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逆再生やスピードを容易にするための機械の動力伝達の一部のパーツの名称 ウィキペディアから
歯車(はぐるま、英: gear)とは、伝動車の周囲に歯形を付けて確実な動力伝達を可能にした機械要素である[1]。英語では「gear」で、日本語ではギア、ギアーと表記されることもあるが、JISでの表記はギヤである。減速や増速、回転軸の向きや回転方向を変えたり、動力の分割などに用いる。
歯車は平ベルト等と異なり滑りが無いので、タイミング機構には不可欠である。軸と一体のものや軸受けを仕込んだもの、キー溝やスプラインを設けたものがある。
歯数の組み合わせは自由であるが、大きな力を伝達するときや、滑らかさを必要とするときは、いつも同じ歯同士が当たると、微小な傷が大きくなったり、特定の箇所で音が発生するため、無駄歯を設けて歯数が互いに素になるように設計される場合がある。互いに素である組み合わせでは全体が均一に磨耗し、歯当たりが滑らかになる。これを英語ではharmonic wearという。ほとんどの工業製品はこの組み合わせで作られるが、減速比の都合などによってそうできない場合もある。歯車の材質が同種の組み合わせは摩擦係数、耐摩耗性、焼付き耐性が劣るため異なる材質か表面処理を行った歯車の組み合わせが好ましい[注釈 1]。また、小歯車は硬い材料にしておかないと先に磨耗する。
代表的な歯車装置には以下のようなものがある。
平行して有る2本の軸上に2種類ずつ(計4枚)のギヤを接続しループを作った場合、2本の軸上にあるギヤの比率が一定である場合を除いて、軸は回転をしない。
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歯数のちがう歯車を組み合わせて減速や増速に用いる。ウォームギヤ以外の歯車2つがかみ合っている場合、回転角度および角速度の比は歯数の比の逆数になる。トルクの比は、摩擦力を除けば、てこの原理により、ピッチ円半径の比になる。歯数の比とピッチ円径の比は等しくなるため、駆動歯車をD、従動歯車をPとして式で表すと次のようになる。
3つ以上の歯車が順にかみ合っているとき、最初と最後の歯車のそれらの比は、最初と最後の歯車が直接かみ合っている場合と同じで、間の歯車の歯数に関係ない。(3つの平歯車で入力と出力の回転方向を同じにする場合等。)
の場合、減速となってトルクが増し、逆の場合増速となってトルクが減る。
となり、摩擦損失を除けば、エネルギーおよび仕事率は変わらない。
例えば、歯数90の大きい歯車と、歯数20の小さい歯車がかみ合っている場合、小さい歯車の角速度は大きい歯車の4.5倍、大きい歯車のトルクは小さい歯車の4.5倍となり、小さい歯車が3回転すると大きい歯車は240度回転する。
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動力の分割、分配、取り出しや、入力、統合に用いられている。例えば自動車[注釈 2]はデファレンシャルギヤによって、1つの原動機で左右両輪を回転させる。さらに、一部の四輪駆動車ではセンターデフで動力を前後輪に分割するものもある。また、オイルポンプなどの補機を回転させるために出力を取り出したり、逆にスターターモーターの回転力を入力している。
歯すじの形状等で分類される。2つの歯車を組み合わせた際に、それぞれの軸の位置関係は平行となるもののほか、交差するものや食い違いとなるものがある。
歯を回転軸と平行に切った歯車[1]。製作が容易であるため動力伝達用(駆動列)に最も多く使われている。歯車同士が外接する外歯車と、小歯車が円筒の内面に歯筋を設けた大歯車に内接する内歯車がある[1]。
大小2つの平歯車を組み合わせる時に、大きい方をギヤといい、小さい方をピニオンという。ピニオンに組み合わされる大歯車は外歯車に限定されず、内歯車や、直径を無限大にしたラック(英語: rack)とも組み合わされる[1]。
回転運動を直線運動に変えるには、ラックと小歯車を組み合わせたラック・アンド・ピニオンが用いられる[1]。ラック・アンド・ピニオンは工作機械の位置送りや自動車のステアリング装置に用いられている。
平歯車の一種で、読んで字のごとく内側に歯がついている歯車。
内側に噛ませるため小径の歯車としか組み合わせられない。遊星歯車機構のようにこの歯車が無ければ成立しない構造のものも存在する。
平歯車の歯を軸線に対して斜め(はす)に切って、螺旋状とした歯車[2]。
同時にかみ合う歯数を増やし、歯当たりが分散されるので音が静かで、トルクの変動が少ない。トルクがかかると推力(スラスト)が発生するので、何らかの形のスラスト軸受が必要になる[2]。
減速機構では原動機側のトルクは小さいので傾きを大きく、最終段ではトルクが大きいので傾きを小さくする。
はすば歯車と同じ形の歯車を組み合わせて、2軸の間に平行以外の角度で動力の伝達を行う歯車である[2]。
同じ傾斜でねじれ方向が逆向きのはすば歯車を2つ組み合わせた形をしていて、はすば歯車の軸方向に発生する推力を互いに打ち消しあう構造とした歯車である[2]。
円錐面上に歯を刻んだ歯車で、広げた傘のような形状をしていることからこのように呼ばれる[2]。 平行ではなく角度がついた軸の間で動力を伝達する際に用いられる。
一般的には入出力の2軸を同一平面上とし、平歯車を円錐状に窄めた形のすぐばかさ歯車、はすば歯車を円錐状に窄めた形のはすばかさ歯車、歯形が曲線(円弧)状のまがりばかさ歯車がある[2]。
さらに、入出力の2軸を同一平面上ではなくねじれの位置としたハイポイドギヤ(英語: hypoid gears)があり[2]、 自動車の駆動系、特に縦置きエンジン車の差動装置はかさ歯車の応用の1例である。
冠歯車はかさ歯車の一種で、歯が回転軸に対し垂直につけられたもの。歯車の形状は王冠に似る。
かさ歯車と組み合わせのほか、小径の平歯車(ピニオン)とも組み合わされる。
ウォームとウォームホイールを、互いの軸が直角で交わらない位置で組み合わせたもの[2]をウォームギヤと呼ぶ。1段で大きな減速比が得られ、他の歯車機構に比べて騒音が少ない[2]。
オルゴールの調速機(ガバナー)、自動車のステアリングギア(ウォームアンドローラー)、天体望遠鏡の赤道儀、鉄道模型の駆動などに採用されている。
球体の表面に、2軸が直交した歯を持つもの。
回転3自由度の運動を可能とする歯車機構の中でも小型、軽量、伝達効率の高さを特徴とする[3][4]。
円盤・円柱の直径方向に軸を持つモノポールギヤとの組み合わせで、ロボットアームの関節やドローン用カメラのジンバル制御などへの利用が期待されている。
1枚の歯車とローラーチェーンをかみ合わせて回転の伝達を行う機構、あるいはその歯車をスプロケットと呼ぶ。
2つ歯車による機構ではないので歯車機構という意味では歯車とは呼ばれない。
歯車の歯の形状は数学的な計算から求められる曲線となっていて、歯車を製造、利用する視点からは歯形曲線とよばれる。伝動用の歯車としてはインボリュート曲線とサイクロイド曲線の2種類が基本とされるが、一般にはインボリュート曲線が用いられる[5]。
歯車には以下の規格が用いられる。
上記、規格は各団体で購入可能(3.は日本規格協会でも購入可能)
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歯車の歴史は古く、1901年には地中海に沈んでいた古代ギリシア時代のアンティキティラの沈没船(英語版)から回収されたアンティキティラ島の機械は紀元前150 - 100年に製作されたと考えられているが、これは歯車を利用した天体運行計算機だった[6]。しかしこの機械と同様の複雑さを持った技術工芸品はその1000年後まで現れることはなかった[6]。 ウィトルウィウスは『建築について』の中で縦に回転する水車について論じたが、縦に回転する動力を横方向の回転に変換するランタン歯車と呼ばれる木製のピンを組み合わせる歯車が1世紀頃のローマ帝国で普及し、18世紀末まで日常的な歯車として利用され続けた[7]。全金属製の歯車は11 - 12世紀頃に登場したが、産業用ではなく専ら時計などの精密装置に用いられた[7]。
さまざまな国家や企業(特に製造業)、団体の旗・記章等において、「工業」あるいは「労働者」を象徴する意匠として歯車が用いられており、ミャンマー、アンゴラの国旗および国章、イタリア、中華人民共和国(中国)、ベトナム、ラオスの国章、日本共産党の党章、日本国の五円硬貨、工場を表す日本の地図記号等が例として挙げられる。
フィクションでは、古くはチャールズ・チャップリン監督作品『モダン・タイムス』が人間が機械の一部分のように扱われる象徴として歯車を用いており、日本の漫画・アニメーション作品でも『銀河鉄道999』の機械帝国が使用している。
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