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堀尾 輝久(ほりお てるひさ、1933年〈昭和8年〉1月5日[1] - )は、日本の教育学者。東京大学名誉教授。専攻は教育学、教育思想史。 元NHKアナウンサーの杉山邦博は実兄。美術史家で文化学園大学名誉教授の堀尾真紀子は妻。
勝田守一の「国民の教育権」論、宗像誠也の内外事項区分論を継承し、それらを発展させつつ、コンドルセ Condrcet1743-94ら、近代初期の教育思想に、幸徳秋水やホブソンなどの先駆的な「帝国主義」に関する論など国家論・社会論を接続して、その現代的再構成を試みた。現代公教育を、支配者階級による被支配者階級の「教化 indoctorination」システムと定位し、近代における教育拡大(教育の機会均等・義務教育の普及など)を批判的に把捉した。
一般に、近代の教育組織が複線型(dual system)としてとらえられるのに対して、近代教育の三重構造『教育入門』(p24〜p45)『現代教育の思想と構造』(p6〜p8、同時代ライブラリーp6〜8)を指摘した。また『現代教育の思想と構造』第一部 第2章 四(p135〜,同時代ライブラリーp147~)では、「政治的文盲」(p139、同時代ライブラリーp150)について分析して、政治化の時代における非政治的民衆の創出というパラドックス、デモクラシー下におけるデモクラシーの空洞化について論じた。
その一方、「人権としての教育」を思想的に練磨し、その「私事の組織化=親義務の共同化」としての公教育、すなわち、その機能から「徳育 education」を排し、それを「知育 instruction」に限定される公教育モデルを提唱した。その思想は、「国民の教育権」論として知られた。
堀尾の理論は、家永教科書裁判における原告家永三郎に勝訴をもたらした、東京地裁判決(1971年7月17日、通称杉本判決)に、理論的基礎を提供した。
堀尾は国際的な「子どもの権利」に関わる経緯を積極的に主張している。1924年Declaration of the rights of the Child in Geneva「ジュネーブ子どもの権利宣言」。1948年 Universal Declaration of Human Rights「世界人権宣言 」。1959年Declaration of the Rights of the Child「子どもの権利宣言」。1966年 Convention of Human Rights「国際人権規約」 。1985年ユネスコ「学習権宣言」。1989年Convention on the Rights of the Child「子どもの権利条約」。
堀尾は地球時代の視点から日本国憲法前文・第9条の理念を発展させて「地球平和憲章」を出そうと2017年3月、多くの呼びかけ人ともに「9条地球憲章の会」を創設して代表となって地球規模の平和を求める思想市民運動を展開している。地球市民の英知を結集して地球平和憲章を創りたいと地球上のすべての人々に「平和に生きる権利」を保障する非戦・非武装・非核・非暴力の平和な世界の実現を求めている。「9条地球憲章の会」(https://www.9peacecharter.org/)は2021年5月『地球平和憲章 日本発モデル案-地球時代の視点から9条の発展を-』を花伝社よりブックレットとして発行した。http://www.kadensha.net/books/2021/202105chikyuuheiwakenshou.html
堀尾の理論への批判としては、教育行政学者の持田栄一による、教育の「私事性」の持つイデオロギー性批判があると言われているが、堀尾が、共産主義に個や私の契機を問うていたことで、いわゆる社会主義に対するイメージがそれぞれで違っていた点を分析する必要があると思われる。(堀尾・持田論争、参考文献:持田栄一編『教育改革への視座』田畑書店、1973年)。進歩的文化人や日教組の理論的支柱として知られていたが、学校教育の実務については「習熟度」によるクラス分けを提案するなど原理、原則的な平等思想には立たなかった。
家永教科書裁判に関わっていた。家永支援組織の『教科書裁判ニュース』(1997年9月号)に、「家永先生、32年間という長い間のたたかい、本当にご苦労さまでした」「先生の勇気ある決断と持続する行動力には、ただ頭の下がるばかりです」という祝辞を書く。堀尾は、1997年8月31日に中国教育学会会長の招きで訪中したが、「当然のこととして話題となった最高裁判決を、家永先生の勝訴として報告できたこと、中国教育者たちも喜んでいたことを、先生にお伝えしたいと思います」と書いていることを述べた。秦郁彦は、中国の同志たちと一高寮歌さながらに「友の憂いに我は泣き、わが喜びに友は舞う」を実践するのをとがめる気はないが、中国の大学に講義に行ったとき、心安い先生が、「家永さんがうらやましい。国立大学の教授が国を訴えて英雄視されるんですからね。わが国の学者は政府の公式政策の範囲でしかモノが言えません」とこぼしており、「ひょっとしたら中国教育学会のお歴々は、戦時中の家永氏が味わったような苦衷に堪えていたのかもしれない。」と述べている[2]。
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