Loading AI tools
ウィキペディアから
ロスタム(ペルシア語: رستم、ラテン文字転写: Rostam [rosˈtæm])は、ペルシアの叙事詩『シャー・ナーメ』に登場する英雄。イラン最大の叙事詩「王書」(シャー・ナーメ)を含むペルシア文学の中でも、最も偉大な英雄とされ、その栄光と悲劇に彩られた生涯は世界的にも有名である。ザール(白髪のザール)とカブールの王女ルーダーベの息子。母ルーダーベが蛇王ザッハークの曾孫であるため、ロスタムはナリーマン(ナリーマーン)家という英雄の家系に生まれながらも、ザッハークの玄孫でもある。
巨象のような立派な体格をもち、『シャー・ナーメ』ではたびたび獅子に喩えられる。また、突出しているのは体格だけではなく、カや勇気、そして策謀も、イランで彼に並ぶものは無く、英雄としての資格を全て兼ね備えていた。特に武術の腕と投げ縄の腕は並ぶものなどいないほどとされる。700年もの生涯のうち、イランを守るため、トゥーラーン(トゥラーン)や化け物とたびたび戦った。彼は七つの試練を越える、ペルシア最大の英雄の一人である。
母の胎内で大きくなりすぎたため、父の育ての親である霊鳥スィーモルグ(スィームルグ)の力を借り、帝王切開により出生する[1]。
このような難産だったため、出産後、母親は「わたしは救われ(ロスタム)、悲しみが終わった」と言った。これにより、この赤子は「ロスタム」と命名されることになったという[1]。ロスタムは生後一日で成人男性と同じくらいの背丈があり、幼少期には片手で持ったメイスの一撃で巨象を倒した。
成長したロスタムは、曽祖父ナリーマンの敵討ちのためスィパンド城を攻略し、またたびたび侵略してくるトゥーラーンを幾度となく撃退し、名を挙げる[2]。そんななか、イラン国王カーウースが白鬼 (Div-e-Sepid) と戦争をし、苦境に陥る。この救出のために旅に出たロスタムは七つの試練を越えることになる。これがロスタムの偉業の一つ、「七道程」である[3]。
あるきっかけから、ロスタムはトゥーラーンの属国に当たるサマンガーンで美女タハミーネと出会い一子をもうける。こうして生まれたロスタムの子ソフラーブ(ソホラーブ)は父が誰であるかも知らずに成長し、トゥーラーンのためにイランと戦い始める。やがて、タハミーネから父の素性を教えられたが、既にソフラーブはトゥーラーンの戦士としてイランと戦っており、引き返せない。そこで、ソフラーブはイランのカーウース王を玉座から引きずりおとし、父であるロスタムをイラン王にし、しかるのち自分はトゥーラーンの王座を簒奪する計画をたて、とりあえずはイランとの戦いを継続する[5]。
次々とイランの勇者を打ち破るソフラーブに対し、ついにイランはロスタムを戦場に呼び出す。既に老英雄となっていたロスタムを見たソフラーブは、この老英雄をロスタムではないかと思い素性を尋ねるが、年老いたロスタムはこのような若者に敗れて名誉を失うことを恐れて正体を隠し、「自分はロスタムではない」と名乗ってしまったため、そうとは知らず、この親子は三日にわたって激闘を繰り広げることになる[5]。
一日目、二日目はともに若いソフラーブが優勢であった。特に、二日目にはソフラーブはロスタムを組み伏せ、もう少しで殺せる寸前までいったのであったが、ロスタムは詭計を使い、なんとか逃れる。どうしてもソフラーブには叶わないことを悟ったロスタムは神に祈る。実は、以前のロスタムは自分でも制御できない力を持っており、神に力を一部だけ取り去ってもらっていたのである。その力を取り戻したロスタムは、三日目、ソフラーブに瀕死の重傷を負わせることに成功する。しかし、死にゆくソフラーブの口から、彼が自分の子であることを知り、知らぬこととはいえ子殺しをしてしまったと、絶望にふけるのであった[5]。
その後、ロスタムは死に場所を求めて各地をさすらい、その一方で死者を蘇らせる霊薬を探した。だが、霊薬を手に入れることはできなかった[6]。
イランの王がゴシュタースプ(グシュタースプ)王に代替わりしたときのこと、王子イスファンディヤールを疎んだゴシュタースプ王は、「ロスタムを倒したら王位を譲る」との約束をする。これには、イランの東側、ザーブリスターンに広大な領地を持ち、かなりの権威を持つザールとロスタムが王に疎まれていたという事情もあった[7]。
ロスタムと同じような七つの武勇伝[注釈 2]を持ち、青銅の体を持つイスファンディヤールに対し、ロスタムはかなりの苦戦を強いられ、重傷を負う。ロスタムは、父ザールの助言に従い、霊鳥スィーモルグに治療してもらうとともに、助言を得る。スィーモルグは、イスファンディヤールを殺した者には呪いがかかり、破滅の未来が待っているから平和的に解決した方がいいことと、平和的交渉が無理だったときのために、イスファンディヤールは青銅の体を持ち、剣でダメージを負わせることはできないが、タマリスクの二股の矢で両目を射抜けば殺せることを教える。ロスタムは助言通り平和的に解決しようとするが、交渉は決裂し、ロスタムはイスファンディヤールを油断させ、弓で目を射ってイスファンディヤールを殺害してしまう[7]。そして、ロスタムの栄光の人生は破滅へと向かう。
このとき、ロスタムはイスファンディヤールの遺言に従い、彼の息子であるバフマンを扶養することを約束する。しかし、ロスタムの死後、バフマンは父の復讐のため、ザーブリスターンに出兵し、ロスタムの父であるザールを捕らえ、息子のファラーマルズを殺害することになる[9]。そして、ザーブリスターンは滅びてしまう。
ロスタムの腹違いの弟シャガードは成年に達すると、カブール王の娘と結婚した。これによってザーブリスターンの主であるロスタムは、これ以降はカブールに対して貢物を要求しないだろうと思われていたのだが、この年もロスタムはカブールの貢物を要求した。これに立腹したシャガードは落とし穴の計略により、ラクシュもろともロスタムに瀕死の重傷を負わせる。しかし、ロスタムは重傷を負いながらも、弓でシャガードを射殺してから息絶えるのであった[10]。シャガードは老木に身を隠していたがロスタムの矢は身を隠していた老木ごと貫いた。
Seamless Wikipedia browsing. On steroids.
Every time you click a link to Wikipedia, Wiktionary or Wikiquote in your browser's search results, it will show the modern Wikiwand interface.
Wikiwand extension is a five stars, simple, with minimum permission required to keep your browsing private, safe and transparent.