品の国内取引額は約800億元、年間輸出額は約4億ドルである[24]。
1960年代から合成肥料への補助金を支給しだしたことにより米を含む作物の収穫量が支給前の2倍以上になった。そのおかげで1970年代に国内が食糧不足となった際も収穫量が国内需要より有り余っていた茶やゴムの輸出で外貨を獲得し、他国から輸入することで乗り切ることができた[1]。しかし、2019年のスリランカ大統領選で、10年以内に国内の全農業を有機農業に移行するという公約を掲げたゴタバヤ・ラジャパクサ大統領が当選した。彼は有機農業に否定的な国内の農業専門家や科学者らを政策決定の場から排除した代わりに、農業大臣や関連委員会に「Viyathmaga」という有機農業推進派市民団体のメンバーを任命した。そして、2021年4月に「化学肥料や農薬の輸入を禁止し、国内の農業をすべて有機農業へ転換する」という世界初の有機農業政策が実行された[1]。その結果、「有機農業は従来の農業に匹敵する収穫量を生み出せる」という有機農業推進派の主張に反し、開始半年後にはスリランカの主食である米の収穫量が20%減少、国内価格も50%も急騰した上に4億5000万ドル(約620億円)相当の米を輸入するという大失敗となった。そのため、2021年11月に政府は主要輸出物への化学肥料の使用を部分的に認め、2022年2月には主要輸出物の有機農業への移行を停止する事態となっている[1]。フォーリン・ポリシーは、全農作物有機農業計画発表当初から世界中の農学者は収穫量が大幅に減少すると警告していたが、輸入された化学肥料の代替物にその他の有機肥料生産の増加を主張したスリランカ政府は不足分を補うのに十分な肥料をスリランカ国内で生産出来なかったことを指摘している。フォーリン・ポリシーは「有機農業の信者に農業政策を引き渡し、輸入肥料を禁止するという誤った経済政策」と化学肥料への外貨支出や化学肥料への補助金総額が、収穫量が減った分の食料輸入費用や有機農業で生産高が減少した農家に対する補償のコストが上回ったことを指摘した[1]。
2016年現在の中国の有機製品の認証機構数は24である[24]。
中国における有機農業は1990年代に始まり、各地域の資源的優位や技術的条件から4つの主要なモデルが形成されている[24]。
北京・上海地域では野菜類の農作物栽培が主に発展し、有機肥料を用いた栽培で政府から補助金を得ながら旅行業と伝統農業が結合するなど、都市農業の新たなモデルになっている[24]。
有機農業は労働集約型で生産前、生産中、生産後のすべてで大量の労働力を必要とするため、生産労働力投入のコストは増加する[24]。また、有機製品は有機認証のための認証費が必要になるほか、有機食品の品質の保証、有機農業の実施のための農民への訓練と教育、生産上の各種環境・食品汚染リスクの低減のコストも必要とされる[24]。中国の場合、有機食品の価格は多くが普通の食品の2〜5倍とされ、中には8〜10倍に達する食品がある[24]。
特定非営利活動法人日本有機農業研究会は、「有機農業に関する基礎基準2000年」において「有機農業のめざすもの」として、下記の項目を挙げている[25]。
有機JAS規格では、以下のような天然に存在する物質の使用が許可されている[5]。
有機肥料の他に、様々な無機肥料が認められる。それらは、草木灰、炭酸カルシウム(苦土炭酸カルシウムを含む。)、塩化加里、硫酸加里、硫酸加里苦土、天然りん鉱石、硫酸苦土、水酸化苦土、石こう、硫黄、生石灰(苦土生石灰を含む。)、消石灰、微量要素(マンガン、ほう素、鉄、銅、亜鉛、モリブデン及び塩素)、岩石を粉砕したもの、塩基性スラグ、鉱さいけい酸質肥料、よう成りん肥、塩化ナトリウム、リン酸アルミニウムカルシウム、塩化カルシウムなどであり、有機肥料しか有機農業に用いられていないということは誤解である。
使用可能な農薬は、使用条件付きもあるが、除虫菊乳剤及びピレトリン乳剤、なたね油乳剤、マシン油エアゾル、マシン油乳剤、大豆レシチン・マシン油乳デンプン水和剤、脂肪酸グリセリド乳剤、メタアルデヒド粒剤、硫黄くん煙剤、硫黄粉剤、硫黄・銅水和剤、水和硫黄剤、硫黄・大豆レシチン水和剤、石灰硫黄合剤、シイタケ菌糸体抽出物液剤、炭酸水素ナトリウム水溶剤及び重曹、炭酸水素ナトリウム・銅水和剤、銅水和剤、銅粉剤、硫酸銅、生石灰、天敵等生物農薬、性フェロモン剤、クロレラ抽出物液剤、混合生薬抽出物液剤、ワックス水和剤、展着剤、二酸化炭素剤、ケイソウ土粉剤、食酢の30種類である。
その他、有機JAS規格によれば、本来は種苗や防除資材や肥料などに組換えDNA技術を用いたものを利用できない。しかし、附則(平成18年10月27日農林水産省告示第1463号)により、特例として遺伝子組換え作物に由来する有機質肥料である堆肥を有機栽培に用いることが許可された(「遺伝子組み換え作物#遺伝子組換え作物と有機栽培」参照)。
下表は、有機資材投入・無農薬栽培および有機資材投入と慣行農法との比較を農作物の品質について行った研究とその結果を作物別に示す。
農産品 | 栽培方法 | 品質変化 |
---|---|---|
米 | 有機資材投入・無農薬栽培 | デンプンの粘り、Mg/K比、食味が向上した[26]。 |
無化学肥料・無農薬栽培 | 収量が10%程度減少した[27]。 | |
有機資材投入 | 食味、アミロース含量、Mg/K比に差がなかった[28]。 | |
減化学肥料・減農薬栽培 | 食味と収量に差がなかった[28][29]。 | |
ニンジン | 有機資材投入・無農薬栽培 | 香気成分パターンに差はなかった[30]。 |
カロチノイド含量に差はなかった[31]。 | ||
微弱振動電磁波による評価に差がなかった[31]。 | ||
葉中の硫黄とナトリウムが高かった。収量、ビタミンCとビタミンE、αおよびβ-カロチン、N(窒素)、P(リン)、K(カリウム)、Na(ナトリウム)、Ca(カルシウム)、Mg(マグネシウム)、S(硫黄)、Fe(鉄)、B(ホウ素)、Mn(マンガン)、Zn(亜鉛)、Cu(銅)で差がなかった[32]。 | ||
官能試験に差があった。ビタミンC、還元糖、アミノ酸含量とその組み合わせに差がなかった[33]。 | ||
有機資材投入 | カロチン含量と日持ち性が向上した。上物収量に差はなかった[28][34]。 | |
減化学肥料・減農薬栽培 | 糖度、ビタミンC、β-カロチン含量に差はなかった[35]。 | |
大根 | 有機資材投入・無農薬栽培 | 日持ち性、香味で差があった[36]。 |
香気成分パターンに差はなかった[30]。 | ||
近赤外スペクトルで識別可能[30]。 | ||
微弱振動電磁波による評価に差がなかった[31]。 | ||
有機資材投入 | 辛み成分が低かった[28][34]。上物収量に差がなかった。 | |
有機資材(油粕)投入 | 外観、肉質、歩留まりが向上した[37][38]。 | |
有機資材(バーク)投入 | す入りになった[37][38]。 | |
収量および土壌の陽イオン交換能が増加した[39]。 | ||
減化学肥料・減農薬栽培 | グリコシレート含量が低かった[31]。 | |
トマト | 有機資材投入・無農薬栽培 | N、P、K、Ca、ビタミンC含量および官能評価に差がなかった[40]。 |
官能試験で慣行農法の評価がより高かった[41]。 | ||
官能試験で、表面の赤みと旨みとの評価がより高かった。糖度とビタミンC含量がより高かった[42]。リコピン含量とアミノ酸含量に差はなかった。 | ||
有機資材投入 | 外観、肉質、歩留まりが向上した[37][38]。 | |
食味が良く、貯蔵性が高かった[43][44]。 | ||
栽培年と着果位置による調査成分の変動が大きかった[44]。 | ||
果色、糖、酸度、ビタミンCに差がなかった[28]。 | ||
ホウレンソウ | 有機資材投入・無農薬栽培 | 葉色と硝酸含量に差があった[28]。ビタミンC、シュウ酸、日持ち性、無機成分含量に差がなかった。 |
官能試験と日持ち性に差があった[45]。 | ||
水分、ビタミンC、糖分、硝酸、シュウ酸含量、日持ち性に差がなかった[46]。 | ||
有機資材投入 | 食味に差がなかった[28]。 | |
還元糖含量は高く、硝酸態窒素含量は低かった[47]。 | ||
キャベツ | 有機資材投入・無農薬栽培 | 収量、ビタミンCとE、αおよびβ-カロチン、N、P、K、Na、Ca、Mg、S、Fe、B、Mn、Zn、Cuで差がなかった[32]。 |
腫瘍壊死因子(TNF-α)産生誘導とキノンレダクターゼ(肝解毒酵素)活性と関連は認められなかった[48]。 | ||
有機資材投入 | 収量と土壌の陽イオン濃度が増加[39]。 | |
還元糖含量は高く、硝酸態窒素含量は低かった[47]。 | ||
外観、肉質、歩留まりが向上した[37][38]。 | ||
レタス | 有機資材投入・無農薬栽培 | N、P、K、Ca、ビタミンC含量と官能的評価に差がなかった[40]。 |
有機資材投入 | 糖含量と貯蔵性が高かった[49]。 | |
外観、肉質、歩留まりが向上[37][38]。 | ||
還元糖含量は高く、硝酸態窒素含量は低かった[47]。 | ||
ジャガイモ | 有機資材投入・無農薬栽培 | N、P、K、Ca、ビタミンC含量と官能的評価に差がなかった[40]。 |
有機資材投入 | 内部品質(ビタミンC・タンパク質・遊離アミノ酸含量、デンプン価、乾物率)に差がなかった[50]。 | |
白菜 | 有機資材投入・無農薬栽培 | 香気成分パターンに差はなかった[30]。 |
近赤外スペクトルで識別可能[30]。 | ||
微弱振動電磁波による評価に差がなかった[31]。 | ||
紫外線の蛍光写真で差がなかった。 | ||
葉ネギ | 有機資材投入・無農薬栽培 | 葉色と硝酸含量に差があった[28]。ビタミンC、シュウ酸、日持ち性、無機成分含量に差がなかった。 |
タマネギ | 有機資材投入・無農薬栽培 | フラボノイド含量に差がなかった[31]。 |
N、P、K、Ca、ビタミンCの含量と官能評価に差がなかった[40]。 | ||
微弱振動電磁波による評価に差がなかった[31] | ||
サツマイモ | 有機資材投入・無農薬栽培 | 香気成分パターンに差はなかった[30]。 |
クロロゲン含量に差はなかった[31]。 | ||
微弱振動電磁波による評価に差がなかった[31]。 | ||
近赤外スペクトルで識別可能[30]。 | ||
メイズ | 有機資材投入・無農薬栽培 | 収量が10%減少したが、タンパク質含量が低下し、アミノ酸組成は変化しなかった[51]。 |
タイム | 有機資材投入・無農薬栽培 | 活性成分含量は作物ごとのばらつきが大きかった[52]。乾燥重量は慣行農法のほうが高かった。 |
カモミール | 有機資材投入・無農薬栽培 | 活性成分含量は作物ごとのばらつきが大きかった[52]。乾燥重量は慣行農法のほうが高かった。 |
エンドウ | 有機資材投入・無農薬栽培 | N、P、K、Ca、ビタミンCの含量と官能評価に差がなかった[40]。 |
ペッパー | 有機資材投入・無農薬栽培 | N、P、K、Ca、ビタミンCの含量と官能評価に差がなかった[40]。 |
イチゴ | 有機資材投入・無農薬栽培 | 日持ち性と香味で差があった[36]。 |
ブロッコリー | 有機資材投入・無農薬栽培 | 微弱振動電磁波による評価に差がなかった[31]。 |
ナス | 有機資材投入 | 外観、肉質、歩留まりが向上[37][38]。 |
チンゲンサイ | 有機資材投入 | 還元糖含量は高く、硝酸態窒素含量は低かった[47]。 |
温州みかん | 有機資材投入 | 収量と糖度が高かった[15][53][54]。ただし、病害虫により品質が低下した。酸度、果実重、果実比重、果皮色に差はなかった。土壌物性の改善効果は認められなかった。 |
茶 | 有機資材投入 | 官能評価、収量、全窒素含量に差がなかった[55][56][57]。 |
小麦 | 有機資材投入 | タンパク質含量が低かった[58]。 |
収量と土壌物性が向上した[16][17]。 | ||
大豆 | 有機資材投入 | 収量と土壌物性が向上した[16][17]。 |
ネットメロン | 有機資材投入 | 遊離アミノ酸含量が低かった[28]。 |
キュウリ | 有機資材(油粕)投入 | 外観、肉質、歩留まりが向上[37][38]。 |
有機資材(バーク堆肥)投入 | 形状不良[37][38]。 |
有機園芸は、土壌の構築と保全、害虫管理、在来種の保存における有機農業の基本原則に従うことによって、果物、野菜、花き、観葉植物を栽培する科学とアート。
マルチング、被覆作物、堆肥、バーミコンポストおよびミネラルサプリメントは、このタイプのなりわいを従来の対応物と区別する土壌構築の源である。 良好かつ健全な土壌状態に関して注意を払うことによって[59]、植物栽培において悩ませる昆虫、菌類、またはその他の問題を最小限に抑えることが期待されうるが、フェロモントラップ、殺虫剤石鹸スプレーなど有機農家が利用できる他の害虫駆除方法[60]は、有機園芸家も利用している。
園芸には、花卉栽培(花き作物の生産と販売を含む)、景観園芸(景観植物の生産、販売、維持を含む)、蔬菜園芸(野菜の生産と販売を含む)、果樹園芸(果物の生産と販売を含む)の 5つの研究分野および収穫後の生理学(園芸作物の品質を維持し、腐敗を防ぐことを含む)がある。これらはすべて、有機栽培の原則に従って追求することができ、場合によっては追求されうる。
有機園芸 (またはオーガニック・ガーデニング) は、何千年にもわたって集められた知識と技術に基づいているのである。大まかに言えば有機園芸には、多くの場合長期間にわたって行われる自然のプロセスと、持続可能で全体論的なアプローチがあるのであり、一方で化学ベースの園芸は即時の独自効果と還元主義的な戦略に焦点を当てている。
有機法には、特定の技術を規定した正式なシステムが数多くあり、これらは一般的な有機栽培の基準よりも具体的で、その範囲内に収まる傾向がある。先史時代から続く完全な有機食品生産システムであるフォレストガーデニングは、世界最古で最も回復力のある農業生態系だと考えられている[61] 。
バイオダイナミック農法 (Biodynamic agriculture) は、ルドルフ・シュタイナーの秘教的な教えに基づくアプローチである。日本の農家で作家の福岡正信は、小規模な穀物生産のための不耕起農業システムを考案し、自然農法と名づけた。フランス式集約園芸 (French intensive gardening) 、バイオインテンシブ (biointensive) 方式、SPIN農法(Small Plot 'INtensive) はいずれも小規模な園芸技術である。これらの技術は1930年代にアラン・チャドウィックによってアメリカに持ち込まれた[62]。庭は単に食物を提供する手段である以上に、コミュニティで何が可能かのモデルとなる。誰もが何らかの庭(コンテナ、栽培ボックス、レイズドベッド)を持つことができ、健康で栄養のある有機食品、農民市場、園芸経験の継承の場、収穫物の分配を生み出し、その地域経済を促進させるような、持続可能な生き方をすることができるのである。バイオインテンシブ・ガーデニングとスクエア・フット・ガーデニングの原則に基づいたシンプルな4フィート×8フィート(32平方フィート)のレイズドベッドガーデンは、使用する栄養素と水が少なく、家族やコミュニティが健康で栄養豊富な有機野菜を豊富に供給し、より持続可能な生活を推進することができる。
オーガニック式のガーデニングは、生態系に働きかけ、地球の自然なバランスをできるだけ崩さないように設計されている。そのため、有機農家は減反耕作法に関心を寄せているのである。従来の農業では、機械的な耕うん[63]という、耕したり蒔いたりして環境に害を与えるような方法を用いているが、有機農業における耕すことの影響は、はるかに少ない。耕すと土壌が長期間覆われていない状態になるため浸食が進み、有機物の含有量が少ないと土壌の構造的安定性が低下する。有機農法ではマルチング、被覆作物の植え付け、間作などの技術を使って、1年の大半を通じて土壌の被覆を維持。堆肥、糞尿マルチ、その他の有機肥料の使用により、有機農場の土壌の有機物含有量は高くなり、土壌の後退と劣化や侵食を抑えることができるのである[64]。
また、コンポストやバーミコンポスト(ミミズを使った堆肥化)などの方法も、既存の庭を補うために使用することができるが、これらの方法は、有機物を最高の有機肥料と土壌改良剤にリサイクルする方法である。また、バーミコンポストの副産物は、有機庭園のための栄養素の優れた源である[65]。
これらの技術はそれぞれ、土壌の保護と改善、施肥、受粉、水利、適用季節の延長などの他の利点も提供される。これらの利点は、場所の健全性に対する全体的な効果において、補完的かつ累積的なものである。有機的害虫駆除と生物的害虫駆除は総合的害虫管理(IPM)の一環として利用することができる。しかし、IPMには、有機または生物学的手法の一部ではない化学農薬の使用もなされることがある[66]。
有機食品生産に関連する論争の一つは、1エーカー当たりの食品生産量の問題であり、有機農業を上手に実践しても、作物によっては、有機農業の生産性は従来の農業より5~25%低いかもしれないという[67][68]。
慣行農業の生産性の優位性の多くは窒素肥料の使用と関連している[67]。しかし、窒素肥料の使用、特に過剰使用は、窒素の流出が自然の水源を害する、地球温暖化が進むなどの悪影響を与える[68]。
有機法には、より健全な土壌など他の利点もあり、気候変動のような課題に直面しても、有機農法をより弾力的に、つまりより確実に食料を生産できるようにするかもしれない。有機食品は世界を養えないのか?[67] を参照。
同様に、世界の飢餓は主に農業の収量の問題ではなく、分配と廃棄の問題である[67]。
有機園芸の技術が特定の法律や管理計画によっても要求されるように、芝生のフィールドを有機的に維持するために使用される。20世紀後半から、一部の大規模な不動産や自治体では、公共および民間の公園や敷地の維持管理に有機芝生管理や有機園芸を要求している[69]。一部の有機芝生のある場所には有機芝生管理、有機園芸が必要なのである。
害虫駆除のアプローチの違いは同様に注目すべき点がある[70]。化学園芸では、特定の害虫を素早く退治するために、特定の殺虫剤を適用することがある。化学的防除は、短期的には害虫の個体数を劇的に減らすことができるが、自然の防除昆虫や動物をやむを得ず殺してしまう(あるいは飢えさせてしまう)ため、長期的には害虫の個体数を増加させ、問題を増大させ続けることになる。また、殺虫剤や除草剤を繰り返し使用することで、抵抗力のある昆虫や植物などの自然淘汰が急速に進み、使用量を増やしたり、より強力な新しい防除剤を必要となる。
これに対し、有機栽培は、長い目で見て、ある程度の害虫の発生を許容する傾向がある。有機害虫駆除には、害虫のライフサイクルと相互作用を十分に理解する必要があり、以下のような多くの技術の積み重ねが必要である[71]。
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