アラン・シリトー(Alan Sillitoe、1928年3月4日 - 2010年4月25日)は、イギリス、ノッティンガム出身の小説家。
概要
イギリス・ノッティンガムの出身[1]。なめし皮工場の労働者の子供として生まれ、14歳からラレー自転車工場やベニヤ板工場などで働く[1]。19歳でイギリス空軍に入隊し、無線技士としてマラヤに配属されたが、肺結核となり帰国[1]。1年半におよぶ治療生活のなかで大量の読書をして文学に目覚め、病気が治ったのち軍人恩給で南フランスに行き、その後スペイン領マジョルカ島に移る[1]。そこで作家のロバート・グレーヴスと知り合い、励まされつつ執筆した『土曜の夜と日曜の朝』(1958年)で作家としてデビュー、作家クラブ賞を受賞するなど好評を得た[1]。翌年の短編集『長距離走者の孤独』も高く評価され、ホーソーンデン賞を受賞した[1]。
シリトーの文壇への登場は、『怒りをこめてふりかえれ』のジョン・オズボーン(en:John Osborne)、『ラッキー・ジム』のキングスレー・エイミス、『急いで駆け降りよ』のジョン・ウェイン(en:John Wain)など、「怒れる若者たち」と呼ばれる一派と時を同じくしていたため、そのメンバーの一人と見なされることが多い。
しかし、この一派の中心となった作家たちは、おおむねオックスフォード大学卒のインテリであった(ただし、オズボーンの学歴は高くなく、出身階級もシリトーと同じ労働者階級である)。この点、工場労働者の息子であり、自らも工場労働者であったシリトーとは異質のものであった。反体制を叫ぶ「怒れる若者たち」の怒りは、体制の改革と共に消えてゆく。しかし、シリトーの主人公たちはなおも怒り続ける。
社会が不当に築いた彼らの周りの規制への反撥、その規制を守ろうとする権力者の偽善に対するアナーキックな憤りから、不道徳行為という方法で権威へのささやかなプロテストを試みる。しかし彼らの行動は、積極的に体制を破壊しようとする方向には向かわない。反体制的反抗ではなく「非体制的」な反逆とでも呼べそうなものである。
作品
小説
- 土曜の夜と日曜の朝 Saturday Night and Sunday Morning (1958)
- 長距離走者の孤独 The Loneliness of the Long-Distance Runner (1959)
- 将軍 The General (1960)
- ドアの鍵 Key to the Door (1961)
- 栗原行雄訳 集英社 1973、のち文庫
- 屑屋の娘 The Ragman’s Daughter (1963)
- 河野一郎・橋口稔訳 集英社 1969、のち文庫
- ウィリアム・ポスターズの死 The Death of William Posters (1965)
- 橋口稔訳 集英社 1969、のち文庫
- 燃える樹 A Tree on Fire (1967)
- 鈴木建三訳 集英社 1972
- グスマン帰れ Guzman, Go Home (1968)
- 橋口稔訳 集英社 1970、のち文庫
- 華麗なる門出 A Start in Life (1970)
- 河野一郎訳 集英社 1974
- ニヒロンへの旅 Travels in Nihilon (1971)
- 小野寺健訳 講談社 1979
- ノッティンガム物語 Men, Women and Children (1973)
- 橋口稔・阿波保喬訳 集英社 1975、のち文庫
- 見えない炎 The Flame of Life (1974)
- The Widower’s Son (1976)
- The Storyteller (1979)
- 悪魔の暦 The Second Chance (1981)
- 河野一郎訳 集英社 1983
- Her Victory (1982)
- The Lost Flying Boat (1983)
- Down from the Hill (1984)
- Life Goes On (1985)
- 渦をのがれて Out of the Whirlpool (1987)
- 山田順子訳 福武書店 1990
- The Open Door (1989)
- Last Loves (1990)
- Leonard’s War (1991)
- Snowstop (1993)
- Alligator Playground (1997)
- The Broken Chariot (1998)
- The German Numbers Woman (1999)
- Birthday (2001)
- A Man of His Time (2004)
- New and Collected Stories (2005)
ノンフィクション
- ロシアの夜とソビエトの朝 Road to Volgograd (1964)
- 鈴木建三訳 晶文社 1973
- 素材 Raw Material (1972)
- 栗原行雄訳 集英社 1976
- 私はどのようにして作家となったか Mountains and Caverns: Selected Essays (1975)
- 出口保夫訳 集英社 1978
- The Saxon Shore Way (1983)
- Alan Sillitoe’s Nottinghamshire (1987)
- Life Without Armour (1995)
- Leading the Blind: A Century of Guidebook Travel, 1815 – 1914 (1995)
- A Flight of Arrows: Essays and Observations (2003)
- Gadfly in Russia (2007)
詩
- The Rats and other poems (1960)
- Falling Out of Love and other poems (1964)
- Love in the Environs of Voronezh and other poems (1968)
- Barbarians and other poems (1973)
- Storm: New Poems (1974)
- Snow on the North Side of Lucifer: Poems (1979)
- Sun Before Departure: Poems 1974 – 1982 (1984)
- Tides and Stone Walls: Poems (1986)
- Collected Poems (1993)
戯曲
- All Citizens are Soldiers (with Ruth Fainlight; translated from Lope de Vega’s‘Fuente Ovejuna’(1969)
- Three Plays: The Slot-Machine, The Interview, Pit Strike (1978)
児童書
- マーマレード・ジムのぼうけん The City Adventures of Marmalade Jim (1967)
- 上野瞭訳 栗田八重子絵 あかね書房 1971
- Big John and the Stars (1977)
- The Incredible Fencing Fleas (1978)
- Marmalade Jim at the Farm (1980)
- Marmalade Jim and the Fox (1984)
映画化作品
- 土曜の夜と日曜の朝(1960年、イギリス、監督カレル・ライス)
- 長距離ランナーの孤独(1962年、イギリス、監督トニー・リチャードソン)
- 誇り高き戦場(1967年、アメリカ、監督ラルフ・ネルソン) 『将軍』(The General)が原作
- 屑屋の娘(1972年、イギリス)
出典
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