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新聞配達(しんぶんはいたつ)は、職業の一つ。日本独自のシステムである新聞販売店が行う業務全般を指す。業務内容は、配達、集金、営業、区域管理、補助業務に大別されるが、一般的に新聞配達と呼ぶ場合、配達のみを指す。
業務に携わる者は、専業(正社員)、臨配(配達専門の臨時スタッフ)、アルバイト・パート、契約社員、新聞奨学生などから構成されており、一部の例外を除き、新聞販売店に所属した者達が作業を行っている。通称として「新聞配り」、「新聞屋(さん)」などとも呼ばれる。
雇用形態問わず従業員数として見た場合、2023年10月現在、日本全国で220,457人がこの業務へ従事している[1]。
基本業務は、朝刊と夕刊の配達に分けられる。他に、重大な事柄や突発的な事件が発生した時に臨時に発行される号外を配達する場合もある。
新聞を配達する前には、新聞へ折り込みチラシを入れる必要がある。これは新聞販売店が地元企業や折り込み業者等と契約しているもので、薄利多売の新聞販売店にとっては貴重な収入源となっている。基本的にはチラシは朝刊に入れるものであるが、夕刊にも入れる場合もある。また、どこの新聞にどのチラシを入れるかは契約により決まっており、同じ販売店でも新聞の種類によってチラシの量が違うことが顕著である。
配達業務としては、以下の作業がある。
実情は、担当範囲が比較的曖昧であり、その内容は販売所によって異なっている。また、ほとんどの販売店では従業員数が少ないことや、勤務時間の特殊性から、担当者間である程度の融通を利かせることが多い。
業務責任で単純比較した場合、配達のみの作業が一番軽いため、専業は新聞奨学生またはアルバイトへ配達を一任して他業務へ専念する場合が多い(専業社員は全従業員数の16%前後[1])。一般に「新聞配達」といえばアルバイトのイメージが強いのはこのためでもある。
主として、新聞販売店に積み重ねているチラシ折り込み済の新聞を、原動機付自転車または自転車へ積み替え、目的の家の前に停めて新聞受へ投函する。例外として集合住宅(マンション)や住宅過密地において、肩からぶら下げた紐で新聞束を支えて徒歩で配達する地域もある。
オートバイは、前バスケットとリアキャリアを備えた新聞配達仕様がメーカーにより設定されている。
新聞が非常に厚い場合や、チラシの量が多かったりする場合には、一度に積みきれないために新聞販売店との間を何度も往復する事もある。状況によっては自動車などで、区域の最寄りの決まった場所へ新聞を置いておき、そこから補充して配達する場合もあり、これは中継・転送・大配・落としなどといわれる。
自転車の前籠に新聞を筍状に積み上げるテクニックもあり、タケノコと通称される。前籠に重量が掛かるため、運転には慣れと技術を要する。
また降雪時にはオートバイの場合、チェーンを取り付けるなどの対策が必要である。雪雨だけでなく、台風の日にも新聞を配る必要があるため、オートバイ、自転車共にそれなりの準備が必要である。
作業者一人当たりの受け持ち部数は地域によってかなり変動があるが、都市部では多く、地方では少ない傾向がある。
都市部の場合には、マンションなどの集合住宅が多く、集合ポストへの投函で済むことが多いために、1部あたりの作業負荷が少ないので配達部数が多めに割り振られる。300部を越える場合も多く、集合ポストの比率が極端に高い区域では500部から600部を越える場合もある。
地方の場合には、住宅密集地を除けば住宅同士の距離が遠く、配達もそれに応じた労力を必要とされる。また、雪国の場合には冬の積雪のために配達が非常に困難になるなどの事情もあるため、部数も少なめに割り振られる。村落では特にその傾向が強く、100部を割る区域も珍しくない。
いずれの場合にも、チラシの量、集合ポストの割合、路面の状態、ポストの位置、エレベータ使用数、階段の段数などの要因によって大きく異なってくるため、部数だけでは、担当者の作業負荷を単純比較できない。
順路帳とは、配達する読者宅を全て記した帳簿である。基本的には区域毎に帳簿が独立しており、配達者はこれを見ながら配達業務を行う(ある程度慣れれば見なくなることが多い)。読者宅の位置は「順路記号」という独特の記号によって表され、順路帳の内容を理解するには、まずこの順路記号の読み方を習得する必要がある。他に、配達時間指定やポストの種類などの配達に関する付加情報が全て記載され、配達業務の生命線ともなる重要な帳簿である。
順路帳の用紙は、防水加工されているものと、そうでないものがある。防水加工されていない用紙は雨天などで破損しやすく、濡れた場合には乾かす手間が発生する。このため、防水加工が施された用紙のほうが配達者には好まれるが、これはコストが高く、パソコンから印刷する場合にも特殊なプリンタが必要という事情があるため、防水加工されていない用紙もまだ使用されている。
雨や雪の日には、新聞が濡れないようにビニールシートへ梱包して配達する販売店がほとんどである。これは手作業となるために、部数に比例して準備時間が必要になる。そのため、実際に配達の作業に取りかかる時間が遅くなってしまう。雨ビ(あめび)・雨ビる(あめびる)とも通称される。前者は下記のような機器で梱包すること、後者は広告が厚く機器を使用できない場合や機器が故障しているなどで新聞用のビニール袋に手作業で入れることとして区別されることが多い。
ビニール梱包する専用の機械は、主に以下の企業から販売されている。
一部の新聞販売店では、購読者から事故のクレームがあった場合に担当者へペナルティを課している。主な事故内容は以下の通り。
購読者からのクレームとは異なるが、ペナルティ対象となる配達業務での事故は以下の通り。
ペナルティについては、新聞販売店毎クレーム1件につき給与から一定額が差し引かれるよう独自に規定されていることが多い。ペナルティが課せられる場合、その額は100円から1000円の帯域に収まることが多い。許容範囲(不着等は誰でも必ず一定数はあるため完全には避けられないが、例えば月10件以上を数ヶ月にわたりコンスタントに継続する等)を超えた場合には、単なる罰金では済まず、始末書、マイナス査定や解雇対象などの厳しい対応が待っている。特に欠配については、配達ペナルティの中で一番厳しい評価が下される。
新聞購読している各家庭を回り、新聞購読料を徴収する作業である。作業時期は主に毎月の月末に集中する。家庭毎に様々な生活パターンがあるために、必然的に作業時間帯が不規則になる。最近は口座自動振替やクレジットカード払いが増加しており直接支払う家庭が減る傾向にあるが、読者を縛る(縛り=購読契約の継続)ためのコミュニケーションとして対面による集金が重視されている。
集金担当者は、配達と同様に区域毎に担当者が分かれており、多くは配達担当者本人または代配が行う。集金専門の場合もある。集金業務には以下のような作業がある。
概要にも示した通り、家庭毎に生活パターンの違いがあるため、集金する者も購読料徴収のために、ある程度それに合わせて作業時間帯を調整することが要求される。特に、独身の独り住まいや、出張の多い家庭から集金する場合、日中に訪問してもまず対面できないため、深夜に訪問することになる。逆に、高齢者の独り住まいや、小さい子供のいる家庭では、遅い時間帯に訪問することはクレーム対象にもなりかねないので、早めの時間帯に訪問することになる。このように、実質的な拘束時間が増え、不規則な作業時間帯となるために、集金作業は他の新聞配達業務よりも負担が大きいと言われる。
この作業時間上の負荷を軽減するために、各新聞社では口座自動振替を奨励しており、増加傾向にあるが、手続きの煩わしさや、店員と直接対面することによる顧客側のメリット(拡材提供などのサービス)が減ることもあり、あまり大きくは進んでいない。
一定期日までに担当区域の集金を済ませれば、新聞販売店から数千円から2万円程度の手当を支給される場合が多い。しかし、客によっては期日までにどうしても購読料を支払えない事情がある、また新聞購読契約上の問題や、訪問しても不在がちであるなどの事情により、集金担当者が徴収できない場合がある。このような時には、集金担当者が自腹を切って、「みなし」で集金達成を行う場合が多い。あくまでも客の都合による部分が大きいために、新聞販売店もそれを黙認している傾向があり、中には自腹を切ることを半ば強要している新聞販売店もある。自腹を切って他の日に購読料を徴収できればいいが、場合によっては結局徴収が不可能なままで、集金担当者が購読料を負担しているケースも多々見受けられるのが実情である。
いわゆる新聞勧誘のこと。新たな新聞購読者を獲得、または現在の購読者へ継続購読を勧める活動を指す。新聞販売店に所属しているという立場上、新聞拡張団と比較すると、強引な営業は困難であり、契約に際して提供できる拡材が比較的少ないなど、若干営業内容が異なる。身分証明書や名刺を携帯している場合が多い。また、同じ条件で契約を獲得した場合、新聞拡張団よりも契約手当が大幅に少ないため、新聞販売店にとってはコストが低く抑えられる。
アポイントメントなしで唐突に個人宅へ訪問し、一旦会話が始まると契約に結びつくまで極力粘ることがあるので、大半の訪問販売と同様に世間的に疎まれることの多い作業である。現在の大手新聞の勧誘は、大都市圏を中心に行われており、数ある訪問販売の中でも特に目に付くものとなっている。
営業は定時作業ではないため、営業担当者は、配達や集金とは異なり複数区域の営業を兼ねることが可能である。このため、新聞販売店が管轄している全区域を担当する営業専門の者が居る場合も多い。作業内容のほとんどは一般的な営業職と手法は同じであり、業界内では「叩く」とも形容される作業になる。作業内容としては以下のものがある。
新聞販売店、新聞の銘柄、地域によって若干の差はあるが、おおむね次のような契約形態がある。
これらの契約で、新聞販売店の店員が獲得した契約に営業を行って契約成立したものは、契約が比較的簡単に成立するため手当が低い。それに対して、新聞拡張員が獲得した契約に営業を行って契約成立したものは、手当が高めに設定されている。販売店によっては、新勧や起こしは従業員に求めず、新聞拡張員へ依存している所もある。
契約形態と同様、新聞販売店、新聞の銘柄、地域によって若干の呼び方の差異はあるが、おおむね次のように呼ばれている。
新聞拡張員よりも緩やかであるいう差はあるが、やはり他の営業職と同様、契約件数を客観的に測定しやすいために成果主義が適用されており、歩合制となっている。契約件数を上げるために、新聞販売店が定めた業務時間外や休日に出勤する者も居る。
新聞販売店がノルマを営業担当者へ課している場合も多いために、中には自腹を切って自分で架空の契約を行ったり、顔見知りの客へ頼み込んで購読料は自腹で契約を行ったり、拡材を自腹購入して営業に使用する場合もある。そのような契約は新聞販売店同士の取り決めで禁止されてはいるので、客や店員同士で口裏を合わせて表面化しないようにしている。また、新聞販売店でも部数の増えることが最優先の使命であるために、販売店へ損害の出ない内容であれば発覚しても厳しく言わないのが実情である。
新聞販売店同士の取り決め以前に、そもそも新聞公正競争規約が存在するが、現場レベルではほとんど意識されていない(または店員が知らない)場合が多い。
自担当の配達区域に居を構える購読者を管理すること。単なる配達・集金・営業のみの単独業務とは異なり、管理責任を負うこととなる。購読の休止処理や、転入・転出読者のフォロー、またはクレーム処理などを行う。
販売店ごとの差異が非常に大きい作業であるために、ここでは大まかなもののみを挙げる。
区域管理と称する業務は、販売店によって大きく異なり曖昧なものとなっている。特に少人数の従業員でやり繰りしている販売店においては、この傾向が顕著であり、経営者(所長)が示す指針ですら明確ではない場合も多い。
現実的には、ある区域において配達・営業・集金を同一人物が行っている場合には、その人物が区域管理を行っているようなものであり、別に区域管理の責任者を置いてもほとんど機能はせず、形骸化した肩書きとなる場合が多い。新聞奨学生やパートが配達・集金を行い、区域管理者は営業と兼務するという形態が負荷的に釣り合いが取れるために、新興販売店を中心として、このような形態にしている所が増えている。
新聞配達業務の補助的作業。主に新聞販売店の店内業務が主となる。
代配など、区域を専従して担当している者以外が割り当てられる事が一般的で、販売店に依っては、パートタイマーなどが、チラシ折り込み・事務作業など一部作業を行う場合もある。
販売店ごとの差異が非常に大きい作業であるために、ここでは大まかなもののみを挙げる。
補助業務と称する業務は、販売店によって大きく異なり曖昧なものとなっている。少人数の従業員でやり繰りしている販売店においては、人員の関係上、従業員が持ち回りで(時には所長やその家族が)作業を行ったり、各自へ通常業務へ付け足す形で行わせていることも多い。
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