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炭素繊維強化プラスチック(たんそせんいきょうかプラスチック、英: Carbon Fiber Reinforced Plastics, CFRP)は、炭素繊維で樹脂を強化した複合材料である。よりなじみのある複合材料の鉄筋コンクリートで例えると、樹脂がコンクリートに相当し、炭素繊維が鉄筋に相当するものである。
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繊維強化プラスチックの一種であり、マトリックス(母材)にはエポキシ樹脂のような熱硬化性樹脂が多く用いられるが、熱可塑性樹脂を用いるものもあり、それらを特にCFRTP(Carbon Fiber Reinforced Thermo plastics)、FRTPと呼ぶこともある。
CFRPの代表的な特性は高い強度と軽さである。CFRPによる製品は金属や樹脂のような一般的な材料よりも高価であるものの、高い比強度や剛性が求められる分野で用いられる。ゴルフクラブのシャフトや釣り竿などのスポーツ用途から実用化が始まり、1990年代から航空機、自動車などの産業用に用途が拡大しており[1][2]、建築、橋梁の耐震補強などの建設分野、その他の民生品でも用途が拡大を続けている。
一部の分野ではCFRP製品のことを単に、カーボン樹脂やカーボンとも呼ぶことがある。
製造法の違いからドライカーボンとウェットカーボンの2種類に大別される。ドライカーボンは炭素繊維と母材(マトリクス)を、あらかじめ馴染ませた部材(プレプリグなど)を型に貼り込んでいったものを真空バッグを使用して加熱しながら圧力差を利用し、エポキシを吸い出しながら圧着し硬化させる。積層プリプレグやプリプレグとハニカム材との密着性を確保するため高い性能を求める場合にはオートクレーブを使用する場合が多い。ハニカム材の圧着の必要がない場合などは、加熱と真空引きによる1気圧の圧力で施工してオートクレープによる加圧を使用しない場合も多い。
従来、車両や航空機の構造部品など大型で極限の性能が求められる用途の場合、生産工程の多くが手作業であり準備・施工にも時間がかかり、大型で高圧のオートクレーブや類する設備が必要なことからコストが非常に高くなることに加え、CFRPが炭素繊維の方向にしか強度を発生しないために設計が難しいことから、利用用途は限られていた。近年ではプリプレグ貼り込みがハンドレイアップよりも容易で精度を高くでき少量生産に向いていることや、小型の製品であれば大型の設備でなくても対応できることから低コストで生産できるため、スマートフォンケースやモバイルPCの外装など小サイズな製品が増加している。
脱オートクレーブ成形法やマイクロ波による加熱[3]など、新たな製造法により成形コストは低減しつつある。
ウェットカーボンは、通常のFRPと同じくハンドレイアップ・インフュージョン・RTMなどの工法で作られる。RTMやインフュージョン工法でのウェットカーボン製品は機械自動化による大量生産が可能で、自動車などに使われている.
CFRPの特に重要な性質は、軽量であることと優れた力学的特性(強度・弾性率)であるが、それ以外にも優れた性質を多く持つ。構成するマトリックスと炭素繊維の種類、添加物(シリカ、ゴム、カーボンナノチューブ)の種類、炭素繊維の密度や繊維の向きなどによって各種物性は大きく異なる。
各種特性を表す代表的な数値を示すことは難しく、ここでは一例を示すにとどまる。PAN系炭素繊維(標準弾性率)を例とする。
エポキシ樹脂をマトリックスとしたCFRPはほとんど可塑性はない(破壊までのひずみが0.5%以下)。エポキシ系CFRPは高い強度と弾性率を示すが、破壊が急激に進展するため、破壊の予防診断や欠陥検出は非常に難しい。
CFRPは明確な疲労限度を予測できない(鉄やアルミなど一般的な材料に対しては疲労限度が予測可能である)。
繰り返し応力負荷による破壊については未知の部分が多く、CFRPを使用する場合は繰り返し荷重のかかる場所に対してはかなり余裕をもった使用期間を設定する必要がある。
最初はスポーツ用途、続いて航空宇宙、1990年代に医療用X線診断機器、自動車用圧縮天然ガスタンク、土木・建築の耐震補強、工業用ロールなどと応用先を拡大してきた。
CFRPの製造方法は、最終的に必要とされる形状や力学特性、外観(光沢など)、生産数量によって決定される。マトリックスに用いるポリマーによって完成品の特性は大きく変わる。
炭素繊維はポリアクリロニトリル(PAN)、レーヨン、石油ピッチなどの前駆体ポリマーから製造される。PANやレーヨンなどの合成ポリマーの場合は、前駆体を紡いでフィラメントにしたのち、物理的特性を高めるためにポリマー鎖を整列させる。フィラメントを紡ぐ際の前駆体の組織や機械的なプロセスは、メーカー各社独自のノウハウとなっている。延伸や紡績の後、フィラメントを加熱し、炭素原子以外の余分な元素を追い出し(炭化)、最終的な炭素繊維を製造する。炭素繊維はハンドリング性を向上させるためにさらに処理をされ、ボビンに巻いて出荷する。
炭素繊維を糸のように使って織物シートを製作する。1方向に繊維を揃えたシートの他に、平織り、綾織などの織り方のシートも用いられる。このとき同時にシートに樹脂を含浸させておく方法と、次の成形時に樹脂を入れる方法がある。
成形を行うメーカーでは、シート制作までが終了している炭素繊維クロス/プリプレグをメーカーから購入することが多い。
樹脂を硬化させて成形する工程では、必要とする強度や形状、生産数量に合わせて多くの方法がある。マトリックスの樹脂は高温で硬化するもの、常温で硬化するもの、熱可塑性樹脂などがあり、それによっても成形の方法は変わる。
低品位のものについては、樹脂を含浸/塗布させた炭素繊維のクロス(含浸させたものはプリプレグと呼ばれる)を金型の形状に切断したものからつくられる。高品位のものは、真空パックとオートクレーブで硬化させる。オートクレーブの代わりにエアブラダーやEPSフォームで硬化前の炭素繊維に内圧を掛ける方法もある。
強度低下の原因となるのは微小な気泡であるが、これは真空引きやプレスを用いることで解消可能である。
炭素繊維自体が機械加工では切削しにくく、炭素繊維が不均一に分布しているCFRPは機械加工が困難である。通常の工具では摩耗が激しく面荒れを起こすため、コーティングなどを施した専用の工具を用いる。
また、近年では非接触な加工としてレーザ切断が研究されている[5]。超短パルスレーザを用いた加工[6]や、ナノ秒レーザを用いた加工[7]など様々なレーザを用いた加工方法が研究されており、数値シミュレーションによる現象の把握も進んでいる[8]。
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