塩見岳
長野県と静岡県に跨る山 ウィキペディアから
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塩見岳(しおみだけ)は、長野県伊那市と静岡県静岡市葵区にまたがる標高3,052 mの山である。赤石山脈(南アルプス)中央部に位置し[3]、山頂周辺は南アルプス国立公園の特別保護地区に指定されている。
南アルプスの主稜線上、仙丈ヶ岳から続く長大な仙塩尾根の南端に位置する。鉄兜にも似たドーム形の独特な山容で、遠方から眺めると独立峰のようなその山容が目立つ[4]。
山頂は100 m足らずの距離を隔てて西峰と東峰に分かれ、標高は西峰が3,047 m、東峰が3,052 mである[2]。東峰のほうが標高が高いが、三角点は西峰に設置されている(二等、基準点名「塩見山」)。山頂は見晴らしが良く、南アルプスのほとんどの山、木曽山脈(中央アルプス)、富士山などを望むことができる[4][5]。山頂は伊那市の最高点である。
山名の由来は、山頂から駿河湾(潮)が見えるからという説[8]や、山麓に塩の産地があるからという説がある[5][8][9][10]。製塩作業の煙が山頂から見えたことに由来するという説もある[8]。
山麓の大鹿村には、鹿塩(かしお)という集落と小渋川支流の鹿塩川・塩川という川があり、鹿塩温泉では天然塩水が湧き出し[4][5]、明治時代には製塩施設が設置され各地に塩が出荷されていた[8][10]。
1909年(明治42年)夏の小島烏水らの赤石岳縦走記録では間ノ岳(赤石の間ノ岳)と記載され[10]、また三峰川上流の南荒川が源流であることから荒川岳とも呼ばれていた。その後大正初期になってから塩見岳が用いられるようになった[4][10]。
塩見岳は海底に堆積した泥や砂が隆起と褶曲によりできた南アルプスのほぼ中央に位置するが、区分としては南アルプス北部(三伏峠より北側)とされている。山の上部は森林限界の上にあり、そのハイマツ帯にはイワウメ、クルマユリ、クロユリ、シナノキンバイ、タカネグンナイフウロ、タカネビランジ、ツガザクラ、トウヤクリンドウ、ハクサンイチゲ、ミヤマキンポウゲ、ミヤマシシウドなどの高山植物が群生しており[11][12]、ライチョウの生息地となっている。さらに下側は、針葉樹林が山腹を埋め尽くしている。静岡県側の周辺の山域は特種東海製紙の井川社有林となっていて[13]、明治末期の頃からシラベ、トウヒ、ツガなどがパルプの原材料として切り出された[10]。山頂は麓の標高約700 mの大鹿村下市場集落と比べて、標高差換算で約14℃気温が低い。このため、春遅くまで山頂で降雪することがある。
近年[いつ?]、鹿などの野生動物が三伏峠の上部まで上がってきて、ライチョウのエサとなる高山植物の若芽などを食べ尽くし、生態系を乱していることが問題となっている。地元の大鹿村では、鹿の食害対策として増えすぎた鹿を捕獲し、その肉を「大鹿ジビエ」の名で地域ブランド品としている[14]。
1929年(明治42年)に、川田黙が三峰川側から登頂した[15]。一般の登山者が登るようになったのは、1935年に三伏小屋が建設されて以降である[16]。
一般的には、鳥倉林道からのルートを利用し、三伏峠を経由して山頂を往復することが多い[10]。日帰りで往復する登山者もいる。長野県の山のグレーディングによれば、鳥倉林道からのルートの体力度は10段階中の「7」(1 - 2泊以上が適当)、技術的難易度は5段階中4番目の「D」(厳しい岩稜や不安定なガレ場、ハシゴ・くさり場、藪漕ぎを必要とする箇所、場所により雪渓や渡渉箇所がある)とされている[18]。登山は6月中旬から10月上旬ごろまでの期間が適する[19]。冬期には山頂直下北面の塩見岳バットレスが雪稜登攀の対象となる。
登山道の要所には複数の山小屋が登山シーズン中に開設されている[22][25][26]。塩見小屋が山頂に最も近い山小屋で、完全予約制となっている[25]。南アルプスの大部分の山小屋では、営業期間外は緊急避難用として施設の一部が開放されている。
画像 | 名称 | 所在地 | 標高 (m) |
塩見岳からの 方角と距離 (km) |
収容 人数 |
キャンプ 指定地 |
備考 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
熊の平小屋 | 仙塩尾根井川越の南西300 m | 2,580 | 北北東 6.7 | 70[27] | テント25張[27] | 5人以上要予約[27] 水場あり | |
塩見小屋 | 塩見岳の西 | 2,760 | 北西 0.9 | 50[27] | なし | 当山最寄りの山小屋、要予約 水場あり(小屋から15分)[27] | |
三伏峠小屋 | 三伏峠 | 2,610 | 西南西 4.2 | 150[27] | テント20張[27] | 水場あり(小屋から10分)[27] | |
塩川小屋 | 塩川土場 | 1,340 | 西 6.7 | 70[27] | テント20張 | 休業中 | |
小河内岳避難小屋 | 小河内岳東の山頂直下 | 2,780 | 南南東 4.8 | 10[27] | なし | 水場なし | |
二軒小屋ロッヂ | 東俣林道終点二軒小屋 | 1,400 | 南東 10.1 | 38[28] | あり[29] | ロッヂ(本館・新館)と登山者用小屋、水場あり[28][29] |
かつては三伏峠から下っていった三伏沢沿いに三伏小屋があったが、環境保全のため2003年に閉鎖された[27]。
JR東海飯田線伊那大島駅の東24.6 km、中央自動車道松川インターチェンジの東27.1 kmに位置する。
南アルプスの主稜線上にあり、北側には安倍荒倉岳、新蛇抜山、北荒川岳がある。山頂直下の東側からは、北俣岳、蝙蝠岳、徳右衛門岳を経て二軒小屋ロッヂへ尾根が延びる。山頂からは塩見小屋と権右衛門山を経て三峰川林道へ延びる塩見新道の尾根がある。西側の本谷山からは、入山や二児山を経て北北西に尾根が長く延びる。南側には北俣尾根が延びる[31]。
山容 | 山名 | 標高 (m)[32][1] |
三角点等級 基準点名[32] |
塩見岳からの 方角と距離 (km) |
備考 |
---|---|---|---|---|---|
木曽駒ヶ岳 | 2,955.86 | 一等 「信駒ケ岳」 |
北西 41.8 | 日本百名山 | |
仙丈ヶ岳 | 3,032.56 | 二等 「前岳」 |
北 16.2 | 日本百名山 仙塩尾根 | |
間ノ岳 | 3,189.13 | 三等 「相ノ岳」 |
北北東 9.0 | 日本百名山 | |
農鳥岳 | 3,025.90 | 二等 「農鳥山」 |
北東 7.2 | 日本二百名山 | |
塩見岳 | 3,052 | 0 | 日本百名山 | ||
蝙蝠岳 | 2,864.69 | 三等 「中俣」 |
南東 3.8 | ||
烏帽子岳 | 2,726 | 南西 3.5 | |||
小河内岳 | 2,801.56 | 二等 「小河内」 |
南西 4.8 | ||
悪沢岳 | 3,141 | 南 8.1 | 日本百名山 |
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