モンテカルロ市街地コース
ウィキペディアから
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シルキュイ・ド・モナコ(Circuit de Monaco、モンテカルロ市街地コース)は、モナコ公国にある公道コースで、F1モナコグランプリが開催される。
コート・ダジュールの高級リゾート地として名高いモナコの公道を閉鎖して設営される市街地コースであり、インディ500、ル・マン24時間レースと並ぶ世界三大レースの1つであるモナコGPが1929年より開催されている。
コース前半は豪華なカジノやホテルが立ち並ぶ丘陵部(モンテカルロ区)を上り下りする。海沿いのトンネルを通過し、後半はクルーザーやヨットが停泊する港湾部(ラ・コンダミーヌ区)の海岸沿いを走行する。1周は3.340kmと、現在のF1開催コースの中では最も短く、平均速度も160km/h程度と最も低い。
2車線道路を使用しているため、市街地コースの中でも特にコースの幅が非常に狭く、直線はほとんどない。19のコーナーがあり、そのほとんどがガードレールに視界を遮られたブラインドコーナーである。エスケープゾーンはあってもランオフエリアはほぼ無いので、僅かなミスでもリタイアに繋がりやすい。
レース中は合計4000回ものシフトチェンジが行われる[3]。マニュアルシフトの時代には絶え間なくシフト操作を行いながら、片手でステアリングを操るテクニックが要求された。セミオートマチックシフトの普及後も、片手操作が緩和されたもののガードレールをかすめながら正確なライン取りを維持する難しさは変わっていない。優雅な雰囲気とは裏腹に、ドライバーの技量や集中力が問われるドライバーズサーキットであり、ここでの1勝は他のレースの3勝に値するといわれている[4]。
直線が少なく、中低速コーナーが連続するため、エンジンパワーよりもマシンのトータルバランスが重要である。空力セッティングはドラッグよりもダウンフォースを最重要視し、ウィングを目一杯立てて走行する。近年ではハイダウンフォース仕様の前後ウイングを装着するのが一般的であり、その他にも幾つかのパーツを装着してダウンフォースを稼ぐ手法もよく見られる。全区間一般公道であるため路面の摩擦係数は低く、各所にうねりや凸凹があるためオーバーレブを起こしやすく、エンジンのおいしい所を使い切るためのクロスミッション化とストレートの短さが起因のエンジン冷却問題も重なり、低速コースの割にはエンジン負荷が高くエンジンブローが起こることも少なくない。タイヤへの負担は少ないが、チームやドライバーには精密なサスペンションセッティングが要求される。
基本レイアウトは初開催当時からほとんど変わっていない。主だった変更は、ポルティエ以降のコース後半区間に見られる。
かつてはピットなどの作業スペースも他のサーキットに比べて狭く、メカニックが作業するすぐ脇をピットアウトするマシンが猛スピードで通過していた。1986年までは決勝レースの出走台数が、通常は24台のところ20台に制限されていた(当時は事故も多発していた)。2003年にピットガレージの大幅な増改築を行ってからは、作業スペースの面でも他のグランプリと遜色はなくなっている。それでも駐車スペースが不足しているため、サポートレース(2024年現在はFIA F2/FIA F3/ポルシェスーパーカップ)に出場するチームは王宮の地下駐車場からピットまでマシンを押して運び込む。
コースは約33kmのガードレールで囲まれ、650名のコースマーシャルと120名の消防士がアクシデントに備えている[2]。事故に備えて各所にクレーン車が配備され、リタイアしたマシンを速やかに撤去する。救急時に医師が移動できる外周路がないため、各ポストには医療チームが配置されている。1955年にアルベルト・アスカーリがマシンもろとも海中に転落して以来、ヌーベル・シケインには潜水夫が待機している。各セッション開始前には、港に停泊する船舶に岸から離れるよう指示が出される。
このサーキットでは、過去に2件の死亡事故が起こっている。
死亡事故には至っていないが、ヌーベル・シケインの本コースとエスケープロードを隔てる並木に設置されたバリアは危険箇所となっている[6]。シケインへのブレーキングで挙動を乱してスピン状態となり、マシン側面からバリアの先端に激突して、ドライバーが頭部にダメージを負うというパターンが共通している。
2007年1月には世界ラリー選手権(WRC)第1戦ラリー・モンテカルロの最終SSであるスーパーSSがコースの一部を使って開かれた。コースはヨットハーバー内とメインストリートをヘアピンカーブで繋ぐ「モナコサーキット」。1周1.4kmのコースを2周し、2台同時にスタートするがスタート地点を離すことで基本的には単独走行となった。またタイヤはドライターマック(舗装路)用タイヤではなく、グリップ力の低下するスノータイヤを用いなければならないという特例を設けたことで、意図的にスピードレンジを下げ、コーナーでの派手なドリフトが起きやすくするなどの工夫が見られた。
2015年には、2014 - 15年シーズンのフォーミュラE第7戦・モナコeプリでコースの一部が使用された。コースは1コーナーからヌーベルシケインの退避路を逆走。シケインをUターンするように回り込み、その後はコース後半部分を走行するレイアウトだったが、1コーナーから退避路にかけてコース幅が極端に狭かったため、決勝スタート直後に渋滞し接触が発生、複数台がリタイアするアクシデントがあった。その後1シーズン置いて、2016 - 17年シーズン第5戦として開催された。2018 - 19年シーズンからはF1で使用されているサーキットコースで開催される予定であったが見送られ、以前と同じレイアウトで第9戦として開催された[7]。 2020 - 21年シーズンは第7戦として開催され、F1と同じフルコースで行われた[8]。
1997年からは、ヒストリックカーレースのモナコ・ヒストリック・グランプリがこのコースを使用して開催されており、2000年以降は原則として隔年で開催されている。2014年以降はフォーミュラEのモナコeプリと交互開催となったが、2022年以降モナコeプリが毎年開催されているのに対し、こちらは隔年開催のままである。
1996年に日本のソロユニットZARDが発表した表題曲であり、アルバムのタイトルでもある「TODAY IS ANOTHER DAY」のプロモーション・ビデオの一部は当地で撮影されている(そのアルバムのジャケット写真でもコースマップ上のヌーベル・シケインからその先付近に置かれたクルーザーが確認できる)。なお、前述の通りその楽曲の発表翌年である1997年に改修がなされている。
2009年にツール・ド・フランスのグランデパールに選ばれ、第一ステージで個人タイムトライアルのコースとして利用された。スタートライン付近からスタートし、カジノ前から一旦コースを外れポルティエからF1コースに戻り、トンネルを抜けてプールサイドでゴールという15.5km、標高差200mのコースで開催された。また2日目のスタートにも選ばれ、カジノ広場でセレモニーを行い、トンネル~ロウズ・ヘアピンをオフィシャルカー先導のもと逆走し、郊外の正式スタートポイントまでのパレードランコースとして用いた。
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