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分子量が大きい分子 ウィキペディアから
高分子(こうぶんし)または高分子化合物(こうぶんしかごうぶつ、英: macromolecule、giant molecule)とは、分子量が大きい分子である。国際純正・応用化学連合(IUPAC)の高分子命名法委員会では高分子(macromolecule)を「分子量が大きい分子で、分子量が小さい分子から実質的または概念的に得られる単位の多数回の繰り返しで構成した構造」と定義し、ポリマー分子(英: polymer molecule)と同義であるとしている[1]。また、「高分子から成る物質」としてポリマー(重合体、多量体、英: polymer)を定義している[2]。すなわち、高分子は分子であり、ポリマーとは高分子の集合体としての物質を指す[3]。日本の高分子学会もこの定義に従う。
高分子はその由来によって、自然界の産物である天然高分子(英: natural macromolecule)と、人工的に合成された合成高分子(synthetic macromolecule)、天然高分子から化学的に誘導された半合成高分子(semisynthetic macromolecule)に分類される。さらに、高分子を構成する分子によって有機高分子(organic macromolecule)と無機高分子(inorganic macromolecule)にそれぞれ分けられる。天然の有機高分子は生物によって合成されるため、生体高分子とも呼ばれる。これらの分類方法とは別に、特に生体高分子において繰り返し構造の規則性での分類もある。ただ1種の構成単位が単一の連結法で繰返された構造を持つ化合物を規則性高分子(regular macromolecule)という。2種以上の構成単位の繰返しからなる構造をもつ、あるいは構成単位の連結法が単一でない構造をもつ高分子を不規則性高分子(irregular macromolecule)という。
また、共重合体の単位構造配列による分類方法もある。
高分子の分岐の程度で以下のように分ける[3]。
高分子は1種類あるいは数種類の繰り返し単位(repeating unit)から成る。殆どの場合、繰り返し単位は原料の単量体に由来する。高分子の構造は繰り返し単位の化学構造だけでなく、繰り返し単位の結合や重合度によって異なる。これらの要素によって決定される高分子の構造を一次構造という。
一次構造は、その高分子が生成された反応の素過程を記録している。生体高分子の一方の末端には開始剤(の断片)が存在する。もう一方の末端には、反応停止剤といった、重合の停止反応に由来する断片が存在する。両末端の間は成長反応の様子を示唆する。単量体が共役二重結合や三重結合を有していた場合、シス-トランス異性など、不飽和結合に関する幾何異性の情報を高分子の構造から知ることができる。
高分子の部分や官能基は、自己の他の部分や官能基と分子間力(イオン結合、水素結合、双極子相互作用、ファンデルワールス力)によって相互作用している。この相互作用は、高分子鎖の骨格に沿って近いもの(分子式上での隣接および近接部分)の間にも遠いものの間にも生じる。前者の相互作用を近接相互作用英: next-nearest-neighbor interaction、後者を遠隔相互作用という。遠隔相互作用が生ずる理由は、高分子が折れ曲がることにより分子式上で遠く離れていても空間的に近づくためである。加えて、溶液の場合、溶媒や他の溶質とも分子間力や配位結合での相互作用が生じている。
これら相互作用は高分子の立体構造を決定的に支配する。相互作用が存在しない理想鎖の場合、高分子は無数の立体構造を取り得る。なぜなら、相互作用がなければ高分子の各結合は自由に回転できるためである。しかし、現実には相互作用により分子間回転は制限され、高分子が取り得る立体構造は制限されている。高分子の構造が決定されている例としてはタンパク質や核酸の四次構造である。
溶液中の高分子の立体構造は刻々と変化し、見掛け上、高分子は運動している。これは、熱運動する溶媒分子との衝突による。高分子のこの運動をミクロブラウン運動という。
単量体がアルケンであるビニル重合では、頭-尾結合(head to tail)と頭-頭結合(head to head)の2通りの結合様式が、置換基の立体障害や電子的特性に応じて生じる。これを位置規則性という。一方ラクトンや環状エーテルなどのや環状化合物を単量体とする開環重合では、開裂が起こる場所によって頭-尾結合と頭-頭結合の起こる割合も変わる。
プロピレンなどの重合において、重合することによってできた四級炭素は不斉炭素原子であり、重合法によってはこの不斉炭素の絶対配置に規則性が現れる。これを立体規則性(タクティシティー、tacticity)という。すべての不斉炭素が同じ絶対配置を持つような構造をイソタクチック(アイソタクチック)といい、絶対配置が交互に並ぶものをシンジオタクチックという。また、全くランダムになった構造をアタクチックという。立体規則性はNMRを用いることで評価ができる。
チーグラー・ナッタ触媒によって合成されたポリプロピレンはイソタクチックであるが、通常のラジカル重合で合成したポリプロピレンはアタクチック構造である。
共重合体には、ランダム共重合体(―ABBABBBAAABA―)、交互共重合体(―ABABABABABAB―)、周期的共重合体(―AAABBAAABBAAA―)、ブロック共重合体(―AAAAAABBBBBB―)、の4種類の構造がある。 また、ブロック共重合体の一種にグラフト共重合体と呼ばれるものがあり、これは幹となる高分子鎖に、異種の枝高分子鎖が結合した枝分かれ構造をしている。
多数の枝からなる樹木状(多分岐高分子)のデンドリマー、ハイパーブランチポリマー、ロタキサン、高分子カテナン、水素結合、静電気力、配位結合のような弱い結合力で結びつけた自己集積型高分子、などの新構造高分子の合成も近年注目されている。
ミクロブラウン運動により形が常に変化するため、高分子の大きさ(分子量ではない)も変化する。高分子の大きさはある瞬間の特定の立体構造での大きさではなく、可能性のあるすべての立体構造の大きさを平均した値(高分子鎖の広がり、英: average chain dimension)で評価される。高分子鎖の広がりは平均二乗両端間距離や平均二乗回転半径などで計算される。これらに加えて、分子内や溶媒との相互作用の平均力ポテンシャル、さらには排除体積効果も考慮されることがある[4]。
分子が懸濁(英: suspention)した状態を分散相という。このとき分子の大きさが揃っている相を単分散(単分散系、英: mono-disperse system)、不揃いなものを多分散(多分散系、英: poly-disperse system)という。
合成高分子の分子量は多分散を示す。つまり合成高分子は、同一の組成を持つが分子量は異なる分子の混合物であり、その分子量は通常、数平均分子量あるいは重量平均分子量で表される。分子量分布は、応用上分子量そのものと同様に重要であり、物性面では通常分子量分布が狭いことが望ましいが、加工の容易さからは分子量分布が広いことが有利になる場合も多く、分子量のみならずその分布も用途に応じて設計する必要がある。平均分子量の算出方法には分子1個あたりの平均の分子量として算出される数平均分子量や、重量に重みをつけて計算した重量平均分子量等がある。重量平均分子量と数平均分子量の比を分散比と呼び、これが1に近いほど分子量分布が狭いことを示す。
生体高分子、天然高分子には、単一の分子量からなる単分散を示すものも多い。
分子量の測定法には以下のものがある。
分子内にあらかじめ反応点を2つ以上持たせておく方法と、反応中に活性点を連鎖的に発生させる方法がある。
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