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インヴェンションとシンフォニア BWV 772-801(Inventionen und Sinfonien BWV 772-801)は、ヨハン・ゼバスティアン・バッハが作曲したクラヴィーアのための曲集。
本作はケーテン時代の1723年頃の作品であり、同年、バッハは聖トーマス教会音楽監督(トーマスカントル)に就任した。ライプツィヒ時代には教育目的のクラヴィーア曲が多数作曲された。
長男のために編まれた『ヴィルヘルム・フリーデマン・バッハのためのクラヴィーア小曲集』( "Klavierbüchlein für Wilhelm Friedemann Bach", 1720年頃)の後半部に初稿がある(なお、同書の前半部には『平均律クラヴィーア曲集 第1巻』(1722年)の初稿が含まれる)。初稿の曲名は『プレアンブルム(前奏曲)』( "Praeambulum", 32-46曲, 36-51頁)と『ファンタジア(幻想曲)』( "Fantasia", 49-62曲, 58-73頁, 72-73頁散逸)だった。
『インヴェンション』は2声部の、『シンフォニア』は3声部の、対位法的な書法による様々な性格の小曲である。『シンフォニア』は出版社によっては『3声のインヴェンション』と呼ばれることもあったが、現在はほとんどの出版社によって『インヴェンションとシンフォニア』に戻されている(なお、自筆譜に書かれた原題は『率直なる手引き』( "Auffrichtige Anleitung" )である)[1]:
この通り、演奏だけでなく、作曲も視野に入れた優れた教育作品として、現在も高く評価されており、現代のピアノ学習者のための教材としても広く用いられている。また教育作品に留まらず、バッハの他のクラヴィーア楽曲と同様、多くのチェンバロ奏者やピアニストが演奏や録音を行なっている。
曲集に採用されている15調は、4つ以内の調号で表記される18調から嬰ヘ短調(♯3)、嬰ハ短調(♯4)、変イ長調(♭4)の3調を除外したものである。当時は多くの調号を持つ調は頻繁に使われるものではなかったため、割愛したものと考えられる[2]。ただし、バッハは同時期に全ての調を網羅した『平均律クラヴィーア曲集 第1巻』も編纂している。
バッハは、初稿を『インヴェンションとシンフォニア』として編纂改訂した際、曲の配列を大幅に変更した。初稿と最終稿の番号は以下の通り:
この初期配列は、バッハが当初想定していた難易度の相対関係を反映していると考えられている。しかし、バッハは編纂改訂にあたり、この難易度上の配慮を破棄し、「平均律クラヴィーア曲集」と同じく半音階上行の配列にした。その結果、相対的に高難度の楽曲が容赦なく前半に再配置されることとなった。そのため、園田高弘など、初期配列を参考にした、独自の順序による学習を推奨している音楽家もいる[3]。
他のバッハの曲集と同様、古くから多くの校訂版が出版されてきた[4]。特にインヴェンションとシンフォニアは学習者の需要があることから、原典版にはない表現記号を校訂者が補筆した「実用版」が多い。その解釈は極めて多様であり、このことは演奏をいくつか聴き比べすることでも実感できる。解釈や装飾音の選択等によっては、各曲の印象や難易度はかなり変化する。
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