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科学を対象とする哲学的な考察 ウィキペディアから
科学哲学(かがくてつがく、英語: philosophy of science)とは、科学を対象とする哲学的な考察のことである[1][2][3][4]。
科学哲学とは科学を対象とする哲学的な考察である。
科学という語・概念が登場したのは18世紀のことなので、そういった意味に限定すると、科学哲学というのは18世紀以降のものになる。だが、「科学哲学は哲学の歴史とともに古い」とも言われる[4][2]。「科学」という用語を自然の理論的認識という意味に拡大して解釈すれば、方法的反省の起源というのは哲学の歴史とともに古いからである[2]。
科学哲学の目的の一つは、科学というものの持つ限界を人々に自覚させ、科学に関して人々が持っている誤解を解くことである[1]。例えば「科学は、いかなる事象をも取り扱える一つの確固とした学問体系である」などと見なすことは誤解である[1]。また例えば 「科学が与える世界像こそ客観的世界の真の姿である」などと考えるのも誤解である[1]。黒崎宏は次のように指摘した。
科学は、科学的方法といわれる一定の方法に基づいた探究の結果であって、それによって切り捨てられた部分も多いことを、肝に銘じておくべきである。これらのことを教えてくれる科学哲学は、それゆえ、科学者に対してのみならず、今日のわれわれ一般にとっても、きわめて大きな意味がある。
一方、科学者側からは「科学哲学は鳥類学が鳥にとって役に立つ程度しか科学者にとって役に立たない」と言われることがしばしばある。科学は倫理的概念に役立たないという反科学的な主張がなされることがある[5]。
近代以前は、現在の自然科学にあたる分野は自然学ないし自然哲学と呼ばれていた。近代初期においては、ガリレオ・ガリレイ、ルネ・デカルト、ブレーズ・パスカル、ゴットフリート・ライプニッツなどに見られるように哲学者と自然科学者の境界は非常に曖昧で、実質的な科学研究を行う傍ら、その哲学的基礎についても考察するというパターンも多かった。18世紀においても、哲学者のイマヌエル・カントはニュートン的な空間や時間が人間の認識の枠組みであるというような時間、空間論で知られるほか、引力と斥力という二つの力を基礎とする自然哲学を展開するなど、科学の哲学的基礎についての考察を行っていた。
しかし、その後次第に分業が明確化していき、19世紀には「自然哲学者」ではなく「科学者」と呼ばれるようになった。科学を専門に扱う分野が科学哲学という呼び名で呼ばれるようになるのも19世紀になってからである[6]。
英米における科学哲学の祖としては、19世紀前半のジョン・ハーシェル、ウィリアム・ヒューウェル、ジョン・スチュアート・ミルらの名前があげられる。他方、ドイツでは、反科学主義的なドイツ観念論が流行したために、自然科学と哲学系の自然哲学の間には距離が生じていた[※ 1]。ただし19世紀にはまだエルンスト・マッハやアンリ・ポアンカレなど、科学者による科学哲学も盛んに行われていた[※ 2]。
20世紀になると、科学の方法論に対する見直しが行われ、それが操作主義や論理実証主義の運動として、科学者と哲学者の共同のもと展開された。これには、物理学の革命が20世紀初頭に進行したこと、記号論理学が発達して数学の基礎づけについての研究が進展したことなどが影響しているといわれている。
20世紀後半には、実証主義的な科学論の行き過ぎた科学主義に対する批判が噴出した。その代表がトーマス・クーンやポール・ファイヤアーベントによって展開された、いわゆる新科学哲学である。これは、科学が社会の影響を超越した客観性、合理性を持つことを否定し、科学の相対性を強調するものであった。この流れはその後科学社会学に影響し、科学社会学における社会構成主義の隆盛を産むことになる他、いわゆるニュー・サイエンスなど、既成の科学と代わる別の科学を作り出そうという運動にもつながることになった。
こうした科学批判の流れが一段落したところで、現在の科学哲学は、それぞれの個別科学の基礎について研究する地道な研究が主流となってきている。
科学哲学とは、その対象領域に応じて数学の哲学、物理学の哲学、社会科学の哲学などに下位区分される[2]。
科学哲学は、伝統的に自然科学、なかでも物理学が研究対象となってきたが、近年では生物学の研究が盛んになり、また心理学や社会科学も研究対象とされるようになってきている。
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科学哲学の分野では、近年においては、カール・ポパーやトーマス・クーンらの影響が大きい。また、それ以前ではルートウィヒ・ウィトゲンシュタインの名を挙げることもできる。それ以前の大きな転換点としては、アイザック・ニュートンにより、現象の原因についての思弁的追求ではなく、現象を数式で記述することに力点が置かれたことも大きい。
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