スキルス(scirrhous、英語: Linitis plastica)とは、悪性腫瘍にみられる間質が多いの一種で、瀰漫(びまん)性に浸潤していくものを指す。硬癌(こうがん)ともいう。語源はギリシャ語のskirrhos(硬い腫瘍)。胃癌大腸癌乳癌でこのような形での発育・浸潤がみられることがある。

概要 スキルス, 概要 ...
スキルス
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進行したスキルス胃癌の内視鏡像。胃全体に癌が浸潤し、革袋様にみえる。
概要
診療科 腫瘍学
分類および外部参照情報
ICD-10 C16.9
ICD-9-CM 151.9
ICD-O M8142/3
MeSH D008039
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スキルス胃癌

ひとかたまりにならず、正常組織に染み渡るように癌が浸潤するため、病変の表面が正常組織に覆われていたり、病変内に飛び石のように正常組織が残っていることがある。また分化腺癌と異なり、血管も破壊しながら発育するため、スキルス胃癌では上部消化管内視鏡狭帯域光観察 (NBI) を用いても病変が茶褐色に描出しにくい(むしろ白色にみえる)。

病理学が発展する前、スキルス胃癌が悪性腫瘍と分かるまでは、一種の胃炎と考えられていたため英語の医学用語では現在もlinitis plastica(形成性胃炎の意)と名付けられている。

スキルス胃癌はヘリコバクター・ピロリとの関連は少ないとされていたが、やはり関連はあるとする報告が最近は多く見られる。

この種類の胃癌はアジア各国、特に日本での報告が多い。遺伝性びまん型胃癌家系はニュージーランドマオリ族で見出されており、CDH1遺伝子変異によるE-cadherinの機能不全がある。この家系では胃の印環細胞癌が多発し、女性では乳腺小葉癌もみられる[1]。PSCAの遺伝子変異[2]RhoAの遺伝子変異[3]も関与が研究されている。

国立がん研究センター研究所を中心とする国際共同研究グループは、日本人胃癌症例697例を含む総計1,457例の世界最大となる胃癌ゲノム解析を実施し、以下の結果を報告した[4]。1)14 種類の変異シグネチャーを同定し、中でもSBS16遺伝子の変異シグネチャーは、びまん型胃癌、東アジア人種に多く、また男性、飲酒量、アルコール分解能の弱いゲノム多型 (ALDH1B1/ALDH2)と有意な相関を示した。2)びまん型胃癌の発症において鍵となるドライバー遺伝子であるRHOA遺伝子の変異が、SBS16遺伝子で誘発されることを示し、飲酒に関連したゲノム異常がRHOA ドライバー変異を誘発してびまん型胃癌を発症させることを明らかにした[5]

形態

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スキルス胃癌の内視鏡像。胃全体に癌が浸潤し、革袋状の形態を呈している。また出血もみられる。

びまん性胃癌の特徴は、低分化型癌細胞がみられることである。また印環細胞癌もしばしばみられる。

進行したスキルス胃癌の形態は「革袋様」と呼ばれる[6]。これは腫瘍細胞がびまん性に浸潤し、過度の線維化が起こり、厚く硬い胃壁となるためである。

上部消化管内視鏡検査や胃透視検査により、早期の未分化型あるいは低分化型胃癌が発見されることもある。この場合は革袋状胃 (= linitis plastica) には至っていない。早期病変の内側に、「聖域」と呼ばれる遺残した正常粘膜や「インゼル」と呼ばれる発赤した再生粘膜がみられることがある。病変の縁は「断崖」状で、分化型胃癌のような蚕食像がみられないことが多い。

症状

症状として多いのは一回に取れる食事量が減る、食欲不振、吐き気、嘔吐吐血血便黒色便体重減少などである。下痢を伴うことがある。

著名な患者

参照・引用

外部リンク

関連項目

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