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社会調査(しゃかいちょうさ、英: social research, social survey、field work)とは、人々の意識や行動などの実態をとらえる方法である。
社会からデータをとる方法は、実験、観察など各種ある。文章や映像等の内容分析、既に集計済統計データ(マクロデータ)の利用などの手法も用いる。社会調査は社会学、政治学、経済学、経営学、人類学はじめ、社会に関連する学術、産業において用いている。
社会調査を、手法により2つに大別すると、社会の内部で何らかの役割を果たしながら得た情報を基にする内部関与法と、なるべく社会に影響を与えずに情報を得る外部観察法とがある[1]。観察は対象に影響を与えないように、とくに質問をせず、幼児や外国人など言葉が通じない対象に対しても可能な場合がある。内部関与法と外部観察法に対し、何らかの質問を対象者に行うことは、外乱であり行動そのものへの影響がある。そのため分析段階で調査方法の影響を評価する必要がある。
社会調査を、結果の分析法により2つに大別すると、大量のデータをとり社会の全体像を把握することを目的とする統計的社会調査と、少人数へのインタビューや参与観察などの事例的社会調査の2つに大別できる。前者は無作為抽出などによる標本を行うか、国勢調査のように全数(悉皆)調査を行うこともある。
統計的社会調査を量的調査、事例的社会調査を質的調査と呼ぶことがある。ただし、質的調査とは、面談/面接調査(インタビュー)、内容分析、会話分析、観察など多様な手法を指す概念である。観察を調査の一部と定義することは社会調査法の基本文献にある[1]。社会調査の結果は、世論や政策の形成に影響を与えることがあり、調査の妥当性確保のニーズは強い。
日本における社会福祉士の指定科目である社会調査の基礎は、本項で述べられている社会調査に比べてより限定したもので、社会福祉調査の位置づけがなされる場合と、旧・指定科目にあった「社会福祉援助技術論」に包括される、援助技術方法の一領域と考えられる場合とがある。
社会調査は大規模化・複雑化する社会の変化に対応するため、各時代における社会事象を科学的に理解するための手段として利用されてきた[2]。
社会調査は国王や皇帝による人口調査がルーツとなっている[2]。ルカによる福音書(2-1.3)には皇帝アウグストの全世界の人口を調査せよとの勅令により人々は今まで住んでいた町から本籍地に移動したとのエピソードがある[2]。
社会調査の主なルーツには1.行政調査、2.社会踏査、3.世論調査・市場調査の3つがある[3]。
日本では2004年に日本社会学会などが社会調査士資格制度を作り、社会調査教育の改善を試みている。
内部関与法は、調査対象に影響を与える方法である。そのうち、負の影響を与えないようにするために、一部に協力的に関与する方法である。調査は、対象の入出力を分析する必要がある。関与していないと、入力または出力の一部しか調査できないことがある。内部に入って関与すれば、入力と出力の両方を調査することができる場合に有効である。 また、関与対象に日常作業として負荷をかけることなく、作業に協力することによって情報が得られるため、調査方法としての効率は高い。ただし、内部に参加するため、客観性を損なう可能性がある。例えば、住民基本台帳を作成している自治体が、業務上得た情報を整理して、分析する定常的な方法と、観察対象の業務の一部を受託して、その作業で得た情報を分析する臨時的な方法がある。一部の業務しか関与していない場合には、その偏りを評価する仕組みを検討したり、具体的な偏りの可能性を明記するとよい。企業の場合いは、教育を請け負って、教育前の状態と、教育後の状態を調査することによって、教育効果を測ることがある。この際に、教育前の質問票への回答と教育後の質問票への回答など統計的調査の方法を取ることがある。
ウェブの公開情報や、有価証券報告書などのように、法律で決めて公開が義務づけられている情報などを収拾して、観察対象に対して調査のための負荷をかけない方法である。観察対象に影響を与えない調査方法である。文書だけを観察する場合には、文書審査[注釈 1]の技術が必要である。
母集団を設定し、社会の全体像を把握するために大量のデータをとる調査法を統計的社会調査という。全数を調査する「全数調査」と、少量の標本(サンプル)をとって全体を推計する「標本調査」がある。
日本において大規模な社会調査が行われる場合、標本の抽出元には住民基本台帳か有権者名簿(選挙人名簿)が用いられることが多い。ただし、2005年4月に個人情報保護法が施行されたことにより、マーケティング調査などにこれらを用いることが出来なくなるなど、用途が制限されている。
必要となる調査対象の数は、枠母集団が「1億2千万」個だった場合、全数調査では当然「1億2千万」個である。標本調査では、たとえ枠母集団が「無限」個でも、必要となる標本数は「384」個だが(日本の総務省統計局の基準[6])、標本数が多ければ多いほど信頼性が増すのは言うまでもない。ただし、必ず無作為抽出でなければならない。標本調査の場合、分析のためには社会統計学が用いられる。もちろん「統計的調査」を標榜しないなら、サンプルは作為的に選んで構わない。
調査票(または質問紙)を用いた社会調査をアンケートと呼ぶこともある。ただし、フランス語の「enquete」(英語の「investigation」に相当)は、実際は「研究、探求、取り調べ」という意味で、ある意味で誤用である。日本語の「アンケート」の意味の言葉は、フランス語では「questionnaire」と言う。英語では「survey」と言うが、英語でも「questionnaire」と言うことがある。日本語では「クェスチョネア」とはさすがに言わないが、「サーベイ」と言うことがある。木村や佐藤郁哉の文献では、アンケートを、少数の専門家に意見をきくことを指し、調査票を用いた調査のことを指していない。
この方法は、以下のように面接法、とめおき法、郵送法、集合法、電話法、電子法(ネット調査やウェブ調査)などに分類される。
面接調査は、調査者が調査対象者に直接会って質問を発し、回答を得る方法である。
調査者が対象者に実際に会って行う為、データ一件あたりの費用が高くなる反面、身代わり回答や無回答が少なく比較的信頼性の高いデータを得る事ができる。
留め置き調査とは調査票を一定期間対象者に渡しておき、後日に訪問して調査票を回収する方法。調査票を郵送し、回収は調査員が訪問する場合は郵送留め置き調査と呼ばれる。
低コストだが、身代わり回答や無回答が多く、データの質は面接法と比べ、やや落ちると言われる。ただし、家計調査や生活時間調査などにおいて、家計簿や日記などを見て、回答者が考えながらやや長時間答える場合は有効とも言える。
調査票を郵送し、郵送で返送してもらう方法。郵便代金だけで実施可能だが、通常、回収率は3割前後であり、学術調査としては不適切とされることが多い。ただし、質問数が少なく、依頼状を工夫し、返送先が大学で信用があり、何度か繰り返し調査票を送付した場合は、7割前後の回収率となる場合もあった。最近は郵送法に限らず回収率は低下傾向にあり、現実には厳しい結果となることが多い。
ある場所に全員が集まって調査をする方法。小規模な村で村民全員を公民館や保健所等に集めて調査をしたり、学校内で生徒に対して調査を行ったりするのが集合調査の例である。
電話をかけて質問を行い、結果を聴取する方法。全国の電話帳を手でめくって手作業で系統抽出を行うようなことは現代ではしておらず、通常、コンピュータでランダムに作り出した電話番号に電話をかけるRDD方式[注釈 2]が使われる。ダイヤル対象は固定電話と携帯電話の両方である。選挙の結果予測調査などによく用いられる。
電話調査の問題点としては以下の点が指摘されている[誰?]。
ウェブで調査フォームを公開して、回答を募る方法。インターネット調査、ネット調査、ウェブ調査などとも呼ばれる。調査・集計が手軽で安価であるなどの理由で利用が増えている。
この手法の問題点として以下の点が指摘されている[誰?]。
米国の社会学においては、公開されている既存の社会調査データが多いこともあり、大規模なデータファイルの計量分析をもとにした計量社会学が、近年では非常に盛んである。アメリカ社会学会の機関誌アメリカン・ソシオロジカル・レビュー誌[注釈 3]も論文の7割前後が計量分析を用いた論文である。
日本では社会学において全国規模の社会調査も存在するが、2003年頃から、特殊詐欺などのため、調査依頼はかなり警戒されるようになり、回答拒否が増え調査の回収率は低下傾向にある。また、2003年施行の個人情報保護法の影響による意識の高まりで、個人情報を含む調査も忌避されやすくなっている。2005年の国勢調査は、調査拒否が問題となり全国で4%ほどが未回収だった。とくに東京や大阪の中心部では約30%が未回収となり大きな問題となっている。
日本国内で政府による大規模な調査を請け負う調査会社は、時事通信社系の中央調査社と、新情報センターの2社であった。その他の調査会社は、自前の調査員を持たず、調査自体は小規模な会社に外注することが多い。2005年に、新情報センターの調査員による虚偽回答が大きな問題となり、政府は新情報センターの代わりに日経リサーチへ調査を発注することとなった。だが、日経リサーチは独自の調査員を持たないため、今後、調査能力や調査員の信頼性について十分な体制を構築できるのかという点について、調査関連学会から不安を指摘する声が出ている。
谷岡一郎によれば、過半数はずさんな調査である[8]。ずさんな調査が生み出されるには各種の意図が働くためであるが、これらには自分の立場を補強あるいは弁護のため、政治的な立場の強化のため、センセーショナルな発見をしたように見せかけるため、単純に何もしなかったことを隠すため、将来の研究費や予算を獲得するためというようなものが含まれており、生み出されたずさんな調査を無知蒙昧なマスメディアが世に広めている[9]。
どんな調査でもマスコミに取り上げられることがなければ広く知られることはないため、マスコミによる調査に対するチェックが求められるが、マスコミ自身による調査を含め、内容や方法論についてきちんと確認するどころか、ひどい調査を発表されるまま記事にしたり、故意に悪用することを繰り返している[10]。簡単な数字の鵜呑みや自分たちの都合で決定されていたり[11]、またトピックが関心を呼ぶものなら方法論が問われない[12]。調査が偏ったものでも記事の材料にしているのは気づいていれば悪意、そうでなければ無知であるが、問題は記事に取り上げられることで別のメディアに広がっていくことである[13]。
新聞社は独自の調査を行い、その中には特定の目的を持って、特定の記事を書くためだけに行われることがある。調査結果があらかじめわかるものから結果の如何にかかわらず記事の調子が決められているものまで多様であり、事件でないものを事件に仕立て上げるための調査も少なくない[14]。
社会調査は個人のプライバシーに関わるものである。回答者の個人情報を保護し、人権に配慮することが、社会調査の実施には極めて重要である。調査前には、調査内容を説明した上で、丁寧に協力依頼をすることが必要である。調査後には、個人情報の的確な廃棄などを行わなくてはならない。
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