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ギア(GEAR)は、ヤマハ発動機が生産販売しているビジネススクータータイプのオートバイ(原動機付自転車)で、各種配達業務における乗降や荷物の積み卸しの容易さ、積載時の走行性能、高い耐久性などを主な特徴とする業務用スクーターである。
ヤマハは1960年代以降、ビジネス用小排気量オートバイとして、MF-1(1960年)を源とするアンダーボーンフレームのマニュアルトランスミッション車「メイト」シリーズを生産販売してきた。しかし1990年代になると、宅配ピザ店の登場など宅配小口化が進み、業務用バイクの需要が伸びる一方[1]、配達や営業・外交でオートバイを使用するユーザー層は、オートマチックトランスミッションのファミリーバイク・スクーターに親しんだ女性や若者が中心を占めるようになり、これまでのアンダーボーンフレームのビジネス車ラインナップとはそぐわない状況が生まれつつあった[1]。
こうした社会の変化を受けてヤマハは1994年、次の4業務をメーンターゲットに設定し、他社を含めた在来車種にない工夫を盛り込んで、女性や若年層に扱いやすく業務用に適した専用バイク「ギア」を開発した[1]。
大積載量と頻繁な乗り降りのしやすさを両立した車体を目指し、剛性確保には不利なスクータータイプとしながらも、パイプ径を太くしてフロアパネル下のフレームを3本支持とすることで、通常のスクーターの約2倍の剛性を確保[1][2]。パワーのある空冷2サイクル49ccエンジンと、ジャイロ効果が高いフロント12インチ、リア110/90-10大径・幅広タイヤを採用し、ホイールは軽量でチューブレスタイヤ装着可能かつブレーキ放熱性のよいアルミダイキャスト製とした[1][注 1]。
また荷物満載時の操縦性への影響を最小限に抑えるため、前後重量配分を最適化するとともに、オプションのフロントバスケットを装着する場合は、積載物の重さでハンドルを取られることがないようボディマウントとし[1]、リアデッキをメイトより約90ミリ低い地上620ミリとして積み卸しの便を図った[1]。リアデッキの積載量は20キロ。車体を持ち上げることなく直立したまま簡単にスタンドがけ・解除ができる「パーキングスタンド」装備車種も用意。さらに会社名・店名の文字入れがしやすいようボディーカラーは白のみとし、マーキングを簡単にオーダーできるシステムも用意した[1]。
1994年9月1日の初代モデルは、BA50、BA50S(らくらくパーキングスタンド装備)、BA50ST(らくらくパーキングスタンド・一体型リアボックス装備)の3車種[2]。さらに「ボルトオンパーツ」としてオプションで用意していた大型リアキャリアやニュースメイト用大型フロントバスケットを標準装備し、手元灯などを追加した新聞配達仕様ニュースギアBA50Nが1996年6月1日に発売された[3]。
使い勝手や機能性が支持されて配達業務から地方でのコミューター用途まで幅広く普及しており[4]、日本郵便の郵便配達業務車としても納入が進んでいる。2016年には、業務用スクーターのパイオニアとして市場の開拓に貢献した実績を評価され、同社製オートバイとしては「SR400」に続く「グッドデザイン・ロングライフデザイン賞」を受賞した[5]。
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