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「12月の雨の日 / はいからはくち」(じゅうにがつのあめのひ / はいからはくち)は、1971年4月1日 に発売されたはっぴいえんど通算1作目のシングル。
「12月の雨の日」は『はっぴいえんど』、「はいからはくち」は『風街ろまん』それぞれのアルバム収録曲。どちらもアルバムとはテイク違いのシングル・ヴァージョンで、1974年 発売のベスト・アルバム『SINGLES』と2004年 発売のボックス・セット『はっぴいえんどBOX』に収録されたほか、「12月の雨の日」は、2013年 に発売された大滝詠一のオールタイム・ベスト『Best Always』にも収録された。「12月の雨の日」は新録で、アルバム・ヴァージョンの4チャンネル録音と違ってこちらは8チャンネル録音。「はいからはくち」は新曲で、こちらがオリジナル・ヴァージョン。大滝のソロ・アルバム『大瀧詠一』収録曲「ウララカ」の原型[1]。本作は、キングからの初リリース。その後、同年11月のアルバム『風街ろまん』はURCから発売されたので、シングルとアルバムが異なる会社から出るという変則となった。
はっぴいえんどが在籍していたURCレコードは原盤制作会社でもあり、岡林信康のシングル盤は原盤供給という形でビクターから発売されていた。1970年 の『第2回中津川フォークジャンボリー』[注釈 1] のライブ盤供給を受けたキングの担当者だった三浦光紀が、はっぴいえんどの原盤供給も受けたいということで、「12月の雨の日 / はいからはくち」のキングからのシングル発売が決定した。普通の原盤供給ならば、同じ音源を使用するのが通例だが、グループの意向で、どうせ出すなら“シングル・ヴァージョン”を再録しようということになった。しかし、このような前例がないことから、その制作費をどこが持つのかという問題が起き、原盤及び販売会社が困ってしまったという。さらに悪いことに、一度録音した音源を惜しげもなくボツにして、また録音し直したいというグループのわがままから、制作費の高騰という問題も発生した。そこでキング・スタジオが提供されることになり、キングはシングル発売にこぎつけたという[2]。
シングル・ヴァージョンの「12月の雨の日」と「はいからはくち」は、アルバムとは別に2回レコーディングが行われている[2]。
シングル・ヴァージョンのレコーディングには、ジョージ・ハリスン「マイ・スウィート・ロード」[注釈 3] を聴いた大滝詠一が、この曲でプロデュースを手掛けたフィル・スペクターと“再会”したことが大きく関係している。大滝によれば「アルバム・ヴァージョンではアコースティック・ギターは1本なんだよ。<マイ・スウィート・ロード>はギターが何本か入ってたよね。そこでシングル・ヴァージョンを録る時に小倉エージもかんでいて[注釈 4]、これがいいね、という話になって、超盛り上がったんだよ。2回重ねよう、いや4回重ねようと。嬉しかったなぁ、あそこから始まってるんだよなぁ」[5] という。さらに、「<12月>は空いたチャンネルに12弦ギターを山のようにダビングした。一人スペクター・サウンド。山崎さんと録音したキングのほうはロー・カットしている。タモやん(吉田保)と一緒にアオイでした録音のほうが、ギターは重ねてないけれどスペクターっぽい。というか『ロンバケ』っぽいんだ、エコーの使い方が。ちゃんとマスタリングしたら同じような音にできそうな気がする」[6] とも話していた。後に小倉は『レコード・コレクターズ』2014年3月 号にて「<12月の雨の日>の再収録時には、制作を主導する大滝がいた。同曲収録時でのジョージ・ハリスンの<マイ・スウィート・ロード>との出会いがフィル・スペクターの存在、自身の音楽的背景への再認識や追求の発端となり、自身のソロ活動に反映され、“ナイアガラ”でのシリーズ作や『ロング・バケイション』に連なる。再収録作の<12月の雨の日>こそは、大滝詠一としての旅立ちの始まりだった」[3] と記している。また、この曲は1973年9月21日 、文京公会堂にて行われたラスト・ライブ“CITY -LAST TIME AROUND-”と1985年6月15日 に国立競技場で行われたイベント“ALL TOGETHER NOW”での再結成ライブの両方ともにキーを半音上げて演奏され[7]、それぞれ『ライブ!! はっぴいえんど』[注釈 5] と『THE HAPPY END』[注釈 6] の2枚のライブ・アルバムに収録された。
「はいからはくち」は、モビー・グレープ「オマハ」からの影響が濃厚な作品[8]。松本隆が大滝に歌詞を渡したのが1970年8月27日 、日比谷野音で行われていた“10円コンサート”の会場だった。タイトルは“ハイカラ白痴”と“肺から吐く血”のダブル・ミーニングで、さらに白痴と博士もひっかけた上でのひらがな表記になっている[9]。シングル・ヴァージョンは、『風街ろまん』収録のアルバム・ヴァージョンより3か月ほど前に録音された。「いらいら」「颱風」と並んで、大滝の初期ノヴェルティ作品に位置づけられる。演奏は3種類に分類され、一つはいちばん古いスタイルのシャッフル版で、小坂忠がコーラスで参加した別テイク、山崎聖次がエンジニアを務めたシングル・ヴァージョンがこれにあたる。もう一つがアルバム版。シャッフル版のヴァリエーションともいえるが、曲構成は明らかに異なっている。1972年 以降は大滝詠一「ウララカ」と等しい構成で演奏されるケースが出てくる。フィル・スペクター制作の「ダ・ドゥ・ロン・ロン」[注釈 7] を“起源”とすることから「ダ・ドゥ・ロン・ロン」版と言われている[7]。
アナログ・シングルの復刻盤が2000年 リリースの『ベルウッド 7インチボックス』に収められたほか、2017年 には“ベルウッド・レコード設立45周年記念、7インチ復刻シリーズ(第三弾)”として限定盤にてリリースされた。なお、発売を記念してディスクユニオンでは、全9タイトル購入特典として7インチ収納BOXがプレゼントされた。
歌詞カードは見開き仕様で、表面はイラストとメンバーの写真による2種類の異なるジャケット。裏面には歌詞のほか、メンバー紹介を含む記述“心やさしい若者達「はっぴいえんど」”が掲載されている。なお、歌詞カード表面および、レコード・レーベルには“12月の雨の日”とあるが、歌詞カード裏面には“十二月の雨の日”と記されている。
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