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城郭の区域 ウィキペディアから
曲輪(くるわ)とは、城の内外を土塁、石垣、堀などで区画した区域の名称である。郭(くるわ)とも書く[注 1]。
主要な曲輪内には、曲輪の出入り口である虎口を封鎖する門を始め、最前線の塀、物見や攻撃を与える櫓が建てられる。主郭では司令本部となる城主の居所のほか、兵糧を備蓄する蔵、兵たちの食事を仕込む台所などの建造物が建てられていた。戦時、それぞれの曲輪には守備を担当する兵たちが駐屯した。
曲輪とは、軍事的・政治的な意図を持って、削平・盛土された平面空間と定義でき、15世紀後半に曲輪を連ねる構造が発達し始めたとされ、例えば千葉県横芝光町の篠本城は主従の関係が明確でない空間で構成されており、また青森県八戸市の根城は一族横並びの構造と考えられ、当初の連郭式城郭では曲輪間に主従の関係はなかったといわれている[1]。その後戦国時代以降の城郭では、複数の曲輪を意図的に配置し、一郭を主とし二郭以降を従とする構成が一般的となった。江戸時代には中心的な曲輪に、本丸(ほんまる)・二の丸(にのまる)・三の丸(さんのまる)などの名前が付く。
城郭での戦いの勝敗を決める要素の一つに、城郭の形状・構造が挙げられる。そのため築城に際してなるべく防御側に有利になるよう、城郭の立地なども考慮して縄張が決められ曲輪が配置される。江戸時代の軍学によれば、縄張の基本は主要な3つの曲輪、すなわち城郭の核となる本丸の周囲に、補佐的な二の丸、三の丸を効果的に縦深配置することとしており、以下にその説を示す。ただし江戸時代の軍学は太平の世の学問であり、実際には築城や戦闘の経験を経ていない説であることに注意する必要がある[2]。
一般に、縄張は大きく分けて次に分類されている。
個々の城郭は必ず上記のどれかに分類されるわけではなく、これらの変形・発展型や合体型(例えば“輪郭式+梯郭式”)といえるものも数多くあった。また、これらの型式だけでは分類が難しい城郭もある(単郭式など)。そのほか研究者によって、同じ城でも区分名称や認識が違うこともあれば、その他の名称を使って細かく分類することもある。
防御力強化の目的で、本丸などの主要な曲輪の周りに帯曲輪(おびくるわ)や腰曲輪(こしくるわ)、捨曲輪(すてくるわ)などの小曲輪を配置することがあった。そのほか、他より独立した形で配置される出丸(でまる)や、主に虎口を防御する目的でその前面に配置される馬出(うまだし)などもある。
安土桃山時代以降の城では、それぞれの曲輪はその用途によって「○○曲輪」「○○丸」などと呼ばれ、また時代や地域によっても名称は異なる。“本丸”“二の丸”など曲輪を“丸”と言うようになった起源や語源はわかっていないが、「○○丸」と呼ばれる曲輪は安土桃山系城郭と呼ばれる系統の城や江戸時代以降の近世城郭の主要部の名称にみられる。また、堀田浩之は日本の城に中心から「本丸」「二の丸」「三の丸」という名称が共通して名付けられているのは、曲輪の理念上の編成をわかりやすく示すためのものであると解釈し、上級権力による城郭の新しい概念における管理上の記号として、軍学をもとに登場したものであろうと、推定している[3]。「丸」とは日本語では球体も意味するが、これにいう「丸」とは円形のことで、江戸時代の軍学関係の書籍を引用して後述するように城は円形につくることが好ましいといわれた。江戸初期の北条流軍学の祖となった軍学者、北条氏長が著した『兵法雌鑑』では
城をとるべきようは、小く丸くとるべし…—北条氏長、『兵法雌鑑』
とあり[4]、江戸中期の軍学書『武用弁略』には、
城は小円を善とすること、城取の習とぞ、此故に丸とは呼ぶ也…—木下義俊、『武用弁略』
とある[5]。
主に本丸から見た方位にある曲輪を「(方位)の丸」、「(方位)ノ丸」、「(方位)丸」といった。
こうした曲輪は、敵が主要な曲輪に達するまでの時間稼ぎとなり、また防御側にとって有利に攻撃ができた。しかし、城の規模が小さい場合には、ひとつの曲輪が制圧されると、次の曲輪が射程に入ってしまうことも多く、中世の山城の曲輪は、鉄砲を用いた戦いに向いていなかった。
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