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津村記久子による小説 ウィキペディアから
『君は永遠にそいつらより若い』(きみはえいえんにそいつらよりわかい)は、津村記久子による小説。2005年に第21回太宰治賞を受賞した作品『マンイーター』を改題したもので、2005年11月1日にデビュー作として筑摩書房から刊行され[1]、2009年5月11日に文庫化された。
君は永遠にそいつらより若い | ||
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著者 | 津村記久子 | |
発行日 | 2005年11月1日 | |
発行元 | 筑摩書房 | |
ジャンル | 小説 | |
国 | 日本 | |
言語 | 日本語 | |
形態 | 四六判上製本 | |
ページ数 | 220 | |
公式サイト | www.chikumashobo.co.jp | |
コード |
ISBN 978-4-480-80394-8 ISBN 978-4-480-42612-3(文庫判) | |
ウィキポータル 文学 | ||
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ホリガイは、京都の大学の4回生[注 1]。身長175センチメートル、22歳、処女、大学卒業を間近に控え、地元の県職員・児童福祉職[注 2][注 3]への採用も決まり、大学と下宿、それにバイトを行き来する、少し手持ちぶさたな毎日を送っている。また、オカノや吉崎、穂峰、それに河北といった友人や知り合いとの交流の中で、「わたしが並外れて不器用なのは、わたしの魂のせいだ」という思いを持っている。
そんなある日、ゼミの飲み会で悪酔いして路上にへたり込んでいるアスミを自分の下宿に連れ帰ったことがきっかけ[注 4]となって、同じ大学の女子学生イノギと出会うことになる。
ホリガイは、イノギと付き合っていく中で、なぜか聞いてほしくなり、小学校3年の時に男子に二人がかりで暴力でねじ伏せられた経験[注 5]を話すと、イノギは「そこにおれんかったことが悔しいわ」と言ってくれた。
ホリガイのバイトの最終日、送別会の2次会の帰り際に歩道に転んでしまった後輩のヤスオカを仕方なく下宿まで連れて行く途中で、ホリガイを訪ねてきたイノギと会い、下宿に招き入れる。大の字になって寝てしまったヤスオカを放置してイノギと話し込み、その時初めてイノギの側頭部の傷痕や潰れた耳のことを知って、息を呑みそうになってしまう。
途中で、河北から電話があり、支離滅裂な話しぶりで、アスミが手首を深く切りすぎて血だらけで倒れ込んでるという。イノギに救急車を呼んでもらい、深夜一緒にタクシーで河北の家まで行くが、結局その後どうなったか確認できないままだった。後日、オカノからアスミがオカノの友人の病院に救急搬送されていたことを聞いて、アスミの無事と河北の話が作り話でなかったことに安心する。
イノギとは二人で鍋をつつくような仲になっていたが、「もうどうせこちらで誰とも出会わんのやったらわたしでええんちゃうかな」というイノギの言葉で、ホリガイにとってなくてはならない人に変わっていく幸福な初体験をする。
しばらくして、イノギは自分の頭の傷痕のことについて話し始める。自転車で帰宅中に後ろから車にぶつけられて廃車置き場に連れて行かれ、逃げ出そうとすると石で頭を殴られ、耳の上部と毛穴が潰れたこと、その後両親はイノギをもてあまして離婚し、祖母に預けられ育てられたことを…。ホリガイは、かける言葉を見つけることができなかった。
後日、吉崎から連絡を受け、亡くなった穂峰の下宿が引き上げられることになり、形見分けをするからと、吉崎と一緒に穂峰のアパートに行った時に、発見された穂峰の遺書を見せられる。遺書は、あっさりした文面だったが、その最後には「下の階の翔吾君にもよろしく」とあった。
ホリガイは下の階の不穏な様子を思い出し、インターホンを連打したが返事はなく、吉崎の制止を振り切り、穂峰の部屋のベランダから下の階のベランダに着地してガラスを割って侵入[注 6]した。真っ暗で湿気と悪臭の立ち込める部屋の中を探していると、汚れた薄手のブランケットから骨ばった子供の手が現れた。その子を抱きかかえて救急車を呼び、そのままアパートを去り、次の日の早朝に下宿を引き上げた。
翔吾君の部屋に入ろうとしていた時にイノギから、これから1時間だけ会えないかというメールがあった。下宿に帰ってから、卒業式の日に会おうと返信したが返事はなく、卒業式の前日に、休学して既に実家に帰っていると連絡があった。あの日に会えなかったことを詫びたが、ホリガイが常につかまる人とは思ってなかったから別にいいと失望させてしまったかもしれない返事が来る。
約半年後、京都から追っ手が来ることもなく、ホリガイは地元で新人らしく、いろいろなものを見聞きし憔悴しながらも、懸命に仕事をしている。河北とアスミは結婚することになり、2次会で吉崎やヒサマから翔吾が児童養護施設に入って、少しずつ元気になってきている話を聞く。
今、ホリガイは、イノギのいる和歌山の沖ノ島に向かうフェリーに乗っている。あの時そこにいることができなかったことを悔やみ、彼女に起こったことを示すものとして見つけた自転車の鍵[注 7][注 8]を持って。
そういえば、昔テレビで見た未解決の少年失踪事件のあの子の18歳の誕生日が昨日だったことを思い出し、様々なことを考える中で、ホリガイは思う。「君を侵害する連中は年を取って弱っていくが、君は永遠にそいつらより若い」
「会えるのを楽しみにしてるよ」とイノギからの着信があった。
※作品の中で使用されている名前を記載し、何種類か使用されているものは( )内に記載。
2021年9月17日に公開された[3]。監督は吉野竜平、主演は佐久間由衣、 奈緒が共演 [2]。PG12指定。津村記久子の作品としては初の映画化作品となる。
キャッチコピーは「その言葉でじゅうぶんだと思う。[注 16]」。
第33回東京国際映画祭の「TOKYOプレミア2020」にて、2020年11月1日及び11月3日[4]にワールドプレミア上映が行われた[5][6]。 11月1日に行われたEX THEATER ROPPONGIでの上映では、キャストの佐久間由衣と奈緒、監督の吉野が舞台挨拶に登壇し[7]、11月3日のTOHOシネマズ六本木ヒルズでの上映後には、監督の吉野の舞台挨拶とQ&Aが開催された[4]。
また、2021年香港国際映画祭Fantastic Beats部門で、2021年4月9日と11日に上映された[8]。本作初の海外上映となる[9][10]。
監督の吉野は映画化にあたって「内へ内へと向かって悩んでいた主人公が、様々な人との出会いや出来事を経て、最後は外へと向かって爆発する行動を起こします。欠落感を抱えたまま、他者や社会とどう関わって生きていくのか──。『ありのままでいいんだよ』みたいな無責任な言葉ではない、自分なりのメッセージを主人公の姿に託しました」と本作に込めた思いを語っている[11][12]。
また、映画の公開日決定に伴い、作者の津村が「今映画という形になって、自分が描きたかった堀貝佐世の鷹揚さは、確かに誰かの支えになるものだと、改めて信頼させてもらえたように感じました。自分自身の物語に囚われすぎず、簡単に誰かの苦しみや使命を共有してしまう堀貝や吉崎の姿は、自分が小説を書き始めた頃から今まで、一貫して描きたいと願ってきたおおらかな人間の姿で、わたしが常に誰かに見出したいと思っている態度の具現でもありました」とコメントしている[3]。
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