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特定の政党による独裁体制 ウィキペディアから
一党独裁制(いっとうどくさいせい)とは、単一の政党が国家の政治権力を独占的に掌握している体制のこと[1]。
狭義には政党制として単一政党のみが認められている体制(一党制。ソ連やナチス・ドイツなど。)であり、広義には制度的には複数政党制だが特定の政党が事実上の一党独裁を行っている状態(ヘゲモニー政党制。社会主義時代の東欧諸国や中華人民共和国など。)のこと[1]。
一党独裁はフランス革命における山岳派支配を古代ローマの独裁官個人による独裁と対比して用たのが始まりで、ソ連などの左翼党による革命独裁と、ドイツのナチス党、イタリアのファシスト党などの右翼的反革命独裁のタイプがある[1]。また第2次世界大戦後は植民地から解放された発展途上国で伝統社会を近代化していくための多様な形の一党独裁が実現されている[2]。
一党独裁は軍事・官僚行政機構の高度な集中と政党への従属や、文化的・イデオロギー的一元化の強制を伴いやすい[1]。
ジョヴァンニ・サルトーリは、一党独裁を3つのカテゴリーに分類した[2]。
また、サルトーリは、複数の政党が存在していても、一つの支配政党の衛星政党にすぎないような体制をヘゲモニー政党制と呼び、ヘゲモニー政党制を一党独裁は、政党間の競合性がない、非競合的な政党制であるとした[3]。
国家を強力に統制することが可能であるものの、国家権力の暴走が起こりやすいことが問題となる。また、支配政党への反対者には、政治的権利や言論の自由などが保障されず、粛清・国外追放・投獄が行われるなど、人権が守られない体制になりがちである。例えば、ソ連の衛星国家であった東ドイツでは、刑法の規定によって支配政党であるドイツ社会主義統一党・東側諸国の支配者・盟主であるソ連を批判するだけで1年から8年の懲役刑が科された[4]。
一党独裁により経済発展を強力に推進する開発独裁体制は、やがて経済発展が一段落すると複数政党制へ移行する場合がある。一方で先進国並みの経済発展を実現したものの、選挙制度を操作して一党独裁制を維持しているシンガポールのような政党制も存在する。
一党独裁国家ではない、議会制民主主義国家でも、複数の政党が選挙で争っているが,結果として一つの政党が圧倒的な優位を長期保持している政党制を、イタリアの政治学者ジョヴァンニ・サルトーリは一党優位制と呼ぶ[5]。日本における1955-1993年までの55年体制下の自民党政権、1932~76年の44年間政権与党であり続けたスウェーデンの社会民主労働党の例がある[5]。
一党独裁は、フランス革命における山岳派独裁を、古代ローマの独裁官個人による独裁と対比して用いられたのが始まりである[1]。ジャコバン派は、穏健派のジロンド派と急進派の山岳派に分裂したが、山岳派はジロンド派を追放し、独裁体制を築いた(ジャコバン独裁ともいう)[6]。
1917年の十月革命で政権を獲得したボリシェヴィキ(後のソビエト連邦共産党)は、カール・マルクスの主張した過渡期におけるプロレタリア独裁を根拠に他の政党を非合法化して一党制を制度化した。これをマルクス主義者のローザ・ルクセンブルクは、プロレタリア独裁とは階級の独裁であって一党一派の独裁ではない、と批判した。
一方でイタリアのファシスト党はファシズムを掲げ、議会と反対政党は存続したものの、選挙制度改正によりファシスト党が常に政権獲得できる選挙制度にした。ドイツの国民社会主義ドイツ労働者党(ナチス党)は1933年2月末の「ドイツ国民と国家を保護するための大統領令」によるナチ党の権力掌握後、ナチス以外の政党は全て「自主解散」もしくは禁止していき、最終的には新党設立禁止法によってナチ党以外の政党の設立を禁じることで一党制を確立した[7]。日本では政党が自主解党して大政翼賛会に合流したが、政党による独裁体制は成立しなかった。これらの多くは第二次世界大戦の敗戦を契機に消滅したが、スペインのファランヘ党支配は1939年から1975年まで続いた。
第二次世界大戦の結果により社会主義陣営となった東欧諸国や、国共内戦の結果誕生した中華人民共和国では、反ファシズムの人民戦線運動を背景に人民民主主義を掲げて、形式的には複数政党制であるが、共産党が指導政党で他の政党は衛星政党である、事実上の一党独裁であるヘゲモニー政党制を採用した。
1928年から1996年、中華民国(台湾)で中国国民党が党国体制という実質的な一党独裁を行った。
1960年代、イラクとシリアでアラブ社会主義などを掲げるバース党が政権を獲得し、憲法でバース党を指導政党と規定した。
1965年、独立したシンガポールでは人民行動党が開発独裁を行った。
1990年代、ソビエト連邦の崩壊と東欧革命により、マルクス・レーニン主義を掲げた一党独裁国は減少した。
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