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数学、とくにホモロジー論と代数トポロジーにおいて、コホモロジー (cohomology) はコチェイン複体から定義されるアーベル群の列を意味する一般的な用語である。つまり、コホモロジーはコチェイン、コサイクル、そしてコバウンダリの抽象的な研究として定義される。コホモロジーは、代数的不変量を、ホモロジーがもっているよりも洗練された代数的構造をもつ位相空間に割り当てる手法と見ることができる。コホモロジーはホモロジーの構成の代数的な双対から生じる。より抽象的でない言葉で言えば、基本的な意味でのコチェインは'量'をホモロジー論のチェインに割り当てる。
位相幾何学におけるその起源から、このアイデアは20世紀後半の数学において主要な手法となった。チェインについての位相的不変関係としてのホモロジーの最初の考えから、ホモロジーとコホモロジーの理論の応用の範囲は幾何学と抽象代数学に渡って拡がった。用語によって、多くの応用においてコホモロジー、反変理論、がホモロジーよりも自然であるという事実が隠されがちである。基本的なレベルではこれは幾何学的な状況において関数と引き戻しを扱う。空間 X と Y、そして Y 上のある種の関数 F が与えられたとすると、任意の写像 f : X → Y に対して、f との合成は X 上の関数 F o f を引き起こす。コホモロジー群はまたしばしば自然な積、カップ積をもっており、環の構造を与える。この特徴のために、コホモロジーはホモロジーよりも強い不変量である。ホモロジーでは区別できないある種の代数的対象を区別できるのである。
代数トポロジーにおいて、空間のコホモロジー群は次のように定義できる(Hatcher を参照)。位相空間 X が与えられたとき、チェイン複体
を、特異ホモロジー(あるいは単体的ホモロジー)の定義でのように、考えよ。ここで、Cn は X における特異 n-単体の形式的線型結合で生成される自由アーベル群であり、∂n は n 次バウンダリ作用素である。
さて各 Cn をその双対空間 C*n = Hom(Cn, G) で置き換え、∂n を転置
で置き換えて、コチェイン複体
を得る。するとG に係数をもつ n 次コホモロジー群 (the nth cohomology group with coefficients in G) が Ker(δn+1)/Im(δn) で定義され、Hn(C; G) と表記される。C*n の元は G に係数をもつ特異 n-コチェイン (singular n-cochain) と呼ばれ、δn はコバウンダリ作用素 (coboundary operator) と呼ばれる。Ker(δn+1), Im(δn) の元はそれぞれ コサイクル (cocycle)、コバウンダリ (coboundary) と呼ばれる。
上記の定義は、特異ホモロジーで用いられる複体のみならず一般のチェイン複体に対しても適用することができることに注意しよう。一般コホモロジー群の研究はホモロジー代数学の発達の主要なモチベーションであった。そして、広く様々な設定における応用がそれ以来見つかってきた(下記参照)。
C*n-1 の元 φ が与えられると、転置の性質から C*n の元として であることが従う。この事実をコホモロジーとホモロジー群を関連付けるのに以下のように関連付けるのに使うことができる。Ker(δn) のすべての元 φ は ∂n の像を含む核をもつ。なので φ を Ker(∂n−1) に制限することができ、∂n の像による商をとり Hom(Hn, G) の元 h(φ) を得る。φ が δn−1 の像にも含まれていれば、h(φ) は 0 である。なので Ker(δn) による商をとることができ、次の準同型を得る。
この写像 h は全射であり次の分裂短完全列があることを証明できる。
コホモロジーは現代の代数トポロジーにおいて基本的であるが、その重要性はホモロジーの発展の後約40年の間認識されていなかった。双対セル構造 の概念は、Henri Poincaré が彼のポワンカレ双対定理の証明において用いたが、コホモロジーのアイデアの起源を含んでいた。しかしこのことは後になって分かった。
コホモロジーの様々な前身があった。1920年代中ごろ、J. W. Alexanderと Solomon Lefschetz は多様体上のサイクルの交叉理論を作った。n 次元多様体 M において、共通部分が空でない p-サイクルと q-サイクルは、一般の位置にあれば、共通部分 (p + q − n)-サイクルをもつ。これによってホモロジー類の積を定義することができる。
Alexanderは1930年までに最初のコチェインの概念を、Xp+1 における対角線の小さい近傍に関連がある空間 X 上の p-コチェインに基づいて、定義していた。
1931年に、Georges de Rhamはホモロジーと外微分形式を関連付け、ド・ラームの定理を証明した。この結果は今ではコホモロジーの言葉でより自然に解釈して理解される。
1934年に、Lev Pontryagin はポントリャーギンの双対定理を証明した。これは位相群に関する結果である。これは(いくらか特別なケースとして)群指標の言葉によるポワンカレ双対とアレクサンダー双対の解釈を提供した。
モスクワの1935年のコンフェレンスで、Andrey Kolmogorov と Alexander の両者はコホモロジーを導入しコホモロジーの積の構造を構成しようと試みた。
1936年、Norman Steenrodは Čech ホモロジーを双対化することによって Čech コホモロジーを構成する論文を出版した。
1936年から1938にかけて、Hassler Whitneyと Eduard Čechはカップ積(コホモロジーを次数環にする)とキャップ積を発展させ、ポワンカレ双対がキャップ積の言葉で述べられることを理解した。彼らの理論はまだ有限セル複体に制限されていた。
1944年、Samuel Eilenberg は技術的な制限を克服し、 特異ホモロジーとコホモロジーの現代的な定義を与えた。
1945年、Eilenberg と Steenrod は公理を述べ、ホモロジーやコホモロジーの理論を定義した。彼らの1952年の本 Foundations of Algebraic Topology において、彼らは存在するホモロジーとコホモロジーの理論は確かに彼らの公理を満たすことを証明した[1]。
1948年、Edwin Spanierは Alexander と Kolmogorov の仕事をもとにして Alexander–Spanier コホモロジーを発達させた。
コホモロジー論 (cohomology theory) は位相空間と連続関数のペアの圏(あるいはCW複体の圏のような圏の部分圏)からアーベル群と群準同型の圏へのEilenberg-Steenrod の公理を満たす反変関手の一群である。
この意味でのいくつかのコホモロジー理論は:
コホモロジー群を定義する様々な方法がある(例えば特異コホモロジー、Čech コホモロジー、Alexander–Spanier コホモロジー、あるいは層係数コホモロジー)。これらはいくつかの奇妙な空間に対しては異なる答えを与えるが、それがすべて一致するような空間の大きなクラスが存在する。これは公理的に最も容易に理解される。Eilenberg–Steenrod の公理として知られている性質のリストがあり、それらの性質を共有する任意の2つの構成は少なくとも例えばすべての有限CW複体において一致する。
公理の1つはいわゆる次元公理である。P がただ1つの点であれば、すべての n ≠ 0 に対して Hn(P) = 0 であり、H0(P) = Z である。次元 0 に任意のアーベル群 A を許すことによって少し一般化することができるが、非零次元において群は自明であることをなお主張する。これらの公理を満たす群の系は本質的に1つしかないことが再びわかる。これは と表記される。各群 Hk(X) がある rk ∈ Nに対して Zrk と同型であるようなよくあるケースにおいて、単に である。一般に、Hk(X) と の間の関係はほんの少しだけ複雑で、再び普遍係数定理によってコントロールされる。
さらに重要なことには、次元公理を完全に落とすことができる。すべての他の公理を満たす群を定義する異なる方法がたくさんある。例えば次のものがある。
これらは一般化されたホモロジー論 (generalised homology theories) と呼ばれる。それらは普通のホモロジーよりもはるかに多くの情報をもっているが、計算するのは大変なことがしばしばある。それらの研究は(Brown の表現可能性定理によって)安定ホモトピーに強く結びついている。
コホモロジー論 E は が次数環であるときに乗法的 (multiplicative) という。
より広い意味でのコホモロジーの理論は以下を含む[2] [3]。
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