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PlayStation用アドベンチャーゲーム ウィキペディアから
『ありす in Cyberland』(ありすインサイバーランド)は、グラムス株式会社から1996年12月20日に発売されたPlayStation用アドベンチャーゲーム、およびそれに関連したメディアミックス作品である。
仮想空間で悪と戦う少女達の戦いを描いた本作は、アドベンチャーゲームとギャルゲーとの融合である「ギャルベンチャーゲーム」として開発された[1]。
グラムス代表の吉田直人は元々、アニメやゲームは子どものものだという当時の風潮に対して大きく反発していたことに加え、『QUOVADIS 2〜惑星強襲オヴァン・レイ〜』の開発期間中に咽頭癌にかかり、「死ぬまでに作品を世に残したい」という気持ちを強く抱くようになった[2]。 その結果、テレビアニメ版やドラマCDなどの大規模なメディアミックスが展開された[2]。 グラムスの社長だった吉田直人は大規模なメディアミックスを展開できた理由について、「僕が自分のお金で,自分がリスクを背負ってやっているので,全部僕がジャッジできるわけです。(中略)僕がプロデューサーだと「僕らはこういうことをやります」と言い切れる。そうしていたら周りの人も勢いに飲み込まれて,「なんか一緒にやっておいた方がいいんじゃないか?」という感じになっていったんです。」と2019年の4Gamer.netとのインタビューの中で振り返っており、ゲームを主体としたメディアミックスはグラムスが初めてではないかと話している[2]。
当時インターネットカフェ「オキエラビッチェ」を経営していた千葉麗子が本作の看板プロデューサーに起用された[1]ほか、グラムスのアダルトゲームブランド・ジャニスの作品に参加していた森山大輔が、キャラクターデザイナーとして起用された[2]。また、脚本は『バブルガムクライシス』などで知られる小中千昭が手がけた。加えて、声優には浅田葉子、荒木香恵、宮村優子をはじめとする人気声優が多数起用された[1]。
本作は『不思議の国のアリス』をモチーフとしており、同作にちなんだサブタイトルが出てくるほか、登場人物が巨大化したり、笑う猫が悪戯をするといった同作での出来事が仮想空間「サイバーランド」という舞台の中で表現される[3]。 また、本作には『不思議の国のアリス』以外にもオマージュが存在しており、たとえば、「ありす達3人が特殊なスーツを着てカプセルに入り、カプセルが液体に満たされてからサイバーランドにダイブする」という描写は、1995年から96年にかけて放送されたテレビアニメ『新世紀エヴァンゲリオン』と類似している[3]。
本作のシナリオには、過去や1996年当時の要素だけでなく、未来のインターネット事情の予測も組み込まれており、通信可能な小型端末の普及や、ウイルスによって戸籍データ内の顔写真が無関係の性的な画像と合成されて拡散される様子が描かれている[4]。
本作の発売直前の1996年12月16日、『ありすインサイバーランド』(以下:アニメ版)がテレビ東京で先行放送された。
吉田はアニメ版を放送した理由について、「ゲームって1本作るのに億単位のお金がかかって,広告も出さなきゃいけない。(中略)でも,15秒のCMなんて後に何も残らないじゃないですか。それが,番組枠を買い取らせていただいて,僕らが作ったアニメを放映すれば,それ自体を面白いと思ってくれたり,キャラクターに思い入れを持ってくれたりするんじゃないかと思ったんです。(中略)それに,アニメになると「お菓子を作りませんか」とか「タイアップ曲はどうでしょう」とか,どんどんコンテンツが広がっていくんですよ。あれは僕らとしては幸せでした。僕らの「作りたい」という気持ちが,周りを引き付けたんだと思うんです。」と4Gamer.netとのインタビューの中で説明している[2]。
だが、無理な制作体制により納品されたアニメの出来は吉田がショックを受けるほど低かった[2]。その結果、アニメ版は一挙放送した2話分のみで放送を中止、後日発売されたビデオ作品には1話のみが収録された。
この節にあるあらすじは作品内容に比して不十分です。 |
21世紀の東京。現在のインターネットはさらなる進化を遂げ、巨大な仮想空間「サイバーランド」を作り上げていた。サイバーランドはその情報の重要度により、Lv1からLv8までの八つの階層に区切られており深い階層ほどより重要な、国家機密レベルの情報が格納されているといわれている。一般人の持つシステムでは、この深部へのアクセスは不可能である。
主人公の水無月ありすは、私立ミスカトニック学園に通う普通の中学生。だが、彼女にはサイバーランド開発者である父親の残したルシアという究極のダイブシステムを用いてサイバーランドの深部まで潜り、その秩序を守る正義のダイヴァーとしてのもう一つの顔があった。彼女は友人の鳳 麗奈と八神 樹莉とともにALICE-3を名乗りサイバーランドを私欲のために利用しようとする者の手から人々を守ろうとする。シムペット探しから始まった彼女達の冒険は、いつしか全世界を巻き込む大混乱の核心へと導かれていく…
放課後にペットショップに行きたいという樹莉に付き合って、渋谷の街を歩き回ることになる。迷子のペットを見つけたら賞金がもらえる事を知る[5]。
ゲームは全部で5章(+選択肢次第でおまけが1章)構成になっており、基本的には選択肢によるストーリー分岐はない。
会話ウィンドウとは別に主要キャラ3人の表情ウィンドウが画面上部に表示される。会話ではコンピュータやネットワークに関する専門用語が多用されているが、その意味の説明が少ないため、コンピュータ用語になじみが薄いプレイヤーにとってはやや難解な内容が含まれる。
各章は現実世界(リアルワールド)→サイバーランドへと舞台が移動するパターンがほとんどで、戦闘はサイバーランドでのみ行われる。戦闘になると、3人の中から戦わせるキャラを1人選ぶ。このゲームは戦闘シーンのみがフル3Dになっている。操作はRPGのようなコマンド入力で行う[5]。戦闘システムはS(ショートレンジ)・M(ミドルレンジ)・L(ロングレンジ)の三種類の攻撃方法があり、それぞれが3すくみの関係になっている。主要キャラクター3人には「麗奈はショートレンジの攻撃力が高いが、ロングレンジの攻撃力が低い」など、それぞれ得意とする攻撃方法があり、攻撃成功時のダメージに影響を与える。また、敵ごとに各攻撃方法の選択確率が決まっているため、それを把握して有利なキャラクターと攻撃方法を選ぶようにすれば容易に勝てるようになる。各キャラクターのレベルやHPは章が進むごとに自動的に増え、ダメージもその都度一定である。なお、ザコ戦は半分近くが回避可能であり、ボス戦も負けてもイベントが進むものがいくつか存在する。さらにボスに負けなければ見ることのできないムービーも用意されている。
リアルワールドでは、おまけ要素としてゲームセンター、ブティック、カラオケボックスに行くことが可能。ゲームセンターでは「ドカバキジャイケン」という、いわゆる「あっち向いてホイ」のようなミニゲームを遊ぶことができ、この時だけは2プレイヤー対戦も可能である。ブティックでは試着した服の一枚絵(章ごとに変化する)を閲覧でき、カラオケボックスでは主要キャラクター3人のキャラクターソングをアニメーション付きで聴くことができる。これらのミニイベントは訪れる度に毎回発生する。
当時普及し始めたばかりのインターネットを題材としていち早く取り入れたことが当時は新鮮であり、その後のゲームにも影響は少なからずあった。当時、成人向けゲーム(エロゲー)の移植に関する厳しい規制があるなか、下着姿やレズ描写が含まれた。特にギャルゲー的作品に強い『電撃PlayStation』では他誌よりも大きく取り上げられ、Vol.33の表紙も飾った。
豪華なスタッフィングや大規模なメディアミックスなどが展開されたにもかかわらず、ソフトの売り上げは伸び悩んだ[1]。
その後、セガサターン用に発売されたグラムスの主力タイトルの続編『QUOVADIS 2〜惑星強襲オヴァン・レイ〜』はゼロ受注を記録、銀行の貸し渋りにも合い、資金繰りに行き詰まったことで会社は倒産した。
ゲイムマンのペンネームで活動しているライターの府元晶は、ITMediaに寄稿したレビューの中で、登場人物の設定や声優陣の演技、および作中の出来事から読み取れる先見性について評価し、「 ありす in Cyberlandでは、当時流行した作品の要素と、過去の作品へのオマージュ、将来のネット社会の予想図、これら過去と現在と未来のファクターが、アドベンチャーゲームのシステムでつながっているのだ。」と述べている[4]。 その一方でゲイムマンは、登場人物の数が多すぎるあまり、物語が唐突に終わってしまう点を指摘し、その原因について制作側が早い段階からメディアミックスを念頭に置いていたのかもしれないと推測している[4]。
脚本の小中は自身のウェブサイトに幻の続編となった『ありす in Cyberland 2 第七のプロトコル』のシナリオを公開している[4]。また、本作の「誰もがネットワーク端末を持っており、それによってつながっている」という設定は、後に小中が脚本を手がけた『Serial experiments lain』に受け継がれている[4]。加えて、『Serial experiments lain』のキーパーソンである「瑞城ありす」は本作の主人公と同じモチーフを有しており、声優も同じ浅田葉子である。
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