本編の節目には登場人物の過去エピソードが掲載され、登場人物が現在に至るまでの経緯が描かれている。また、タイトルについて、本編では二字熟語であるのに対し、過去エピソードでは主人公になる人物名となっている(但し、小田切詩乃は旧姓の玖村詩乃、黒木唯は本名の名前がタイトルになっている)。ここでは、本編にほとんど登場しない登場人物のみ記載する。
葛西 舞編
ここでは舞の幼少期から現在に至るまでの経緯が描かれている(全7話)。
- あらすじ
- 幼い時から卒なくこなし成績優秀な舞よりも、できは悪いが愛嬌のある弟の敬ばかりに愛情を注いでいる母親に不満を持っていた。家庭内では居場所がないと諦め、進学した込古学園で居場所をつくろうとするが、成績もスポーツも今一つだった。さらに、母親からその事を咎められた上に母親の放ったある一言が舞と母親との間に確執を生む。その後、後ろの席の神谷ちはるに声をかけられ、舞の生活に変化が訪れる。
- ちはると栞の友達になった舞の気分はとても最高だったが、時間が経つにつれてちはるのご機嫌取りをしている自分に虚しさを感じることが増えてくる。
- そしてちはると絶交した今、舞は全ての友情を失い、本当に中身のない人間になってしまったと孤独に苛まれていた。
- 登場人物
- 舞の母親
- 舞と敬の母親。本人は2人を平等に見ていると言っているが、敬には甘く舞には厳しく(特に成績関連で)接している。舞は「表面しか見ていない。内面を見ようともしない。」と評している。
- 舞が金髪にした時は平手打ちしたものの、逆に舞から平手打ちを返され罵声を浴びせられた。舞が初めて反抗したことで戸惑いをみせる。
- 葛西 敬(かさい けい)
- 舞の弟。舞とは逆に勉強が苦手で、且ついい加減でもあり俗に言ういい子ちゃんではないが、愛嬌があり母親はもとより、親戚からも好かれている。
- 一方で、家庭内には関心が薄い傾向がある。
小田切 詩乃編
ここでは詩乃の幼少期から中学生時代(転校前まで)のエピソードが描かれている(全11話)。
- あらすじ
- 詩乃は両親が不倫の末にできた子どもだった。父親には既に母親に対する愛情は無く、母親が一方的に愛情を求めていた。
- 体裁を気にする父親は母親に対し自由にさせなかった。母親は周囲から見放され八方塞がりになり、更に夫が詩乃には気にかけ自分には見向きもしない事から、精神的におかしくなり詩乃に八つ当たりするようになって、家事もできない状態になっていた。
- 込古学園に進学した詩乃は、せめて学校生活だけは楽しくしたいと願い友達もできた。しかし、同じクラスのちはるが詩乃の父親と自身の母親が不倫しているのを目撃し、詩乃に仕返しをしないかと持ちかけるも、詩乃は、母親の精神状態が悪化することを恐れて提案を断ってしまう。ちはるは激昂し、栞と舞と共に詩乃をいじめ始める。
- いじめが始まると友達が離れてしまい、心身ともにボロボロになっていた。詩乃の異変に気付いた母親は詩乃に話すよう促した。しかし、詩乃の話を聞いた母親は詩乃が悪いと言い放つ。更に、詩乃は母親が自分を愛しているのではなく、自分を父親を繋ぎ止める道具であると認識していると悟り、仕返しに父親が不倫している事を話す。これを聞いた母親は包丁で詩乃を刺そうとするが、詩乃は本能から側にあった椅子で母親を殴ってしまう。
- 幸い、母親は命に別条はなかったが、これがきっかけで両親は離婚し、母親は実家に戻り詩乃とは別居、父親は詩乃と暮らしたいと言ってきたが、体裁のためだけだと分かっていたため断り、ちはるの父親に匿名で自分の父親とちはるの母親の不倫の事を伝え、母方の祖母の家に向かった。
- 登場人物
- 玖村(くむら)
- 詩乃の父親。垂れ目だが、目元が少し詩乃と似ている。下の名は不明。薬剤師であり、病院に勤務していた。詩乃の母、彩乃が精神を病み、詩乃がちはるからいじめを受けることになった元凶。
- 先妻と結婚していたが、不倫相手であった彩乃との間に子ども(詩乃)ができたため先妻と離婚し、後に愛情はなかったが、義務感から彩乃と再婚した。
- 元は不倫相手であった後妻を良く思わない自分の親・親族から彩乃や、その娘である詩乃を守らず、さらに彩乃が外に働きに出ることを許さなかったため、彩乃を社会的に孤立させた。
- 妻が精神的に病み始めた頃は、まだ幼少の詩乃を気遣っていたが、彩乃が家事育児ができなくなった頃には家庭を省みなくなり、当時まだ小学生であった詩乃に小遣いを渡し、妻と家のことを押し付け、娘にも無関心になる。基本的に自分自身にしか関心がなく、家庭が面白くなくなると他所に妻以外の女性を作る傾向にあり、職場の看護師であったちはるの母親と不倫していた。
- 自分が留守中の自宅で彩乃と詩乃の間で刃傷未遂事件が起こり、彩乃と離婚した。世間体から詩乃を引き取ろうとしたが、断られ、二度と家庭を作らないように請われる。現在彩乃の実家に引き取られ、小田切姓となった詩乃とは疎遠。
- 神谷 奈都美(かみや なつみ)
- ちはるの母親。病院の看護師。ちはると似た顔の可愛らしい女性。娘のちはる及び夫とは当時別居していた。職場の薬剤師であった詩乃の父親、玖村と不倫しており、腕を組んでホテルに入っていく現場を下校中のちはるに目撃され、密かに写真を取られる。彩乃から頭を棒で殴られて負傷し、病院に掛かった詩乃と対面する。引越す前日の詩乃により、玖村との不倫を匿名で夫に密告されたが、その後のことは不明。
近藤 千穂編
ここでは千穂の中学生時代(1年から2年始めまで)のエピソードが描かれている(全5話)。
- あらすじ
- 名取静は、幼げでエキセントリックな言行に目を付けられ、山本萌菜達からいじめを受けていた。千穂のグループは静には関わらない方針を決めていた。しかし千穂はターゲットにはされたくないが、静が心配だったこともあり、誰もいないところで静に声をかけていた。
- 2年生になった時、藤塚優里亜と金谷恵那が千穂達のクラスメートになったことで状況が一変する。
- 自分より優里亜が上だと感じた山本は、媚びを売り始め、静はクラスの嫌われ者であると紹介する。しかし、優里亜は静に近付き話しかけ、静が単なる根暗ではないことが分かると、暫くの間友達になると宣言。さらに、イジメ主犯の山本を罵倒した。
- 千穂は静に友達ができてよかったと思う一方、優里亜から同じクラスにいながら助けなかったことを責められ、激しく後悔するのであった。
黒木 唯編
ここでは唯の幼少期から中学生時代までが描かれている(全11話)。
- あらすじ
- この過去編では、現在の唯が過去の自分のことを回想しながら話が進んでいく。
- 幼い頃から、自分の本当の名前を知られる度に、周囲から母親の批判や名前のことを言われ、窮屈に感じていた唯は空気のように生活していた。また、この頃宏樹からは避けられていた。
- 小学5年生の時、一緒のクラスになった千翔子からサッカーに誘われるも、断り続ける唯に千翔子は勝負を仕掛ける。その後潤平、宏樹、伊藤啓心がやってきた。唯に関わるなと言う宏樹に千翔子は、本名の本質を見抜き、母親の事も名前も否定しなかった。それでも文句を言う宏樹と、本名を聞いて笑い続ける啓心を潤平と千翔子が力づくでやめさせ、さらに唯が宏樹に反発したことで渋々和解する。和解後、千翔子は本名の意味合いから唯と呼ぶ提案をだす。
- 中学生になり、ある理由で千翔子とは疎遠になる。また、みんなからは唯と呼ばれていることを母親に言っておらず不安な気持ちが渦巻いていた。
- そんなある日、母の兄嫁に当たる理沙子が唯の元を訪れる。祖母が病気で手術をする前に唯に会いたがっていると言い、待ち合わせ場所を指定した紙の入った封筒を渡す。待ち合わせ場所に行き、理沙子の夫である伯父・恭仁と会い、今まで唯に会わなかった理由を聞く。そして祖母に会い、そこで恭仁から本名が好きかと聞かれ、改名が出来ることを教えられ、母親と本気でぶつかり仲違いしたりしたらここを第2の家族として頼って欲しいと言われる。
- その後、母親に20歳になって気持ちが変わらなければ改名をすると伝え、南高校でも潤平の協力で可能な限り通称の使用を認められた。
- 場所は元に戻り、唯は千翔子が詩乃の本性を知りながらも執着していることに多少の苛立ちを感じつつも、付き合うから詩乃を親友と思うなら本気で救えと願った。
栄 千翔子編
ここでは、千翔子の中学生時代(相秦学園〜転校後)が描かれている(全10話)。
- あらすじ
- 小学生の頃の千翔子は、とにかく身体を動かすことが好きで、女子特有の煩わしさが苦手だったこともあり、男子とはよく遊んでいたが女子とは必要最小限の付き合いだった。
- 自分の実力を試したいと言う理由から、千翔子は地元ではなく県外にある全寮制の女子中学「相秦学園」に入学する。早速、澤井美保とあきと仲良くなるも、女子との付き合い方がわからない千翔子は、2人にトイレに誘われたが断った結果、距離を置かれ気付いた時にはどのグループにも入れず孤立してしまう。
- 美保とあきの千翔子いじめはエスカレートし、終いには窃盗容疑までかけられてしまい、精神的に参った千翔子は両親に転校を懇願、両親も承諾する。
- 転校後、同じ委員会だった詩乃と出会う。詩乃は最初こそ暗い表情だったが、千翔子と接するたびに笑顔になっていった。千翔子は思い切っていじめられていたことを詩乃に話すと、詩乃も同じような境遇であることが分かり、2人は親友になっていく。
- 登場人物
- 澤井 美保(さわい みほ)
- 相秦学園の1年生で千翔子のクラスメート。席が近い千翔子に声をかけて友達になったが、千翔子をトイレに誘った時に断られたことが癇に障り、千翔子をいじめ始める。
- 最初は無視だけだったが、徐々に体操着にチョークの粉を付けるなどエスカレート。サプライズで唯たちが来た際に千翔子に友達だと言われ、勝手に誤魔化されたと激昂し出会い系サイトに盗撮画像を投稿した。
- 出会い系での一件で千翔子から警察に訴えると言われ、言えなくするために偽の窃盗事件を作り上げた。千翔子の転校後、担任の聴取で、あきが裏切った際には呆然としていた。
- あき
- 相秦学園の1年生で千翔子のクラスメート。美保と仲が良い。千翔子のいじめでは美保の補佐的な役割を担っていたが、唯たちが来た時に、美保の性格を知った上で千翔子を盗撮して美保に見せて出会い系サイトに投稿させるなど腹黒い一面を持つ。
- 美保と同様、千翔子から警察に訴えると言われて偽の窃盗事件を作り上げた。千翔子の転校後、担任の聴取で美保に脅されたと言って裏切った。
- 千翔子の両親
- 出会い系サイトの一件で学校から連絡があった時も千翔子を信じ、転校を懇願された時も千翔子を第一に考えて快諾した。
大瀬戸 翠編
ここでは、前職就職時から南高校採用時までが描かれている(全6話)。
- あらすじ
- 翠は、就職活動で唯一内定をもらった小さな化粧品会社で営業事務として働いていた。そこで、上司となる新田を紹介される。爽やかなルックスに見とれていると、先輩社員から新田には気を付けてと忠告される。社会人経験が浅い翠にはこの忠告が不快ではあったが、表面上だけ受け入れた。
- 営業目標など説明会で話がなかったことなど不満もあるが、会社の戦力となれるよう頑張っていた。
- ある休日、翠は駅で倒れている二階堂清枝を助け、後日行きつけの弁当屋に行くと、清枝が働いていた。清枝は翠が化粧品会社の社員であることがわかると先日のお礼として1回だけ買ってあげると言ってきた。しかし、契約書を新田に見せてから翠に対する態度が豹変する。実は、清枝は元々新田の顧客だったのだ。清枝は、翠にある理由から新田から買うのをやめ、同じものなら最終的には人柄で選ぶと言った。
- 数日後、新田から仲直りしたいと言われて安心した翠だったが、実は新田の罠で、これに嵌ってしまった翠は精神を病んでしまい、入社して半年で会社を辞める。
- 退社後、暫くは鬱状態で再就職すら難しい状態だったが、親の勧めで半ば強制的に南高校の臨時教諭の面接を受けさせられて受かってしまう。
- 合わなければ1年で辞めようと考えていたが、偶然現れた潤平に励まされ、翠は自分の居場所を見つけたと喜ぶのであった。
- 登場人物
- 新田 誠(にった まこと)
- 化粧品会社の営業主任。爽やかなルックスと共に営業成績も優秀である一方、事務員を見下す態度をとったり、敵と見なすとパワハラをするなど性格に難がある。
- 二階堂 清枝(にかいどう きよえ)
- 翠が行きつけの弁当屋の店員。以前は新田から商品を購入していたが、新田が起こしたある行動が原因で買うのをやめている。