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契約の一つ ウィキペディアから
売買(ばいばい)とは、当事者の一方(売主)が目的物の財産権を相手方(買主)に移転し、相手方(買主)がこれに対してその代金を支払うことを内容とする契約。
売買は、当事者の一方がある財産権を相手方に移転することを約し、相手方がこれに対してその代金を支払うことを約することによって成り立つ双務・諾成・有償の契約である。
売買は贈与や交換と同じく権利移転型契約(譲渡契約)に分類される[1][2]。ただし、贈与が無償契約・片務契約の典型であるのに対し、売買は有償契約・双務契約の典型である[3][4]。
貨幣経済の発達した今日、売買は物資の配分あるいは商品の流通を担う最も重要な契約類型とされる[5]。売買と交換の関係であるが、講学上、典型契約としての交換(586条)を狭義の交換とし、売買契約など広く財産権の移転を内容とする取引一般を指して広義の交換と概念づけることもある[6]。歴史的にみると交換という形態は広く商品経済の発達以前から存在したが、貨幣経済の発達の結果、その中から物に対する貨幣の交換という取引形態が分化し独立したものが売買であると理解されている[7]。
売買成立の最低限の要素として、売買の目的物および代金額又はその決定方法が定まっていることが必要である。
売買契約を締結することを、売主から見て「売る」又は「売り付ける」(名詞形は「売付け」)といい、買主から見て「買う」又は「買い付ける」(名詞形は「買付け」)という。売買契約を締結してそれに基づく引渡しを行うことを、売主から見て「売り渡す」(名詞形は「売渡し」)といい、買主から見て「買い受ける」(名詞形は「買受け」)という。
売買契約は1回限りの取引のスポット売買契約(Spot sale and purchase agreement)と継続的に取引を行う長期売買契約(Long term sale and purchase agreement)に分けられる[11]。
また、長期契約の場合、期間内の取引について一般的な取り決めを行う基本売買契約(Basic sale and purchase agreement、Master sale and purchase agreement)と基本売買契約に定められた条件の下での個別売買契約(Individual sale and purchase agreement)に分けられる[11]。
売買は担保目的で利用されることもある(売渡担保)。担保目的による売買は、売買という形式を借りてはいるが、実質的には担保の設定である。通常、このように担保目的ではない本当の意味での売買のことを「真正売買」(true sale)と呼ぶ。
他人の所有物を売買の目的とする契約を他人物売買といい、フランス民法や旧民法はこれを無効とするが、ドイツ民法や日本の民法はこれを有効とする(561条、旧560条)[12]。売買は直接には債権債務関係を生じさせる債権契約であり、他人に財産権が帰属していることは財産権移転の時期を制限する財産権移転の障害となる特段の事情にすぎないからである。売買契約時に他人の物でも、約束の期日(履行期)までに売主が他人から所有権を取得すればよい。この所有権取得のときに、財産権移転の障害となる特段の事情が解消したことになり、所有権は買主に移転することになる。
他人の所有物を売買の目的としたときは、売主は、その権利を取得して買主に移転する義務を負う(561条、旧560条)。もし、売主が所有権を取得できず、買主に所有権を移転できなかった場合は債務不履行となる。日本の民法では565条により追完請求権(562条)、代金減額請求権(563条)、損害賠償請求権(564条)、契約解除権(564条)の規定が準用される[13]。
日常生活でお店でものを買う場合のように、契約の成立と物の引渡し・代金支払が同時に行われるものを現実売買という。民法の売買の規定は、当事者の合意による契約の成立後に債務を履行することを予定していることから、現実売買に民法の売買契約の規定の適用があるか争いがある。現実売買の法的構成については物権契約説(現実売買を所有権移転を目的とする物権契約とみる説)と債権契約説(通説。基本的には通常の売買契約と同じとし、債権契約が行われ直ちにそれが履行されているとみる説)があるが、両者の結論としての差異は大きくないとされる[14]。なお、民法573条のように現実売買には適用の余地のない規定もある[12]。
この節は特に記述がない限り、日本国内の法令について解説しています。また最新の法令改正を反映していない場合があります。 |
売買は、当事者の一方がある財産権を相手方に移転することを約し、相手方がこれに対してその代金を支払うことを約することによって、その効力を生ずる(民法555条)。典型契約の一種である(555条)。売買は双務契約であり同時履行の抗弁権(533条)や危険負担(434条以下)の適用がある。また、典型的な有償契約であり、民法の売買の規定は、売買以外の有償契約についても原則として準用される(559条)。
売買は目的物の引渡しを必要とせず原則として当事者の意思表示の合致があれば成立する諾成契約である[8]。
売買の目的物は譲渡性のある財産である[15]。不動産や動産がイメージしやすいが、他にも、用益物権や債権、知的財産権なども目的とすることができる。
さらに、電気の「売買」など、財産権の移転を伴わないサービス提供型の契約であっても、売買契約と同様に扱われるものもある。
代金額は当事者間で定めるべきものであるが、暴利行為など公序良俗に反する場合は無効となる[16]。
代金は現在貨幣として通用するものによって支払われる必要があり、そうではない小判などによるときは売買ではなく交換となる(通説)[17]。
一定の売買につき法律上の規制が設けられている場合がある[18]。
合意が成立したとき、または予約完結権を行使したとき(556条)に契約の効力が生じる。その効力の具体的内容は以下の通りである。
売買契約に関する費用は当事者双方が等しい割合で負担する(558条)。通常、契約書・公正証書作成費用、印紙代、目的物鑑定費用、契約締結場所に関する費用などが売買契約に関する費用とされる[26][27]。この規定は売買のみならず、契約一般に関しての契約費用の原則を定めるものと位置づけられている[12]。なお、本条と485条(弁済の費用については原則として債務者が負担する)との関係に注意を要し、通常、荷造費・運送費などは弁済費用とみられるが、両者の区別はつきにくい場合もある[28][12]。
不動産移転登記の登記費用については契約費用とする判例があるが(大判大正7年11月1日民録24輯2103頁)、弁済費用とする反対説もある[29]。
558条は任意規定のため売買契約に関する費用の約定があればそれによる[23]。
商人間の売買を商事売買といい、商法に特則が設けられている。
国際契約に関する条約としては国際物品売買契約に関する国際連合条約(ウィーン売買条約、CISG)がある[31]。国際売買は国際物品売買契約に関する国際連合条約(CISG)によって規律される。日本の国内法による規制としては外国為替及び外国貿易法(外為法)による規制がある[9]。
国際物品売買契約に関する国際連合条約は物品売買は適用対象となるが、船舶や航空機の売買は除外されているほか、消費者取引も適用対象外である[31]。
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