大沢 在昌(おおさわ ありまさ、本名同じ、1956年〈昭和31〉3月8日 - )は、日本の小説家。愛知県名古屋市出身。
概要 大沢 在昌(おおさわ ありまさ), 誕生 ...
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愛知県名古屋市出身。実父は中日新聞専務取締役・東京本社代表の大沢行夫(1913年(大正2年)11月3日 - 1979年、京都府出身、明治大学専門部卒)[2][3][4]。
家には父親の本が大量にあり、小学校に入る前後から児童文学書を多く買ってくれた。その中で『名探偵カッレくん』シリーズや『シャーロック・ホームズ』シリーズなどの推理小説を愛読し、影響を受ける[5]。
小学生5年生から中学校3年までほぼ毎週、親の買い物に同行すると自分は書店に行き、帰りに創元推理文庫やハヤカワポケットミステリから選び買ってもらえるようになる[6][5]。小学校5年頃から、アガサ・クリスティ、エラリー・クイーンなど本格派ミステリを読む[6]。
その後、ウィリアム・P・マッギヴァーン『最悪の時』でハードボイルド小説に開眼する。中学2年でレイモンド・チャンドラーを読み、ハードボイルド小説家になろうと決心し[6]、アメリカン・ハードボイルドを乱読するようになる。そして、中学2年生の頃に初めてハードボイルド短編120枚の習作『うずき』を執筆する。本作品は未発表だが、暴力団に殺された同僚記者の娘を体を張り守る内容に今の作風の原型がある[6]。
中学3年生の時には主な翻訳ミステリを読み切り、生島治郎、河野典生、五木寛之などの日本の作品にも親しむようになる。とくに生島の作品群に心酔し、長文の手紙を送ったほどである。その後50枚から80枚の短編[7]を20篇ほど書くが、いずれも生島作品の影響が大きい[5]。後の「佐久間公シリーズ」の元になる同名の高校生が活躍する5篇が含まれている[6]。
萩原朔太郎を目指し室生犀星も好きで、高校入学時に、詩の高校生同人誌「街路」の同人となるが、同年齢の女性の才能にショックを受け、勝てないとやめ、小説を書くことにする[5]。高校2年の時に学校の仲間を離れ、市立図書館に毎日通い、棚の端から分野を問わず1回3冊を借りて読み翌日返却する乱読を連日繰り返し大量の本を読む[5]。
東海高校卒業後、慶應義塾大学法学部に入学するも中退。のちに文化学院創作コースも中退している。
21歳の時、「オール讀物新人賞」(第51回・1977年下期)で最終候補6篇に選ばれるも落選。しかし作家としての手応えを覚える[6]。
1979年『感傷の街角』で第1回小説推理新人賞を受賞してデビュー[8]。しかし当初は全く売れず、11年間28冊も初版だけで〝永久初版作家〟と呼ばれたほどで、本人もそれを自称して、その状態は1990年まで続くことになる[5]。1983年、日本冒険作家クラブの創設の発起人の一人となる。[要出典]
1988年発表の『女王陛下のアルバイト探偵』が「このミステリーがすごい!」ランキング15位となる。1989年に『氷の森』を発表。各評論家から「大沢のブレイクは近いのでは」と囁かれた。1990年に『悪人海岸探偵局』が初の増刷、〝永久初版作家〟を卒業する。同年『新宿鮫』を発表、刊行直後から大反響を呼び、「このミステリーがすごい!」ランキング第1位に輝き、ベストセラーとなる。1991年、同作で第44回日本推理作家協会賞、第12回吉川英治文学新人賞をダブル受賞[8]。その後は中心線の「新宿鮫シリーズ」を筆頭に数々のハードボイルド・冒険小説を発表。高い評価を得るようになり、流行作家となる。
2006年から2009年5月まで日本推理作家協会理事長を務めた。
執筆
- 携帯電話を所持しておらず、パソコンはオフィスで設定してもらい大極宮や自著の感想など見る程度で、全て手書きである[9]。1時間に400字詰め原稿用紙で6枚から7枚のペースで執筆する。あまり事前の細かいストーリー設定や取材をせず、登場人物のキャラクターや性格を決めてから[6]、動かしながら書いていく。執筆方法は「映像型」で、頭の中にスクリーンがあり、しばらく書いていると映画のようにスクリーンに上映され、やがて話の続きもそこに出てくるため、それを文字で文章化するのが執筆作業であると語っている。そして必ず自然にクライマックスへ向かい結末へ行きつくという。仏師は仏像が木の中に埋まっていてそれを掘り出すと言うが、原稿用紙の中に物語が埋まっているようだ、とも語っている。[10]本格推理ものと違い、ハードボイルドでは、主人公だけではなく1場面の傍役でもそこになぜその人物がいるのか、作者の勝手ではなく理由がいる。服装もかなり考える[6]。
上記の作品リスト(シリーズ物)に記載されている作品は重複して記載しない。
1980年代
- ダブル・トラップ(1981年3月、太陽企画出版サンノベルス / 1984年5月、徳間文庫 / 1991年11月、集英社文庫 / 2011年5月、徳間文庫【新装版】)
- ジャングルの儀式(1982年1月、双葉ノベルス / 1986年12月、角川文庫 / 2017年5月、角川文庫【新装版】)
- 死角形の遺産(1982年7月、トクマ・ノベルズ / 1986年12月、徳間文庫 / 1992年6月、集英社文庫 / 2007年7月、徳間文庫【新装版】)
- 標的はひとり(1983年1月、カドカワノベルズ / 1987年11月、角川文庫 / 1995年3月、カドカワノベルズ【新装版】 / 2016年9月、角川文庫【新装版】)
- 野獣駆けろ(1983年9月、講談社ノベルス / 1986年8月、講談社文庫 / 1996年12月、廣済堂文庫 / 1999年3月、講談社ノベルス【改定新版】 / 2007年11月、集英社文庫)
- 夏からの長い旅(1985年4月、角川書店 / 1991年12月、角川文庫 / 1997年2月、ケイブンシャ文庫 / 2017年7月、角川文庫【新装版】)
- 深夜曲馬団[30](1985年7月、光風社出版 / 1990年4月、徳間文庫 / 1993年6月、角川文庫 / 1998年2月、ケイブンシャ文庫 / 改版 新装版 2019年12月、角川文庫)
- 鏡の顔 / 空中ブランコ / インターバル / アイアン・シティ / フェアウェル・パーティ
- 東京騎士団(1985年8月、徳間書店 / 1989年5月、徳間文庫 / 1997年5月、光文社文庫 / 2013年6月、徳間文庫【新装版】)
- 悪人海岸探偵局[31](1983~1985年、週刊プレイボーイ / 1986年11月、集英社 / 1990年7月、集英社文庫 / 2016年7月、角川文庫【新装版】)
- 和製探偵地位向上委員 / 身・代・り / 闘志の血 / 幽霊 / 黒猫 / 人形の涙
- シャドウゲーム(1987年8月、トクマノベルズ / 1991年10月、徳間文庫 / 1995年9月、ケイブンシャ文庫 / 1998年7月、角川文庫 / 2018年4月、徳間文庫【新装版】)
- 眠りの家[30](1989年2月、勁文社 / 1990年12月、ケイブンシャ文庫 / 1993年10月、角川文庫)
- 一瞬の街 / ゆきどまりの女 / 人喰い / 六本木怪談 / 夜を突っ走れ / 眠りの家
- 暗黒旅人[32](1989年2月、中央公論新社 / 1991年10月、中公文庫 / 1996年1月、C★NOVELS / 1997年4月、角川文庫 / 2011年6月、講談社文庫)
- 柩の館 / 赤い目 / 階段の町 / 地の花 / エピローグ
- 氷の森(1989年4月、講談社 / 1991年11月、講談社ノベルス / 1992年11月、講談社文庫 / 2006年8月、講談社文庫【新装版】)
- 六本木を一ダース[30](1989年9月、河出書房新社 / 1995年7月、角川文庫)
- 見ていた女 / 日曜の晩に / マッスル・パーティ / 六本木・うどん / 空気のように / セヴン・ストーリーズ
1990年代
- 銀座探偵局[33](1990年1月、ケイブンシャノベルス / 1993年4月、ケイブンシャ文庫 / 1997年6月、光文社文庫)
- 囮にされた探偵たち / 張子にされた探偵たち / 奇跡にされた探偵たち / 標的にされた探偵たち / 標本にされた探偵たち
- 相続人TOMOKO(1990年5月、天山出版 / 1992年6月、天山ノベルス / 1993年12月、講談社文庫)
- 死ぬより簡単[30](1990年7月、講談社 /1992年8月、講談社ノベルス / 1993年7月、講談社文庫)
- ビデオよ、眠れ / スウィッチ・ブレード / 死ぬより簡単 / 12月のジョーカー(ジョーカー・シリーズ)
- 一年分、冷えている[30](1991年9月、PHP研究所 / 1994年7月、角川文庫)
- 一年分、冷えている / ビデオショップで / ちゃま / 二杯目のジンフィズ / 湾岸道路で釣ったモノ / 共犯者 / 低気圧去って / 記念日 / 懐中時計 / 自画像 / 一年の反対側 / 家族 / スープ / 手袋 / ふたりの晩に / マッチプレイ / 香水 / 年期 / 老獣 / ひとり / 気つけ薬 / 終わりは始まり
- 烙印の森(1992年4月、実業之日本社 / 1995年1月、ジョイ・ノベルス / 1996年8月、角川文庫 / 2020年1月、集英社文庫)
- ウォームハート・コールドボディ(1992年12月、スコラノベルス / 1994年07月、講談社文庫 / 2010年4月、角川文庫)
- 悪夢狩り(1994年9月、ジョイ・ノベルス / 1997年11月、角川文庫 / 2004年3月、徳間文庫 / 2019年6月、角川文庫【新装版】)
- 流れ星の冬(1994年9月、双葉社 / 1996年11月、フタバノベルス / 1998年9月、双葉文庫 / 2015年12月、双葉文庫【新装版】)
- 眠たい奴ら(1996年11月、毎日新聞社 / 1998年11月、ジョイ・ノベルス / 2000年10月、角川文庫 / 2016年11月、角川文庫【新装版】)
- 冬の保安官[30](1997年6月、角川書店 / 1999年11月、角川文庫 / 2017年1月、角川文庫【新装版】)
- 冬の保安官 / ジョーカーの選択(ジョーカー・シリーズ) / 湯の町オプ / カモ / ローズ1 小人が哄った夜(ローズシリーズ) / ローズ2 黄金の龍(ローズシリーズ) / ローズ3 リガラルウの夢(ローズシリーズ / ナイト・オン・ファイア / 再会の街角
- らんぼう[34](1998年9月、新潮社 / 2000年9月、カッパ・ノベルス / 2002年2月、新潮文庫 / 2004年9月、角川文庫 / 2017年3月、角川文庫【新装版】)
- ちきこん / ぴーひゃらら / がんがらがん / ほろほろり / ころころり / おっとっと / しとしとり / てんてんてん / あちこちら / ばらばらり
- 撃つ薔薇 AD2023涼子(1999年6月、光文社 / 2000年1月、カッパ・ノベルス / 2001年10月、光文社文庫 / 2016年1月、光文社文庫【新装版】)[35]
- 夢の島(1999年9月、双葉社 / 2001年8月、フタバノベルス / 2002年11月、双葉文庫 / 2021年11月、集英社文庫)
- 痛快世界の冒険文学 24 バスカビル家の犬(原作:アーサー・コナン・ドイル、翻案:大沢在昌)(1999年9月、講談社)
- 【改題】大沢在昌のバスカビル家の犬(2002年4月、講談社)
- 【改題】バスカビル家の犬(2004年8月、講談社文庫)
2000年代
- 闇先案内人(2001年9月、文藝春秋 / 2004年1月、カッパ・ノベルス / 上、下 2005年5月、文春文庫)
- 未来形J(2001年12月、角川文庫)
- ジョーカーの選択 / 雨とジョーカー / ジョーカーの後悔 / ジョーカーと革命 / ジョーカーとレスラー / ジョーカーの伝説
- 秋に墓標を(2003年4月、角川書店 / 2004年11月、カドカワ・エンタテインメント / 上、下 2006年6月、角川文庫)
- パンドラ・アイランド(2004年6月、徳間書店 / 上、下 2006年5月、トクマ・ノベルズ / 上、下 2007年10月、徳間文庫 / 上、下 2012年4月、集英社文庫)
- ニッポン泥棒(2005年1月、文藝春秋 / 2007年2月、カッパ・ノベルス / 上、下 2008年3月、文春文庫 / 上、下 2018年8月、角川文庫)
- Kの日々(2006年11月、双葉社 / 2009年2月、フタバノベルス / 2010年6月、双葉文庫 / 2019年5月、双葉文庫【新装版】)
- 魔物(2007年11月、角川書店 / 上、下 2009年11月、カドカワ・エンタテインメント / 上、下 2010年11月、角川文庫 / 上、下 2019年4月、角川文庫【新装版】)
- 鏡の顔 傑作ハードボイルド小説集[30](2009年2月、武田ランダムハウスジャパン / 2012年11月、朝日文庫)
- 罪深き海辺(2009年7月、毎日新聞社 / 2011年7月、講談社ノベルス / 上、下 2012年8月、講談社文庫)
- 欧亜純白 ユーラシアホワイト(上、下 2009年12月、集英社 / 上、下 2013年5月、集英社文庫 / 上、下 2016年5月、徳間文庫)
2010年代
- ブラックチェンバー(2010年3月、角川書店 / 2013年9月、角川文庫)
- やぶへび(2010年12月、講談社 / 2015年1月、講談社文庫)
- 冬芽の人(2013年1月、新潮社 / 2015年3月、新潮文庫)
- 海と月の迷路(2013年9月、毎日新聞社 / 2015年10月、講談社ノベルス / 上、下 2016年10月、講談社文庫)
- ライアー(2014年4月、新潮社 / 2016年4月、カッパノベルス / 2017年3月、新潮文庫)
- 極悪専用(2015年6月、文藝春秋 / 2017年6月、トクマノベルス / 2018年6月、文春文庫)
- 夜明けまで眠らない(2016年12月、双葉社 / 2018年12月、フタバノベルス)
- 覆面作家[32](2017年10月、講談社 / 2020年4月、講談社ノベルス / 2021年4月、講談社文庫)
- 俺はエージェント(2017年12月、小学館 / 2021年1月、小学館文庫)
- 漂砂の塔(2018年9月、集英社 / 2020年9月、KAPPA NOVELS / 上、下 2021年6月、集英社文庫)
- 帰去来(2019年1月、朝日新聞出版 / 2021年1月、ソノラマノベルス / 2022年2月、朝日文庫)