岸野 末利加(きしの まりか、1971年 - )は日本出身の現代音楽の日本人の作曲家[1]。ドイツのケルン在住[2]。
1971年7月16日[3]京都府京都市生まれ。父親は寺の住職[4]。同志社大学法学部法律学科[5][6][7]に進学、1994年に卒業。卒業後は法律事務所に勤めた。この頃から作曲を始め、作曲活動を本格化させるべく渡仏。
エコールノルマル音楽院にて平義久の下で学んだ後、リヨン国立高等音楽院[8]にてロベール・パスカル、IRCAM(フランス国立電子音響音楽研究所)にてフィリップ・ルルー[9]に師事。同音楽院在学中に日本音楽コンクール作曲部門第3位[10]を受賞し、卒業後はフランスのIRCAMで電子音響音楽の研究にあたった。2006年第5回GRAME[11](電子音楽適応音楽研究グループ/フランス国立電子音楽創造センター)と l´EOC(アンサンブル・オーケストラル・コンテンポラン)による作曲コンクール第1位。2006年からドイツのケルンを拠点に作曲活動を行い、作品は全てゼルボーニ音楽出版社[12][13]から出版されている。
シュトゥットガルト・アカデミー・シュロッス・ソリチュード[14]
、ニーダーザクセン州・シュライアン芸術村、ノルトライン=ヴェストファーレン州、カリフォルニア州・ジェラッシーアーティストレジデンシー、南西ドイツ放送局のエクスペリメンタルスタジオ、 カールスルーエ・アート・アンド・メディア・センター(ZKM[15])、 フランス音楽研究グループ(L´Ina GRM)、アンリー・プッスール電子音楽スタジオ などの奨学招待作曲家。NHK交響楽団主催第69回尾高賞受賞[16]。2024-25年度ドイツ政府によるローマ賞(ドイツ・アカデミー・ローマ・ヴィラ・マッシモ[17])受賞。
作品はヨーロッパを中心に、 ラジオ・フランス・プレザンス、ストラスブール・ムジカ、リヨン・ビエナーレ・ミュージック・アン・センヌ、ライ・ヌオヴァムジカ、ウルティマ・オスロ現代音楽祭[18]、フランス音楽研究グループ(L´Ina GRM)、ベルリン・ウルトラシャル、シュトウットガルト・サマーフェスティバル、エッセン・ナウ音楽祭、ケルン・アートブリュッケン音楽祭、西部ドイツ放送、ドイツランド放送局、フランクフルト放送局、南西ドイツ放送などで委嘱初演、再演、放送されている。
作風
旋律を持つ従来の手法とは一線を画した作風で、偶発的リズムを意図的に創作したり、残響を利用した緻密な手法により緊張感の高い作品を多く書いている。作品の多くは、楽器の配置を細かく考えた上で、旋律や和声による形式的な彩色を意識的に避けている。美的な音色を極限まで押さえた独特の響きが聴衆に強い印象を与え、空間音楽としての立体効果を高めている[19]。
演奏
演奏団体別では、リヨン国立管弦楽団、フランス放送フィルハーモニー管弦楽団、 ベルリン・ドイツ交響楽団、RAI国立交響楽団、hr交響楽団、ボーフム交響楽団、東京混声合唱団[20]、コア・ヴェルク・ルール、オスロ・シンフォニエッタ、アンサンブル・オーケストラ・コンテンポラン、ムジーク・ファブリック、アンサンブル・アスコ・シェーンベルクなどによって演奏されている。
近年の作品では、2013年にラジオ・フランス委嘱の『箏コンチェルト』がジャン・ミハエル・ラヴォワ指揮で後藤真起子とフランス放送フィルハーモニー管弦楽団によって、2015年はケルンフィルハーモニーで、アートブリュッケン音楽祭委嘱のトローンボーンコンチェルト『Heliodor[21]』がバス・ヴィーガースの指揮でアスコ・シェーンベルクアンサンブルによって、またエッセンフィルハーモニーで同フィルハーモニー委嘱の合唱とオーケストラのための『Chant』がフロリアン・ヘルガ指揮でコア・ヴェルクルールとボーフム交響楽団によって初演されている。
管弦楽曲
- Du Firmament 蒼穹から(2001-02)
- Fluxus ac Refluxus フルクサス・アク・リフルクスサス(2008)
- Zur Tiefe (2013)
- Chant 詠歌(2015)
- Shades of Ochre シェーズ・オブ・オーカー(2017)
協奏曲
- Himmelwärts II / Vers Le Ciel II (2007)
- Rayons Crépusculaires 薄明光線(2007 / 2008)
- 大太鼓と三群に分かれた14人の奏者、8チャンネルのライヴエレクトロニックのため
- Concerto pour Koto 箏コンチェルト(2013)
- Heliodor ヘリオドール 存在せぬ国のための国歌 (2015)
- チェロとオーケストラのための「What theThunder Said/雷神の言葉」 (2021)
器楽曲2021
- アンサンブル
- Danse du zéphy ダンス・ドウ・ゼフィー(2003)
- Sensitive Chaos 繊細なるカオス(2010)
- E・ギター、トランペット、トロンボーン、ピアノ、2人の打楽器奏者、チェロのため
- Stratus - Altocumulus - Cirrus (2014)
- HELIODOR ヘリオドール 存在せぬ国のための国歌 (2015)
- Ochres II オーカース II(2017)
- フルート、オーボエ、クラリネットとアンサンブルのため
- 室内楽(6人以下)
- Epure 純化 (1998 – 1999)
- Astral アストラ(2001)
- フルート、ギター、打楽器、ピアノ、ヴァイオリン、チェロのため
- Scintillation シンチレーション (2002)
- 正岡子規の四つの俳句によせて
- ピアノ、チェンバロのため
- Epanouissement II 開花 II(2004)
- ハープ、フルートのため
- Himmelsleiter ヒメルスライター(2006)
- アルトフルート、バスクラリネット、トランペット、ピアノ、ヴァイオリン、チェロのため
- Himmelsleiter II ヒメルスライターII(2006 – rev.13)
- アルトフルート、バスクラリネット、トランペット、ハープ、ヴァイオリン、チェロのため
- Himmelwärts / vers le ciel 天空へ (2006)
- Seventeen Steps セヴンティーンステップス(2006)
- 篠原眞師の75歳の誕生日を祝して
- アルトフルート、十七絃箏、ピアノ、ヴァイオリンのため
- Erwachen 覚醒 (2007)
- Halo ハロ(2007)
- 2台のバスクラリネット(1台クラリネットに持ち替え)
- Erwachen II 覚醒 II (2008)
- Aqua Vitae II 生命の水II (2010)
- アルトフルート、バスクラリネット、打楽器、ヴァイオリン、チェロのため
- Vagues des Passions 情熱の波 (2010)
- Lamento 哀歌 (2013)
- Lamento II 哀歌 II (2013 – rev.14)
- 福島民謡をもとにしたヴァイオリンとヴィオラのための
- Ha-Dô 波動 (2017)
- 独奏
- Danse automnale de feuilles vermeilles 紅葉の舞 (1997)
- Epanouissement 開花 (2003)
- Koi Hanété... 鯉はねて...(2006)
単彩の庭シリーズ(室内楽・独奏)
- Monochromer Garten (2011)
- Monochromer Garten II (2011)
- 室内楽
- バスクラリネット、バリトンサックスフォーン、トロンボーンのため
- Monochromer Garten III (2012)
- Monochromer Garten IV (2012)
- Monochromer Garten V (2012)
- Monochromer Garten VI (2015)
- Monochromer Garten VII (2015)
- Monochromer Garten VIII (2016)
歌曲
- 合唱、ボーカルアンサンブル
- Satsuki „五月” (2000) 混声合唱、2台のトランペット、トロンボーン,打楽器のため
- Prayer /祈り(2011) 混声合唱、ア・カペラのため
- Lo mes d’abrièu s’es en anat „四月は去った“ (2005) 12人の女性の声、児童合唱と電子音
- Ichimai-kishomon „一枚起請文” (2011) 混声合唱、僧の声、篳篥、笙、打楽器、20絃箏、弦楽三重奏
- Dialogue Invisible„見えない対話" (2012) 9人の女性の声のための
- Chant „詠歌” (2015) 合唱とオーケストラのため
- 声楽
- Battement „鼓動”(2003) バリトンとピアノのため
- Hila – Hila to… (2009) カウンターテノール、ギター、トランペット、トロンボーン、二人の打楽器、ピアノ、チェロのため
- Miraiken-kara „未来圏から" (2012) 能謡とアルトフルートのため
楽器とエレクトロニクス
- Irisation Aquatique/イリザシヨン・アクアテイック (2002)
- Eclosion/開花 (2005)
- ハープと9チャンネルのライヴエレクトロニクス / IRCAMにて制作
- Lo mes d’abrièu s’es en anat/四月は去った (2005)
- 12人の女性の声、児童合唱と電子音
- ベルリン工科大学にて制作
- Abstentia/アブステンテイア (2007)
- Lebensfunke/レーベンスフンケ (2007)
- 大太鼓と電子音
- SWR エクスペリメンタルスタジオにて制作
- Rayons Crépusculaires/薄明光線 (2007-08)
- Aqua vitae /生命の水 (2008)
- 2台ピアノ、2人のウォーターパーカッション奏者、8チャンネルのライヴエレクトロニクス
- ZKMにて制作
- Lebensfunke II/レ–ベンスフンケ II (2009)
- 大太鼓と8チャンネルのライヴエレクトロニクス
- SWR エクスペリメンタルスタジオにて制作
- Qualia/クオリア (2009)
- 17絃箏、10チャンネルのライヴエレクトロニクス
- L´Ina-GRMにて制作
出典
石塚潤一. “2018演奏年鑑展望”. www.jfm.or.jp. 公益社団法人日本演奏連盟. 2024年8月5日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年8月5日閲覧。 “Malika Kishino”. www.ulysses-network.eu. Ulysses-Network. 2024年8月5日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年8月6日閲覧。 “第61~70回”. oncon.mainichi-classic.net. 毎日新聞. 2024年3月17日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年8月5日閲覧。 “2019年版カタログ”. www.esz.it. Edizioni Suvini Zerboni. 2019年10月28日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年6月8日閲覧。 “Malika Kishino”. www.akademie-solitude.de. Akademie Schloss Solitude. 2024年4月14日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年8月6日閲覧。 “東京混声合唱団事務局”. toukon1956.com. 東京混声合唱団. 2017年3月16日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年8月6日閲覧。