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原子番号23の元素 ウィキペディアから
バナジウム(新ラテン語: vanadium、英語: [vəˈneɪdiəm][1]、中国語: 釩)は原子番号23の元素。元素記号はV。バナジウム族元素のひとつ。日本語では古くはバナジン[2]・ヴァナジン[3]の表記も使われた。
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外見 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||
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青みがかった銀白色 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||
一般特性 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||
名称, 記号, 番号 | バナジウム, V, 23 | |||||||||||||||||||||||||||||||||
分類 | 遷移金属 | |||||||||||||||||||||||||||||||||
族, 周期, ブロック | 5, 4, d | |||||||||||||||||||||||||||||||||
原子量 | 50.9415(1) | |||||||||||||||||||||||||||||||||
電子配置 | [Ar] 3d3 4s2 | |||||||||||||||||||||||||||||||||
電子殻 | 2, 8, 11, 2(画像) | |||||||||||||||||||||||||||||||||
物理特性 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||
相 | 固体 | |||||||||||||||||||||||||||||||||
密度(室温付近) | 6.0 g/cm3 | |||||||||||||||||||||||||||||||||
融点での液体密度 | 5.5 g/cm3 | |||||||||||||||||||||||||||||||||
融点 | 2183 K, 1910 °C, 3470 °F | |||||||||||||||||||||||||||||||||
沸点 | 3680 K, 3407 °C, 6165 °F | |||||||||||||||||||||||||||||||||
融解熱 | 21.5 kJ/mol | |||||||||||||||||||||||||||||||||
蒸発熱 | 459 kJ/mol | |||||||||||||||||||||||||||||||||
熱容量 | (25 °C) 24.89 J/(mol·K) | |||||||||||||||||||||||||||||||||
蒸気圧 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||
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原子特性 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||
酸化数 | 5, 4, 3, 2, 1, −1 (両性酸化物) | |||||||||||||||||||||||||||||||||
電気陰性度 | 1.63(ポーリングの値) | |||||||||||||||||||||||||||||||||
イオン化エネルギー | 第1: 650.9 kJ/mol | |||||||||||||||||||||||||||||||||
第2: 1414 kJ/mol | ||||||||||||||||||||||||||||||||||
第3: 2830 kJ/mol | ||||||||||||||||||||||||||||||||||
原子半径 | 134 pm | |||||||||||||||||||||||||||||||||
共有結合半径 | 153±8 pm | |||||||||||||||||||||||||||||||||
その他 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||
結晶構造 | 体心立方 | |||||||||||||||||||||||||||||||||
磁性 | 常磁性 | |||||||||||||||||||||||||||||||||
電気抵抗率 | (20 °C) 197 nΩ⋅m | |||||||||||||||||||||||||||||||||
熱伝導率 | (300 K) 30.7 W/(m⋅K) | |||||||||||||||||||||||||||||||||
熱膨張率 | (25 °C) 8.4 μm/(m⋅K) | |||||||||||||||||||||||||||||||||
音の伝わる速さ (微細ロッド) |
(20 °C) 4560 m/s | |||||||||||||||||||||||||||||||||
ヤング率 | 128 GPa | |||||||||||||||||||||||||||||||||
剛性率 | 47 GPa | |||||||||||||||||||||||||||||||||
体積弾性率 | 160 GPa | |||||||||||||||||||||||||||||||||
ポアソン比 | 0.37 | |||||||||||||||||||||||||||||||||
モース硬度 | 6.7 | |||||||||||||||||||||||||||||||||
CAS登録番号 | 7440-62-2 | |||||||||||||||||||||||||||||||||
主な同位体 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||
詳細はバナジウムの同位体を参照 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||
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バナジウムの発見には紆余曲折があり、歴史に埋もれかけた別名をいくつか持っている。
1801年、アンドレス・マヌエル・デル・リオが「パンクロミウム(panchromium)」と名付けた。クロムを思わせる色調からの命名である。のちに、化合物を加熱すると鮮やかな赤色になることから、「エリスロニウム(erythronium)」と改名された。
1830年、スウェーデンのニルス・ガブリエル・セフストレームが「バナジウム」と名付けた。非常に美しいさまざまな色に着色することから、スカンジナビア神話の愛と美の女神バナジス(vanadis)にちなんで命名された。
1831年、ドイツのフリードリッヒ・ヴェーラーによって、エリスロニウムとバナジウムが同じものと確認される。のちにアメリカで、デル・リオの名前に因んだリオニウム(rionium)が提案されたが、実現はしなかった。
1880年、イタリアのアルカンジェロ・スカッキが新元素と誤認し、ベスビオ山にちなんでvesbiumと命名した。
18世紀、メキシコのイダルゴ州・シマパン鉱山で、褐鉛鉱(バナジン鉛鉱、バナダイト)が発見された。
1801年、アンドレス・マヌエル・デル・リオが発見した。しかし、当時は未知の化合物と考えられた。1805年、フランスの研究機関によってクロムと鑑定され、その後も不運から新元素は公認されなかった。
1830年、スウェーデンのニルス・ガブリエル・セフストレームが軟鉄中から再発見した。
1867年、イギリスのヘンリー・エンフィールド・ロスコーが塩化バナジウム(III)の水素還元により金属バナジウムを得る。
1925年、アメリカで金属カルシウムによる還元により、高純度の金属バナジウムを精製することに成功。
金属としては軟らかく、展延性があり容易に圧延加工できる。結晶構造は温度条件により3つあり、常温・常圧で安定な結晶構造は体心立方格子で、温度を上げると、正方晶系になる。比重は6.11、融点は1910 °C、沸点は3407 °C。普通の酸・アルカリや水とは反応しないが、濃硝酸・濃硫酸やフッ化水素酸には溶ける。原子価は2価から5価まで多様な値をとる。
主要な産出国は南アフリカ・中国・ロシア・アメリカで、この4か国で90 %超を占める。バナジン石などの鉱石があるが、品位が高くないため、資源としてはほかの金属からの副生回収で得ているほか、原油やオイルサンドにも多く含まれているため、それらの燃焼灰も利用される。
物質としてのバナジウムは広範囲に分布し、ほとんどどこにでも存在する。しかし、資源としては偏在性が強く、埋蔵量のほとんどは南アフリカ、中国、ロシアに存在するほか、ベネズエラのオリノコタール(超重質油中)やカナダのオイルサンドビチューメンなどの中に、硫黄などとともに含まれる。また、その生産も上記3か国とアメリカとで9割以上を占める。そのため供給は不安定なものとなりやすく、これらの国家や生産企業の動向による価格の高騰が、1988、1994、1997、2003、および2004年以降と頻繁に発生している。
バナジウム鉱物の主要なものとしては、緑鉛鉱 (Pb5(PO4)3(OH,F,Cl))に類似した鉱物である褐鉛鉱 (Pb5(VO4)3(OH,F,Cl))がある[4][5]。ほかにはカルノー石(2(UO2)2(VO4)2、3H2O)、パトロン石(V2S5)などが知られているが、資源としては品位が低い。加えて、バナジウムの多くはほかの鉱物とともに(あるいはむしろほかの鉱物の副産物として)産出されており、ほかの鉱物の需給状況にバナジウムの生産も影響を受ける。
以上のような背景から、日本国内において産業上重要性が高いにもかかわらず、産出地に偏りがあり供給構造が脆弱である。日本では国内で消費する鉱物資源の多くを他国からの輸入で支えている実情から、万一の国際情勢の急変に対する安全保障策として国内消費量の最低60日分を国家備蓄すると定められている。またリサイクル確立も重要視され、日本では廃触媒からの回収や、重油ボイラーの灰などからの回収が行われている。
製鋼添加剤としての用途が8割以上を占めているが、バナジウム化合物は触媒としてもきわめて重要なほか、化学・電気工学・電子工学の分野でも重要である。
しかし、原油中のバナジウム(ポルフィリン化合物として揮発性を持ち、製油によって重油に移行する)は燃焼時に酸化物となると、鋼材表面の不動態皮膜を低融点化させる高温腐食現象(バナジウム・アタック)を引き起こす。特にガスタービンエンジンのフィンを傷めるケースが多い。ほかにも触媒毒となるため、燃料重油中のバナジウムは十分に除去するのが望ましい。
バナジウム鋼にフェロバナジウムとして添加する。鋼にバナジウムを0.1 %程度添加すると、炭素と結合して結晶粒がより細かい金属構造になるため、靭性を損なわないで強度を増せるうえ、機械的性質や耐熱性なども向上する。伝説的なダマスカス鋼からも微量のバナジウムが確認されている。
鉄鋼系以外の合金には、おもにアルミニウムとの合金が利用される。
1924年に触媒作用が発見されて以来、バナジウム化合物を用いた触媒は広く利用され、その用途は拡大する傾向にある。
バナジウムは酸化数による色彩の変化が多様であるため、高温に耐える着色剤として利用される。バナジウムの示す色としては、五酸化バナジウムや塩化バナジウム(III)が鮮やかなオレンジから赤を示すほか、おおむね2価が紫、3価が緑、4価が青であり、5価で無色となる。
なお、二酸化バナジウム VO2とは、四酸化二バナジウム V2O4 のことである[13]『四酸化二バナジウム | 12036-73-6』。
バナジウムは、ヒトを含む大部分の脊椎動物にとって不可欠なミネラルではない。しかし、生体内の酵素や錯体の構成に加わっている例が多数確認されており、特に窒素固定細菌では、その酵素系における必須元素のモリブデンが欠乏したとき、これを補うためにバナジウムを含む酵素が働くことが分かっている。これらから、一部の生物では何らかの役割を果たしているものと考えられている。
バナジウムを含有するタンパク質にはニトロゲナーゼ、ブロモパーオキシダーゼ、ヘモバナジンなどがある。
バナジウムはさまざまな生物(比較的単純な生物が多い)から検出され、乾燥重量で100ppmを超える生物も多数確認されている。また、特異的に濃縮する生物も何種か知られている。石油中に多く含まれる原因とも考えられている。
バナジウムイオンが試験管内で細胞に対し、致死毒性を持つことが確認されている。
現在、ある程度効果が確認されているものは、次のとおりである。
バナジウムは原油・重油中に多く含まれていることから、その燃焼により毎年10万トンのレベルで大気中に放出されている。自然現象による放出は年間10トンのレベルと見積もられており、大気中の浮遊塵や降水中に含まれるバナジウムはそのほとんどが、人間活動によるものである。
したがって、天然水中のバナジウムを定量することで、化石燃料による影響を評価することができるが、バナジウムは安定した酸化物を形成するため、原子吸光分析では電気加熱炉法を用いる必要がある。
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