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日本における弁護士の強制加入制団体 ウィキペディアから
日本弁護士連合会(にほんべんごしれんごうかい、英: Japan Federation of Bar Associations、略称: JFBA)は、日本の弁護士会の連合会である。略称は日弁連(にちべんれん)。
日弁連は、弁護士・弁護士法人・弁護士会の指導・連絡・監督・弁護士会への入会資格審査・懲戒に関する事務を扱うほか、外国法事務弁護士の監督に関する業務を行う[1]。更に、定期的に弁護士を対象とする強制参加の倫理講習会を実施し、訴訟実務の経験などに基づき、さまざまな社会制度の整備に関する活動も行う。
1949年(昭和24年)、弁護士法第45条から第50条までの規定に基づき設立された。日本司法書士会連合会や日本土地家屋調査士会連合会と同様、職能団体としての性格を有するが、特別民間法人ではなく弁護士自治が行われている。弁護士等は弁護士法22条に基づき、日弁連の定めた会則に従わなければならない。
経費は会則91条により、会費、登録料、贖罪寄付、その他の収入で賄われている[2]。
日本では弁護士・外国事務弁護士として活動する場合、全国52の単位会のいずれかに事務所を置く地域の弁護士会を通じて、必ず加入が義務付けられている強制加入(制)団体である[3]。
2024年4月1日現在、全国に52の弁護士会が置かれ(北海道に4会、東京に3会、残りの府県に1会)、あわせて45,826名の弁護士、1,692の弁護士法人が入会している。このほか、3名の沖縄特別会員、495名の外国法事務弁護士、9つの外国法事務弁護士法人も所属している[4]。
2022年6月1日現在[5]
役職 | 定員 | 氏名(所属弁護士会) |
---|---|---|
会長 | 1名(任期2年) ※ 会員による直接選挙 | 小林元治(東京弁護士会) |
副会長 | 15名(任期1年) ※ 2名以上は女性 | 伊井和彦(東京弁護士会) 松村眞理子(第一東京弁護士会) 菅沼友子(第二東京弁護士会) 芳野直子(神奈川県弁護士会) 増子孝徳(栃木県弁護士会) 福田健次(大阪弁護士会) 矢倉昌子(大阪弁護士会) 林晃史(兵庫県弁護士会) 蜂須賀太郎(愛知県弁護士会) 下中奈美(広島弁護士会) 多川一成(福岡県弁護士会) 吉田瑞彦(岩手弁護士会) 秀嶋ゆかり(札幌弁護士会) 樋川恒一(札幌弁護士会) 松尾泰三 (徳島弁護士会) |
事務総長 | 1名(会長の任命) | 谷眞人(東京弁護士会) |
事務次長 | 若干名(会長の任命) | 木原大輔(東京弁護士会) 松田由貴(第一東京弁護士会) 石井邦尚(第二東京弁護士会) 服部千鶴(愛知県弁護士会) 杉村亜紀子(東京弁護士会) 亀井真紀(神奈川県弁護士会) 下園剛由(事務局) |
(主に女性の)弁護士の職務遂行においてその制度が必須である、という点からだけでなく、人権や信条の自由の面から、組織として選択的夫婦別姓制度をはじめとする民法改正を支持する立場を取り、たびたび会長声明を出すなど、提言を行っている[7][8]。
その論拠としては、「日本国憲法は、第13条で個人の尊厳を、第24条で婚姻は両性の合意のみに基づいて成立すること、そして婚姻について法律は個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して制定されなければならないことを規定している。氏名は、その人の人格の表象であり、それなしに人は社会で生きていくことができない。改姓を望まない人にも改姓を強制する制度は、その人格権を侵害するもの。また、圧倒的多数の夫婦が夫の氏を選択しており(2009年は96.3%)、望まない場合にも改姓を強いられているのは、実際には女性。民法第750条は、一見中立的であるが、現実には性差別規定に他ならない。選択的夫婦別姓制度の導入は、憲法上の要請といえる。」としている[9]。
死刑廃止を推進する立場から、提言を行い[10]、決議を採択している[11][12]。この採択に関しては、2016年の場合、日弁連内の死刑廃止検討委員会が主な宣言案を作り、各弁護士会の会長が集まる理事会(786人出席)で可決されたものである[13]。他方で、日弁連会員数は約3万7600人(当時)であり、宣言に際しては、思想・信条に関わる問題を786人の出席者で決めてよいのかとの質問も出るなどした[13]。
この提言・決議の内容を実現するため、死刑廃止検討委員会を設置し、上記「提言」と「決議」の実行のため、死刑廃止についての全社会的議論の呼びかけに向けた活動、 死刑執行停止に向けた活動、 死刑に関する情報開示の実現に向けた活動等を行っている。
2015年、刑事弁護センター死刑弁護小委員会が会員向けの「死刑回避」のための手引書を作成していたことが明らかとされた。その中では、「被害者参加制度に反対」「原則黙秘」などの死刑回避対策が推奨されている。
住民基本台帳ネットワークシステムを構築することは個人情報保護施策を欠いた国民総背番号制を導入するものであるとして、 意見書[14][15]や会長声明[16][17]を発表している。
国旗及び国歌に関する法律(国旗国歌法)を根拠として行なわれる、君が代斉唱時の不起立に関する処分・起立を義務付ける条例[注 1]に反対する立場から裁判所判決や条例提出ごとに会長声明を発表している[18][19][20][21][22]。
1992年、戸塚悦朗弁護士を海外調査特別委員に任命し、韓国の市民団体と連携して国連へ朝鮮人「強制連行」問題と「従軍慰安婦」問題を国連人権委員会に提起し、「日本軍従軍慰安婦」を「性奴隷」として国際社会が認識するようロビー活動を展開し、クマラスワミ報告に慰安婦に関する記述がなされるに至っている[23][24]。
2015年、民主党(当時)の辻元清美議員や社民党の福島瑞穂議員、日本共産党議員約10人が駆けつけた安保関連法案反対の国会前デモに、日弁連としても会長を含め参加している。これに関して、日弁連会長の村越進(当時)は、護憲であり「政治活動ではない」という主張をしている[25]。
日弁連は、弁護士法に基づき、所属弁護士を懲戒することはできる。一方で、単位弁護士会が下した懲戒処分・懲戒請求の不服審査も行っている。
もっとも軽い戒告処分を出すのに、単位弁護士会に懲戒請求を提出し、上部組織の日弁連に3度の申し立てを行い2年間かかった例もあり、元日弁連会長の宇都宮健児は「このケースは、私も処分が軽い印象を受けますが、決議まで2年もかかったのは長すぎる。皆が忘れた頃に軽い処分というのでは“身内同士でナアナアでやっている”と思われても仕方ありません。これでは一般市民が納得しませんよ」などとして、弁護士会は身内に甘いことを批判している[26]
単位弁護士会が受け付けた懲戒請求の申立総件数に対して、実際に弁護士を懲戒する割合は、2.3パーセント(平均)[27]である。単位弁護士会が懲戒請求申立を却下したとき、日弁連は、同議決に対する異議申立を受理し、再審査することもあるが、その割合は1.2パーセント(平均)である[27]。
2005年(平成17年)4月、拘束力の無い弁護士倫理に代わり、弁護士職務の「行動指針または努力目標」を定めたものとして弁護士職務基本規程を施行した[28]。
弁護士が弁護士法によって日弁連に属する各弁護士会への所属が義務付けられているため、強制加入団体の日弁連が特定の政治的意見を会長声明や理事会決議としてあげることに対し「弁護士が全員左派であると思われるのは腹が立つ」「任意団体にすべき」という意見がある、と産経新聞は報じている。2015年8月に日弁連の村越会長が安全保障関連法案廃案を訴えた抗議行動デモのために開いた会見で、強制加入団体の日弁連が特定の政治的意見を掲げることへの懸念を産経記者が会見で質問したところ、村越会長を支持する弁護士や大学教授300人から「何を言っている」「帰れ!」などの怒号が飛んでいる。村越会長自身は産経新聞に「『戦争法案』というレッテル張りはしていない。『9条を守れ』ということまではぎりぎりの範囲だと思う。政治的な発言とは考えていない」と述べている[25]。
2015年(平成27年)7月には、京都弁護士会に所属する弁護士が、「弁護士自治を目的とする会の趣旨と関係のない政治的主張を行うことは違法だ」として、同弁護士会と日弁連の両会長に、公式ウェブサイト上の声明文を削除し、慰謝料を支払うよう求めた裁判を起こしている[29]。東京地裁は、当該訴訟の判決において、「本件各掲載行為が被告日弁連又は被告京弁の目的の範囲外の行為であると認めることはできない。」「本件各掲載行為が,原告ほかの思想・良心の自由等を侵害するものであると認めることはできない。」「本件各掲載行為に当たっては,いずれも被告日弁連及び被告京弁において,適切な機関決定がされたものと認めることができる。」などと判示した。主文においては、削除請求及び慰謝料請求は理由なしとして棄却され、違法確認の請求については確認の利益を欠くものとして却下されたため、原告の全面敗訴となった。訴訟費用も原告が全額負担することが命じられた[30]。
2015年に産経新聞は旧日本陸軍軍医の麻生徹男の娘である天児都への取材で、作家の千田夏光が麻生が慰安婦制度の考案者であるかのように書いたことについて天児が事実とは異なるとして抗議と訂正の申し入れをしたところ、千田は天児に謝罪をしたが著書の訂正はせず千田の記述が他の著者の引用を受けるなどして広まってしまい、これについて天児が法的措置を取ろうとしたところ「日本弁護士連合会はあなたと立場が違うから弁護できない」という理由で弁護を断られたと報じている[31]。
産経新聞は【弁護士会 矛盾の痕跡】にて、日弁連は拉致に冷淡、「朝鮮人=被害者」以外は沈黙する人権派弁護士らが運営し、朝鮮総連と強固なネットワークを持っていると報道している。在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)の固定資産税減免の無効確認訴訟や朝鮮学校補助金取り消し訴訟の総連側の代理人には常に、日弁連で強い影響力を持つ人権派弁護士がつくなど、総連と人権派は強固なネットワークで結ばれ、例えば戦時中の慰安婦問題を国連の委員会に訴える日弁連の活動も総連が背後から支えたと指摘されている。上記の訴訟を追求側で担当した徳永信一弁護士は「日弁連はいわば総連の工作拠点。人権派が総連に取り込まれた影響なのか、日弁連は拉致問題には終始、消極的だった」と批判している。2002年の拉致被害者数人奪還以前まで日弁連会長を務めた人権派弁護士の土屋公献は朝鮮総連機関誌の「朝鮮時報」で「日本政府は謝罪と賠償の要求に応じるどころか、政府間交渉で疑惑に過ぎない行方不明者問題や「ミサイル」問題を持ち出して朝鮮側の正当な主張をかわそうとしている。破廉恥な行動と言わざるを得ない」と講演などでも同様の発言を繰り返していた。産経新聞は北朝鮮が拉致認めた後も日弁連は拉致問題をめぐる日弁連としての意見表明は5人の帰国直後に出した会長談話1本のみであること批判し、「虚偽の歴史である強制連行のような『朝鮮人は被害者、日本人は加害者』という構図を前提に、それに当てはまらないものには沈黙する。日弁連が掲げる人権は、恣意(しい)的に選ばれたものだけを指している」としている[32]。
全会員の約2.1%しか参加していない死刑廃止宣言の採決について、委任状がない等の手続き上の不備、更に自身の思想信条と反する活動に強制加入団体の会費が支払われている事に対し、106人の弁護士が質問状を送っている[33][34]。
2024年日弁連会長選挙の全国52弁護士会の平均投票率は33.23%、最多は釧路弁護士会の77.11%で、最少は神奈川県弁護士会の36.6%であった。
2024年の時点で弁護士は4万5826人いるが、議決権を持つ多くの弁護士は自身の業務に専念して弁護士会の活動には無関心か反体制の姿勢を忌避して距離を置いているため、左翼系の弁護士が日弁連や各都道府県の弁護士会を主導しているとして指摘されている。彼らは政治活動に熱心なため毎年5月の最高意思決定機関である日弁連総会にも他の弁護士の委任状を多数集めて出席している。2023年に大阪市で開かれた日弁連の総会の出席者は1万902人だが、うち本人が出席したのは506人のみで、残りの1万396人は代理出席であった。[35]
全会員の約2.1%の賛同率で、死刑廃止宣言を日弁連として出した。そして、「死刑廃止及び関連する刑罰制度改革実現本部」へも日弁連会費から2500万円の支出されたため、死刑廃止反対派から批判が起きた[33][34]。
日弁連は、「日弁連会長声明」について、「日弁連は、さまざまな分野で人権を護るため、市民のための司法制度を実現するため、よりよい法律を作ることや行政をよくしていくために、日弁連の政策を提言・要望・意見などの形で政府や関係省庁、関係機関に発表し、その実現に努めています。[36]」としている。この会長声明については、憲法から一義的に判断することが難しい対立のある論点(死刑、憲法9条等の問題等)で意思統一を図ることは難しいため、弁護士会として声明を出すときには、主に法律の解釈にしたがって人権の侵害になるとされている場合について、会長声明を出している、と東京弁護士会の人権擁護委員会副委員長、日弁連人権擁護委員会副委員長などを歴任した弁護士杉浦ひとみは主張している[37]。
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