『右門捕物帖』(うもんとりものちょう)は、佐々木味津三の時代小説。また、これを原作とする映画、テレビ時代劇。
主人公は同心の近藤右門。無口であることから「むっつり右門」の異名をもつ。岡っ引の伝六を伴い、数々の難事件を解決してゆく[1]。
小説
時代小説の中でも捕物小説という種目が岡本綺堂の『半七捕物帳』から始まったが、それに続く作品の一つである。 雑誌『冨士』に連載、第一話が掲載されたのは1928年(昭和3年)3月。 むっつり右門こと八丁堀の同心近藤右門と、配下の岡っ引き伝六を主人公として書かれた時代小説である。
評価
推理小説家の都筑道夫は、本作について、『半七捕物帳』と比較して「がぜん派手になるかわりに、あるのは発端の異常性だけ」「きわめて魅力のある謎が、論理をまったく無視して、いいかげんに解決されるありさまには、泣きたくなるくらいで、もう推理小説としては読むにたえない。むしろ、右門のせりふの珍妙さには笑いがこみあげてくるし、その愚かな言動を地の文が、なんたる明察、疾風迅雷の行動、と持ちあげているおかしさで、ロバート・L・フィッシュの「シュロック・ホウムズの冒険」のようなナンセンス・パロディとしてなら、かなりの評価ができるだろう」[2]と評し、「むっつり右門の成功によって、捕物帳は推理小説から、怪奇時代小説に変貌した」[3]としている。都筑は、自作『なめくじ長屋捕物さわぎ』の中で、『右門捕物帖』の「首つり五人男」(第34話)と「幽霊水」(第24話)について、右門による解決の問題点を登場人物に指摘させた上で、別の解決を示している(「首つり五人男」と「水幽霊」、いずれも『からくり砂絵』所収)[4][5]。なお、都筑にはこのほか、パロディ短編『右門もどき』がある[6]。
映画
- 嵐寛寿郎主演版
- 右門捕物帖 一番手柄 南蛮幽霊(1929年、新興キネマ、監督:橋本松男)
- 右門六番手柄 仁念寺奇談(1930年、新興キネマ、監督:仁科熊彦)
- 右門捕物帖 三十番手柄 帯解け仏法(1932年、東亜キネマ、監督:山中貞雄)
- 右門捕物帖 拾萬両秘聞(1939年、日活、監督:荒井良平)
- 右門捕物帖 謎の八十八夜(1949年、東宝、監督:並木鏡太郎)
- 右門捕物帖 伊豆の旅日記(1950年、新東宝、監督:並木鏡太郎)
- 右門捕物帖 片眼狼(1951年、新東宝、監督:中川信夫)
- 右門捕物帖 帯とけ仏法(1951年、新東宝、監督:安田公義)
- 右門捕物帖 緋鹿の子異変(1952年、新東宝、監督:中川信夫)
- 右門捕物帖 謎の血文字(1952年、新東宝、監督:荒井良平)
- 右門捕物帖 からくり街道(1953年、新東宝、監督:並木鏡太郎)
- 右門捕物帖 妖鬼屋敷(1954年、東宝、監督:毛利正樹)
- 右門捕物帖 まぼろし変化(1954年、東宝、監督:丸根賛太郎)
- 右門捕物帖 献上博多人形(1955年、東宝、監督:志村敏夫)
- むっつり右門捕物帖 鬼面屋敷(1955年、東宝、監督:山本嘉次郎)
- 右門捕物帖 恐怖の十三夜(1955年、東宝、監督:志村敏夫)
- 大友柳太朗主演版
- いずれも東映配給。
テレビ時代劇
- 右門捕物帖(1957年 - 1958年、KRテレビ、主演:中村竹弥)
- 右門捕物帖(1962年、関西テレビ、主演:黒川弥太郎)
- 右門捕物帖(1969年 - 1970年、日本テレビ、主演:中村吉右衛門 (2代目))
- 右門捕物帖(1982年 - 1983年、日本テレビ、主演:杉良太郎)
脚注
外部リンク
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