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日本の漫画 ウィキペディアから
『女神の鬼』(メガミノオニ)は、田中宏による日本の漫画作品。『週刊ヤングマガジン』(講談社)2004年52号に第0話を掲載後、2005年21・22合併号から2014年34号まで連載された[3]。
『BADBOYS』と続編『BADBOYS グレアー』のスピンオフ作品で、両作より以前の時代となる昭和50年代の広島市を舞台に、「王様」になることを夢見る少年ギッチョと「鬼」と呼ばれる更生不能の不良少年たちの姿を描いている[3]。シリーズ本編のストーリーと直接関わりはないが舞台設定は受け継いでおり、本編に登場したキャラクターも度々現れる。また『莫逆家族』ともわずかながらリンクしている。
本作の連載中、旧広島市民球場が現役で稼働していた時期には、球場のライトスタンドに本作の看板が掲げられていた。
一男三女の母子家庭・佐川家の末弟である義(ギッチョ)は、「王様を目指せ」という祖父の教えを守り、小学校の同級生と共に毎日喧嘩に明け暮れていた。10月、ギッチョ達は地元黒ヶ丘で開かれる「鬼祭り」にて、鬼に扮していた不良中学生、原真清と花山靖に出会う。自分よりも年上の暴走族数名を圧倒する二人の姿に憧れを抱いたギッチョはより激しく王様を志すようになり、家庭の事情で転校していった先でも仲間たちと喧嘩を繰り広げ、同じく「王様」を自称する白音小学校の金田勝一の存在を知る。
一方真清と花山は、その図抜けた強さと誰にも制御できない凶暴性から味方がほとんどなく、周囲のあらゆる不良少年の標的となっていた。11月3日夜、二人を制裁できないことに業を煮やした初代陴威窠斗のメンバー・雛石顕治は、同じく二人との因縁が深い北丸蛍の女の耳を切り落とし、その罪を真清と花山になすりつけた。それを知らない北丸は仲間を集めて二人の命を狙い、真清も花山も圧倒的な戦闘力でこれを撃退するが、騒動が深刻になりすぎたことから警察が介入。11月4日、広島中が広島東洋カープ初の日本一に沸き立つ中、抗争に関わっていた少年たちは全員検挙され広島から姿を消した。
ギッチョ達は中学2年生となり、陴威窠斗の一員になった金田を倒すべく、小学校以来の付き合いである朝子が止めるのも聞かず夜な夜な街へ繰り出し、喧嘩に身を投じていた。7月のある夜、極楽蝶四代目の三浦と中尾により強引にチームに引き込まれたギッチョは、自分が極楽蝶を乗っ取って五代目になると宣言し、三浦たちのコレクションにあった赤いCBXを強奪。そのCBXが陴威窠斗五代目・内海鄭司の愛車を盗難したものだったことから内海との縁が生まれ、廣島連合と陴威窠斗の衝突、その裏に渦巻く裏切りの抗争、「濁りの巣」での決戦へと踏み込んでゆく。
内海がこの世を去り五島が廣島連合を引退した後、広島の暴走族の勢力図は大きく変化した。極楽蝶五代目総長、「濁りの巣」の中心人物、内海の後継者として一目置かれる存在となったギッチョだったが、大物が揃って姿を消したためまともに戦う相手がなく、悶々とした日々を過ごしていた。そんな中、不良少年ばかりが集まり「王様」を目指す「鎖国島」の噂を聞きつけ、ギッチョ達は朝子の制止を振り切り島入りを熱望。10月、黒ヶ丘の鬼祭りの日、松尾老人の審査の末にギッチョとアキラの2人が「鬼」と見なされ島入りを許可され、その夜のうちに家族や仲間と別れ共に広島本土を後にした。
一般社会に生きる場所がない更生不能な不良少年を集めた安芸灘の孤島「鎖国島」。1983年の鎖国島は、原真清率いる「東側」、雛石顕治率いる「西側」、前年の「鬼祭り」の覇者である「王様」花山靖の3つの勢力がそれぞれ国を形成し血みどろの抗争を繰り広げていた。ギッチョは「王様」を目指し誰の下にもつかずアキラと共に鬼祭りに参加。おびただしい重傷者と犠牲者を出し、本土からギッチョ達を応援にきた仲間達も入り混じった死闘の結果、向こう1年間の「王様」は雛石兄弟に決定した。
鬼祭り後、減りすぎた人員を補充するため松尾老人は広島のみならず県外からも「鬼」を募集。新人たちは少なからぬ混乱をもたらしたが、内海を殺した自責の念から平和な社会を目指すケンエーの尽力などもあり、結果として深刻な抗争は起こらず混乱は終息した。しかし1984年正月、真清や雛石兄弟ら島の有力者が保護者との面会で島を留守にしている間に、新人として入国した内田光と榊原忠が圧倒的な強さで島を制圧、帰ってきた真清らも配下に置かれてしまう。やがて内田と榊原の兄貴分で、松尾老人の孫、廣島連合二代目総長の松尾安三が鎖国島へと入り、内田・榊原に代わって頂点に君臨。これを受けて東側と西側は一致団結、1984年の鬼祭りに乗じて鎖国島からの脱出を計画する。
監督のヤクザや寄生族も入り混じる凄惨な殺し合いと、仲間を失い銃を取った暴走と殺戮の果てに、ギッチョらは自分達が鎖国島に閉じこもっているべき「鬼」であることを悟る。最終的に本土に思い残したことがある13人だけが島を脱出して広島へ渡り、約束の翌日朝、それぞれがそれぞれのケジメをつけて、誰ひとり欠けることなく本土の港へと帰ってきた。ヤクザは後顧の憂いを断つため脱出者全員の殺害を目論んだが、安三が鎖国島の殺し合いに怖じ気づき本土へ戻りたがるようになったこと、帰ってきたギッチョらが未練を全て断ち切った顔をしていたことから、松尾老人は自分の責任で脱出者を庇い、制裁を加えることなく鎖国島へと帰していった。
脱出騒動から月日は流れ、本土では八代目極楽蝶・八代目陴威窠斗・四代目廣島Night'sがTOP3と呼ばれるようになった1990年。21歳になったギッチョ軍団はみな更生しそれぞれの人生を歩んでいたが、6年前に別れたきりのギッチョのことが忘れられない朝子は、結婚せず恋人も作らずに過ごしていた。
松尾老人の船に揺られて来た新人が目の当たりにした鎖国島は、命懸けの抗争が繰り返される戦場から、生前ケンエーが作りたいと望んだ平和な国に生まれ変わっていた。成長した鬼たちは時々喧嘩をしながらも手を取り合って自給自足の生活を送り、「王様」を決める方法も闘技場での一対一の殴り合いに変わり、決闘の様子は島民に娯楽として提供されていた。皆と同じく島の平和に馴染んだギッチョは、不倶戴天の敵だった金田らと仲間同士になり平穏な日々を過ごしていたが、不意に、今際の際の祖父の後悔の言葉が蘇る。「年老いるまでさんざん暴れ回り、やがて妻が亡くなった時その笑顔を全く思い出せなかった。自分がするべきは戦うことじゃなく愛する女を笑顔にすることだった」。ギッチョの記憶の中の朝子に笑顔はなく一様に悲しみをたたえた表情で、ギッチョの胸中にも深い後悔が渦を巻いていた。
更に長い時が経ち、広島の人も街も大きく変わった2014年。往時より更に年老いて体力が限界を迎えた松尾老人は、不良少年の更生事業の引き継ぎを済ませ引退を決意。本土でギッチョの姉たちが経営する雑貨店「女神堂」では、鎖国島産の農作物やマスコットが販売され人気を博していた。45歳の朝子はかつてのギッチョ軍団らと共に港に集まり、船で荷物を運んでくるギッチョと再会。その顔にかつてのような悲しみの色はなく、ギッチョに会えることを喜ぶ満面の笑みが浮かんでいた。
全員1969年生まれで、1979年に小学4年生、1983年に中学2年生。
1979年の黒ヶ丘の鬼祭りにおいて、サクラ、ハヤブサ、ハンニャ、マンバに扮した4人。花山は1964年生まれ、他の3人は1965年生まれ。
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