一粒子系
ボームのアイデアのいくつかは、シュレディンガー方程式の再構成に基づいている。波動関数
そのものを直接求める代わりに、ボームは波動関数を

のように、絶対値
と位相
に分解し、それぞれについての方程式に書き直した。
質量mの一粒子についてのシュレディンガー方程式は

ここで波動関数
は位置座標
と時刻 tにおいて定義される複素関数である。
粒子はこのψ場の中を以下の先導方程式に従って運動する。

この式から粒子の軌跡を得ることができる。
確率密度
は波動関数の絶対値の2乗として定義される実関数である:
.
ここで次の2つの実関数
および
を用いて、導関数
を次のように変数分離する:

すると、シュレディンガー方程式は
と
についての次の連立方程式に書き直せる:
![{\displaystyle {\begin{aligned}{\frac {\partial R({\boldsymbol {x}},t)}{\partial t}}&={\frac {-1}{2m}}[R({\boldsymbol {x}},t)\nabla ^{2}S({\boldsymbol {x}},t)+2\nabla R({\boldsymbol {x}},t)\cdot \nabla S({\boldsymbol {x}},t)]\\{\frac {\partial S({\boldsymbol {x}},t)}{\partial t}}&=-\left[V+{\frac {1}{2m}}(\nabla S({\boldsymbol {x}},t))^{2}-{\frac {\hbar ^{2}}{2m}}{\frac {\nabla ^{2}R({\boldsymbol {x}},t)}{R({\boldsymbol {x}},t)}}\right].\end{aligned}}}](//wikimedia.org/api/rest_v1/media/math/render/svg/e2f86248ab4219b0b60a093d957f4f3c515aac3a)
は波動関数の絶対値
なので、その2乗
は確率密度
となる。
は波動関数の位相(偏角)であるが、これは作用原理における作用に相当する。

最終的に、

ただし
![{\displaystyle Q({\boldsymbol {x}},t)=-{\frac {\hbar ^{2}}{2m}}{\frac {\nabla ^{2}R({\boldsymbol {x}},t)}{R({\boldsymbol {x}},t)}}=-{\frac {\hbar ^{2}}{2m}}{\frac {\nabla ^{2}{\sqrt {\rho ({\boldsymbol {x}},t)}}}{\sqrt {\rho ({\boldsymbol {x}},t)}}}=-{\frac {\hbar ^{2}}{2m}}\left[{\frac {\nabla ^{2}\rho ({\boldsymbol {x}},t)}{2\rho ({\boldsymbol {x}},t)}}-\left({\frac {\nabla \rho ({\boldsymbol {x}},t)}{2\rho ({\boldsymbol {x}},t)}}\right)^{2}\right].}](//wikimedia.org/api/rest_v1/media/math/render/svg/41067bb566af0f4e567bbec4f291c77b10b15952)
ボームは、上式で現れる
を量子ポテンシャルと名付けた。(2)はニュートンの運動方程式に量子ポテンシャルを付加したものであり、ボームは(2)を粒子の運動についての基本方程式として採用した。一方でド・ブロイはニュートンの運動方程式との類似性には興味をもたず、先導方程式を採用している[4]。量子ポテンシャルはRが小さいところで非常に大きくなり、波動関数の節のところ(R=0の場所)で発散することもある。
多粒子系
以上の議論は多粒子系に簡単に拡張できる。多粒子系のシュレディンガー方程式は、

ここでi番目の粒子は
の質量を持ち、時刻t における位置座標を
とする。 波動関数
は全ての粒子の位置座標
と時刻 t の関数である。
はi番目の粒子の位置座標
についてのベクトル演算子ナブラである。
波動関数は
のように、絶対値
と位相
に分解する。
粒子はこのψ場の中を以下の先導方程式に従って運動する。

この式からi番目の粒子の軌跡を得ることができる。
確率密度
は次式で定義される実関数である:

を用いると波動関数は
.
ここから一粒子系と同様に、
と
についての連立方程式が得られる:

ただし
![{\displaystyle Q=-\sum _{i}{\frac {\hbar ^{2}}{2m_{i}}}{\frac {\nabla _{i}^{2}R}{R}}=-\sum _{i}{\frac {\hbar ^{2}}{2m_{i}}}\left[{\frac {\nabla _{i}^{2}\rho }{2\rho }}-\left({\frac {\nabla _{i}\rho }{2\rho }}\right)^{2}\right].}](//wikimedia.org/api/rest_v1/media/math/render/svg/6c65151d44bff18c632276a2606ce9f277fae554)