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東京事変の3枚目のアルバム ウィキペディアから
『娯楽(バラエティ)』(英題:Variety)は、2007年9月26日に EMIミュージック・ジャパンより発売された日本のバンド・東京事変による3作目のスタジオ・アルバム。
前作『大人(アダルト)』からおよそ1年8ヶ月ぶりとなるスタジオ・アルバム。先行シングルとして発表されていた「OSCA」と「キラーチューン」の他、映画『魍魎の匣』のエンディング・テーマ「金魚の箱」を含む全13曲を収録。
前作までほとんどの楽曲の作詞・作曲を手掛けてきた椎名林檎が、今作では作曲をすべて他のメンバー(伊澤一葉、浮雲、亀田誠治)に任せ、作詞と歌唱だけに専念している[注 1]。椎名同様クラシックの教育を受けた端正なソングライティングが特徴の伊澤と、カントリーからソウル/ヒップホップ/ジャズまでという幅広いジャンルの音楽を自由に行き来する浮雲の2人がほとんどの楽曲の作曲および一部作詞を担当し、亀田も1曲だけ作曲している[1][2]。椎名が新加入の2人にソングライティングを任せた理由は、人の曲を歌うときこそ恥ずかしい気持ちもなく思いきり出せる声もあるのかもしれないと思い、その声に焦点を絞ったものもやってみたいと考えるようになったからであり、また椎名がバンド加入をオファーするほど評価する彼らの作家として優れた部分を存分に出すためでもあった[2]。
前作からやりたいと思っていた「個人ではなく集団としての表現を歌詞や声の質で表す」ことができるようになったのに今さら第1期、第2期(東京事変)のように言われるのもどうかと、バンド名を変更する案が浮上していた。椎名もいったんは決心したが、結果的に変更することはなかった[3]。
アルバムのタイトルは、前作に引き続きテレビ番組のジャンルから採用され、1作目の『教育』はNHK教育テレビジョン、2作目の『大人(アダルト)』はペイ・テレビのアダルト・チャンネルだったのに対して今回はバラエティ番組で、民放もNHKも含まれるもっと広いくくりとなった[4]。メンバー同士のセッションという形の娯楽という意味もある[3]。『娯楽』と書いてバラエティと読ませるのは、アルファベットで書くと日本的な感覚での「バラエティ」とはニュアンスが変わってきてしまうため[4]。
前作ではジャズやボサ・ノヴァ、ラウンジなど、曲ごとのテイストが比較的はっきりしていてクリアなサウンドが追求されていたが、今作では曲ごとに多様な要素が複雑に入り混じり、リズムもめまぐるしく緩急自在に変化して決して簡単には終わらない。メンバーそれぞれのポップな感性が高度な融合を遂げ、至るところに遊びもちりばめられている。[5]
初回限定盤は、ギザギザ仕様 feat.スリーブケース。
本作は、椎名林檎が4人のメンバーをプロデュースしてその能力を証明するという賭けに出た作品[6]。また椎名が作曲を控えたのは、自分が自作自演でなくても音楽活動をやっていけるのか試すことと、浮雲と伊澤にバンドを背負った作品作りをさせることが目的だった[7]。そのため、制作に入る前に椎名から亀田に、自分は作曲せず亀田にも一歩下がってもらい、浮雲と伊澤の曲をメインにした椎名色と亀田色を薄めたアルバムを作ろうと思っているという話があった[8]。演奏については、前回のアルバムではメンバー以外のゲストプレイヤーの音も入っていたが、今回はバンドの音だけでやるという暗黙の了解があった[3]。
最初にメンバー作曲による膨大なデモ音源から曲を厳選し、椎名が作詞と歌唱に徹するスタイルでプロジェクトをスタートした[9]。椎名は曲選びの段階には立ち会ったがソロ・アルバム『平成風俗』のプロモーションをしなければならず、彼女が不在の間に他のメンバーだけでプリプロダクションとリハーサルを行った[2][3]。今回は亀田と浮雲の合流前に収録曲もアレンジも決まっていた前作と違いあらかじめ定められたフォーマットがなく、メンバーが持ち寄った楽曲の中から皆で収録曲を選んでリハーサルで一緒にバンド・アレンジし、メンバー全員の意見を総合してそれを膨らませていった[3][4]。前回は腱鞘炎で一人だけレコーディング作業が後になった伊澤も今回はほかのメンバーとともに参加し、その場で柔軟に対応して作品に意見を反映させている[注 2][3]。ドラムについても、伊澤の曲に関しては前作同様あらかじめパターンが決まっていたが、それ以外の曲では同様にセッション形式によるアレンジとなっている[3]。ドラマーの刄田は初めて予習せずにレコーディングに臨み、浮雲と伊澤の的確なディレクションによって何も考えず型にはまらないドラムが叩けたと語っている[3]。
浮雲にはライブツアー「東京事変 “DOMESTIC!” Just can't help it.」終了後、すぐに椎名から曲を書いて欲しいというオファーがあった。彼はアルバムの曲を書くにあたり、自分の持つ要素で別の面に光を当てて椎名が今まで見せたことのない表情を出してくれることを意図して曲を書いたという[2][3][8]。また椎名は彼のストック曲のチェックを定期的に行っており[注 3]、今回も何曲か採用されている[2]。伊澤は候補曲を決め打ちで持ってきた。彼のデモはキーボードだけで作っていてボーカルがまったく入っていないものが多く、代わりにシンセサイザーでいじった音や、ギターシンセサイザーで弾いたギターパートなどが入れられている[3][10]。
作詞については、伊澤と浮雲の曲は彼らのバンドの持ち曲も含まれていて男性ならではの表現も多く、椎名は「それまで曲と歌詞を自然な形で同時に書いてきた自分にとっては難しかった」と語っている[3]。
各曲の英題および仏題はブックレットなどに記載されているものではなく、あくまでSR猫柳本線の英語版ページによるもの[11]。東京事変のオリジナルアルバムとしては初めて英語タイトルの曲が収録されたが、依然としてシンメトリー配置の方式は守られている[注 4]。
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