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ポンプ座(ポンプざ、Antlia)は、現代の88星座の1つ。18世紀半ばに考案された新しい星座で、真空ポンプをモチーフとしている[1][3]。
4等星が1つある以外は5等星以下の暗い星だけの、目立つところのない星座である。
2022年4月現在、国際天文学連合 (IAU) によって1個の恒星に固有名が認証されている[4]。
この星座には最初からβ星が設定されていなかった[7]。
モチーフとなったポンプは、水を汲み上げるポンプではなく、科学実験において真空状態を作り出すための真空ポンプである[9]。ラカーユは、実験物理学を象徴するものとしている[3][10]。
ラカーユは、それまでのアルゴ座の領域の一部を切り離して、そこに Antlia pneumatica と Pixis Nautica[注 1]を設けた[11][注 2]。初出は、1756年に刊行された1752年版のフランス科学アカデミーの紀要『Histoire de l'Académie royale des sciences』に掲載されたラカーユの星図で、真空ポンプの星座絵と la Machine Pneumatique というフランス語の名称が描かれていた[3][12][13][14]。ラカーユの描いたポンプは、フランスの発明家ドニ・パパンが1670年代前半に使用した単気筒式のタイプであった[15][16]。ラカーユの死後の1763年に刊行された著書『Coelum australe stelliferum』に掲載された第2版の星図では、ラテン語化された「Antlia Pneumatica」と呼称が変更されていた[3][17]。
1801年にドイツの天文学者ヨハン・ボーデが刊行した星図『ウラノグラフィア』では、パパンがパリからロンドンに渡ってロバート・ボイルと共同で改良した2気筒式の真空ポンプが描かれている[3]。現在の Antlia という学名は、イギリスの天文学者ジョン・ハーシェルが提案したものである。ジョン・ハーシェルは、1844年のフランシス・ベイリー宛の書簡の中で、Antlia Pneumatica を Antlia と短縮することを提案した[3][18]。それを受けたベイリーが、翌年の1845年に刊行した『British Association Catalogue』において Antlia と改めたことにより、以降この呼称が定着することとなった[3]。
1922年5月にローマで開催されたIAUの設立総会で現行の88星座が定められた際にそのうちの1つとして選定され、星座名は Antlia、略称は Ant と正式に定められた[19]。新しい星座のため星座にまつわる神話や伝承はない。
この星座の由来について「ロバート・ボイルが、ドイツの物理学者オットー・フォン・ゲーリケの考案した真空ポンプを改良した記念として設定した」とする説明が流布されたことがあった[16][20]が、これは事実とは異なる。
日本では、当初「排氣器」という訳語が充てられていた。これは、1910年(明治43年)2月に刊行された日本天文学会の会誌『天文月報』の第2巻11号に掲載された、星座の訳名が改訂されたことを伝える「星座名」という記事で確認できる[21]。この訳名は、1925年(大正14年)に初版が刊行された『理科年表』にも引き継がれ[22]、戦後も継続して「排氣器(はいきき)」の呼称が使われた[23]。1952年(昭和27年)7月、日本天文学会は「星座名はひらがなまたはカタカナで表記する」[24]とした。このときに、Antlia の訳名は「ポンプ」に変更され[25]、以降この呼び名が継続して用いられている。
天文同好会[注 3]の山本一清らは異なる訳語を充てていた。天文同好会の編集により1928年(昭和3年)4月に刊行された『天文年鑑』第1号では星座名Antliaに対して「ポンプ」の訳語を充てていた[26]が、既にIAUが学名をOctansと定めた後の1931年(昭和6年)3月に刊行した『天文年鑑』第4号では星座名を Antlia Pneumatica、訳名を「空気ポンプ」と改め[27]、以降の号でもこの星座名と訳名を継続して用いていた[28]。
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