熱水泉 (ねっすいせん、英語 : Hot Spring )は、泉 のうち、特に高温の熱水が湧出する泉を指す言葉である。Hot Spring という単語はしばしば日本の温泉 の英語訳としても用いられるが、いうなれば源泉 に特化した訳である。
イエローストーン公園にあるグランド・プリズマティック・スプリング とミッドウェイ・ガイザー・ベイスン
日本の別府温泉の"血の池地獄"
一般的に認められた熱水泉の定義はない。 たとえば、以下のような定義がある。
地熱で暖められた水がわき出す泉
周囲より高温の水がわき出す泉[1]
ヒトの平熱(36.5〜37.5℃)より高温の水がわき出す泉[2] [3] [4]
21.1℃より高温の水がわき出す泉[5] [6] [7] [8]
湧出地点の平均気温より8.3℃高温の水がわき出す泉
36.7より高温の水が自然にわき出す泉
50°C以上の水温がわき出す泉[9]
日本では温泉は温泉法と環境省の鉱泉分析法指針 で定義されている。
アルジェリア のゲルマにある熱水泉
ラッセン火山国立公園 の熱水泉
熱水泉から出る水 は基本的に地球内部の地熱 によって加熱される。一般に、地中の岩石の温度は深度とともに上昇する。深度に伴った温度上昇率は地温勾配 という。水が地殻の充分深いところまで浸透すれば熱い岩と接触して加熱される。火山 地帯以外の熱水泉の水はこのようにして熱されている。例えばイエローストーン国立公園 のような火山帯で、水はマグマ と触れて加熱される。マグマ付近の温度勾配が高いところでは、水は沸騰 するか過熱 となるほどに熱されることがある。水がかなりの高温で蒸気圧 が高まり地面から高く噴出すれば間欠泉 と呼ばれ、蒸気として地表に到達するだけならば噴気孔 と呼ばれる。そして泥や粘土が混じっていれば泥水泉 (英語版 ) (Mudpot マッドポット)と呼ばれる。ここで注意すべきことは火山帯の熱水泉の温度が多くの場合沸点 かそれに近いということである。誤って、もしくは故意に熱水泉に入り、深刻な火傷を負ったり死んでしまった者もいる。熱水泉と冷たい湧水 が混ざった結果、温泉となることがあるが地熱地帯から外れている場合もある。例としてジョージア州 のウォームスプリングス (英語版 ) が挙げられる(米大統領 フランクリン・ルーズベルト が対麻痺 の理学療法 のために頻繁に訪れ、この地にリトルホワイトハウス (英語版 ) を建てた)。
アイスランドのデイルダル。世界最大の涌出量があるといわれる
イエローストーン国立公園にあるエクセルシオールガイザーは4000ガロン/分(約252リットル/秒)の涌出量がある。
サウスダコタ州のエバンスプランジホットスプリングスは5000ガロン/分の涌出量がある。湧き出る温水は87℃である。 1890年に建てられプランジは、世界最大の天然温水の屋内プールである。
アーカンソー州の47箇所のホットスプリングスの総涌出は35リットル/秒の涌出量がある。
ニューメキシコ州の複合温泉は約99リットル/秒の涌出量がある。[10]
アイダホ州のラバホットスプリングスは130リットル/秒の涌出量がある。
コロラド州のグレンウッドスプリングスは143リットル/秒の涌出量がある。
オーストラリア西部クイーンズランド州のエリザベススプリングスは158リットル/秒(19世紀後半)の涌出量があったが、現在は、約5リットル/秒しかない。
アイスランドのデイルダルは180リットル/秒の涌出量がある。
日本の別府温泉は2850箇所から約1592リットル/秒(1箇所あたり0.56リットル/秒)の涌出量がある。
日本の九重温泉は303箇所から1028リットル/秒(1箇所あたり3.39リットル/秒)の涌出量がある。
日本の大分県では4762箇所から4437リットル/秒(1箇所あたり0.93リットル/秒)の涌出量がある。
日本の秋田県にある玉川温泉は150リットル/秒の涌出量がある。
インドネシアのバジャワから南西8キロ(5.0マイル)のナゲの領域内に少なくとも熱水泉が3箇所ある。計453.6リットル/秒以上の涌出量がある。
インドネシアのバジャワから北東18キロ(11マイル)に別の熱水泉が3箇所(メンゲルーダ、ワエバナ、ピガ)ある。計4450リットル/秒の涌出量がある
オーストラリアのダルハウジー・スプリングスは1915年のピーク時では、23000リットル/秒以上(1箇所あたり325リットル/秒)の涌出量があった。現在はピーク時は17370リットル/秒以上(1箇所あたり約250リットル/秒)の涌出量である[11] 。
南紀勝浦温泉の外湯
ローマのアルゲリアの熱水泉(Hammam Essalihine)
水は温度が上昇すると、多くの物質を溶かすことができるので、熱水泉から湧き出た温水は、単純カルシウム からリチウム やラジウム に至るまで多くの鉱物 を含む。言い伝えで人体に健康をもたらす、あるいは怪我・病気の治療に効果があるといわれる熱水泉や医学的に効果が証明されたものもある。そのため、しばしば観光客 に人気の観光地や、障碍者 のためのリハビリテーション 施設の場所となっている。
熱水泉で有名な国はアイスランド 、ニュージーランド 、チリ 、ギリシア のイカリア島 、日本 が挙げられる。日本では、日本文化で重要な役割を担い、人気のある観光産業である。
好熱菌は、比較的高い温度(45〜80°C)で繁栄する生物である[12] 。 好熱菌は深海の熱水噴出孔と泥炭地や堆肥だけでなく熱水でも発見されている。
ニュージーランドの熱水泉で生育している藻類(Algal mat)
好熱菌の中には、ヒトへの感染するものもある。フォーラーネグレリア (アメーバの一種)は 、世界的に暖かい水や土壌に住んでいて、髄膜炎を引き起こす原因となっている[13] [14] 。 このアメーバが鼻腔を通って脳に入り、死亡に至ったケースが数例ある[15] [16] 。アメリカ疾病予防管理センターによると、アカントアメーバ は、熱水泉を介して広がる性質がある[17] 。
レジオネラ菌 は熱水泉を介して拡散される[18] [19] 。
イタリアのポッツオーリのような水温87〜93℃で、かつpH値1.5と酸性度の強い環境からでもウイルスが収集された。 これらのウイルスは、実験室で細胞に感染することが観察された[20] 。
カルフォルニア州のCrabtree Hot Springs
US NOAA Geophysical Data Center definition
Madigan MT, Martino JM (2006). Brock Biology of Microorganisms (11th ed.). Pearson. pp. 136. ISBN 0-13-196893-9
Miyamoto H, Jitsurong S, Shiota R, Maruta K, Yoshida S, Yabuuchi E (1997). “Molecular determination of infection source of a sporadic Legionella pneumonia case associated with a hot spring bath”. Microbiol. Immunol. 41 (3): 197–202. PMID 9130230 .
Eiko Yabauuchi, Kunio Agata (2004). “An outbreak of legionellosis in a new facility of hot spring Bath in Hiuga City”. Kansenshogaku zasshi 78 (2): 90–8. ISSN 0387-5911 . PMID 15103899 .
Spa: Belgium's healthy-living retreat , Gareth Bourne and Sarah Hajibagheri, The Independent , November 3, 2006
Marjorie Gersh-Young (2011). Hot Springs and Hot Pools of the Southwest: Jayson Loam's Original Guide . Aqua Thermal Access. ISBN 1-890880-07-8
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G. J Woodsworth (1999). Hot springs of Western Canada: a complete guide . West Vancouver: Gordon Soules. ISBN 0-919574-03-3
Clay Thompson (1-12-03). “Tonopah: It's Water Under The Bush”. Arizona Republic. p. B12