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行列の最も基本的な特性数 ウィキペディアから
線型代数学における行列の階数(かいすう、rank; ランク)は、行列の最も基本的な特性数 (characteristic) の一つで、その行列が表す線型方程式系および線型変換がどのくらい「非退化」であるかを示すものである。行列の階数を定義する方法は同値なものがいくつもある。
例えば、行列 A の階数 rank(A)(あるいは rk(A) または丸括弧を落として rank A)は、A の列空間(列ベクトルの張るベクトル空間)の次元[1]に等しく、また A の行空間の次元[2]とも等しい。行列の階数は、対応する線型写像の階数である。
行列の階数の概念はジェームス・ジョセフ・シルベスターが考えた[3]。
任意の行列 A について、以下はいずれも同値である。
文献により、上記の条件のいずれかを以って行列 A の階数は定義される。
いま A の列空間の次元を「列階数」、行空間の次元を「行階数」と呼べば、線型代数学における基本的な結果の一つとして、列階数と行階数は常に一致するという事実が成立するから、それらを単に A の階数と呼ぶことができる。これについて、Wardlaw (2005)[4] はベクトルの線型結合の基本性質に基づく四文証明を与えた(これは任意の体上で有効である)。また、Mackiw (1995) [2]は実数体上の行列に対して有効な、直交性を用いたエレガントな別証明を与えている。両証明とも教科書 Banerjee & Roy (2014) [5]に出ている。
A を m × n 行列とする。また、 f を表現行列 A の線型写像とする。
例えば、行列
は、基本変形を行うことによって
と書けるから、M の階数は rank M = 2 である。実際、[第 2 行] = [第 1 行] + [第 3 行] であるから、2 行目の行ベクトルは線型独立でない。ここで、1 行目と 3行目は明らかに線型独立であるから、rank M = 2 である。
浮動小数点を用いたコンピューター上の数値計算においては、この基本変形を用いたりLU分解を用いることで階数を求める方法は、精度が落ちることもあり用いられない。替わりに、特異値分解(SVD)やQR分解を用いて求められる。
V, W をベクトル空間とし、線型写像 f: V → W が与えられたとき、f の像 f(V) の次元を線型写像 f の階数と呼び、rk f や rank f などで表す。V や W は一般に無限次元であっても、像の次元 dim f(V) が有限であれば線型写像の階数の概念は意味を持つ。とくに階数有限なる線型写像にはトレースが定義できて、古典群の表現論などで重要な役割を果たす。
V や W が有限次元ならば、行列表現によって f は表現行列 Af の共軛類が対応する。このとき、線型写像の階数と行列の階数との間には rank f = rank Af という関係が成り立つが、行列の階数が正則行列を掛けることに関して不変であることから、この等式の成立は表現行列 Af のとり方に依らない。
ベクトル空間 V, W に対して V が n 次元とすれば、線型写像 f: V → W の階数は n 以下である。実際に、rank f = n となるとき、線型写像 f は非退化(ひたいか、non-degenerate, full rank)であるという。そうでないときには、像 f(V) は f で 0 へ写される元の分だけ「つぶれている」と考えられ、線型写像 f の核
の次元 dim ker f を f の退化次数と呼ぶ。f の退化次数を nl f や null f などで表すことがある。次の公式
が成立し、階数と退化次数の関係式あるいは簡単に階数・退化次数公式などと呼ばれる。
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