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Radio Data System(ラジオ・データ・システム、RDS)とは、従来のFMラジオ放送に少量のデジタル情報を埋め込むための通信プロトコル規格である。 RDSは、時間、放送局、番組情報を含め、複数種類の送信情報を規格化している。この規格は欧州放送連合(EBU)の事業として始まり、やがて国際電気標準会議(IEC)の国際標準規格となった。
米国版のRDSは正式名称がRadio Broadcast Data System(RBDS)で、両者の規格には僅かばかりの差異がある。
日本では、RDSに類似したデジタルデータ放送規格Data Radio Channel(DARC)をほぼ同時期に開発[1]、実用化した経緯から、RDSには未対応である。
RDSもRBDSも、57kHzの副搬送波で1187.5ビット毎秒のデータを伝送するため、各データビット間には正確に48サイクルの副搬送波がある。
データ信号、ステレオパイロット信号、および38kHzのDSB-SCステレオ差信号間の干渉と相互変調を最小限に抑えるため、RBDSやRDSの副搬送波は19kHzでのFMステレオパイロット信号の第3高調波に設定されている(ステレオ差信号は最大で38kHz+15kHz = 53kHzまで拡張され、RDS信号の下側波帯に4kHzを残す)。
このデータはエラー訂正付きで送信される。 RDSは、プライベートまたはその他の未定義な機能を未使用のプログラムグループに「パッケージ化」させる方法など、様々な機能を定義している。
RDSは、ドイツにある放送技術研究所(IRT)およびラジオ製造業者のブラウプンクトによる運転者用ラジオ交通情報システム(ARI)の開発から着想を得たものである[2]。ARIはFMラジオ放送における交通情報の存在を示すために57kHzの副搬送波を使用していた[3]。
欧州放送連合の技術委員会は1974年のパリ会合で、ARIと似た目的の技術を開発するプロジェクトを発足した。ただしこちらはより柔軟で、放送ネットワークが同じラジオ番組をいくつかの異なる周波数で送信した場合の受信機の自動再同調を可能にするものであった。変調方式はスウェーデンのページング方式で使われたものに基づいており、ベースバンド符号化は新たな設計で主に英国放送協会(BBC)とIRTによって開発された。1984年に欧州放送連合は最初のRDS仕様を発行した[2]。
代替周波数機能の強化が規格に追加されると、RDSはその後1990年に欧州電気標準化委員会(CENELEC)規格として発行された[2]。1992年、米国ラジオシステム委員会(NRSC)はラジオ放送データシステム(Radio Broadcast Data System)と呼ばれるRDS規格の北米版を発行した。 CENELEC規格は1992年に交通メッセージチャンネル(TMC)の追加と共に更新され、1998年にはオープンデータのアプリケーション[2]が付随し、そして2000年にはRDSがIEC標準規格62106として世界的に公開された[4]。
RDSフォーラム(スイス・ジュネーブ)は、2015年6月の年次総会において新たな標準規格RDS2を運用することを決定した。 この規格は、米国ラジオシステム委員会のRBDS小委員会から来た(同じ技術を扱う)仲間と緊密に協力して作成されたもので、世界中のFM放送とデータサービスのための統一されたプラットフォームを提供するものとなっている。
RDSデータには通常、次のような情報分野が含まれている。
これは第一信号が弱くなり過ぎた場合(例えば範囲外に移動したとき)に、同じ局を提供している別の周波数に受信機が再同調できるよう、受信機に提供される周波数のリスト。切り替えを実行する前に、ラジオはPIコード(後述)の一致を確認してAFが同じ局であることを保証している。これはカーステレオ・システムでよく使われていて、移動中にヘッドユニットがより強い信号に自動的に同調できるようにしており、オプションで同じ地域コードにもできる(したがって全国放送局の場合、利用者はオリジナルのラジオ番組を聞き続けられる)。
受信機内部の時計または車のメイン時計を同期させることが可能。送信ブレのため、CTはUTCの100ミリ秒以内での精度まで可能である。RDSエンコーダ内で時計を定期的に同期させる方法が放送装置にない場合、一般的にCTは送信されない。
交通番組が放送されていることで、ある瞬間に周波数をネットワークの特定放送局に合わせるTAフラグのようなデータを動的に変更するため、聞いている人につながった他のネットワークや放送局について受信者に通知し、自動的かつ一時的にラジオがその局に同調できるようにしている。
これは放送局を識別する固有の16進法コード4文字である。国内すべての放送局は正しい国の接頭文字が入った固有の3文字コードを使用する必要がある。米国では、局のコールサインに式を適用してPIが決定される。 PIコードは最も重要なRDSのパラメータであり、RDSデータ構造内で最も頻繁に送信される。 米国以外で使うRDS規格では、あらゆる国の国番号が定義されているため、一般的な国境のある場所で同じコードを使用することはできない。これにより、他国間でコードを調整する必要がなくなっている。同一コードを運ぶ送信は受信側によって全て同じと見なされるも、受信を改善するための代替周波数として切り替えることは可能である(たとえ代替周波数として特に記載されていなくても)。
これは単に呼出符号または放送局のID名を表す8文字の静的表示である。ほとんどのRDS対応受信機はこの情報を表示し、もしその局が受信機の事前設定(プリセット)に保存されていれば、PIコード、周波数、およびそのプリセットに関連する他の詳細と共にこの情報をキャッシュする。一部の国では、PSを使用して放送局が他の情報を動的に送信している。これは一部の国では禁止されており、RDSシステム内での使用は意図されていなかったものである。
予め定義された最大31の番組種類コード(例えばヨーロッパでは、PTY1ニュース、PTY6ドラマ、PTY11ロック音楽)は、利用者がジャンルによって同様の番組を見つけることができるようにしている。PTY31は、自然災害やその他の重大な災害が発生した場合に備えた緊急アナウンス用に予約されている。
これは主に、全国放送局がその地域のオプトアウトなど「地域固有の」番組を一部の送信機で実行している国で使用されている。この機能は利用者が他の地域に移動する際に、設定を現在の地域に「固定」したり、ラジオが他の地域固有の番組に同調できるようにするものである。
この機能で、ラジオ局は64文字(一部では32文字)の自由な文章メッセージを送信できるようになっており、それは静的なもの(局のスローガンなど)でも番組プログラムと同期するもの(現在放送中の番組タイトルやアーティストなど)でも構わない。
アーティスト、タイトル、その他のメタデータを受信者に送れるようにした、以前のラジオテキストの強化版。
このフラグは特に注意が必要で、交通ニュース速報を受信するために例えばCDを一時停止したり、再調整をしたりする。TPフラグは定期的に交通ニュース速報を放送する局のみを利用者が見つけられるようにするために使用され、一方でTAフラグは今起きている実際の交通ニュース速報を知らせるために使用される。この機能は(利用者に交通情報をより知らせるため)ラジオユニットがCD/MP3を一時停止したり、交通ニュース速報中に音量を上げるなど、一緒に他の操作も行なわれている可能性がある。
デジタル符号化された交通情報。全てのRDS機器がこれをサポートしているわけではないが、カーナビゲーションでは利用可能なことが多い。多くの国では暗号化された交通データのみが放送されるので、交通データを使用するには恐らく定額制サービスに関連付けられた適切なデコーダが必要となる。その定額料金は自動車メーカーによって支払われることが多く、したがって利用者は意識しなくともよい。
57 kHzのRDS副搬送波は、理論的には53kHzにおけるステレオ副搬送波の上限遮断よりも上にあり続ける複合スペクトルの±2 kHzを占有している。ただし、53kHz遮断はステレオエンコーダーの前に使用されていた15kHzローパスフィルタの性能に完全に左右される。旧式の機器では、これらのフィルタは19kHzパイロット信号を保護するためだけに設計されており、大量のステレオ情報が存在する場合にはRDS副搬送波の十分な保護をしなかったりもする。こうした状況では、積極的な音声処理と組み合わさったステレオ増強装置がRDS副搬送波を受信不能にしてしまう恐れがある。
複合クリッピングシステムは、クリッピング(ピーク周波数部分のカット)により生じる高調波のためにRDS副搬送波を劣化させる可能性がある。最近の複合クリッパーには、RDS副搬送波を保護するためのフィルタリングが含まれている。
RDS副搬送波は一般的に2-4kHzの搬送波偏移を使用する。そのため、通常75kHzの偏移制限を超えないとするなら、プログラム素材に使用できる偏移はこの量だけ減少する。
次の3つの画像は、FMラジオ局でどのようにRDSが使用されるかを図示している。2番目以降は、ラジオをトレントFMというノッティンガムのラジオ放送局に合わせた時に撮影されたもの。画像は全てソニーXDR-S1 DAB / FM / MW / LW携帯ラジオのディスプレイ。
注)下の2つは、RDS導入地域で使用した場合に限る。日本国内では、RDSと類似するData Radio Channel(DARC)を運用している。
STマイクロエレクトロニクス、シリコン・ラボラトリーズ 、NXPセミコンダクターズ (旧 フィリップス) などの企業が、これらの装置に見られるチップセットを提供している。
低価格で設置面積の小さいチップソリューションのおかげで、ポータブルオーディオおよびナビゲーションデバイスにおけるRDSの実装が増えている。
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