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日本の法律 ウィキペディアから
臨時通貨法(りんじつうかほう)は、「貨幣法」(明治30年法律第16号)で規定されている貨幣に代わり、臨時補助貨幣を発行する根拠となった日本の法律である。「通貨の単位及び貨幣の発行等に関する法律」(昭和62年法律第42号)施行に伴い廃止された。
臨時通貨法 | |
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日本の法令 | |
法令番号 | 昭和13年6月1日法律第86号 |
種類 | 行政手続法 |
効力 | 廃止 |
成立 | 1938年3月19日 |
公布 | 1938年6月1日 |
施行 | 1938年6月1日 |
主な内容 | 臨時補助貨幣の額面・種類等について |
関連法令 | 通貨の単位及び貨幣の発行等に関する法律、貨幣法 |
条文リンク | 臨時通貨法・御署名原本・昭和十三年・法律第八六号 |
1937年(昭和12年)に勃発した支那事変(日中戦争)の影響により、補助貨幣の材料でもある軍需用金属(ニッケル、銅など)の需要が増加した。またニッケルはその大部分を輸入に頼っていたため、これらの金属の使用を差し控えて、日本国内で豊富に産出される、または調達の容易な金属で代替した「臨時補助貨幣」を製造することとした。
1938年(昭和13年)6月に、支那事変終了後一年までの時限立法として施行されたが、1942年(昭和17年)2月には、大東亜戦争(太平洋戦争)終了後一年まで期限を延長し、戦争終了後の1946年(昭和21年)には「必要ある時」から「当分の内」に改めるとともに、期限を規定していた附則第二項が削除された。
この法律により、帝国議会による貨幣法の改正を経ずに、時局の推移に応じて貨幣法で規定された「貨幣」以外の「臨時補助貨幣」を発行する事が可能となり、それを容易にするために、素材、品位、量目及び形式は勅令で定められた。このため、戦時中は貨幣用資材調達の都合に合わせて様々な素材の臨時補助貨幣が発行された。また、臨時補助貨幣以外に五十銭の小額紙幣を発行し、貴金属である銀を使用した五十銭銀貨の回収が進められた。第二次世界大戦後は貨幣法が有名無実化し、国会による臨時通貨法の改正により臨時補助貨幣の額面の追加が行われ、その形式は政令で定められた。
なお、貨幣法の改正を行わずに臨時通貨法の改正による臨時補助貨幣の額面の追加を行う理由として、1946年(昭和21年)7月6日の貴族院「臨時通貨法の一部を改正する法律案特別委員会」において、素材の需給状況から貨幣法による補助貨幣の製造発行が当分困難であり、貨幣法の改正では金貨の問題があって手がつけられず、臨時補助貨幣及び小額紙幣の発行を継続する必要がある旨を、当時の大蔵大臣石橋湛山が発言している。
1988年(昭和63年)4月の「通貨の単位及び貨幣の発行等に関する法律」(昭和62年法律第42号)施行により、臨時通貨法を含む貨幣法等の通貨関係法律がまとめて廃止された。
以下は、1938年(昭和13年)6月1日に公布された内容である(その後の改正等は#改正を参照の事)。
- 第一條
- 政府ハ必要アルトキハ貨幣法第三條ニ規定スルモノノ外臨時補助貨幣ヲ發行スルコトヲ得
- 第二條
- 臨時補助貨幣ノ種類ハ十錢、五錢、及一錢ノ三種トス
- 第三條
- 十錢及五錢ノ臨時補助貨幣ハ五圓迄、一錢ノ臨時補助貨幣ハ一圓迄ヲ限リ法貨トシテ通用ス
- 第四條
- 臨時補助貨幣ノ素材、品位、量目及形式ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
- 第五條
- 政府ハ必要アルトキハ臨時補助貨幣ノ外五十錢ノ小額紙幣ヲ發行スルコト得
- 小額紙幣ハ十圓迄ヲ限リ法貨トシテ通用ス
- 小額紙幣ノ形式ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
- 第六條
- 政府ハ小額紙幣發行高ニ對シ命令ノ定ムル所ニ依リ日本銀行ヲシテ政府預金ノ内之ト同額ヲ區分整理セシメ其ノ引換準備ニ充ツベシ
- 小額紙幣ハ他ノ通貨ヲ以テ之ヲ引換フ
- 第七條
- 小額紙幣ノ發行、銷却引換ニ關シテハ大藏大臣ノ定ムル所ニ依リ日本銀行ヲシテ其ノ事務ヲ取扱ハシム
- 附 則
- 本法ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
- 臨時補助貨幣及小額紙幣ハ支那事變終了ノ日ヨリ一年ヲ經過シタル後ハ之ヲ發行セズ
1942年(昭和17年)から1981年(昭和56年)にかけて、8度にわたり改正された。
当初は臨時補助貨幣として十銭、五銭、一銭の3種類が規定され、法貨として通用する枚数は、十銭が50枚、五銭及び一銭は100枚とされた。その後、物価上昇に伴い発行される額面の追加が行われ、最終的には五百円、百円、五十円、十円、五円、一円、五十銭、十銭、五銭及び一銭の10種類が規定されていた(一円未満の臨時補助貨幣は「通貨の単位及び貨幣の発行等に関する法律」が施行されるまで廃止されていない)。また、法貨として通用する枚数は、五十銭以上の貨幣は20枚とされている。
1946年(昭和21年)、臨時通貨法の一部が改正され、五十銭硬貨を追加すると共に期限を定めた附則第二項が削除された。
- 臨時通貨法の一部を改正する法律(昭和21年8月10日法律第5號)
- 臨時通貨法の一部を次のやうに改正する。
- 第一條中「必要アルトキハ」を「當分ノ内」に改める。
- 第二條中「種類ハ」の下に「五十錢、」を加へ、「三種」を「四種」に改める。
- 第三條中「十錢」を「五十錢ノ臨時補助貨幣ハ十圓迄、十錢」に改める。
- 第五條中「必要アルトキハ」を「當分ノ内」に改める。
- 附則第二項を削る。
- 附 則
- この法律は、公布の日から、これを施行する。
1948年(昭和23年)、臨時通貨法の一部が改正され、五円硬貨及び一円硬貨が追加された。
- 臨時通貨法の一部を改正する法律(昭和23年6月19日法律第56号)
- 臨時通貨法(昭和十三年法律第八十六号)の一部を次のように改正する。
- 第二條中「五十錢、十錢、五錢及一錢ノ四種」を「五圓、一圓、五十錢、十錢、五錢及一錢ノ六種」に改める。
- 第三條中「五十錢ノ臨時補助貨幣ハ十圓迄」を「五圓ノ臨時補助貨幣ハ百圓迄、一圓ノ臨時補助貨幣ハ二十圓迄、五十錢ノ臨時補助貨幣ハ十圓迄」に改める。
- 附 則
- この法律は、公布の日から、これを施行する。
1950年(昭和25年)、臨時通貨法の一部が改正され、十円硬貨が追加された。
- 臨時通貨法の一部を改正する法律(昭和25年3月2日法律第3号)
- 臨時通貨法(昭和十三年法律第八十六号)の一部を次のように改正する。
- 第二條中「五円、一円、五十銭、十銭、五銭及一銭ノ六種」を「十円、五円、一円、五十銭、十銭、五銭及一銭ノ七種」に改める。
- 第三條中「五円ノ臨時補助貨幣ハ百円迄」を「十円ノ臨時補助貨幣ハ二百円迄、五円ノ臨時補助費貨幣ハ百円迄」に改める。
- 附 則
- この法律は、公布の日から施行する。
1955年(昭和30年)、臨時通貨法の一部が改正され、五十円硬貨が追加された。
- 臨時通貨法の一部を改正する法律(昭和30年6月20日法律第24号)
- 臨時通貨法(昭和十三年法律第八十六号)の一部を次のように改正する。
- 第二条中「十円」を「五十円、十円」に、「七種」を「八種」に改める。
- 第三条中「十円ノ臨時補助貨幣ハ二百円迄」を「五十円ノ臨時補助貨幣ハ千円迄、十円ノ臨時補助貨幣ハ二百円迄」に改める。
- 附 則
- この法律は、公布の日から施行する。
1957年(昭和32年)、臨時通貨法の一部が改正され、百円硬貨が追加された。
- 臨時通貨法の一部を改正する法律(昭和32年5月27日法律第134号)
- 臨時通貨法(昭和十三年法律第八十六号)の一部を次のように改正する。
- 第二条中「五十円」を「百円、五十円」に、「八種」を「九種」に改める。
- 第三条中「五十円ノ臨時補助貨幣ハ千円迄」を「百円ノ臨時補助貨幣ハ二千円迄、五十円ノ臨時補助貨幣ハ千円迄」に改める。
- 附 則
- この法律は、公布の日から施行する。
1981年(昭和56年)、臨時通貨法の一部が改正され、五百円硬貨が追加された。
- 臨時通貨法の一部を改正する法律(昭和56年5月15日法律第40号)
- 臨時通貨法(昭和十三年法律第八十六号)の一部を次のように改正する。
- 第二条中「百円」を「五百円、百円」に、「九種」を「十種」に改める。
- 第三条中「百円ノ臨時補助貨幣ハ二千円迄」を「五百円ノ臨時補助貨幣ハ一万円迄、百円ノ臨時補助貨幣ハ二千円迄」に改める。
- 附 則
- この法律は、公布の日から施行する。
数度の改正を経て来たものの、臨時通貨法には既に使われなくなって久しい五十銭、十銭、五銭、一銭が臨時補助貨幣の種類として残ったままであり(実際には「小額通貨の整理及び支払金の端数計算に関する法律」(小額通貨整理法:昭和28年法律第60号)により通用は禁止されている)、金本位制を前提として制定された貨幣法も依然有効な状態であったため、現状の通貨制度に即した法律に整備する事とした。
1987年(昭和62年)6月、通貨の額面価格の単位、貨幣の製造及び発行、貨幣の種類等に関して必要な事項を定めるほか、記念貨幣等を一定の要件の下に弾力的に発行して販売を行う事を定めた「通貨の単位及び貨幣の発行等に関する法律」(通貨法:昭和62年法律第42号)が公布され、1988年(昭和63年)4月の施行に伴い、同法附則第2条に掲げられた臨時通貨法を含む貨幣法等の通貨関係法律が廃止された。
また臨時通貨法関係の勅令及び政令についても、通貨法と同時に施行された「通貨の単位及び貨幣の発行等に関する法律施行令」(昭和63年政令第50号)により、造幣規則(明治30年勅令第138号)、貨幣形式令(昭和8年勅令第232号)等と共に廃止されている。
通貨法では、通貨の額面価格の単位は円とし、その額面価格は一円の整数倍とすると共に、貨幣の種類は、五百円、百円、五十円、十円、五円及び一円の6種類とされ、国家的な記念事業として発行する貨幣(記念貨幣)として一万円、五千円及び千円の3種類も閣議の決定を経て発行可能となった。また、法貨として適用する枚数も額面価格の二十倍までと規定されている。なお、旧臨時通貨法及び関連法の下で発行された臨時補助貨幣(旧小額通貨整理法で通用が禁止された物を除く)、及び記念貨幣は政府が発行した貨幣とみなすと規定されている。
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