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目標又は飛行場の照明、赤外線ホーミング誘導ミサイルからの航空機の防護などを行うために使用する火工品 ウィキペディアから
フレアまたはデコイ・フレア(英語: flare, decoy flare)は、航空機が赤外線ホーミング地対空ミサイルまたは空対空ミサイルに対抗するために使用される赤外線対抗装置である。デコイとは囮を意味し、赤外線センサを欺瞞する役割を持つ。フレアの使用は、赤外線ホーミング誘導ミサイルから航空機を防護する重要な手段となる[1]。マグネシウムを燃焼させることで赤外線センサーを反応させることから火炎弾(かえんだん)とも呼ばれるが、焼夷弾など攻撃用の兵器ではなく、あくまで防衛を目的とした囮(デコイ)の熱源である。発炎筒や照明弾も全く同じようにフレアと呼ばれるが、本項ではデコイ・フレアについて解説する。
デコイとしてのフレアは、下記の3つの役割で機能する[1]。
フレアの形式や投射母機の速度にもよるが、航空機がフレアを投射するときのフレアの空気力学的減速度は、300メートル毎秒毎秒にも達することがある。一方、特にセダクション戦術を想定すると、フレアは、攻撃側の赤外線センサの視野内にあるうちに十分な赤外線エネルギーを放射しなければならないが、フレアを投射するような位置関係では、赤外線センサの視野は通常200メートルにも満たない。これらから計算すると、フレアの放射エネルギーは、目標の放射エネルギーを0.5秒ちょっとで上回る必要がある[1]。
赤外線センサの発達に対応して、下記のように様々なフレアが開発されている。ミサイル攻撃に効率よく対抗するため、投射の際には、通常、2〜3種類を組み合わせて用いられる。フレア展開の混合と順序は、予想される脅威に応じて選定される[1]。
古典的なフレアは、マグネシウムにテトラフルオロエチレンを混ぜたペレットを1個またはそれ以上収容した火工品である。これは2,200Kの温度で、約3秒間燃焼する[4]。このペレットは、フレア発射用と同じ装薬か、あるいはフレア発射装薬で添加される補助装薬によって点火される必要がある[1]。
このようなマグネシウムテフロン(MT)フレアは現在でも使用されているが、航空機よりも高温であるため、セダクション戦術には有利である一方、温度の測定が可能な新しい赤外線センサには通用しない場合がある。このような二波長センサに対応するため、低・中波長赤外線において適切なエネルギー比率を生み出す火工品物質を採用した、スペクトル整合型フレアも開発されている[1]。
火工品ではなく、自然発火性物質を使用した赤外線デコイも登場している。低温フレアとも称されるが、燃焼を起こすわけではないので、正確にはフレアではない。ペイロードとしては、当初は液体を使用していたが、安全管理面の理由から、自然発火性の金属薄片が主流となった。基本的には、高多孔質表面をもつ薄い金属箔ホイルが用いられており、空気に触れると急速に酸化反応を生じる。厚さ1〜2ミリインチのホイルの小片が発射されて拡散し、大きな断面積を形成することで、点目標ではなく面目標として認識されるようになっている[1]。
燃焼はせず、鈍い赤色の輝きを放つだけなので、実用距離内では肉眼では見えないが[注 1]、赤外線センサからは目標のように見える赤外線放射を生成する。デコイが正確な温度であれば黒体放射特性と一致するエネルギー対波長特性を呈することから黒体フレアと称されることもあるが、真の黒体の理想的な放射特性を有するわけではないので、より正確には灰色体(gray body)デコイと称される[1]。
航空機に搭載される場合、チャフなどとともに投射装置(ディスペンサー)に収容されることが多い[4]。作業効率を上げるため複数個をセットにしたマガジン式が普及している。
アメリカ海軍では、全て同一寸法(直径36mm×長さ148mm)の丸型フレアを使用する。一方、陸・空軍では25×25mmまたは25×51mm径、長さ20.3cmのフレアを使用しており、空軍は更に51mm径の寸法も使用する。これらは北大西洋条約機構(NATO)の標準型である[1]。
フレアは数秒で燃え尽きるためは地上への危険性は低い。
ただし、低空飛行時や、フレアが予定通りに燃えなかった場合、付近に他の航空機や鳥群がいる場合などは危険が予想されるため、平時の訓練では、場所を考えずむやみに使用されるべきではない。
軍の曲技飛行隊では演出としてフレアを使用することもある。特にロシア空軍のルースキエ・ヴィーチャズィは、大量のフレアを使用する演目で有名[6]。
2024年9月23日、日本の領空を侵犯したロシア軍の哨戒機に対して、航空自衛隊の戦闘機が警告のためにフレアを使用した。これは対領空侵犯措置として初めてのフレア使用であり、防衛省によれば、ロシア軍のIL-38哨戒機が北海道礼文島付近で3度にわたり領空を侵犯した[5]。
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