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生物または機械が光の波長に基づいて物体を識別する能力 ウィキペディアから
色覚(しきかく, 英: color vision)とは、光のスペクトルによっておこる視覚の質的差をいう[1]。光の強さ、時間、面積、順応状態などにも依存する[2]。色彩として識別する[3]。
色覚を生じるにはある程度以上の光の強さが必要で、それを色覚閾(いき)という[4]。一般的に夜行性の動物には色覚がない[1]。
脊椎動物では網膜の視細胞のうち、波長の感受性の異なる複数の種類の錐体細胞が反応し、それらの割合が大脳皮質の視覚中枢に伝わり認知される[3]。
ヒトは網膜中心部で錐体細胞の密度が高く[4]、可視光の波長が約400nm~800nmで[1]、長い側の波長の光(赤~黄~緑)に感度の高いL錐体、短い側(青~紫)に感度の高いS錐体、それらの間(緑~青)に感度の高いM錐体の3種類があり[3]、3色型色覚である。単色光の波長による色の違い及び、複数の単色光をいろいろな割合で混ぜると混色が得られるが、波長の長い順に赤(Red)、緑(Green)、青(Blue)の単色光3色(RGB)から任意の光色を作る事ができ、またそれらは他の色から加法混色で作る事ができないので、光の三原色と呼ばれる。黄色が赤と緑の混色なのかあるいはそれらの間の波長の単色光なのかは識別できないが、赤と青の混色の紫と、それらの間の波長の緑等の単色光とはM錐体により別の色と認識する。しかしL錐体は短い波長にも感度があるため、青より更に波長の短い単色光も紫に見える。光の三原色うちのそれぞれ2色の間を混色のグラデーションでつないだ閉曲線が、純色の色相を図示した色相環である。
また、背景色の違いによって別の色に見えたり、残像による補色が見えたりする。カラードットマトリクスディスプレイのように、色の異なる視力より小さい微小な点が隣接していたり、2色が交互に高速で切り替わったりすると、それらの混色に見える。
通常の写真や実写映像(動画像)は、被写体撮影時の光を再現しているわけではなく、人にとって同じように見えるように三原色など少数の色を合成しているので、人と色覚の違いが大きく特に人より色覚が優れた動物には実物と同じに見えない。
アイザック・ニュートンは、白色光がプリズムを通過すると様々な色に分離し、別のプリズムを通過して再び1つに集めると白色光に戻ることを発見した。
可視光のスペクトルの範囲は約380~740 nmである。この範囲には、赤、橙、黄色、緑、シアン、青、紫などのスペクトル色がある。これらのスペクトル色は単一の波長を指すのではなく、ある程度の波長幅を持つ。赤: 約625 ~ 740 nm、橙: 約590 ~ 625 nm、黄色: 約565 ~ 590 nm、緑: 約500 ~ 565 nm、シアン: 約485 ~ 500 nm、青: 約450 ~ 485 nm、紫: 約380 ~ 450 nmである。
この範囲より長い波長は赤外線、短い波長は紫外線と呼ばれる。人は赤外線や紫外線を見ることができないが、動物によっては見えるものもいる。
波長に十分な差があると、知覚される色相にも違いが生じる。
2つの色を見比べて、違いを見分けられることを色弁別という。青緑と黄色の波長では、わずか1 nmの波長差で異なる色に見分けることができるが、より長い波長の赤やより短い波長の青などでは、波長が10 nm違っても同じ色に見える、ということがある。人間の目は数百の色相を識別できるが、さらにスペクトル色を白色光で薄めたりすれば、識別可能な色の数ははるかに多くなる。
ヒトの目の網膜には、光量の高いレベルで働く錐体細胞と、光量の低いレベルで働く高感度の桿体細胞という、2種類の視細胞がある。光量が充分にある状況では、錐体のみが働き、桿体は視覚に寄与しない。このような明るいレベルでの視覚の状態を明所視(めいしょし, 英: photopic vision)と呼ぶ。一方、桿体のみが働く暗いレベルでの視覚の状態を暗所視(あんしょし, 英: scotopic vision)と呼ぶ。明所視と暗所視の中間の、錐体も桿体も働くような光量レベルでの視覚の状態は薄明視(はくめいし, 英: mesopic vision)と呼ぶ[5]。薄明視と明所視では色による相対的な明るさが変わることが知られており、プルキンエ現象と呼ばれている。
人は、スペクトル色には含まれていない色も感じる。
白、灰色、黒といった色みのあざやかさを持たない色を無彩色というが、無彩色は混色によって生じる。白という色感覚は、可視光の連続スペクトルによって生じる。また、錐体の種類が少ない動物ではいくつかの波長の光の混色よっても生じる。人の場合、白色光は赤、緑、青といった波長の組み合わせで生じたり、あるいは青と黄色といった補色の組み合わせでも生じる。
また、赤紫(マゼンタ)の色相はスペクトル色には存在しない色相である。光のスペクトルの両端にある紫と赤の混色によって生じる。
2色型色覚(2しょくがたしきかく)とは、錐体細胞を2種類持つ色覚能力のことである。三色覚と比較して、3つのうちどれかがない(あるいは充分に機能していない)ため、何らかの色の識別ができなかったり、苦手であったりする。
一般にヒト以外の多くの哺乳類(イヌやネコなど)が持つ色覚であり、ヒトの三色覚より色の区別が苦手なものの、ある程度の判別は可能である。また、ヒトでも二色型色覚が存在する。多くは先天性であり、これらは色覚異常とされる。
3色型色覚(3しょくがたしきかく)とは、色情報を伝えるために3つの独立したチャンネルを持つ状況をいう。
ほとんどのヒトはS・M・Lの3つの錐体細胞を持つことにより、3色型色覚である。S、M、Lのいずれかの錐体細胞が欠如すると色覚異常となる。
4色型色覚(4しょくがたしきかく)とは、色情報を伝えるために4つの独立したチャンネルを持つことをいう。4色型色覚を備えた生物については、任意の光に対して同じ知覚影響を与える4つの異なる純粋なスペクトルの光の混合色を作ることができる。4色型色覚の脊椎動物は、網膜が異なる吸収スペクトルを備えた4種類の錐体細胞を含む。
甲殻類、昆虫、爬虫類や鳥類などは、4色型色覚をもつと考えられている[6]。これらの生物は、ヒトでいうL錐体、M錐体、S錐体のほかに、波長300~330ナノメートルの紫外線光を感知できる錐体細胞を持つ。ただし、現在の爬虫類は3色型や2色型、または色覚を持たないものもある。
ヒトを含む旧世界のサル目(狭鼻下目)の祖先は、約3,000万年前、X染色体に新たな長波長タイプの錐体視物質の遺伝子が出現し、X染色体を2本持つメスのみの一部が3色型色覚を有するようになり、さらにヘテロ接合体のメスにおいて相同組換えによる遺伝子重複の変異を起こして同一のX染色体上に2タイプの錐体視物質の遺伝子が保持されることとなり、X染色体を1本しか持たないオスも3色型色覚を有するようになった。これによって、第3の錐体細胞が「再生」された。
ヒトにおいては4種類の錐体細胞を持った4色型色覚の女性が生まれうる[9]。世界の女性の2~3%は4色型色覚であると発表されている[10]。だが別の研究によれば女性で50%、男性で8%もの人々が4色の光色素を持つだろうという[9]。いずれにせよ、ヒトにおける4色型色覚の実態は解明しきれていない。 4色型色覚とされるヒトは、英国では2人確認されている。一人は1993年の研究で、"Mrs. M"と呼ばれるソーシャルワーカー[11]。もう一人は医師のSusan Hoganである[10]。世界中の人々の間での錐体色素遺伝子の変異は広範に及ぶが、最も一般的かつ顕著な4色型色覚は、色覚異常としてよく見られる赤緑色素の変異(赤色色弱)の女性キャリアと考えられる。これはX染色体の不活性化によってL錐体が色弱であるものとそうでないものが混合することで起こる。
5色型色覚(5しょくがたしきかく)とは色情報を伝えるために5つの独立したチャンネルを持つ状況をいう。5色型色覚を備えた生物はpentachromatsと呼ばれる。これらの生物については、任意の光に対して同じ知覚影響を与える5つの異なる純粋なスペクトルの光の混合色を作ることができる。
5色型色覚の脊椎動物は、網膜が異なる吸収スペクトルを備えた5種類の錐体細胞を含む。実際には、異なる光強度では異なるタイプの錐体細胞が活発になる可能性もあるので、5種類を超える受容器があるかもしれない。
ある種の鳥と蝶は、目に5つ以上の種類の色受容器を持っており、機能的に5色型色覚であることの精神物理学的な証明は困難であるが、5色型であると考えられている。4色型色覚についてと同様に、第二色弱(緑色弱)と第一色弱(赤色弱)の両方の遺伝子を持つ女性が、後には赤と緑の不十分な錐体細胞が失われるものの、出生時には5つの異なるタイプの色を感じる錐体細胞を持つことが示唆されている。
脊椎動物には、色覚を持つものが多いが、色覚が弱いものや、全く持たないものも少なくない。脊椎動物の色覚は、網膜の中にどのタイプの錐体細胞を持つかによって決まる。魚類、両生類、爬虫類、鳥類には4タイプの錐体細胞を持つものが多い(4色型色覚)。よってこれらの生物は長波長域から短波長域である近紫外線までの色を認識できるものと考えられている[12]。
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