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ギリシア神話に登場する海神ポセイドーンの妃 ウィキペディアから
アムピトリーテー(古希: Ἀμφιτρίτη, Amphitrītē)は、ギリシア神話の海神ポセイドーンの妃で海の女王である[1][2]。アンフィトリーテー、長母音を省略してアムピトリテ、アンピトリテ、アンフィトリテとも表記される。名前の意味は「大地を取り巻く第三のもの」、即ち海をあらわす。聖獣はイルカで、象徴は冠、ヴェール、王笏。
アムピトリーテーは、ネーレウスがオーケアノスの娘ドーリスとの間にもうけた50人の娘ネーレーイデスの1人で[3][4]、ポセイドーンとの間に、トリートーン[5][6]、ロデー[6]、ベンテシキューメーを生んだ[7]。子供のうち、トリートーンは上半身が人間、下半身がイルカ(または魚)の姿をした海神である。ロデーは太陽神ヘーリオスの妻となった。ベンテシキューメーはエウモルポスを育てたといわれる。アムピトリーテーの三人の子供というのは、彼女自身の三面相を示すもので、トリートーンは幸運の新月、ロデーは刈入れのころの満月、ベンテシキューメーは危険な旧月を現している[8]。
アムピトリーテーは海の女性的化身である[9]。ホメーロスの『オデュッセイア』によると、青黒い瞳をしており、大波を起こすとされ[10]、海の巨大な怪魚や海獣を数知れず飼っているとされている[11]。しかしホメーロスにおいては十分な擬人化が進んでおらず、単に海を指すと思われる個所もある[12]。ヘーシオドスの『神統記』では、アムピトリーテーは同じネーレーイデスのキューモドケー、キューマトレーゲーとともに、荒れ狂う風を鎮めることができ[13]、またポセイドーンとの間にトリートーンを生んだと詠われている[5]。『ホメーロス風讃歌』の「アポローン讃歌」によると、レートーがデーロス島でアルテミスとアポローンを出産したとき、ディオーネー、レアー、テミスをはじめとする多くの女神たちとともに立ち会った[14]。
後世の神話ではアムピトリーテーとポセイドーンの結婚の物語が語られている。それによればアムピトリーテーは姉妹たちとともにナクソス島で踊っているときにポセイドーンによってさらわれた[15]。あるいはポセイドーンの求婚に最初は抵抗したが、ポセイドーンからイルカをプレゼントされ、婚姻を承諾した[16]。
エラトステネースによると、アムピトリーテーははじめポセイドーンを嫌って海の西端のアトラースのもとに逃げ、彼女の姉妹たちによって匿われた。ポセイドーンがイルカにアムピトリーテーを探させると、1頭のイルカが大西洋の島にアムピトリーテーがいるのを発見し、説得してポセイドーンのところに連れて行った。その結果ポセイドーンはアムピトリーテーと結婚することができ、この功績によってイルカは天に配置され、いるか座となった[17]。
オッピアノスもエラトステネースとほぼ同じ神話を述べている。それによるとアムピトリーテーが隠れたのはオーケアノスの宮殿であった。そしてポセイドーンはイルカから隠れ場所を教わると、すぐさま拒絶するアムピトリーテーを奪い、結婚したという[18]。
ポセイドーンはもともと大地の神だったが[19]、アムピトリーテーとの結婚によって海も司るようになったともいわれる[20]。アムピトリーテーは、気のおけない妻で、夫の度々の不実を辛抱強く我慢した[21]。
アムピトリーテーはテーセウス伝説にも登場する。アテーナイの英雄テーセウスがミーノータウロスの生贄としてクレーテー島に連れてこられたとき、ミーノース王は彼がポセイドーンの子であることを信じなかった。ミーノースは自分の指輪をはずして海に投げ入れ、本当にポセイドーンの子ならば指輪を取ってくることができるだろう、と言った。そこでテーセウスが海に潜ると、イルカが彼をポセイドーンの王宮に運んだ。やって来たテーセウスに、アムピトリーテーはミーノースの指輪と、真紅の外套、花冠を授けた[22][注釈 1]。
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