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水質汚濁(すいしつおだく)とは、公共用水域(河川・湖沼・港湾・沿岸海域など)の水の状態が、主に人為的な活動(工場や事業場などにおける産業活動や、家庭での日常生活ほか人間の活動全て)によって損なわれる事や、損なわれた状態を指す。
水質汚濁の原因には自然現象の一部(火山噴火や地滑り、地質条件、野生動物の活動など)も含まれるが、特に問題視されるのは生活および産業活動に伴って発生する廃棄物や排出水による汚染・汚濁など、人間が原因でありその対策が可能なものである。
水質汚濁は、直接的あるいは間接的に人々の健康や生活環境の水準を低下させ、水産業などに被害を生じさせる公害の一因として用語が定義された。現代では被害が顕れていなくとも、自然環境に悪影響を及ぼすおそれが高い現象も含める。
水質汚濁の種類はいくつかに分けられる。
有害物質がその影響を顕わす濃度を超えて存在する状態。環境中の濃度が低くても生物濃縮が生じる物質では、この濃度がごく低いため、環境への放出が特に厳しく規制されている。
過剰な有機物の排出が富栄養化を招き、生態系を混乱させる。 窒素、リンといった栄養塩類が過剰に存在すると、藻類やプランクトンが爆発的に繁殖する。閉鎖性海域では、繁殖したプランクトン(時に有毒)そのものによる赤潮が発生し、またそれらがバクテリアにより酸化分解される過程で水中の溶存酸素濃度が低下し、好気性水生生物が生存できなくなる。これがさらに進行した場合、嫌気性微生物しか生存できなくなり、硫化水素などの毒性物質が生成する。それらは青潮と呼ばれ、大規模な漁業被害が現在も発生している。 また、湖沼では藍藻類の大繁殖によるアオコを生じさせ、類似の被害を招いている。
工場や発電所の高温の排水が河川などに流れ込むことで周囲の水温が上昇し、生態系に異常をもたらす。熱汚染として水質汚濁防止法で規制項目とされている[1]。
建設工事や農業、水害などにより大量の粘土粒子が水中に分散すると、いずれ一気に沈降する時に底生生物を物理的に被う、水草などの光合成を妨げる、あるいは無機コロイドによる細胞への作用などで、魚類ではエラが詰まり死亡する、特に渓流魚では濁りが一定値を超えると発眼卵の孵化率(生存率)が低下する。[2]、南西諸島で深刻な赤土汚染は、サンゴ群落が堆積した泥に埋没し死滅する[3]等、広い範囲で生物群落の破壊や死滅をもたらすことがある。
これに対して、水質浄化の方法は大きく分けて3つある
(1)凝集剤
(2)吸着剤
(3-a)分解する(微生物や酵素を投入)
(3-b)分解する(微生物触媒など)
それぞれメリット・デメリット等もあり、浄化のニーズや状況にあった使い方が必要と言われている。
有害物質による水質汚濁の原因としては、カドミウム、鉛などの重金属や有機水銀、揮発性有機化合物 (VOC) などで蓄積性、発癌性を持つ物質があげられる。主に工場排水や産業廃棄物が発生源として警戒される。
水の状態を悪化させる原因となるものは、生物により容易に消費されるタイプの有機物や、肥料の成分でもある窒素・リンなどの栄養塩類などがある。主に生活排水に由来し、本来環境に必要な物質であっても、過剰に存在する故に汚染物質と化す。
法規制の対象となっているものは、健康項目とも呼ばれる。
法規制の対象となっているものは、生活環境項目とも呼ばれる。
日本の場合、環境全体に対する基準と事業者の公共水域への排水への規制が主となっている。
他国の事例によると、アメリカの環境基準は「水遊びと魚釣りが出来ること」を目標としており、アウトドア好きな国柄が表れている。
通常この用語を用いる場合、その水の対象は表流水に限られており、地下水などについてこの用語を用いることはほとんどない。
現実の環境、特に河川の水質汚濁においては、水中に分散した時の底質そのもの(懸濁物質)、および液体と固体の間で物質が吸着・溶出する作用が、非常に大きな要素となっている。重みと作用機構はいくぶん異なるが、湖沼や海域でも同様である。
水質汚濁の定義に底質汚染が含まれるのは、大雨による河川増水など気象条件や、浚渫などの人為的な行為によって撹拌された時はもちろん、平常時であっても水との相互作用が常に起きていて、影響を及ぼし合っているためである。従って、ある日時の水だけを試験・評価しただけでは不十分である。
また、底質は水に比して移動速度が極めて遅い特徴がある。さらに物質の吸着・溶出は、接している水との濃度勾配や、各々の物質がもつ水溶性などの物性、水温や他の溶存物質(汽水など)の影響による物理・化学的側面に加え、底質中に無数に存在する微生物の代謝や食物連鎖などの生態系内部での物質移動といった生物的側面が大きいと考えられ、その解明は道半ばにある。
しかし、水域全体の底質を調査するには、過大なコストが必要となるため、行政による規制はごく限定されたものとなっている。現在、底質に対する規制が実施されているのは、水銀、PCB、ダイオキシン類についてのみとなっている。
従って、有害性が未解明で法規制も行われていなかったり、水処理技術が未発達だった時代に排出された水・廃棄物に由来する有害物質が底質に蓄積されているため、水質が改善した現代の環境へと、逆に溶け出してくるおそれがあり、これは現実に発生していると考えられる。
例えば、ダイオキシン類の排出量は大きく改善されているにも係わらず、環境調査における水質でのダイオキシン類濃度がほとんど減少していない。これは、過去に排出されたダイオキシン類が底質に蓄積し、改善された水質を汚染しているためと考えられる。
日本で水質汚濁が激化したのは高度成長期以降であるが、住民への有害物質による健康被害が重大化したのは江戸時代からの足尾鉱毒事件が最初といわれる。
高度成長期に入り、急増した産業排水・廃棄物が公共水域へ投棄され続けた結果、1950年代から有明海で水俣病、1960年代に神岡鉱山下流でイタイイタイ病、阿賀野川で第二水俣病と、深刻な健康被害を引き起こす公害病が多発した。
また、生活水準向上への欲求から水洗トイレが普及したが、生活排水の不十分な処理のままの放流により、多くの河川や湖沼が高濃度のBOD成分により汚染され、魚類等の水質環境変化による絶滅、生産性の衰退など被害が激化した(川漁が盛んな地域で迷惑料を課したケースもある)。
1970年の第64回国会で、多くの法令による規制がようやく開始され、また国民の環境に対する意識の変化などにより、河川のBOD・海域のCODの数値は徐々に改善され、環境基準達成率も向上した。
しかし、都市中小河川や湖沼などの閉鎖性水域では、環境基準達成率は依然として低い状態が続いている。
新たな問題として廃棄物の不法投棄と関連した地下水汚染(地下水の水質汚濁)の発生も見受けられるようになった。2003年には、茨城県神栖市(当時は神栖町)で不法投棄による砒素化合物が原因と考えられる地下水汚染が発生し、住民に被害が出ている。
現在の水質汚濁の7割近くは一般家庭からの生活排水が汚染源となっている。対策のひとつとして、2005年の浄化槽法改正により単独処理浄化槽が廃止、水質基準の設定等が行われたが、一般家庭での環境意識が伴わなければ効果は期待できない。生活排水対策は法令だけでは効果が期待しにくいため、産業排水対策より対策は困難とされる。
日本では、山岳リゾート地や温泉ブームにより山間部や僻地の温泉にも人気場所がある。多くの場合、それらの場所は高度な排水処理はされず、簡易的な処理または直接川に排出される。そのため、下流域に生息する渓流魚のイワナ、ヤマメに入浴剤やシャンプー臭が付く現象が起きている。また、スキー場において雪面安定剤として硫酸アンモニウム((NH4)2SO4)が散布されるが、硫酸アンモニウムは低温環境下でも硝化することで硝酸に変化し河川に流入している[4]。
有害物質による大規模な汚染災害が、過去に何件か起きている。現代では中国をはじめとする新興工業国での恒常的な水質汚濁激化が、国内外で健康被害を招く事例が急増している。
そのほか貧困や格差、紛争による社会基盤欠損が、人口の過密による生活排水汚染を放置し住民の健康を蝕んでいる事例は、アメリカからアフリカまで全世界で枚挙に暇がない。
ただし先進国であっても、主に経済的な動機により公共水域の水質悪化を軽視している事例が見られる。
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