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星つむぎの村(ほしつむぎのむら)は、「星を介して人と人をつなぎ、ともに幸せをつくろう」をミッションとして掲げる一般社団法人である[1][2]。星をキーワードとし、科学的な根拠に基づきつつ「物語」に重きを置く活動を行う[2]。
移動式のプラネタリウムや星空観望会、星や宇宙に関するワークショップを行うほか、村の理念やコンセプトに共感する「村人」を主体とした活動を展開する[3][4][5]。プラネタリウムは、実際の星空を観ることが難しい人々を対象とした「病院がプラネタリウム」のほか、一般向けの出張プラネタリウムやコンサート形式(生演奏)でも実施しており、オンラインで星を届ける「フライングプラネタリウム」にも積極的に取り組む。
2004年に山梨県立科学館プラネタリウムで行われた「プラネタリウムワークショップ」をきっかけとして生まれたボランティアグループ「星の語り部」[6]と、平原綾香が歌った「星つむぎの歌」プロジェクトに関わったメンバーからなる旧「星つむぎの村」[7]を母体とし、2016年に新生「星つむぎの村」として組織される[8]。2017年6月、一般社団法人となった[8]。
1997年、名古屋大学の大学院に在籍していた高橋真理子が山梨県立科学館の準備室に採用され、1998年に開館した同館の天文担当となる[9]。1999年、「ライトダウン甲府バレー」(2014年から「ライトダウンやまなし」)が始まる[10]。2003年、小学校教員の跡部浩一が同館の天文担当に配属(2006年まで在職)[1]。
高橋は「プラネタリウムの自分化」をキーワードに、来館者がプラネタリウムに主体的にかかわるありかたを考えつづけていた[† 1][12]。2003年ごろ、ワークショップという方法論に刺激を受ける機会が多かったこととあわせて若宮崇令(当時、日本プラネタリウム協会会長・川崎市青少年科学館館長)が提唱した「見るプラネタリウムから使うプラネタリウムへ」[13]という観点からヒントを得、「プラネタリウムワークショップ」という概念を発案[14]。跡部とともに2004年1月から3月にかけて実施したことをきっかけに、科学館のボランティアグループであるサイエンスシップクルー「星の語り部」が立ち上がる[15]。プラネタリウムワークショップやプラネタリウム番組「夕涼み投影」の制作、ライトダウン甲府バレー(ライトダウンやまなし)やサイエンスアゴラへの参加、病院・高齢者施設などへの出前プラネタリウム、東日本大震災の復興支援などの活動を継続的に行った[16][17][18][19][20][21][22][23]。2016年、星つむぎの村に移行[8]。
星の語り部のなかから、視覚障がいを持つ人と宇宙を一緒に感じられるプログラムができないか、との声が挙がり、実際に視覚障がい者の参加があったことから、副音声つきのプラネタリウム番組制作や「点図」によって星を表す試みが始まった[17][24][25][26]。
2006年、「あらゆる人々と『宇宙や星について、共に感じ共に学ぶ喜びを共有する方策を考える』」ことを目的に、天文教育普及研究会にユニバーサルデザインワーキンググループ(代表:嶺重慎)が設立され、高橋らが参加[27][28][29]。
2007年、「視覚情報がなくてもプラネタリウムを楽しむ」とのコンセプトのもと、プラネタリウム番組「星月夜~めぐる大地のうた」を制作[30]。同年6月17日、山梨県立科学館がホストとなって「ユニバーサルデザイン天文教育」をテーマとする天文教育普及研究会関東支部会を開催した[31][32]。この場に、国立天文台の林左絵子(英語: Saeko_Hayashi)[† 2]の紹介で山梨大学附属病院小児科の犬飼岳史[† 3]が参加したことがきっかけとなり、病院に出張してプラネタリウムの投影を行う試みが始まる[42][43][44][45][46][47]。
2010年6月、国立天文台三鷹キャンパスで第1回「ユニバーサルデザイン天文教育研究会」が行われ[48]、星の語り部メンバーが活動を紹介した[18]。
2011年、星の数や明るさを点図で示したユニバーサルデザイン絵本『ねえ おそらのあれ なあに』(さく:ほしのかたりべ)を出版[18][49][50]。本作品はプラネタリウム番組にもなった[51][52]。
2013年春、山梨県立科学館から高橋が独立して同館の天文アドバイザーとなり、個人活動として「星空工房アルリシャ」を立ち上げる[53][54]。
2013年9月、国立天文台三鷹キャンパスで「第2回ユニバーサルデザイン天文教育研究会 ~共有から、共生、共動へ~」が行われ[55][56]、星の語り部と山梨県立科学館の活動報告がなされた[19]。
小児病棟を訪問してプラネタリウムを実施する活動に対して助成金を得た[57][58][59]ことを機に、2014年から活動が本格化[45][60][61]。プロジェクト名を「病院がプラネタリウム」とし、全国の小児病棟や重症心身障害病棟、難病の子どものもとに星を届ける活動が広がってゆく[62][63][64][65]。
2014年11月1日、山梨県立科学館がホストとなって「ユニバーサルデザイン天文教育研究会イン山梨 ~プラネタリウムにおける聴覚情報保障~」を開催、プラネタリウムを手話で伝える試みが紹介された[66]。
2015年11月19日、第57回日本小児血液・がん学会学術集会/第13回日本小児がん看護学会学術集会において「病院がプラネタリウム」の体験コーナーが設けられ[67]、10分バージョンで計200名を超える医師・看護師が鑑賞[68]。翌2016年12月16日、第58回日本小児血液・がん学会学術集会/第14回日本小児がん看護学会学術集会の2学会合同シンポジウム「笑顔のたね」において招待講演を行った[69]。
2016年、高橋が山梨県立科学館から離れたことを契機に「星の語り部」が任意団体「星つむぎの村」に移行[8]。
このころ、福島県立医科大学附属病院で治療が困難であると宣告された星好きの子どものもとを8日後に訪問することになったにもかかわらず、直前になって子どもの病状が悪化し、星を見てもらえないまま亡くなるという痛恨のできごとがあった。この体験から、オンライン中継で星を届ける「フライングプラネタリウム」の構想が具体化する[70][71]。
2016年9月、国立天文台三鷹キャンパスで行われた「第3回ユニバーサルデザイン天文教育研究会〜教材研究ワークショップ」に「星つむぎの村」メンバーが参加[72]。
2017年、星つむぎの村の法人化を機に「病院がプラネタリウム」の活動が星空工房アルリシャから星つむぎの村に移管される[73]。
2018年3月26日、福岡市で行われた世界天文コミュニケーション会議(CAP)2018[74][† 4]にて高橋が「病院がプラネタリウム」について発表[† 5]、反響を呼ぶ[78][79]。
2018年3月をもって跡部が小学校教員を退職。病院がプラネタリウムをはじめとする星つむぎの村の活動がさらに活発になる[80]。
2018年11月、フライングプラネタリウムが始動[70]。病院だけでなく、遠隔地の個人宅にもリアルタイムで星空を届けることが可能となった[70][81]。2020年の新型コロナウイルス禍をきっかけとしてその需要が高まっており[82]、「オンラインで天文教育・普及」がメインテーマとなった同年8月の日本天文教育普及研究会の年会において、実践的な取り組みを行う存在として高橋が最終日のパネルディスカッションに登壇した[83]。
2023年7月7日(七夕)から8月22日(伝統的七夕)にかけて、遠出をすることが難しい子どもとその家族が過ごしやすい場所としての『星つむぐ家』の建設支援を呼びかけるクラウドファンディングを実施[84][85][86][87][† 6]。8月16日には寄附金が目標額として設定した600万円を突破し、最終的には570人から約860万円が寄せられた[88]。
2023年8月7日から11日にかけて福島県郡山市で開催されたアジア太平洋地域の天文学に関する国際会議"APRIM2023"(主催:国際天文学連合ほか)の開会式に招かれた秋篠宮妃紀子が、英語でのスピーチのなかで、星つむぎの村のプラネタリウムを体験したことについて「貴重な経験」「まるで宇宙を旅しているような気持ちになった思い出を大切にしています」と述べた[91][92][93]。
令和6(2024)年度版小学校教科書『国語』6年(光村図書)の読書単元「本は友達」の教材として、高橋の著書『星空を届けたい 出張プラネタリウム、はじめました!』が採用されることになった[† 7][95][96][97][98]。
2007年、宇宙航空研究開発機構(JAXA)による「宇宙連詩」に触発された高橋が「宇宙連詩山梨版」(主催:山梨県立科学館、山日グループ)を発案[99][100][101][102]。「みんなで星を見上げ、その想いをつむいで共に歌をつくりましょう」との呼びかけのもと、作詞家で詩人の覚和歌子がつむぎだした最初のフレーズ「空の青さがなつかしいわけは」に続く歌詞が1行ごとに順次公募された[† 8][99][101][102]。半年かけて2167名から寄せられた2690通から、覚がひとつひとつ選び、つむぎだすことで、『星つむぎの歌』(作詞:星つむぎの詩人たち・覚和歌子、作曲:財津和夫、歌唱:平原綾香)が生まれた[99][103]。
2008年1月12日、山梨県立科学館で行われた「星つむぎの歌」完成ライブ&トークに平原綾香や財津和夫、覚和歌子がゲストとして登場[104]。翌日からプラネタリウム番組「星つむぎの歌」も公開された[104]。
2008年3月9日、日本科学未来館で行われたJAXA主催の第2期宇宙連詩完成披露シンポジウムで「星つむぎの歌」が紹介され、谷川俊太郎と覚和歌子の対談が行われた[105]。
2008年3月12日、甲府で中学時代を過ごした宇宙飛行士・土井隆雄[† 9]が国際宇宙ステーション日本実験棟「きぼう」の打ち上げ第1便となるスペースシャトル・エンデバーで2回目の宇宙飛行を行った[† 10]。土井は贈られていた『星つむぎの歌』のCDを持参しており[110][111]、そのCDをスペースシャトルの船内に浮かべ、窓越しに見える国際宇宙ステーションの太陽電池パドルと地球を背景に写真を撮った[112]。3月19日、土井夫人のリクエストによって『星つむぎの歌』がウェイクアップコールとして地上から国際宇宙ステーションに送信された[113]。それを聞いて目覚めた土井は、歌の制作にかかわった人々に感謝の言葉を述べた[113]。
2008年10月25日、ライトダウン甲府バレーの(山梨県立)科学館会場に土井隆雄と平原綾香がゲストとして来場[114][115]。
2009年4月、プラネタリウム番組「星つむぎの歌」が、絵本として出版される[114][116]。
2009年、第76回(平成21年度)NHK全国学校音楽コンクール の「小学校の部 全国コンクール」のスペシャルステージ委嘱作品に選定され[117]、10月10日にはNHKホールにおいて3000人による合唱が行われた[114][118]。
2009年10月31日から11月3日まで日本科学未来館とその周辺で行われたサイエンスアゴラ2009では、4日間の締めくくりとなる総括セッション(未来館ホール)において参加者全員による合唱(手話付き)が行われた[114][119][120][121][21]。
2010年、星つむぎの歌プロジェクトにかかわった高橋真理子・覚和歌子らによって旧「星つむぎの村」が発足[122]。
2011年9月11日、山梨県立科学館にてJAXAタウンミーティング「宇宙活動は人類を幸せにするか」が開催され、土井隆雄と藤井孝蔵(JAXA宇宙科学研究所副所長)がゲストで来場、「星つむぎの歌」が合唱された[111][123]。
2016年、新生「星つむぎの村」のスタートに伴って「星つむぎの歌」が村のテーマソングとなった[8]。
2023年9月24日、山梨県立県民文化ホールにて星つむぎの歌15周年記念コンサートが開催された[124]。覚和歌子の指揮のもと、歌が生まれたころに生を受けた高校生140名(山梨県合唱連盟に加盟する11校の生徒)を中心に、星つむぎの村の村人と山の都ふれあいコンサートのメンバーも加わって合唱を行った[125]。
星つむぎの村では、村の理念やコンセプトに共感し、年会費を納める人を「村人」と呼ぶ[126]。村人から発案されたさまざまな「村人企画」が行われている[4][5][127]。なかでも、村人が関わる形で広汎なつながりを持って活動する「みんなでプラネタリウム」は2018年に愛知県大府市で初めて実施され、2019年には神奈川県横浜市と新潟県柏崎市でも行われた[4]。2018年12月と2020年1月に名古屋大学医学部附属病院で行われた最大規模の「病院がプラネタリウム」は、2022年に活動を開始し2023年に法人化された愛知こどもホスピスプロジェクト[128]に影響を与えている[129][130][131]。
対面やリモートでのプラネタリウムのほか、星空観望会[197]、ワークショップ、クリエイト・アート活動、グッズの頒布、イベントへの出店、復興支援[198][199][200]、村通信、本の森だより、星の寺子屋・星の子クラブといった活動を行っている[4][5]。
実際の星空を観ることが難しい人々を対象とした「病院がプラネタリウム」[201]と、一般向けの「キャリングプラネタリウム」[202]、生演奏とともにコンサート形式で行われる「スペシャルプラネタリウム(SPACE FANTASY LIVE)[203]がある。 実施形態としては、直接足を運んで投影を行う「出張プラネタリウム」と、ネット経由でのライブ投影またはオンデマンド動画を届ける「フライングプラネタリウム」(2018年~)に大別される[204]。
オリハルコンテクノロジーズから提供されているスペースエンジンUniviewが用いられる[204][205]。Univiewにはアメリカ自然史博物館とNASAが中心となって作成した全宇宙三次元データベース「デジタルユニバース」が組みこまれており、高精細で奥行きのある映像が解説者の意のままにリアルタイム描画され、地上から138億光年先までの広大な宇宙を自在に旅することができる[45][176][206][207]。
投影で用いられる音楽は、主に小林真人が高橋との活動のために書き下ろした曲であり[208][209]、映像と生の語りと音楽とが一体化して届くように構成されている[† 14][210]。
長期入院を強いられている子どもや、夜に外に出る機会のない難病の人々、そしてその家族に対して、星空と宇宙を届けることを目的とする[70][43][45][204]。実施数は2021年末時点で300箇所を超える[204]。子どもや難病の人々のみならず、ともに星を見上げる家族や医療従事者への効果も大きいという[70][43][45][81][211][212]。 出張プラネタリウムでは、参加者の状況に応じてエアドームか天井投影を使い分ける[45]。エアドームで実施する場合は天井の高さ(4mドームで2.7m)を必要とし、天井投影においては遮光を要する[† 15][45]。NICUやクリーンルームでの投影も行っている[45]。
2018年、「フライングプラネタリウム」が始動[100][213]。2019年には「病院がプラネタリウム」の実施回数が年間100件に迫っていたが、2020年、新型コロナウイルス感染症の広がりとともに病院や施設への訪問が難しくなった[44][83]。この状況を機にフライングプラネタリウムが本格化[83]し、2021年末時点で10台のプロジェクターがフル稼働しているという[214]。
秋篠宮妃紀子は、公務で難病ネットのキャンプやあおぞら共和国を訪問した際に何度か体験しており[92]、英語のスピーチで「貴重な経験」「まるで宇宙を旅しているような気持ちになった思い出を大切にしています」と述べている[91][93]。矢野顕子は、林公代の紹介で2016年に体験しており[215]、「とても大切な活動」「楽しいの!わくわくするの!」と述べている[216]。
ネット経由によるライブまたはオンデマンド動画で実施する[204]。天井投影用の機材一式を実施場所に輸送して貸し出すほか、施設・家庭にあるプロジェクタやディスプレイ、タブレットやスマートフォン端末で視聴することも可能である[204]。
ふだんは病室に入れないきょうだいや家族がともに同じ時間を過ごせたり、障害児と健常児が同じライブ投影を観ることによって交流の機会となるメリットもあるという[81][83]。
2016年1月、前年の小児血液・がん学会/小児がん看護学会で「病院がプラネタリウム」を体験した福島県立医科大学附属病院の看護師から、治療が困難であると宣告された星好きの子どもになんとか見せてあげられないか、との相談メールが届いた。連絡から8日後に訪問することになったが、投影するための機材を発送した後になってから子どもの病状が悪化し、訪問することがかなわない容態のまま亡くなった。この体験から構想が具体化し、2018年に始動した[70][71]。
2020年の新型コロナウイルス禍をきっかけとして需要が高まっており[82]、「オンラインで天文教育・普及」がメインテーマとなった同年8月の日本天文教育普及研究会の年会において、実践的な取り組みを行う存在として高橋が最終日のパネルディスカッションに登壇した[83]。
1999年、国立天文台のスターウィークの関連行事として「光害のない本物の暗い空に輝くきれいな星空を見てもらおう」を目的にライトダウン甲府バレーが始まった[10]。「天の川の見える美しい星空を次世代に」を合言葉に、2021年で23回を数える[10]。2014年には「ライトダウンやまなし」に改称[10]。山梨県と県下全市町村から後援を得て、甲府盆地以外にも活動を拡げている[10]。
ライトダウン当日は、20時~21時の消灯が呼びかけられ[10]、多くの店舗・施設・団体・家庭の協力を得ている[137][139]。毎年、同時間帯にFM-FUJIとFM甲府で特別番組の生放送が行われている[138][217]。2008年の第10回には、科学館会場に土井隆雄(宇宙飛行士)と平原綾香(歌手)がゲストとして来場した[114][115]。
八ヶ岳を取り囲む、山梨県北杜市や長野県南牧村・川上村・原村・富士見町などで行われている観光イベントである[132]。施設や人材を活かし、地域の星見文化の醸成と星空のツーリズムの充実を目指している[218]。
冬期の本地域は、スキー場以外の集客が課題となっていることから、2014年度から「スターオーシャン八ヶ岳」の取り組みが始まった[218][219]。2018年度から現在の「スターラウンド八ヶ岳」に名称変更された[218]。「スターラウンド八ヶ岳ナビゲーター」養成講座や「星のソムリエ」資格認定講座による人材育成も行われている[132][218][219]。 八ヶ岳エリアの特長として、光害が少なめで標高が高いことから星が多く見えること、山と星空の組み合わせが楽しめること、首都圏からアクセスがよいこと、晴天率が高いこと、冬の積雪が少ないこと(スキー場は人工雪が多い)、野生動物による危険が少ないこと(植林による針葉樹林が多く、クマやサルがいない)が挙げられるという[218][219]。
ほか
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