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クマからとれる肉 ウィキペディアから
熊肉(くまにく)とは、クマからとれる肉。熊料理の材料となる。熊肉は古来、食用とされてきた[1]。狩猟によってしか得られない野生の肉であるため、大量には出回らない食材である[1]。全身が食される。旨味が強いとされる。
クマは全身を食用にでき、肉が少量であっても旨味が強い[1]。汁ものには脂身のある部位のほうが良いスープが出る[1]。
東京家政学院大学客員教授の宗像伸子は、熊肉を調理し食用した感想として、脂身は融点が低く、甘みと旨味が強かったこと、肉が少量であっても旨味がスープに溶け出し、野菜にも味がよく染み込んだことを述べている[1]。石川県の白山商工会によると、寒い地方の熊は、その肉は脂肪部分が多いが、サラッとした脂が特徴だとしている[2]。
100 gあたりの栄養価 | |
---|---|
エネルギー | 161 kJ (38 kcal) |
0.00 g | |
食物繊維 | 0.0 g |
8.30 g | |
20.10 g | |
ビタミン | |
ビタミンA相当量 |
(0%) 0 µg |
チアミン (B1) |
(14%) 0.160 mg |
リボフラビン (B2) |
(57%) 0.680 mg |
ナイアシン (B3) |
(21%) 3.200 mg |
ビタミンC |
(0%) 0.0 mg |
ミネラル | |
カルシウム |
(0%) 3 mg |
リン |
(22%) 151 mg |
鉄分 |
(51%) 6.65 mg |
他の成分 | |
水分 | 71.20 g |
ビタミンA効力 | 0 IU |
| |
%はアメリカ合衆国における 成人栄養摂取目標 (RDI) の割合。 出典: USDA栄養データベース |
100 gあたりの栄養価 | |
---|---|
エネルギー | 259 kJ (62 kcal) |
0.00 g | |
食物繊維 | 0.0 g |
13.39 g | |
飽和脂肪酸 | 3.540 |
一価不飽和 | 5.660 |
多価不飽和 | 2.400 |
32.42 g | |
ビタミン | |
ビタミンA相当量 |
(0%) 0 µg |
チアミン (B1) |
(9%) 0.100 mg |
リボフラビン (B2) |
(68%) 0.820 mg |
ナイアシン (B3) |
(22%) 3.350 mg |
ビタミンB6 |
(22%) 0.290 mg |
葉酸 (B9) |
(2%) 6 µg |
ビタミンB12 |
(103%) 2.47 µg |
ビタミンC |
(0%) 0.0 mg |
ビタミンD |
(0%) 0.0 µg |
ビタミンE |
(3%) 0.49 mg |
ビタミンK |
(2%) 1.8 µg |
ミネラル | |
ナトリウム |
(5%) 71 mg |
カリウム |
(6%) 263 mg |
カルシウム |
(1%) 5 mg |
マグネシウム |
(6%) 23 mg |
リン |
(24%) 170 mg |
鉄分 |
(83%) 10.73 mg |
亜鉛 |
(108%) 10.27 mg |
他の成分 | |
水分 | 53.55 g |
ビタミンA効力 | 0 IU |
ビタミンD | 0 IU |
砂糖 | 0.00 g |
コレステロール | 98 mg |
| |
%はアメリカ合衆国における 成人栄養摂取目標 (RDI) の割合。 出典: USDA栄養データベース |
熊肉には身体を温める効果や、滋養効果が高いとされる[5][1]。また、熊肉には美肌効果があるといわれるコラーゲンが含まれ[5]、特に中華料理の高級食材である「熊掌」は豊富にコラーゲンが含有され、美容に効果があると珍重される[1]。
白山商工会によると、熊鍋は、動物性蛋白質と食物繊維やビタミンなどが同時に摂取できるとしている[2]。
アメリカ合衆国では先住民を除いても開拓時代から熊肉(主にグリズリーとアメリカクロクマ)が食べられていたが、熊肉を食べるには適切な方法で捕獲・調理される必要があり、動物学者のアーネスト・シートンによると「穀物、植物の根、果実などを食べていて、最後に苦痛を与えずに素早く屠殺して適切に洗浄したもの」が理論上最高の味になるという[6]。
また、シートンの書籍『シートン動物誌(原題:LIVES OF GEME ANIMALS)』によると熊肉料理に以下のようなものが紹介されている[7]。
これ以外にメジャーではないが、ホッキョクグマもアラスカ周辺などで食べられたことがあったが、(特に肝臓が)有毒説が古くからあり、実際に食べた人で激しい頭痛、めまい、下痢、手足の皮がむけたという報告例があり、先住民たちもホッキョクグマ肉自体は食べても肝臓は食べないで犬に与えたり、犬にもホッキョクグマ肉を一切食べさせないようにしていたところがあったという[8]。
中国では「熊掌」が古くから珍重され、龍肝、鳳髄、豹胎、鯉尾、猩唇、鴞炙、酥酪蝉とともに「周の八珍」と称された[9]。
「香熊」は煮込んだ熊肉をマッチ箱ほどの大きさに切り、濃いめの香羹(こうかん)をかけた料理である[10]。
伝統的な日本のジビエ料理として食されるほか、薬膳の材料としても用いられる[11]。
熊肉料理はツキノワグマやヒグマが生息する地域の料理でもあり、かつて、熊肉はその土地だけで消費されるもので、主な料理は煮物や熊汁である[2]。
大日本猟友会によると、日本では、熊肉は北海道から中部までの一部地域で食べられているところ、クマは年間1千から2千頭が捕獲されており、その内の1割程が食用となる[12]。
日本では熊は年中獲れるが、クマの肉が最も美味いのは、巣穴で冬眠中の3、4歳の個体、または冬眠直前とされている[13][14]。これはツキノワグマ、ヒグマに関わらず、秋の木の実(ドングリなど)を食し、冬眠のための脂肪がのっているからである[14]。
次に美味しいのは4月下旬、“春クマ狩り”の頃のものである[13]。夏のクマは、痩せて脂肪が乏しいうえに野生特有の匂いが強く不味いとされる[13]。
熊肉は野生の肉であるため、臭みが強いと思われがちだが、原因は季節によって主に食べる餌が違うことと、狩猟後の処理(血抜きなど)の仕方で、個体差がでる[1]。熊を狩猟したのち、すぐに締めて解体するなど、一定の技術がないと、臭みが出る[15]。京都(滋賀)のある山荘は、「肉の柔らかさや匂いまで変わるため、仕留め方や解体方法が上手な信頼の置ける猟師からしか仕入れない」と語り、京風の出汁で熊肉を食する[15]。
日本においてクマ類は家畜化されていないため、野生のクマを狩猟、捕獲して入手する。
岐阜県白山麓では、むかしは春に熊猟を行っていたが、現在ではクマは保護獣となっており、11月15日から2月15日までの猟期のみ狩りが行われる[2]。クマの頭数が増えすぎた場合は春の駆除の許可がある[2]。
自治体によっては通年禁猟となっていたり、逆に、春の猟を解禁する向きもある[16]。
以下はヒグマの解体法の一例である[17]。
(1) 皮を剥ぐ - ヒグマを仰向けにし、股間部から首に向けて、体の中心に沿いナイフを入れて、皮を剥ぐ。同様に手足の皮を剥ぐ。手首・足首の関節の部位で手足を外す。
(2) 腹部・胸部を開く - 胃や腸を傷つけぬよう腹部を開く。胸部は、肋骨の根元をなたやのこぎりを使用して開く。
(3) 内臓を取り出す - 首から食道を取り出し、外に引き出す。横隔膜は骨に沿って切り取り、残りの内臓を引き出す。肛門部は肛門の回りをくり抜くか、なたで骨を割って取り出す。
(4) 熊の胆(胆のう)は肝臓の脇にあり、ナイフで慎重に剥がし、胆汁が漏れぬよう胆管をひもできつく縛って切り取る。 — 北海道環境生活部環境局自然環境課[17]
熊肉に限らず、獣肉には臭みがある。幾つかの地方では、調理の際に、臭い消しのために、醤油ではなく、味噌で味付けする。白川では、風味が変わりやすいため熊鍋に醤油は用いず、臭い消しに赤みそと白みそを合わせる[19]。また、臭い消しの効果があるねぎや唐辛子などの香辛料を具に用いる工夫も行う。そして、鍋に肉を入れた後は、鍋の蓋をせず、匂いが残らぬようにしている[5]。
熊肉は熱を通すとギュッと縮まり、肉質がとても硬くなる[1]。東京家政学院大学客員教授の宗像伸子は、「メニューを考える時には、柔らかくなる調理法を取り入れることがポイントで、叩いたり煮込んだりするだけでなく、酢やタンパク質分解酵素の強い野菜、果物を利用するとよい」とし、トマトやキウイフルーツなどを用いている[1]。一般的には、料理酒を用いて肉を柔らかくする。また、砂糖には牛肉をやわらかくする効果があるが[20]、熊肉に砂糖を用いるとますます肉が固くなる[5]。
東京、大阪、名古屋、京都という日本の都市でも珍しいもの(珍味)として取り扱う飲食店が幾つかある。高級食材となっている場合もある。また、江戸時代から続く店もある[34][15]。
熊肉は缶詰に加工されることもある。
シベリアでは森林地帯(タイガ)にヒグマが棲息しており、エヴェンキ族などによって狩猟、儀礼、崇拝の対象になっている[40]。特にエヴェンキ族やギリヤーク族(ニヴヒ族)のクマ祭が知られている[40]。北方ツングース系民族のエヴェンキ族やエヴェン族(ラムート族)には、森で得た獲物(特に食肉獣)を一人で消費してはならないニマトという慣習がある。
エヴェンキ族では普段からクマ猟は行われており、クマと遭遇した時点で行われ、1人でクマを倒した者は伝承として語り継がれる場合もある[40]。一方、クマ祭のための儀礼的な狩猟はクマ穴を探査し、集落の複数人でクマ穴をふさぎ狩猟を行う[40]。
クマの生食は、旋毛虫症(トリヒナ)の感染源となる。1897年にサロモン・アウグスト・アンドレーら、スウェーデンの北極探検隊が遭難死したのは、ホッキョクグマの生肉による旋毛虫症が原因とされている。日本でも旋毛虫症の集団発生例はあり、1974年の青森県岩崎村、1981年12月から1982年1月までの三重県四日市市(京都府および兵庫県産)でのツキノワグマの例や、1979年の北海道札幌市でのヒグマのルイベ(冷凍肉)、2019年の北海道札幌市の例がある。[41][42]冷凍処理をしても寄生虫が死滅せず潜んでいる場合があるため、熊肉の生食は医学上の禁忌と考えられる[1]。
一方、2011年3月に発生した福島第一原子力発電所事故の影響により、同年12月、福島県中通りで捕獲されたニホンツキノワグマから、暫定規制値を超える放射性セシウムが検出され、出荷停止となった[43]。その後、他地域でも基準値を超えた個体が見つかり、山形、岩手、宮城、福島、群馬、新潟の6県で出荷が規制された[12]。一部の地域では、伝統の食文化が絶えてしまうことが懸念されている[12]。
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