2012年ロンドンオリンピックの陸上競技・男子100m

ウィキペディアから

2012年ロンドンオリンピックの陸上競技・男子100m

2012年ロンドンオリンピックの陸上競技・男子100m(2012ねんロンドンオリンピックのりくじょうきょうぎ だんし100メートル)は8月4日から5日にかけてイギリスロンドンオリンピック・スタジアムで開催された[1]。本競技は予備予選、予選、1組8人×3組で争われる準決勝、準決勝を通過した8人の出場による決勝の4段階から構成された[2]

Thumb
ロンドンオリンピックでのウサイン・ボルト

ロンドンオリンピックに至るまで、前回2008年北京オリンピック世界記録を樹立したウサイン・ボルトがスター選手であった[3]。北京オリンピックでは勝利の後のパフォーマンスでも注目された[4]。ボルトに対する賞賛はより真剣な競技姿勢で臨んだ第12回世界陸上ドイツベルリン)まで続いた[5]。しかし、次の第13回世界陸上韓国大邱)ではフライングによりボルトは失格となり、ともに練習してきたヨハン・ブレークが優勝した。そして2012年ジャマイカのオリンピック選考会でもブレークはボルトに勝利した[6]

準決勝第1組に出場したジャスティン・ガトリンは準決勝の最速記録である9秒82で通過し、かつての記録保持者であるアサファ・パウエルを下した。さらにパウエルは9秒91をマークしたチュランディ・マルティナにも敗れて9秒94で3位となり、記録により決勝進出を決めた。同組を走ったスワイボウ・サネーは前日に続いてガンビアの国内記録を更新する10秒18を記録した。第2組には前回覇者で世界記録保持者のウサイン・ボルトが9秒87で軽く通過、ライアン・ベイリーが9秒96で2位となった。第3組では9秒85でヨハン・ブレークが9秒90のタイソン・ゲイを交わした。この結果、9秒94のパウエルと10秒02で北京オリンピック銀メダリストのリチャード・トンプソがタイムにより決勝進出を決めた[7]

期待された決勝では躓きながらもパウエルが少し飛び出てその後ガトリン、ゲイが出てきて50mを過ぎたところでボルトが他の競技者全員を抜き去り、100mで金メダルを獲得した。ブレークもガトリンを破り、ガトリンはゴールラインでゲイをかわした。

ボルトはカール・ルイス以来史上2人目の2連覇を9秒63をマークして成し遂げ、自身が北京オリンピックでマークしたオリンピック記録を更新した。 また、ボルトにとって2番目に良い記録となった。ボルトのジャマイカのチームメイトであるブレークは9秒75で銀メダル、かつての世界記録保持者でオリンピック覇者のガトリンが9秒79で銅メダルを獲得した。このレースでは、史上初めて3位までが9秒80以内にゴールし、初めて5位までが9秒90以内にゴール、初めて4位までが全員100mの優勝経験を持っており、8人中7人が10秒以内に走り切るという数々の記録を達成した。60mまでは順調だったが、そこで負傷したパウエルは唯一10秒を切れず、11秒99であった。繰り返しになるが、パウエルを除き100m決勝の記録としては史上最速であった[8]

記録

ロンドンオリンピック開幕までの世界記録は以下の通りであった。

WR 世界記録 | AR エリア記録 | CR 選手権記録 | GR 大会記録 | NR 国家記録 | OR オリンピック記録 | PB 自己ベスト | SB シーズンベスト | WL 世界最高(当該シーズン中)
WR  ウサイン・ボルト (ジャマイカ) 9秒58 ドイツベルリン 2009年8月16日
OR 9秒69 中国北京 2008年8月16日
WL  ヨハン・ブレーク (ジャマイカ) 9秒75 ジャマイカキングストン 2012年6月30日

本大会において、以下の記録が更新された。

さらに見る 日, 種別 ...
種別選手記録備考
8月5日決勝ジャマイカ ウサイン・ボルト (JAM)9秒63OR
閉じる

競技日程

※時刻はすべて英国夏時間UTC+1

さらに見る 日, 時 ...
2012年8月4日土曜日10:00
12:30
予備予選
予選
2012年8月5日日曜日19:45
21:50
準決勝
決勝
閉じる

競技結果

要約
視点

予備予選

予備予選通過基準:各組上位2着(Q)及び記録上位2名(q)[9]

WR 世界記録 | AR エリア記録 | CR 選手権記録 | GR 大会記録 | NR 国家記録 | OR オリンピック記録 | PB 自己ベスト | SB シーズンベスト | WL 世界最高(当該シーズン中)

1組

さらに見る 順位, 選手 ...
閉じる

2組

さらに見る 順位, 選手 ...
順位選手国籍反応時間記録備考
1ユルゲン・テーメン(Jurgen Themenスリナム スリナム0.15810.55Q
2Fernando Lumainインドネシア インドネシア0.15510.80Q, SB
3ウィルフリード・ビンガンゴイガボン ガボン0.23910.89
4Liaquat Aliパキスタン パキスタン0.16910.90
5ロッドマン・テルトゥルパラオ パラオ0.17111.06PB
6Tavevele Noaツバル ツバル0.18011.55
7ティミ・ガルスタングマーシャル諸島 マーシャル諸島0.16212.81
風 +0.9 m/s
閉じる

3組

さらに見る 順位, 選手 ...
順位選手国籍反応時間記録備考
1Béranger Aymard Bosse中央アフリカ 中央アフリカ0.16210.55Q
2Yeo Foo Ee Garyシンガポール シンガポール0.15910.57Q, PB
3Azneem Ahmedモルディブ モルディブ0.15310.79q, NR
4J'maal Alexanderイギリス領ヴァージン諸島 イギリス領ヴァージン諸島0.16310.92
5John Howardミクロネシア連邦 ミクロネシア連邦0.20311.05
6クリスメケ・ワラシ(Chris Walasiソロモン諸島 ソロモン諸島0.16411.42
7Elama Fa’atonuアメリカ領サモア アメリカ領サモア0.17011.48PB
風 +1.7 m/s
閉じる

4組

さらに見る 順位, 選手 ...
順位選手国籍反応時間記録備考
1Gérard Kobéanéブルキナファソ ブルキナファソ0.19410.42Q, SB
2Fabrice Coifficモーリシャス モーリシャス0.14910.62Q
3Courtney Carl Williamsセントビンセント・グレナディーン セントビンセント・グレナディーン0.16410.80PB
4Rachid Chouhalマルタ マルタ0.16010.83SB
5Tilak Ram Tharuネパール ネパール0.15610.85PB
6Masoud Aziziアフガニスタン アフガニスタン0.16711.19
7Nooa Takooaキリバス キリバス0.15511.53PB
8Patrick Tuaraクック諸島 クック諸島0.16511.72
風 +0.5 m/s
閉じる

予選

予選通過基準:各組上位3着(Q)及び記録上位3名(q)[10]

WR 世界記録 | AR エリア記録 | CR 選手権記録 | GR 大会記録 | NR 国家記録 | OR オリンピック記録 | PB 自己ベスト | SB シーズンベスト | WL 世界最高(当該シーズン中)
| DNF 途中棄権 | DNS 棄権

1組

さらに見る 順位, レーン ...
順位レーン選手国籍反応時間記録備考予選通過
16タイソン・ゲイアメリカ合衆国 アメリカ合衆国0.14710.08Q
25リチャード・トンプソントリニダード・トバゴ トリニダード・トバゴ0.15110.14Q
37Gerald Phiriザンビア ザンビア0.14710.16SBQ
43ジェイスマ・サイディ・ンドゥレノルウェー ノルウェー0.16610.28
54アンヘル・ダビド・ロドリゲススペイン スペイン0.16810.34
62ユルゲン・テーメンスリナム スリナム0.16910.53
75Isidro Montoyaコロンビア コロンビア0.16510.54
81Yeo Foo Ee Garyシンガポール シンガポール0.14410.69
風 −1.4 m/s
閉じる

2組

さらに見る 順位, レーン ...
順位レーン選手国籍反応時間記録備考予選通過
14ジャスティン・ガトリンアメリカ合衆国 アメリカ合衆国0.2009.97Q
26デリック・アトキンスバハマ バハマ0.17910.22Q
35ロンデル・ソリーリョトリニダード・トバゴ トリニダード・トバゴ0.14810.23Q
48ダリウシュ・クーツポーランド ポーランド0.16310.24
59Nilson Andreブラジル ブラジル0.17210.26SB
67江里口匡史日本 日本0.14410.30
73バラカト・アル=ハルティオマーン オマーン0.15210.41
82Fernando Lumainインドネシア インドネシア0.16210.90
風 +0.7 m/s
閉じる

3組

さらに見る 順位, レーン ...
順位レーン選手国籍反応時間記録備考予選通過
16ライアン・ベイリーアメリカ合衆国 アメリカ合衆国0.1779.88PBQ
27ベン=ユスフ・メイテコートジボワール コートジボワール0.17410.06NRQ
35ジャスティン・ワーナーカナダ カナダ0.14910.09PBQ
43ケマー・ハイマンケイマン諸島 ケイマン諸島0.15010.16q
58スワイボウ・サネーガンビア ガンビア0.17610.21NRq
64リーティス・サカラウスカスリトアニア リトアニア0.17810.29
71Berenger Aymard Bosse中央アフリカ 中央アフリカ0.17010.55
82Artur Bruno Rojasボリビア ボリビア0.15410.65
風 +1.5 m/s
閉じる

4組

さらに見る 順位, レーン ...
順位レーン選手国籍反応時間記録備考予選通過
16ウサイン・ボルトジャマイカ ジャマイカ0.17810.09Q
24ダニエル・ベイリーアンティグア・バーブーダ アンティグア・バーブーダ0.16210.12Q
35ジェームズ・ダサオルイギリス イギリス0.17410.13Q
42アムル・イブラヒム・ムスタファ・サウードエジプト エジプト0.16410.22
53ジェイソン・ロジャーズセントクリストファー・ネイビス セントクリストファー・ネイビス0.17710.30
67オゴ=オゲネ・エグウェロナイジェリア ナイジェリア0.17410.38
71ホルダー・ダ・シルバギニアビサウ ギニアビサウ0.18210.71
N/A8イドリッサ・アダムカメルーン カメルーン0.206N/ADNF
風 +0.4 m/s
閉じる

5組

さらに見る 順位, レーン ...
順位レーン選手国籍反応時間記録備考予選通過
16アサファ・パウエルジャマイカ ジャマイカ0.16610.04Q
23Adam Gemiliイギリス イギリス0.15610.11Q
35チュランディ・マルティナオランダ オランダ0.16810.20Q
48レザ・ガセミイラン イラン0.14810.31
54オビナ・メトゥ(Obinna Metuナイジェリア ナイジェリア0.15310.35
67ラモン・ギテンスバルバドス バルバドス0.16210.35
71Paul Williamsグレナダ グレナダ0.16810.65
82Devilert Arsene Kimbembeコンゴ共和国 コンゴ共和国0.15710.94
風 0.0 m/s
閉じる

6組

さらに見る 順位, レーン ...
順位レーン選手国籍反応時間記録備考予選通過
14ヨハン・ブレークジャマイカ ジャマイカ0.17510.00Q
26山縣亮太日本 日本0.14910.07PBQ
32蘇炳添中国 中国0.16210.19SBQ
45アントワーヌ・アダムスセントクリストファー・ネイビス セントクリストファー・ネイビス0.15410.22q
58Peter Emeliezeナイジェリア ナイジェリア0.15310.22SB
67Jeremy Bascomガイアナ ガイアナ0.13510.31
73マレク・ニートエストニア エストニア0.15810.40
81Azneem Ahmedモルディブ モルディブ0.15710.84
風 +1.3 m/s
閉じる

7組

さらに見る 順位, レーン ...
順位レーン選手国籍反応時間記録備考予選通過
18ドウェイン・チェンバースイギリス イギリス0.15710.02SBQ
25ジミー・ヴィコフランス フランス0.19610.11SBQ
34キーストン・ブレドマントリニダード・トバゴ トリニダード・トバゴ0.19510.13Q
46Warren Fraserバハマ バハマ0.17110.27
57Miguel Lópezプエルトリコ プエルトリコ0.14510.31
61Gérard Kobéanéブルキナファソ ブルキナファソ0.18610.48
72Fabrice Coifficモーリシャス モーリシャス0.16510.59
N/A3キム・コリンズセントクリストファー・ネイビス セントクリストファー・ネイビスN/AN/ADNS
風 +2.0 m/s
閉じる

準決勝

準決勝通過基準:各組上位2着(Q)及び記録上位2名(q)[11]

WR 世界記録 | AR エリア記録 | CR 選手権記録 | GR 大会記録 | NR 国家記録 | OR オリンピック記録 | PB 自己ベスト | SB シーズンベスト | WL 世界最高(当該シーズン中)
| DNS 棄権

1組

さらに見る 順位, レーン ...
順位レーン選手国籍反応時間記録備考予選通過
17ジャスティン・ガトリンアメリカ合衆国 アメリカ合衆国0.1879.82Q
22チュランディ・マルティナオランダ オランダ0.1489.91NRQ
34アサファ・パウエルジャマイカ ジャマイカ0.1559.94q
48キーストン・ブレドマントリニダード・トバゴ トリニダード・トバゴ0.17510.04
56ベン=ユスフ・メイテコートジボワール コートジボワール0.16310.13
65ジミー・ビコフランス フランス0.20310.16
79ジェームズ・ダサオルイギリス イギリス0.17410.18
83スワイボウ・サネーガンビア ガンビア0.17510.18NR
風 +0.7 m/s
閉じる

2組

さらに見る 順位, レーン ...
順位レーン選手国籍反応時間記録備考予選通過
14ウサイン・ボルトジャマイカ ジャマイカ0.1809.87Q
26ライアン・ベリーアメリカ合衆国 アメリカ合衆国0.1559.96Q
38リチャード・トンプソントリニダード・トバゴ トリニダード・トバゴ0.15810.02q
45ドウェイン・チェンバースイギリス イギリス0.15410.05
59Gerald Phiriザンビア ザンビア0.16510.11SB
67ダニエル・ベイリーアンティグア・バーブーダ アンティグア・バーブーダ0.14210.16
72アントワーヌ・アダムスセントクリストファー・ネイビス セントクリストファー・ネイビス0.15910.27
83蘇炳添中国 中国0.15710.28
風 +1.0 m/s
閉じる

3組

さらに見る 順位, レーン ...
順位レーン選手国籍反応時間記録備考予選通過
16ヨハン・ブレークジャマイカ ジャマイカ0.1769.85Q
24タイソン・ゲイアメリカ合衆国 アメリカ合衆国0.1519.90Q
37Adam Gemiliイギリス イギリス0.15810.06
48デリック・アトキンスバハマ バハマ0.16410.08SB
59ジャスティン・ワーナーカナダ カナダ0.13510.09PB
65山縣亮太日本 日本0.15810.10
73ロンデル・ソリーリョトリニダード・トバゴ トリニダード・トバゴ0.14010.31
N/A2ケマー・ハイマンケイマン諸島 ケイマン諸島N/AN/ADNS
風 +1.7 m/s
閉じる

決勝

Thumb
決勝のスタート前
Thumb
"Set."(「用意」)と言われた瞬間
Thumb
スタート直後
WR 世界記録 | AR エリア記録 | CR 選手権記録 | GR 大会記録 | NR 国家記録 | OR オリンピック記録 | PB 自己ベスト | SB シーズンベスト | WL 世界最高(当該シーズン中)
さらに見る 順位, レーン ...
順位レーン選手国籍反応時間記録備考予選通過
1位7ウサイン・ボルトジャマイカ ジャマイカ0.1659.63OR
2位5ヨハン・ブレークジャマイカ ジャマイカ0.1799.75=PB
3位6ジャスティン・ガトリンアメリカ合衆国 アメリカ合衆国0.1789.79PB
44タイソン・ゲイアメリカ合衆国 アメリカ合衆国0.1459.80SB
58ライアン・ベリーアメリカ合衆国 アメリカ合衆国0.1769.88=PB
69チュランディ・マルティナオランダ オランダ0.1399.94
72リチャード・トンプソントリニダード・トバゴ トリニダード・トバゴ0.1609.98
83アサファ・パウエルジャマイカ ジャマイカ0.15511.99
風 +1.5 m/s
閉じる

事件

決勝において1人の男が、選手が「用意」(set)の姿勢をとっている最中にペットボトルを投げ込んだ[12]。ペットボトルはブレークのすぐ後ろに落ちたが、競技はそのまま続行された[13]。男は、決勝を観戦していた柔道女子70kg級の銅メダリストエディス・ボッシュに取り押さえられ、逮捕された[14]。ボッシュによると男はボルトに対して侮辱する言葉を発し、その時ボルトは気付かなかったが、「暴力には賛成できないし、それを聞いて残念に思う」とコメントした[12]

脚注

Wikiwand - on

Seamless Wikipedia browsing. On steroids.