一粒子系
ボームのアイデアのいくつかは、シュレディンガー方程式の再構成に基づいている。波動関数そのものを直接求める代わりに、ボームは波動関数を
のように、絶対値と位相に分解し、それぞれについての方程式に書き直した。
質量mの一粒子についてのシュレディンガー方程式は
ここで波動関数 は位置座標 と時刻 tにおいて定義される複素関数である。
粒子はこのψ場の中を以下の先導方程式に従って運動する。
この式から粒子の軌跡を得ることができる。
確率密度 は波動関数の絶対値の2乗として定義される実関数である:
- .
ここで次の2つの実関数およびを用いて、導関数を次のように変数分離する:
すると、シュレディンガー方程式はとについての次の連立方程式に書き直せる:
は波動関数の絶対値 なので、その2乗 は確率密度 となる。
は波動関数の位相(偏角)であるが、これは作用原理における作用に相当する。
最終的に、
ただし
ボームは、上式で現れるを量子ポテンシャルと名付けた。(2)はニュートンの運動方程式に量子ポテンシャルを付加したものであり、ボームは(2)を粒子の運動についての基本方程式として採用した。一方でド・ブロイはニュートンの運動方程式との類似性には興味をもたず、先導方程式を採用している[4]。量子ポテンシャルはRが小さいところで非常に大きくなり、波動関数の節のところ(R=0の場所)で発散することもある。
多粒子系
以上の議論は多粒子系に簡単に拡張できる。多粒子系のシュレディンガー方程式は、
ここでi番目の粒子は の質量を持ち、時刻t における位置座標をとする。 波動関数は全ての粒子の位置座標と時刻 t の関数である。はi番目の粒子の位置座標についてのベクトル演算子ナブラである。
波動関数はのように、絶対値と位相に分解する。
粒子はこのψ場の中を以下の先導方程式に従って運動する。
この式からi番目の粒子の軌跡を得ることができる。
確率密度は次式で定義される実関数である:
を用いると波動関数は
- .
ここから一粒子系と同様に、 と についての連立方程式が得られる:
ただし