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現地における調査や研究 ウィキペディアから
フィールドワーク(英: field work)は、ある調査対象について学術研究をする際に、そのテーマに即した場所(現地)を実際に訪れ、その対象を直接観察し、関係者には聞き取り調査やアンケート調査を行い、そして現地での史料・資料の採取を行うなど、学術的に客観的な成果を挙げるための調査技法である。地学や地理学では巡検ともいう。
フィールドワークは、日本語で現地調査(実地調査)ということがあるが、上記のような定義にしたがった調査技法を用いる場合は「フィールドワーク」との表記が一般的である。また、フィールドワークを行う調査者のことを「フィールドワーカー」、聞き取りやアンケートの対象者(情報提供者)のことを「インフォーマント」あるいは「話者」という。
フィールドワークは、学問的に客観的な成果を求める活動であるため、自身の見聞を広めるだけのいわゆる旅行や、学問的な手法に拠らずに未開・未踏の土地の実態を明らかにするだけの冒険とは一線を画する。
このように研究者が専門的に行うフィールドワークのほか、「自然の家」などと称される青少年育成機関が児童向けに行っている自然観察行事、海外での異文化体験なども広くフィールドワークと呼ばれることがある。
生物学系では実際の生態を観察できるため、生息する環境での生態や他の生物との関係など実験室の動物実験では再現が難しいデータを取得することができる。一方で実験室のように環境を画一化することが難しいため、データにばらつきが生じたり環境の変化や絶滅により調査自体が不可能となることも多い[1]。現代の生物学では実験室で研究する者とフィールドワークを主体とする者に二分される[1]。特に動物行動学はフィールドワークが重要となる分野である。
地学系では、「巡検」という名で市民対象の行事の一つとして行うことがある。多くは、鉱物採取や化石採取、地層観察などであるが、社会教育の一環として、化石友の会といった同好会や博物館などが主催している。参加者から見れば、趣味やレクリエーションの延長上の野外活動として位置づけている。
近年、フィールドワークという研究手法が広く発達・普及し、より包括的にその特性を捉えるのが困難になっているという兆候がみられる。また、「フィールドワーク」という用語が専門的な研究以外にも(やや安易に)用いられるようにもなった。そこで、「フィールドスタディ」(field study、複数形でstudiesとも)という表現も現れるようになった。
フィールドワークの実施対象は多岐にわたる。人文諸科学における直接の対象は人(個人、集団、社会、民族、あるいは国家)であり、自然科学における対象はモノ(自然物など)である。ある特定の対象を研究する場合も、テーマや目的など、調査者の関心は多様でありうる。
人文諸科学において、フィールドワークを実施する対象地は、こうした調査者の関心の多様さを反映している。文化人類学の典型的なイメージともいえる「未踏の地で生活する先住民」といった、調査者にとってはまったくの異文化である海外の少数民族社会であることもあれば、調査者にとっての生活圏内であることもある。その例として、前者であればトロブリアンド諸島を対象としたマリノフスキーの研究『西太平洋の遠洋航海者』[2]があり、後者には暴走族を調査対象とした佐藤郁哉の研究『暴走族のエスノグラフィー』[3]やヤコブ・ラズの『ヤクザの文化人類学』などがある。
自然科学の分野では、対象となる動植物の生息地や地層が露出している場所に赴くことになるが、現地の住民も訪れない僻地や砂漠や極地など人間の生存に適さない場所も多く、調査には多額の資金が必要となる[1]。かつてはチャールズ・ダーウィンやプロスペル・ガルノーなどの生物学や博物学に興味を持つ医師が、世界各地に向かう調査団や捕鯨船に船医兼科学者として同行し、寄港地で動植物の調査・収集を行うのが主体だった。現代では研究者が研究のために向かうのが一般的である。記録を取るために屋外での使用に適した野帳と呼ばれるノートを使用することが多い。
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