スーパーグローバル大学(スーパーグローバルだいがく)とは、日本国外の大学との連携などを通じて、徹底した国際化を進めて、世界レベルの教育研究を行う「グローバル大学」を重点支援するために2014年(平成26年)に文部科学省が創設した事業であり、支援対象となる大学。
全国30校程度を指定し、大学教育のグローバル化を進めて、日本の大学の国際競争力の向上を進め、グローバルな舞台で活躍できる人材の育成を目的にしている。対象の大学は国立・公立・私立を問わない。また旧帝国大学と旧二文理大は全てトップ型指定校となっている。
日本学術振興会が委員会を設け、この事業に関する審査・評価を実施する[1]。
文部科学省は2014年(平成26年)4月に以下の2種類のタイプの大学を公募した[2]。
- トップ型 :世界大学ランキングのトップ100を狙う実力がある、世界レベルの研究を行う大学
- グローバル化牽引型:これまでの実績を基に、新たな取り組みに挑戦し、日本のグローバル化を牽引する大学[3]
同年5月に締め切られ、「トップ型」に16件、「グローバル化牽引型」に93件、計109件の応募があった[4]。文科省が同年9月に審査結果を発表。「トップ型」に13校、「グローバル化牽引型」に 24校の計37校を指定した[5]。
※は前身の国際化拠点整備事業(グローバル30)指定校。
本構想に関連し、各方面から批判や不満が相次いでいる
[6][7]。
- 支援額の縮小
タイプA・Bともに、大学へ実際に支援されている額は当初に発表された額よりも大幅に少なく、平均支給額は発表されていた額の半分程度で3分の1未満の大学もある。これに対して大学側は「まるで『SGU詐欺』だ」「びっくりするほど支援の額を値切られた」「あれだけぶち上げておいてこれか」「今も納得していない。でも、『文部科学省さま』に文句は言えない」などの不満の声が上がっている。
これに対して、文部科学省の担当者は「予算を思っていたほど確保できなかった上、当初予定していた30大学より採択大学数が増えたので、1大学当たりの支援は少なくなった」「『最大で』の金額が、誤解された面もある」と返答している。
- 選定校への負担
それまでグローバル化に力を入れてこなかったのに、設定した目標達成のため、留学生や外国人教員を多く受け入れたり、海外留学制度枠を拡げるなど、支援事業に無理矢理合わせた教育体制を急ごしらえしたことにより、学内が混乱するケースも散見される。
本構想に選出されたいがために、実現が難しい計画を立てた大学もある。
また、本構想には「留学生の割合の数値目標」も盛り込まれており、海外からの留学生の授業料を減免する大学が少なくない。しかし、大学全体としての定員は決まっている為に、留学生を増やすほど、大学側の負担額が大きくなる。
支援事業により、得意でない分野に力を入れ、国の言いなりになり、疲弊してしまっているケースもある。
- 取組内容への疑問・不満
本構想においては「講義の英語化」「外国人教員数の増加」「クォーター制(4学期制)の導入」「組織再編などの事業」などの取り組みを行っているが、それらの取り組みが、日本における大学教育の質を低下させているとされる[8][9]。
- 外国人教員数の増加について
外国から優秀な人材を連れてくることは容易でなく、『抜け道』が用意されている。文科省は「日本で教育を受け、研究にあたってきた日本人の教員でも、1年間、海外で研究を行えば『外国人教員等』として扱う」ことにしているので、日本人教員を外国人教員の『代替』にもできる。そのため「外国人教員等」が急造かつ粗製濫造されている可能性がある。
- クォーター制について
岡山大学では、2016年度からクォーター制・60分授業を施行したが、2014年に教員に対して緊急に行ったアンケートでは、クォーター制について「もっと時間をかけて議論すべき(46%)」「無意味な改革である(25%)」という意見が、「賛成(19%)」を上回っており、他大学でも反対する声があるとされる。
- 講義の英語化についての批判
主な批判は以下の通り。
- 母国語で、世界トップレベルの教育と研究ができる高等教育機関は、非常に貴重なものであり、さらに、第一線の研究者に、英語教育に時間を割かせることは、その研究を停滞させているとの意見がある。
- ほぼ全講義を英語で行う場合、その教育を「日本の大学」が担う意味は、もはやそれほど残っていない。「全講義を外国語である英語で行う日本の大学」と、「英語を母語とする米国や英国の大学」どちらが、質の高い教育を行えるかは考えるまでもないとの意見がある。
- 学生が、講義を英語で聞いて内容を十分に理解できるのかが問題である。日本語の授業と同じ内容を英語で教えて、学生の理解が増すことはあり得えず、英語での授業は、日本語での授業よりもレベルを落とさざるを得ないとの意見がある。
- 韓国科学技術院(KAIST)では、2010年に講義の100%英語化したが、翌年には学生4人と教授一人が自殺し、2013年の「KAIST緊急学生総会」では、出席学生の過半数が英語講義制度に反対した。
- 受験生への訴求力の低さ
本構想に選出された大学の多くは、選出された事実を受験生への宣伝材料にしたが、受験生は志望校の選定基準として、さほど興味を示さなかった。
- トラブル
「SGU」の名称は札幌学院大が既に商標登録しており、「使用した場合、商標権を侵害」としている為、使用不可になり、文部科学省から各大学へ「会議やシンポジウムでは正式名称を使うように」との通達があったが、既に「SGU」の呼称を用いて、印刷物を作成していた大学もあった為「余計な出費と手間」がかかった。
また「スーパーグローバル」は英語では普通は使わない表現の為、文部科学省からは、本構想の英称は「トップグローバル大学」にするようにとの通達もされた。これに関して、「海外向けに翻訳する際、直す手間がバカにならない」と不満の声も上がっている。