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熊野寮

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熊野寮(くまのりょう)は、京都大学学生寮

概要 京都大学熊野寮, 情報 ...
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概要

1965年4月5日に「京都大学に在籍する男子の正規学部生専用の寄宿舎」として設立された。現在では京都大学に籍を置く全ての学生に入寮資格が認められており[1]、400人以上の寮生が居住する[2]。なお京都大学に在籍していない無学籍者が居住しているとされ(#無学籍者の居住参照)、大学側と対立点の一つとなっている。居室は相部屋であり、基本的に1部屋を4人(一部2人部屋も存在)で共有する。1ヶ月あたりの維持費(いわゆる寮費)は4,300円であり[1]、これには寄宿料と水光熱費(一部大学負担)及び共益費が含まれる。

自治寮である[3]大学は入寮選考に関与しておらず、入寮や退寮の選考は熊野寮自治会が行なっている(自主入退寮権)[4]

構造・設備

熊野寮はA棟、B棟、C棟の3つの居住棟及び食堂からなる。各4階鉄筋コンクリート構造である[1]

建物

熊野寮は2期に分けて工事が行われ、1965年の3月にA棟が熊野寮の中で最初の棟として完成した。 翌年の1966年4月に二期目の工事が完了しB・C、食堂が完成した。

設備

食堂:144席 その他、玄関スペース・地下・中庭などの空間も広く活用されている。 共用シャワー(男女別)、共用キッチン、駐輪場、駐車場、音楽室など生活に必要な設備も用意されている。

寮の地下には「硬鉄庵」と呼ばれる部屋があり、熊野寮自治会は「分厚い扉に守られており、警察権力からの防衛に特化している」と説明している[5]

京都大学との関係

要約
視点

熊野寮は自治寮として運営されているが、施設の所有者である京都大学との間では、無学籍者の居住(後述)や寮の管理・運営方法、寮生による抗議活動の是非などを巡り、長年にわたり見解の対立が続いている。

大学当局との確約

熊野寮自治会は、京都大学副学長との間に「確約」を結んでいるとしている[6]。自治会によれば、この確約には、熊野寮自治会が熊野寮の「日常的運営」を担うこと[7]、重大な事案に関しては寮自治会と京都大学が団体交渉を行い合意の上で決定すること[8]、家宅捜索での人権侵害に対して大学が抗議を行うこと[9]、この確約を次期副学長に引き継ぐこと[10]などが明記されているという。熊野寮自治会は、この確約は(新任副学長の)サインの有無にかかわらず自動で引き継がれるとの見解を示している[11]

一方で、大学側は自治会による大学職員への暴力的行為などを理由に、自治会との交渉や対話には条件を提示している(後述)。また、大学側が寮生による暴力的な行為があったとする主張に対し、自治会側は「言いがかりである」と反論している[12]。 また、自治会は「寮の管理運営に関して公的な最終決定権を持っており、大学当局に管理される組織ではない」との立場を示している[13]。なお、京都大学学生寄宿舎規程第1条には熊野寮は副学長が管理することが明記されている。

大学当局との対話

京都大学には学生意見箱[14]や学生支援窓口[15]が用意されている。熊野寮自治会は、これらの窓口では「『1つのご意見として承ります』などと官僚答弁しか返ってこない状態である」と主張し[16]、「窓口交渉」[17]「総長室突入」などの手段で大学側との直接交渉を試みることがある(#時計台占拠参照)。

大学当局は令和3年2月10日の告示[18]で、話し合いの条件として「1時間以内」「3名以内」「氏名・所属等の事前通知」を提示した。

これに対し熊野寮自治会は、この条件では「参加学生への...懲戒処分が起こる可能性を回避できません」などと主張して応じず、「大学・寮の運営に関心を持つ寮外の学生や市民も含めた、全ての当事者が参加でき」る団体交渉を要求した[19]

令和4年10月11日、自治会は「寮側の人間が全員出席できる」ことを前提とする「団体交渉と同等の権能を有する会議」または「予備折衝」を要求[20]。令和5年9月22日に大学側が再度「代表者を含む3名程度」の意見交換を打診したが[21]、自治会はこれにも応じなかった[22][注釈 1]

無学籍者の居住

熊野寮の入寮選考は自治会が行っているが、大学側が過去の入退寮者情報を精査したところ、「京都大学の在籍歴が見当たらない者が多数いる」等の疑義が生じた[27]。これに対し自治会側は、大学当局に対し「各寮生が居住している居室の一覧」をみだりに外部に漏らすことは「熊野寮の福利厚生施設としての本旨に反する可能性があることから、不適当」であると反論している[28]

熊野寮自治会は声明で無学籍者の居住を認め、精神疾患や経済的理由、あるいは「京大当局による一方的な放学処分者など、やむを得ない事情を抱えて熊野寮での居住を継続している無学籍者は多数おります」と主張した[13]

熊野寮には多種多様な方が住んでいます。これまでにも幼児と同居しつつ学びを継続する人、精神疾患や身体の不調等で一時的に学籍喪失に追い込まれた人、院試浪人や就職浪人、博士課程満期退学者、京大当局による一方的な放学処分者など、やむを得ない事情を抱えて熊野寮での居住を継続している無学籍者は多数おります。
熊野寮自治会[13]

また、自治会は京都大学の「開かれた大学」の理念を引用し、「熊野寮の存在意義を『学籍を有する者』に限定する発想は、京都大学を学内的な利害に基づく独善的な存在に貶めるも」』とも主張している[13]

また自治会は、過去に放学処分を受けた寮生への退去勧告に対し寮自治会が反論した後、大学当局から再反論がなかったことを根拠に、「その意義は京大当局も当時認めたものと認識」していると主張している[28]

大学側は、京都大学学生寄宿舎規程第15条(学籍を失ったときは退舎しなければならない)に基づき、無学籍者の退去を求めている[29]

「時計台占拠」をめぐる対立

熊野寮自治会が「主な活動・行事」(#時計台占拠参照)の一つとして行う、「百周年時計台記念館(時計台記念館)に梯子をかけて屋上に登る活動」について、大学側は「一歩間違えば生命・身体に関わる大きな事故につながる極めて危険な行為」であり、「建造物侵入として刑法に抵触する行為」であるとして、事前に中止を通告していた[30]

大学側の発表によれば、この通告後にも、熊野寮自治会関係者が「サングラス、ヘルメット、フェイスマスクなどによって顔を完全に隠し」た上で「職員の制止を振り切り構内に梯子を持って突進」し、制止した職員の中から「昨年に引き続き、負傷者が出た」[31]。大学側は、この行為を「学問の府である大学内においてこのような暴力的な行為に及ぶことは極めて悪質」であると非難し、この一連の行為をもって「(熊野寮自治会には)自治会としての責務を果たす意思と能力がないことを示すものと言わざるを得ない」との見解を示している[31]

これに対し熊野寮自治会は、声明文において、大学職員が「わざと転ぶなどして学生の「公務執行妨害」を捏造する行為(通称「転び公妨」)を繰り返しており」と、大学側の主張に反論している[32]

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諸問題

要約
視点

騒音問題

大学当局は、熊野寮生が未明から早朝にかけて拡声器を使用したことによる喧騒に対し、周辺住民から大学に抗議があったとして、熊野寮自治会に改善を要請した[33]。これに対し、熊野寮自治会は抗議文[34]で、この喧騒は「警察手帳の提示を拒否した警察と思われる者」が敷地内に無断で侵入し寮生を盗撮したことに端を発すると主張。警察が先に拡声器を使用したため、寮生側もやむをえず拡声器を用いた結果であり、「迷惑行為」とするのは大学当局の決めつけであると反論した。 また自治会は、他のイベントにおける騒音問題についても、事前の地域説明や当日の音量調整などの対応を強化しており、大学側の指摘は「心外である」と述べている[34]

未成年者の飲酒問題

熊野寮で20歳未満の学生が飲酒し体調を崩した件について、警察署から大学に連絡があった。大学側は熊野寮自治会に対し、事実確認、再発防止策の報告、当該学生を特定する情報の提供を要請した[33]

熊野寮自治会はこれに抗議し、報告と情報提供を拒否した[34]。自治会側は、大学当局へ報告義務を課すことは、将来的に緊急時の救急通報を躊躇させ隠蔽につながるインセンティブを働かせ、人命を危険に晒す結果になりかねないと主張している[34]

警察による強制捜査

熊野寮は、警察当局などから中核派全学連の活動拠点の一つと見なされることがあり[35][36]、様々な事件容疑に関連して強制捜査(家宅捜索)が度々行われている。京都大学も公式サイトの学生寮の紹介ページにおいて、「警察の家宅捜索が実施される」ことがあると言及している[37]

1990年代前半までは毎月のように熊野寮に捜索が入ったが、近年は数年に一度のペースである[38][要文献特定詳細情報]

近年の捜索の一部を以下に記す。

  • 2014年11月4日 同月2日に東京銀座で行われたデモ行進の際の公務執行妨害容疑での中核派系全学連の学生(京大生含む)の逮捕に伴って警視庁による捜索が行われた。
  • 2016年2月29日 中核派系全学連の学生らが京都大学のキャンパスで吉田南1号館を柵や立て看板などで封鎖し、授業や大学事務が行えない状態にした件の威力業務妨害容疑で、活動拠点の1つとして家宅捜索された。[35]
  • 2017年10月31日 同年8月9日のオープンキャンパスにて中核派系全学連活動家の男2人(うち一名京大生)が京都大学職員に暴行したとして公務執行妨害容疑で逮捕された時、関係先として家宅捜索された[36]
  • 2021年6月24日 熊野寮に出入りしていた中核派系全学連の活動家が免状不実記載の疑いで逮捕された時、関係先として家宅捜索された[39]
  • 2023年2月23日 成田国際空港反対派の農家の耕作地の明け渡しをめぐる強制執行の際に男3人が公務執行妨害で現行犯逮捕され、関係先として家宅捜索された[40]
  • 2023年4月30日 中核派系全学連の活動家2人が電子計算機使用詐欺などの疑いで逮捕された時、関係先として家宅捜索された[41]
  • 2024年6月25日 詐欺被疑事件の関係容疑として、京都府警による家宅捜索が行われた[43]
  • 2025年2月9日  2022年の熊野寮祭企画「総長室突入」に関する威力業務妨害容疑で、京都府警による家宅捜索が行われた[44]
  • 2025年10月31日 2024年12月2日の「時計台占拠」と称する無許可集会において、大学職員に集団で体当たりするなどの暴行を加えたとされる暴力行為等処罰法違反の疑いで、中核派系全学連の副委員長とされる京大生が再逮捕(同年10月27日)されたことを受け、関係先として家宅捜索が行われた[45]

捜索に関する議論

警察による強制捜査(家宅捜索)については、その手法や法的手続きに関して批判的な見解も示されている。

2014年の警察の熊野寮への捜索について京都大学法学部教授刑法学者の高山佳奈子は法手続き上の観点から適法性を疑問視している[46]。それによると、本件の立件に必要な証拠は現場(銀座)での警察やデモ参加者からの証言で十分であり、刑事訴訟法及び最高裁判例に反する必要性のない捜索に当たる可能性があり、「法治国家たるべき日本の国際的威信を地に落としかねない」。またこの捜査において本来事前に提示することが必要な捜査令状を寮生に呈示しなかった点も問題視している[47]

寮生に聞き取りを行った杉本恭子によると、捜索場所が少数であるのに対し多数の機動隊が投入されることや、寮内では警察による違法な写真撮影や令状を呈示しない捜査が行われると寮生が主張していること、捜索の結果押収されるのがビラ数枚ということもある、と報告されている[48]

また、熊野寮自治会は家宅捜索の度に、警察および令状を発行した裁判所に対して抗議声明を発表している[49]。これらの声明では、捜索の不当性について以下のような点が主張されている。

  • 捜索容疑とされる事件は、寮自治会への「不当な弾圧」や「情報収集」を行うための「口実」に過ぎない[50][51]
  • 捜索令状を寮生に呈示する前に寮内へ「襲撃的」に侵入したり、警察手帳の呈示を拒否したりするなどの違法行為が行われている[51]
  • 捜索に不要な大人数の機動隊を動員することは、寮生への「威圧」や、寮のイメージダウンを狙った「パフォーマンス」である[50][52]
  • 2024年2月の捜索の際、機動隊が地下の鉄扉をエンジンカッターで切断したとされ、寮自治会は「10名程度の寮生が打撲や出血などの怪我を負ったり、寮生の所持品が壊されたりした」と主張し、警察の対応を非難している[53]
  • 2024年6月の捜索では、機動隊による「度を越えた危険な暴力行為」があったとして、寮自治会は「寮生1名が頭部に怪我を負い救急搬送され、少なくとも10名以上の寮生が打撲や傷の残る怪我を負った」と説明している[51][54]。この事態に対し京都大学は、詳細は把握していないとしつつも「遺憾に思う」と回答している[54]
  • 警察が事前にマスメディアに情報漏洩を行っている疑いがある[55]
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主な活動・行事

寮内では、寮生により様々な行事が企画・運営されている[56]

熊野寮祭
年間で最大の行事とされる。約10日間にわたり開催され、バーや運動会など寮生による多様な企画が実施される。後述する「時計台占拠」も、この寮祭の企画の一つとして位置づけられている[56]
地域交流行事
5月頃に開催される「くまのまつり」や、「くまの夏の夜まつり」など、近隣住民との交流を目的としたイベントも行われる。これらのイベントでは、寮生や近隣の飲食店による出店、ライブなどが催される。
音楽祭
寮内に設置されている音楽室を利用し、寮生によるライブイベントが定期的に開催されている。
その他の行事
新入生歓迎行事として「花見」や「大文字コンパ」(大文字山へのハイキング)が行われるほか、季節の行事として「七夕コンパ」(竹を用いた流しそうめん)、「新年会」なども実施されている。留学生が在籍していることから、旧正月を祝うこともある。

時計台占拠

熊野寮自治会は、例年「時計台占拠」と称して、京都大学の時計台(百周年時計台記念館)に梯子をかけて屋上に登る企画を実施している。寮自治会はこれを「熊野寮祭の恒例行事」であると説明している[57]。その趣旨は声明文で次のように説明されている。

時計台占拠は、京大の象徴である時計台の屋上にはしごで登って占拠し、時計台を1日限りの「熊野寮D棟(※3)」に変えて、誰でも自由に主張できる演壇として開放するイベントです。

(中略)

熊野寮D棟と聞いてぴんと来ない点があると思いますが、この表現は寮自治会の度重なる増寮要求に答えなかったことと、かつては総長室もあった、京都大学の権力の象徴でもある時計台を占拠し、「熊野寮D棟」と称す事によって、大学は学生のものだ、大学は熊野寮のごとく万民に解放された自由な場所なのだ、という意味合いがあります。

熊野寮自治会、 時計台占拠声明文

なお、この活動は施設の管理権を巡り大学側との対立点の一つとなっており、大学側の見解については「#「時計台占拠」をめぐる対立」節を参照。


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所在地・アクセス

所在地

郵便番号:606-8393

住所:京都府京都市左京区丸太町通川端東入東竹屋町50 京都大学熊野寮

アクセス

最寄りの駅:京阪電気鉄道鴨東線 神宮丸太町駅(丸太町通を東に徒歩5分)

最寄りのバス停:熊野神社前(徒歩2分)

京都大学吉田キャンパスから:約1.7km(東大路通を南下、熊野神社前交差点を西進)

登場作品

テレビ番組

脚注

参考・関連文献

関連項目

外部リンク

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