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日本の映画作品 ウィキペディアから
『稲村ジェーン』(いなむらジェーン、英語: Inamura Jane)は、1990年9月8日に公開された日本映画。主演は加勢大周。監督・音楽は桑田佳祐。1965年の鎌倉市稲村ヶ崎を舞台としている。
2021年8月にはニッポン放送およびTOKYO FMにて、主人公のヒロシが2021年の夏を生きていたらという展開で物語が始まる内容のラジオドラマが放送された[2]。
サザンオールスターズのバンドマスターとして活動している桑田佳祐の初監督作品[3][4]。桑田が「何もない青春を描きたい」とプロデューサーの森重晃に話したことがきっかけでストーリーや演出の構想が練られ製作が行われた[5]。1990年度の日本映画配給収入年間ランキング4位、累計配収額は18億3000万円[1]、観客動員数350万人を記録した[4]。
公開翌年である1991年にレーザーディスクとVHSで作品ソフトが発売されたが、これらの絶版後は長きに渡りメディアでの視聴がほとんど不可能となっていた[6]。その後、サザンのデビュー43周年である2021年6月25日にBlu-ray・DVDが発売されることが決定した[7]。ソフトは30周年コンプリートエディションとして限定生産のBOX仕様で発売され、主人公の愛車であるダイハツ「ミゼット(MP5型)」のミニチュアモデル、当時のスタッフが保管していた桑田直筆の撮影コンテなどを掲載したフォトブックが付属される[8]。
桑田の地元である神奈川県茅ヶ崎市で開催される茅ヶ崎映画祭にて「茅ヶ崎映画祭開催10周年記念特別招待作品」に選出され、2021年6月25日に茅ヶ崎市を含む全国6都市での同時上映会が開催された[9]。
1964年に行われた東京オリンピックの翌年、1965年の鎌倉市の稲村ヶ崎を舞台に、変わりゆく時代の渦中を生きる若者たちのサーファーのひと夏を描いた作品[4][10]。稲村ヶ崎に帰ってきたヒロシ(加勢大周)、伊勢佐木町のチンピラ・カッチャン(的場浩司)、ラテン・バンドのリーダー・マサシ(金山一彦)の前に横須賀の波子(清水美砂)というとびきりイイ女が現れ、波子を中心にヒロシ、マサシ、カッチャンに奇妙な友情が生まれる[11]。
興行収入面では成功し、使用された楽曲への評価は現在も高いものの、映画そのものの内容に関しては著名人や評論家から批判された[12][13]。
映画監督の肩書きも持つビートたけしは、自身の映画批評本『仁義なき映画論』にて本作を「半分もみないうちに逃げ出したくなっちゃって、こんなに長く感じた映画は初めてだね」と酷評した。ただ、「オレは非難しているんじゃない。誤解しないように。」と述べていたり「音楽映画なのに邪魔なセリフがありすぎて音楽を殺している。」「音楽と絵でやったほうがインパクトの強いものになる。」「この映画は音楽だけ」「テレビのスポットの『稲村ジェーン』は見事なもの」など、音楽面については高く評価した。しかし、最初の酷評の文章だけしか読んでいなかった当時の桑田は「つまらないというのは感性が足りないから。武さんは若者の気持ちが分かっていない」と述べている[14][13][12]。たけしは翌年、サーフィンに熱中する若者の恋愛模様を描くセリフがほとんどない映画『あの夏、いちばん静かな海。』を発表したが、これは本作に触発されたのではという批評も存在する[15]。その一方、たけしはミュージシャンとしての桑田を「大した天才だと思う」と語り認める主旨の発言をしており[16]、サザンの「SEA SIDE WOMAN BLUES」を『足立区のたけし、世界の北野』(フジテレビ)でエンディングテーマとしてカバーしていた。この曲については元々たけしが歌う想定で制作された楽曲であることが語られている[17]。また、2000年秋に発売された『Free & Easy』の取材を受けた際には「真夏の果実」をカラオケのレパートリーにしていることを公言している[18]。桑田も芸人としてのたけしを認めており、2000年に発表されたサザンの楽曲「HOTEL PACIFIC」のダンスにはたけしのギャグ「コマネチ」のポーズが盛り込まれている[19]。 また、2016年にタイタン主催のライブ「TITAN LIVE 20YEARS anniversary」にたけしが『立川梅春』名義で出演し落語『人情八百屋』を披露した際には、太田光(爆笑問題)の誘いで桑田・原由子夫妻が観客として会場に訪れており、終演後に桑田は「本当に素晴らしかったです。たけしさんが出てきたときには、神々しくて。枕から涙ぐみました」といったメールを太田に送っている[20]。2004年に桑田の父親が死去した際には、たけしから生花が送られている[21]。この関係性を知らない者から現在も桑田とたけしが不仲であると誤解されたことも度々あり、たけしは「桑田佳祐の映画でいろいろあったのなんて、もうずいぶん昔のことなんだよ。もしも仲が悪かったら映画『浅草キッド』の主題歌に桑田佳祐の曲[注釈 1]を使ったりしないだろう」とコメントしている[23]。
桑田と対談した村上龍はこの映画の実音がないラフ編集版を見たうえで、「荒い編集だけど、頑張ったね」と感想を述べている[24]。
お笑い芸人の永野は「公開当時映画館で観た時は意味が分らなかったが、30年くらい(2021年)経ってから観たら最高だった。頭から離れなくなった」「”青春”って言った時に一つも無かったんですよ、当てはまるものが。(中略)ここまでリアルに『あの気分(何も無かった時期)』を体現した映画ってない」「見ようによっちゃ環境映像に見えますよね。『これはミュージック・ビデオじゃん』っていう意見も分かるけど、ミュージック・ビデオじゃないよね」「この映画見た後他の映画がちょっと見れないですもん。全部がわざとらしすぎて、事が起こりすぎて、結末に向かいすぎて」とした上で、「この映画はバイブル、落ち込んでる人を救う映画」「当時酷評していた人達に言いたいのは、桑田佳祐が早すぎた」「(自分の人生で)無駄だと思ってた時間が『全部無駄じゃなかった』って教えてくれる、本当に奇跡の映画」などと大絶賛している[25][26]。
桑田本人は「自分の作品の出来に、内心では確固たる自信が持てなかった“後ろめたさ”もあった」と話しており、DVD・Blu-ray発売に伴うコメントでもそれをネタ的に自虐している。一方でサウンドトラックとして使用された楽曲を制作できたことや、多くのスタッフやサポートミュージシャンに出会えたことに対しては感謝する発言をしている[12][4]。
本映画のサウンドトラックが1990年9月1日にビクター音楽産業(現:JVCケンウッド・ビクターエンタテインメント)から発売され、累計133.7万枚(オリコン調べ)を記録するミリオンセラーとなった[27]。
『稲村ジェーン2021~それぞれの夏~』(いなむらジェーン にせんにじゅういち それぞれのなつ)は、ニッポン放送およびTOKYO FM / JFN系列37局で放送されるラジオドラマ。主演は林遣都[28]。
ニッポン放送では、2021年8月23日から26日の23:50から24:00の間、TOKYO FM / JFN系列37局では2021年8月29日の13:00から13:55の間に放送された[28]。
物語は75歳になったヒロシがある女の子に偶然出会った。その女の子は、1965年にヒロシが幻想のような“暑かったけど、短かった夏”をともに過ごしたひとりの女の子のことを思い起こさせられた場面から始まる[2]。
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