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MZ-1500(エムゼットせんごひゃく)は、シャープが発売したMZシリーズに属する8ビットのパーソナルコンピュータである。当時ハイエンドではPC-8801・X1・FM-7が、ローエンドではMSXが主流となりつつあり、大きなシェアを得るには至らず国内におけるMZ-80Kの流れを汲む最終機種となった。1984年6月1日発売。
1984年度グッドデザイン賞受賞[1]。
MZ-1500は、MZ-700の基本的な設計・仕様を踏襲した上で、グラフィックス、サウンド等の機能を強化した後継機である。また、外部記憶装置としてクイックディスクを標準装備している事を特徴としている。
以下に述べるクリーン設計・クイックディスク・RAMファイルの三つの特徴的な仕様を、カタログでは『トライアングル設計』と称していた。
従来機種と同じくクリーン設計であり、システムを直接本体に持たず、主となるシステムプログラムは外部記憶装置から読み込む。ローレベルな処理の書かれたROMモニタが実装されていることは従来機種と同じだが、MZ-1500では起動時にクイックディスクからの起動を試み、不可能な場合はMZ-80B等と同じようなブートメニューが起動時に表示されるようになった。メニューには、選択肢として内蔵のクイックディスク、並びにフロッピーディスク、カセットテープの他、ROMモニタの起動が用意されている。
当時、フロッピーディスクはメディア、ドライブ共に高価だった。ランダムアクセスに伴う制御や構造が複雑なFDDに対し、QDはシーケンシャルデバイスでありディスク上の任意の位置にあるデータを読み書きするようなことはできない反面、ドライブ、ディスクともに単純で簡素な構造で実現でき、コストを低く抑えることが可能であった。QDはコンパクトなサイズ、最大64KBを8秒で読み込むアクセス速度、両面で128KB記録できる容量、そしてドライブ本体とディスクの価格の安さというアドバンテージを持っており、広告でも大きな宣伝文句となっていた。MZ-1500では内部的な接続にZ80SIOを使用し、アクセスに要する処理自体も少ないため制御ルーチンも小型になっている。フロッピーディスクの低価格化によるコスト的なメリットの消失、QD自体の環境の変化や経年劣化に対する弱さが露呈するのは後年の話である。
上記クイックディスクの弱点であるランダムアクセス性能を補完するため、I/O空間にQDの片面と同じ容量の64KBのメモリデバイスが内蔵オプションとして用意された。QDはシーケンシャルデバイスであるため、記録された複数のファイルのうち1つだけを削除したり、ファイルサイズを大きくして上書きしたりすることができない。そのためには、QDの内容をすべてバッファに読み込み、必要な変更を加えてディスク全体を書き直す必要がある。RAMファイルはこのようなバッファとしての用途を想定している。
BASIC等ではQDとのやり取りや、RAMファイルを対象とするランダムアクセス、プリンターバッファなどとしての利用がサポートされている。
ボード上のアクセス開始位置を指定するアドレスカウンタには、Z80のI/Oアドレスを16bitで指定できる仕様を使い、一度のI/Oアクセスでボード上の任意のアドレスをボードに対して渡すことができた。
MZ-1500では、MZ-700互換の40×25文字のテキスト画面に加えて、カラーコードと表示色を任意に指定できるパレット機能と、テキストプレーンに対するプライオリティー付きのPCGが追加された。キャラクタ一つあたり8×8ピクセルで構成され、ピクセル単位で8色から任意の色指定が可能なPCGを1024個定義することが可能になっている。
また、PCG部分の描画プライオリティーは、PCG優先、もしくは、背景色とテキスト色の間、PCG非表示が選択可能である。
系列機種のテキスト画面をベースにする表示設計はピクセル単位でのグラフィックス表現の実装にも影響を与え、この機種では他の機種に見られるようなグラフィックスVRAMは存在しない。ピクセル単位での表示を行う場合には、アトリビュートエリアにPCGコードを書き込むことで表示されるパターンを指定し、各色プレーンごとに用意された定義エリアにコードに対応する表示用のビットマップパターンを定義する。言わば、ゲーム機におけるバックグラウンド画面に近い構造を採っており、ビットマップグラフィックス的な表示は、PCGコードを1種類ずつアトリビュートへ敷き詰め、パターンの定義エリアを書き換えることで擬似的に実現する。
他のX1や、MSX、ゲーム機のBG画面などではテキスト画面としての役割の一部も担い兼用するような実装になっていることが多いが、MZ-1500ではテキスト画面とは独立した表示の仕組みとして実装されており、他の実装よりも多くのパターンを使用可能であることも特徴である。 但し、PCGのパターン書き換えのタイミングは水平ブランキング期間のみ許可されるため、PCGの定義データを頻繁に書き換えるのではなく予め定義されたPCGを書き換えずに多用する様な実装に向いているのは、BG画面等と同様である。
BASICではPCGを敷き詰めた状態を擬似的にグラフィックスとして扱い一般的なグラフィックス描画コマンドを提供しており、それに加え24個のPCGが取り扱えるように見せている。
これらの実装によりMZ-80K系列の機種では初めてピクセル単位での描画が可能になったことに加え、オプションの漢字ROM、辞書ROMの存在も手伝い、幾つかのワープロソフトも発売された。
なお、同クラスも含む、同世代の多くの他機種が持つテキスト画面の80桁表示は本機でも採用されなかった。
MZ-1500では、他の多くの機種でもオプションとなっている拡張スロットを1ポート分本体に持っており、標準搭載されたインターフェイス以外の拡張が容易になっている。
ボードサイズはMZ-1U03でも使用されたMZ-2200等共通サイズの物となっており、実際に使用する際には本体サイズよりも後ろにせり出す形になっているため、使用時にはスロットカバーを取り付けるようになっている。その場合、奥行きが少し長くなる。また、専用ボードの設置場所、ならびにこの拡張スロットの存在によって、MZ-700よりも筐体の背が高くなっている。
別途拡張スロットのMZ-1U08が用意されているが、こちらは使用出来るアドレスの範囲が狭くなっており、00h-C7hの範囲外のボードについては本体側の拡張スロットに接続する必要がある。
前述のようなハードウェアの拡張は、MZ-700の設計をほぼそのままに未使用だった部分を拡張する形で実装されており、海外でリリースされたMZ-800が新規のハードウェアに対して互換性のある回路を実装したこととは対照的な設計となっている。
MZ-700において拡張ROM領域であった$E800~$FFFFには第2モニタ9Z-502Mが置かれ、QD・FD・RAMボードからのブートや、モニタ自体にはメモリダンプなどの機能拡張が行われている。従来の第1モニタは1Z-009Bに改訂され、いくつかのバグフィックスがなされた他はMZ-700とほぼ完全な互換性を保っているなど、前述のハードウェア設計も含め、後方互換性は非常に高く設計されている。
シリーズローエンドを担う姿勢は変わらず、映像出力には引き続きRF出力・コンポジットビデオ出力が用意され、家庭用テレビへの接続が可能になっているほか、家庭用テープレコーダー用の入出力端子も用意されている。
QDの搭載によりデータレコーダはオプションであるが、上記のように家庭用のテープレコーダーが利用できるほか、専用データレコーダ用のインタフェイスも装備している。
BASICはS-BASICと互換性を保ちつつ、グラフィックスやサウンド、クイックディスクのサポートなど新機能に対応した5Z-001が添付されている。 命令セットに互換性はあるものの、ファイルアクセスなど仕様の異なる部分や、BASIC本体の機能の増加によるフリーエリアの減少の影響を受け、動作しないMZ-700のソフトウェアも存在する。その場合でも従来機種のシステムがそのまま動作するため、MZ-700のシステムを読み込むことで解決することができた。
2016年には、MZ-1500で拡張された部分と一部オプションを実装した「MZ-1500バージョンアップアダプタ」[3]を拡張バスに接続することによって、MZ-1500相当にする試みが個人によっておこなわれ、幾つかのMZ-1500用のソフトウェアがMZ-700で動作する様が動画で公開[4]されている。
仕様は以下のとおりである。
MZ-700のソフトウェアの多くもシステムソフトウェアも含めそのまま利用することが可能であった。
また、ナムコ(現・バンダイナムコエンターテインメント)、データイースト(現在既に清算済み)の移植作品並びに、オリジナルのソフトウェアが電波新聞社から、任天堂、自社製品の移植作品をハドソン等が供給していた。その中にはMZ-700+PCGの構成で作られたものをリファインしただけのものもあり、必ずしもMZ-1500の性能が引き出されていたとは言い難いものもある。
ソフトウェアカタログとして発売予定のソフトウェアの一覧があったが、一部は発売されていない。
標準添付のソフトウェアは、QDで提供され、標準のシステムである5Z-001(QD BASIC)の他、PSGエディタ、PCGエディタ、デモエディタなど、BASICでのプログラム作成を補助したり、BASICがわからなくとも機能を体験できるようなアプリケーションが用意されていた。
イメージキャラクターには倉沢淳美が起用され、彼女と「パソコン博士」宮永好道が出演するCMが、同社提供の「パソコンサンデー」でオンエアーされた他、多くの版のカタログにも登場した。
2014年には、個人製作でドルアーガの塔の再移植[注 5]が試みられ、ディスプレイを縦に使い、MZ-1R18を必須とした形で作成されている[5]。ソフトウェアの頒布は行われていないが、動画が公開されている[6]他、イベント等で展示が行われた[7]。
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